「晴れてハレルヤ」(2009/03/12 (木) 12:55:24) の最新版変更点
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*晴れてハレルヤ ◆mk2mfhdVi2
放送が、終わった。
今回の死者は五名。
前の放送と合わせれば、十名がすでに命を落としている。
それでも、ここに呼ばれる前からの知り合いが、三人が三人ともここまで生き残っているのは不幸中の幸いと言うべきだろうか。
……しかし、ガルル中尉と草壁メイが死んだか。
ガルル中尉は、ケロロ君の上官であり、数々の戦場を渡り歩いた歴戦の勇士と聞いていた。
草壁メイは、サツキ君と同じく草壁タツオをよく知る数少ない参加者の一人。
今後のためにも、二人とは合流しておきたかったのだが。
と、そこまで考えたところで、自分が死者が出たことそれ自体と同じくらい、
彼らが死んだ事で、我々を取り巻く状況が悪化している事を嘆いているのに気付く。
つくづく、嫌な大人になってしまったものだ。
「……サツキ殿の妹殿が、自分の娘が死んだというのに、なんであの男はあんなに平然としていられるのでありますか……」
私の隣で静かに怒る同行者を見ていると、そう切に思う。
「ケロロ君、目的のためならば、肉親すら利用する。そんな人間は、意外といるものだ。
私の知り合いにもいるさ、そんな男が」
「……そんなの、間違っているであります」
そう言って、ケロロ君は心底理解できないとばかりに首を振る。
それでいいのだ。
ケロロ君に碇の考えを理解する必要なんて無いし、
碇とて彼に他人に理解してもらう事など、考えていないだろうから。
だから、この話はひとまず打ち切りにしよう。
我々がすべきことは、まだ山の様に残っているのだから。
「しかし、タママと加持殿、遅いでありますねえ……」
そう。
タママ君と加持君の二人が、未だここ公民館に到着していないのだ。
三十分程前に民家を出る際に彼らと交わした約束では、放送前には公民館に来てもらうはずだった。
しかし、時計を見ればもう十二時を回っている。
あの民家と公民館の間にそう距離が無い以上、二人に何らかのトラブルがあったのは明白だ。
「ケロロ君、サツキ君のディパックから、首輪探知機を出してもらえるかね?」
幸いにして、公民館とあの民家は同エリア内にある。
仕組みはわからないが、エリア内の首輪を感知する首輪探知機があれば、ここにいながら彼らの動向を掴むことは十分に可能だ。
「お安い御用であります。えーと探知機探知機……あれ?」
「どうしたのかね?」
取り出した探知機の画面を見て、ケロロ君が不思議そうな顔をしている。
身を乗り出して画面を見ると、その理由はすぐにわかった。
「時々画面にノイズが入るのであります。放送前に見た時は、まともだったのでありますが」
「バッテリーが尽きてきたのかもしれん……ケロロ君、予備のバッテリーや、充電用のコード等は無いのかね?」
「我輩にもよくわからないであります。元々これはタママの支給品でありましたから」
「むう……」
少々まずい事になった。
さすがに今すぐ使えなくなるなんてことは無いだろうが、
この先充電か換えのバッテリーを手に入れなければ、いずれは動かなくなるのは明白。
位置を一方的に知れる、他の参加者に対するアドバンテージを失ってしまうのは、余りに痛い。
「とりあえず、むやみやたらと使用せず、小まめに電源を切ってバッテリーを節約すべきか」
「で、ありますね。まあとりあえず、タママと加持殿の位置だけでも……」
そう言いながら、ケロロ君は再び探知機の操作に戻る……が、
「ゲロッ!?二人の首輪の反応が無いであります!」
「なんだと!?」
ケロロ君の言葉に、私は引ったくるようにケロロ君の手から探知機を奪う。
画面に映っている首輪の反応は、
中央部に三つ……私達の分だろう。
エリアの隅の方にポツンと一つ……誰かはわからないが、こちらはひとまず後回しだ。
たしかに、放送前にケロロ君に確認してもらった際にはあった二つの反応が、画面上から消え失せていた。
「こ、これもバッテリー残量が減ったせいでありますか!?」
「いや、私達や、エリア隅の一つは正確に反応しているから、それは無いだろう……」
だが、どういうことだ?
時計の針は、12時5分を指している。
放送前にケロロ君が確認してから、ほんの五分足らずの間に、二人してエリア外へ移動したのか?
現状そうとしか考えられないが……果たして何のために?あれほど険悪だった二人が、揃ってエリア外へ出る理由があるのか?
それに、タママ君はともかく、加持君は多少鍛えている程度の一般人だ。怪我もしている。
そんな彼がこんな短時間で、エリアの中央付近から一気にエリア外までいけるとも思わない。
一体二人に何が起こった?
「……ケロロ君、この画面端の反応。君が確認した際にはあったかね?」
「二人の反応ばかり見てたので、記憶が定かで無く……。申し訳ないであります……」
「……そうか。ならばひとまず、今はこの反応は無視しよう。単独ということは、優勝狙いの参加者の可能性もある。
今我々には、最大戦力のタママ君が欠けている。戦闘になれば、私とケロロ君では厳しいだろう。
相手が殺し合いに乗っていた場合のリスクを考えれば、不用意に接触するのは避けたい。いいかね?」
「了解であります、冬月殿!」
早口でまくし立てる私に、ケロロ君は敬礼で返す。
流石は軍人、このような状況でも大して動揺していない。これならば安心して……サツキ君を任せられる。
「ケロロ君、どうやら彼らに不測の事態が発生したのは確かなようだ。私はひとまず、先程の民家に向かおうと思う。
君は、私がいない間サツキ君を守っていてくれ」
「ま、待ってほしいであります!冬月殿を見す見す危険に晒すわけには!こういう事は軍人に……」
多少は予想していたが、ケロロ君が私を止めようとする。
私の身を慮るその気持ちは嬉しいが、生憎今は喜ぶ暇も無い。
今私達がこうしている瞬間にも、タママ君と加持君の二人が危険目に合っているのかもしれないのだ。
だから、ケロロ君に承諾してもらうために、
「大丈夫だ、見たところこのエリアには私達とエリア端の一人以外誰もいないし……仮に襲われたとしても、武器ならある」
私はディパックに手を入れた。
◇
「大丈夫だ、見たところこのエリアには私達とエリア端の一人以外誰もいないし……仮に襲われたとしても、武器ならある」
冬月殿が、自分のディパックを取り出す。
しばらくディパックを漁り続けていたが、ようやくお目当ての品が見つかったのか、微笑を浮かべながら手を引き抜いた。
取り出したのは……催涙スプレー、スタンガン、最後に銃でありますか。
あれ?その奇妙なフォルムをした銃はたしか……
「『夢成長促進銃 <ジンセイガニドアレバガン> !?』」
「おや、知っているのかね?」
冬月殿が驚いた顔をする。
いや、驚いたのはこっちでありますよ。なんでクルルの発明品がディパックに……。
「ケロロ君のディパックにも食糧や地図、名簿などの他に何か入っていただろう?
私の支給品がこれだったのだよ。ケロロ君の仲間の発明品とは思いもしなかったがね」
ああ、そういうことでありましたか。
……と言うことは、我輩のディパックにあるナイフやら微妙にボロっちい自転車やカナブンやらも、
元は誰かの持ち物なのかもしれないでありますか。
クルルの発明品は便利から際物まで幅が広いし、
ひょっとしたら他にも奪われて支給されてるのかも……クルルの奴、怒ってそうでありますなあ。
まあ、我輩は支給されて困る物なんて……っておい!ガンプラ!まさか我輩の愛しのガンプラ達は支給されて無いでありますよね!?
こんな場所に持ってきたら我輩の力作が見るも無惨な姿に……!ちょっ、フザケンジャナイデアリマスヨゴラァ!
「ケロロ君、どうした、何かあったのかね!?」
「……ハッ!?」
冬月殿に肩を揺さぶられ正気に戻る。
もう少しでガンプラへの愛で我を忘れるところでありました……危ない危ない。
今はそんなことをしている場合では無いというのに。
「な、なんでもないであります」
「そうかね?ならばいいが……」
しかし、『夢成長促進銃』?
殺傷能力も無い、相手を若返らせるだけの武器、そう役に立つとは思えないでありますが……。
他の二つも、武器と言うよりは護身具と言うべき代物でありますし。
まさか冬月殿に限って、あまり大っぴらには言えない特殊な性癖を持っている、というわけでは無いでありましょうし。
「この銃ならば、容易に相手を無力化できる。
ある程度の年齢まで若返らせることさえできれば、拘束するのも簡単だ」
…………へ?
「恥ずかしながら、どうにも私達の星は有史以来戦乱が絶えなくてね……限りある領地を奪い合って、多くの命が散っていった。
だがこの銃は、相手を傷付けること無く敵を鎮圧できる。素晴らしいと思うよ。
侵略すら平和的に行うその発想、そしてそれを可能にしたテクノロジー。やはり凄いものだな、宇宙人とは」
「ふ、冬月殿にそう言って貰えると光栄であります!帰還後、クルルによく言っておくでありますから!」
思いがけない賛辞に、微妙に目を反らしつつもそう答える。
やっべえ……そんな使い方あったんだ、その銃。ごめんクルル、くだらない事にばかり使ってたよ。
てか、もしかしてこの銃量産するだけでもペコポン侵略結構いいところまで行けたんじゃ……まあそれはいいや。
気を取り直して、冬月殿の方に向き直る。
「スタンガン、催涙スプレー、そしてこの銃。これだけあれば大丈夫だろう。行かせて貰えるね、ケロロ君」
三つの武器を我輩に見せながら、冬月殿はあくまでも自分が行くと主張する。
どうやら、これ以上止めても時間の無駄でありますね。
「……よろしく頼むであります、冬月殿。あ、我輩の支給品でありますが、こいつを持っていってほしいであります」
我輩のディパックから、二本のインディアン・ナイフを取り出して、冬月殿に渡す。
「……いいのかね?」
「まだ二本残っているでありますから。
それに、もしこのナイフにも元の持ち主がいるなら、その御人がきっと冬月殿をお守りしてくれるであります」
「ならば、ありがたく使わせてもらおう。……ではケロロ君、私がいない間、サツキ君のことを頼んだよ」
「了解であります!このケロロ、例え鬼や悪魔が相手であろうと、必ずやサツキ殿をお守りしてみせるであります!」
その答えに満足そうな笑みを浮かべて、冬月殿はディパックを背負う。
最後にいくつか我輩に指示だけして、冬月殿は一人歩いていく。
「冬月殿、御武運を……!」
最後の声が、冬月殿に届いたかは、わからない。
◇
周囲へ気を配りつつ、冬月コウゾウは民家へ走る。
探知機には反応が無かったが、それでもここが敵地である以上、警戒しておいて損は無い。
それなりに疲労が溜ってはいたが、そんな事を言っていられる場合ではすでになかった。
加持リョウジとタママ二等兵。
彼らが今どんな状況に置かれているか、冬月は知らない。知るよしも無い。
すでに叶わない仲間の無事のみをただただ案じて、老兵は一人戦場を駆けていた。
【B-6/市街地/一日目・昼過ぎ】
【冬月コウゾウ@新世紀エヴァンゲリオン】
【状態】疲労(中)
【持ち物】ソンナ・バナナ一房(残り一本)@モンスターファーム〜円盤石の秘密〜、スタンガン&催涙スプレー@現実
ジェロニモのナイフ×2@キン肉マン、夢成長促進銃@ケロロ軍曹、ディパック、基本セット(名簿破棄)
【思考】
0.ゲームを止め、草壁達を打ち倒す
1.民家に向かい、タママ・加持の突然の失踪の手掛りを掴む
2.シンジ、夏子、ドロロを探し、導く
3.タママとケロロを信頼
4.首輪を解除する方法を模索する
5.アスカの事情はわからないが、もう一度会ったら保護したい
※現状況を補完後の世界だと考えていましたが、小砂やタママのこともあり矛盾を感じています
※加持については、僅かに疑念は抱いているようですが、基本的には信頼したいと思っています
【夢成長促進銃 <ジンセイガニドアレバガン> 】
撃たれた対象は若返る、クルル曹長の発明品。
撃たれた場合、放送まで元の姿に戻れません。
◇
公民館の中。
サツキ殿は、いまだ眠っている。一向に起きる気配は無い。
出発前に、冬月殿に指示されたことは二つ。
一つは、バッテリーが残り少ない首輪探知機をフル活用してでも、周辺の状況を常に把握し続けること、
公民館に他の参加者が近付いて来るのを確認した場合は、
ひとまず近くの民家に隠れ、相手が安全かどうかを確認してから接触する。
そしてもう一つは、もし冬月殿の首輪の反応が、タママと加持殿と同様に消えた場合、決してその民家には近付かないこと。
二人の二の舞い、三の舞いにならないようにするために。
そんな忠告を我輩にしたのは、冬月殿自身、これが危険なミッションであることを理解しているということだろう。
「やはり、我輩が行くべきだったのでは……」
今更そんなことを言っても、仕方ないことは理解している。
探知機の画面は、冬月殿が既に民家の近くまで進んでいる事を示しているのだ。
もう、引き返すことはできない。
ならば、我輩にできることは、我輩の役目を果たすのみ。
決意とともに顔を上げれば、窓の外にはひたすら青い空が広がっていた。
――我輩は絶対に、我が身に代えてもサツキ殿を守り抜くであります。
――だからどうか、我輩達が間違った道へ進まぬよう、見守っていてほしいであります。
――メイ殿。
――ガルル中尉。
――そして、冬樹殿。
【B-6/公民館/一日目・昼過ぎ】
【ケロロ軍曹@ケロロ軍曹】
【状態】全身に擦り傷
【持ち物】北高女子の制服@涼宮ハルヒの憂鬱、ジェロニモのナイフ×2@キン肉マン、自転車@現実、ディパック、基本セット、
サツキのディパック、首輪探知機@現実?、サツキの基本セット
【思考】
0.ゲームを止める
1.冬月の指示に従い、サツキを守る
2.加持に対し強い信頼と感謝。何かあったら絶対に助けたい
3.冬樹とメイの仇は、必ず探しだして償わせる
4.協力者を探す
5.ゲームに乗った者、企画した者には容赦しない
6.で、結局トトロって誰よ?
※漫画等の知識に制限がかかっています。自分の見たことのある作品の知識は曖昧になっているようです
※タママについて、やや不安を感じています
※首輪探知機のバッテリーが大分減っています。すぐにではないですが、いずれ使用できなくなります
【草壁サツキ@となりのトトロ】
【状態】睡眠中、全身にダメージ(中・手当て済み)、精神疲労気味、疲労(中)
【持ち物】なし
【思考】
0.メイを守りたい
1.よくわからないけど、ここには怖い人がたくさんいるので怖い
知らない人を信頼していいのかわからない。……もう怖い思いはしたくない
2.タママと加持を待つ。でも――
3.冬月さんや軍曹たちと行動する
4.トトロ……?
※トトロに会う前からの参戦
※ケロロを名前と外見(人外)から、トトロと関わりがあるのかもしれないと考えています
※B-7、喫茶店内の壁に冬月とタママの暗号が残っています
*時系列順で読む
Back:[[黒は一人でたくさんだ!(前編)]] Next:[[愛と狂気の迷い道]]
*投下順で読む
Back:[[黒は一人でたくさんだ!(前編)]] Next:[[愛と狂気の迷い道]]
|[[のこされるもの]]|冬月コウゾウ|[[ななついろ☆デンジャラス(前編)]]|
|~|ケロロ軍曹|[[ななついろ☆デンジャラス(後編)]]|
|~|草壁サツキ|~|
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*晴れてハレルヤ ◆mk2mfhdVi2
放送が、終わった。
今回の死者は五名。
前の放送と合わせれば、十名がすでに命を落としている。
それでも、ここに呼ばれる前からの知り合いが、三人が三人ともここまで生き残っているのは不幸中の幸いと言うべきだろうか。
……しかし、ガルル中尉と草壁メイが死んだか。
ガルル中尉は、ケロロ君の上官であり、数々の戦場を渡り歩いた歴戦の勇士と聞いていた。
草壁メイは、サツキ君と同じく草壁タツオをよく知る数少ない参加者の一人。
今後のためにも、二人とは合流しておきたかったのだが。
と、そこまで考えたところで、自分が死者が出たことそれ自体と同じくらい、
彼らが死んだ事で、我々を取り巻く状況が悪化している事を嘆いているのに気付く。
つくづく、嫌な大人になってしまったものだ。
「……サツキ殿の妹殿が、自分の娘が死んだというのに、なんであの男はあんなに平然としていられるのでありますか……」
私の隣で静かに怒る同行者を見ていると、そう切に思う。
「ケロロ君、目的のためならば、肉親すら利用する。そんな人間は、意外といるものだ。
私の知り合いにもいるさ、そんな男が」
「……そんなの、間違っているであります」
そう言って、ケロロ君は心底理解できないとばかりに首を振る。
それでいいのだ。
ケロロ君に碇の考えを理解する必要なんて無いし、
碇とて彼に他人に理解してもらう事など、考えていないだろうから。
だから、この話はひとまず打ち切りにしよう。
我々がすべきことは、まだ山の様に残っているのだから。
「しかし、タママと加持殿、遅いでありますねえ……」
そう。
タママ君と加持君の二人が、未だここ公民館に到着していないのだ。
三十分程前に民家を出る際に彼らと交わした約束では、放送前には公民館に来てもらうはずだった。
しかし、時計を見ればもう十二時を回っている。
あの民家と公民館の間にそう距離が無い以上、二人に何らかのトラブルがあったのは明白だ。
「ケロロ君、サツキ君のディパックから、首輪探知機を出してもらえるかね?」
幸いにして、公民館とあの民家は同エリア内にある。
仕組みはわからないが、エリア内の首輪を感知する首輪探知機があれば、ここにいながら彼らの動向を掴むことは十分に可能だ。
「お安い御用であります。えーと探知機探知機……あれ?」
「どうしたのかね?」
取り出した探知機の画面を見て、ケロロ君が不思議そうな顔をしている。
身を乗り出して画面を見ると、その理由はすぐにわかった。
「時々画面にノイズが入るのであります。放送前に見た時は、まともだったのでありますが」
「バッテリーが尽きてきたのかもしれん……ケロロ君、予備のバッテリーや、充電用のコード等は無いのかね?」
「我輩にもよくわからないであります。元々これはタママの支給品でありましたから」
「むう……」
少々まずい事になった。
さすがに今すぐ使えなくなるなんてことは無いだろうが、
この先充電か換えのバッテリーを手に入れなければ、いずれは動かなくなるのは明白。
位置を一方的に知れる、他の参加者に対するアドバンテージを失ってしまうのは、余りに痛い。
「とりあえず、むやみやたらと使用せず、小まめに電源を切ってバッテリーを節約すべきか」
「で、ありますね。まあとりあえず、タママと加持殿の位置だけでも……」
そう言いながら、ケロロ君は再び探知機の操作に戻る……が、
「ゲロッ!?二人の首輪の反応が無いであります!」
「なんだと!?」
ケロロ君の言葉に、私は引ったくるようにケロロ君の手から探知機を奪う。
画面に映っている首輪の反応は、
中央部に三つ……私達の分だろう。
エリアの隅の方にポツンと一つ……誰かはわからないが、こちらはひとまず後回しだ。
たしかに、放送前にケロロ君に確認してもらった際にはあった二つの反応が、画面上から消え失せていた。
「こ、これもバッテリー残量が減ったせいでありますか!?」
「いや、私達や、エリア隅の一つは正確に反応しているから、それは無いだろう……」
だが、どういうことだ?
時計の針は、12時5分を指している。
放送前にケロロ君が確認してから、ほんの五分足らずの間に、二人してエリア外へ移動したのか?
現状そうとしか考えられないが……果たして何のために?あれほど険悪だった二人が、揃ってエリア外へ出る理由があるのか?
それに、タママ君はともかく、加持君は多少鍛えている程度の一般人だ。怪我もしている。
そんな彼がこんな短時間で、エリアの中央付近から一気にエリア外までいけるとも思わない。
一体二人に何が起こった?
「……ケロロ君、この画面端の反応。君が確認した際にはあったかね?」
「二人の反応ばかり見てたので、記憶が定かで無く……。申し訳ないであります……」
「……そうか。ならばひとまず、今はこの反応は無視しよう。単独ということは、優勝狙いの参加者の可能性もある。
今我々には、最大戦力のタママ君が欠けている。戦闘になれば、私とケロロ君では厳しいだろう。
相手が殺し合いに乗っていた場合のリスクを考えれば、不用意に接触するのは避けたい。いいかね?」
「了解であります、冬月殿!」
早口でまくし立てる私に、ケロロ君は敬礼で返す。
流石は軍人、このような状況でも大して動揺していない。これならば安心して……サツキ君を任せられる。
「ケロロ君、どうやら彼らに不測の事態が発生したのは確かなようだ。私はひとまず、先程の民家に向かおうと思う。
君は、私がいない間サツキ君を守っていてくれ」
「ま、待ってほしいであります!冬月殿を見す見す危険に晒すわけには!こういう事は軍人に……」
多少は予想していたが、ケロロ君が私を止めようとする。
私の身を慮るその気持ちは嬉しいが、生憎今は喜ぶ暇も無い。
今私達がこうしている瞬間にも、タママ君と加持君の二人が危険目に合っているのかもしれないのだ。
だから、ケロロ君に承諾してもらうために、
「大丈夫だ、見たところこのエリアには私達とエリア端の一人以外誰もいないし……仮に襲われたとしても、武器ならある」
私はディパックに手を入れた。
◇
「大丈夫だ、見たところこのエリアには私達とエリア端の一人以外誰もいないし……仮に襲われたとしても、武器ならある」
冬月殿が、自分のディパックを取り出す。
しばらくディパックを漁り続けていたが、ようやくお目当ての品が見つかったのか、微笑を浮かべながら手を引き抜いた。
取り出したのは……催涙スプレー、スタンガン、最後に銃でありますか。
あれ?その奇妙なフォルムをした銃はたしか……
「『夢成長促進銃 <ジンセイガニドアレバガン> !?』」
「おや、知っているのかね?」
冬月殿が驚いた顔をする。
いや、驚いたのはこっちでありますよ。なんでクルルの発明品がディパックに……。
「ケロロ君のディパックにも食糧や地図、名簿などの他に何か入っていただろう?
私の支給品がこれだったのだよ。ケロロ君の仲間の発明品とは思いもしなかったがね」
ああ、そういうことでありましたか。
……と言うことは、我輩のディパックにあるナイフやら微妙にボロっちい自転車やカナブンやらも、
元は誰かの持ち物なのかもしれないでありますか。
クルルの発明品は便利から際物まで幅が広いし、
ひょっとしたら他にも奪われて支給されてるのかも……クルルの奴、怒ってそうでありますなあ。
まあ、我輩は支給されて困る物なんて……っておい!ガンプラ!まさか我輩の愛しのガンプラ達は支給されて無いでありますよね!?
こんな場所に持ってきたら我輩の力作が見るも無惨な姿に……!ちょっ、フザケンジャナイデアリマスヨゴラァ!
「ケロロ君、どうした、何かあったのかね!?」
「……ハッ!?」
冬月殿に肩を揺さぶられ正気に戻る。
もう少しでガンプラへの愛で我を忘れるところでありました……危ない危ない。
今はそんなことをしている場合では無いというのに。
「な、なんでもないであります」
「そうかね?ならばいいが……」
しかし、『夢成長促進銃』?
殺傷能力も無い、相手を若返らせるだけの武器、そう役に立つとは思えないでありますが……。
他の二つも、武器と言うよりは護身具と言うべき代物でありますし。
まさか冬月殿に限って、あまり大っぴらには言えない特殊な性癖を持っている、というわけでは無いでありましょうし。
「この銃ならば、容易に相手を無力化できる。
ある程度の年齢まで若返らせることさえできれば、拘束するのも簡単だ」
…………へ?
「恥ずかしながら、どうにも私達の星は有史以来戦乱が絶えなくてね……限りある領地を奪い合って、多くの命が散っていった。
だがこの銃は、相手を傷付けること無く敵を鎮圧できる。素晴らしいと思うよ。
侵略すら平和的に行うその発想、そしてそれを可能にしたテクノロジー。やはり凄いものだな、宇宙人とは」
「ふ、冬月殿にそう言って貰えると光栄であります!帰還後、クルルによく言っておくでありますから!」
思いがけない賛辞に、微妙に目を反らしつつもそう答える。
やっべえ……そんな使い方あったんだ、その銃。ごめんクルル、くだらない事にばかり使ってたよ。
てか、もしかしてこの銃量産するだけでもペコポン侵略結構いいところまで行けたんじゃ……まあそれはいいや。
気を取り直して、冬月殿の方に向き直る。
「スタンガン、催涙スプレー、そしてこの銃。これだけあれば大丈夫だろう。行かせて貰えるね、ケロロ君」
三つの武器を我輩に見せながら、冬月殿はあくまでも自分が行くと主張する。
どうやら、これ以上止めても時間の無駄でありますね。
「……よろしく頼むであります、冬月殿。あ、我輩の支給品でありますが、こいつを持っていってほしいであります」
我輩のディパックから、二本のインディアン・ナイフを取り出して、冬月殿に渡す。
「……いいのかね?」
「まだ二本残っているでありますから。
それに、もしこのナイフにも元の持ち主がいるなら、その御人がきっと冬月殿をお守りしてくれるであります」
「ならば、ありがたく使わせてもらおう。……ではケロロ君、私がいない間、サツキ君のことを頼んだよ」
「了解であります!このケロロ、例え鬼や悪魔が相手であろうと、必ずやサツキ殿をお守りしてみせるであります!」
その答えに満足そうな笑みを浮かべて、冬月殿はディパックを背負う。
最後にいくつか我輩に指示だけして、冬月殿は一人歩いていく。
「冬月殿、御武運を……!」
最後の声が、冬月殿に届いたかは、わからない。
◇
周囲へ気を配りつつ、冬月コウゾウは民家へ走る。
探知機には反応が無かったが、それでもここが敵地である以上、警戒しておいて損は無い。
それなりに疲労が溜ってはいたが、そんな事を言っていられる場合ではすでになかった。
加持リョウジとタママ二等兵。
彼らが今どんな状況に置かれているか、冬月は知らない。知るよしも無い。
すでに叶わない仲間の無事のみをただただ案じて、老兵は一人戦場を駆けていた。
【B-6/市街地/一日目・昼過ぎ】
【冬月コウゾウ@新世紀エヴァンゲリオン】
【状態】疲労(中)
【持ち物】ソンナ・バナナ一房(残り一本)@モンスターファーム〜円盤石の秘密〜、スタンガン&催涙スプレー@現実
ジェロニモのナイフ×2@キン肉マン、夢成長促進銃@ケロロ軍曹、ディパック、基本セット(名簿破棄)
【思考】
0.ゲームを止め、草壁達を打ち倒す
1.民家に向かい、タママ・加持の突然の失踪の手掛りを掴む
2.シンジ、夏子、ドロロを探し、導く
3.タママとケロロを信頼
4.首輪を解除する方法を模索する
5.アスカの事情はわからないが、もう一度会ったら保護したい
※現状況を補完後の世界だと考えていましたが、小砂やタママのこともあり矛盾を感じています
※加持については、僅かに疑念は抱いているようですが、基本的には信頼したいと思っています
【夢成長促進銃 <ジンセイガニドアレバガン> 】
撃たれた対象は若返る、クルル曹長の発明品。
撃たれた場合、放送まで元の姿に戻れません。
◇
公民館の中。
サツキ殿は、いまだ眠っている。一向に起きる気配は無い。
出発前に、冬月殿に指示されたことは二つ。
一つは、バッテリーが残り少ない首輪探知機をフル活用してでも、周辺の状況を常に把握し続けること、
公民館に他の参加者が近付いて来るのを確認した場合は、
ひとまず近くの民家に隠れ、相手が安全かどうかを確認してから接触する。
そしてもう一つは、もし冬月殿の首輪の反応が、タママと加持殿と同様に消えた場合、決してその民家には近付かないこと。
二人の二の舞い、三の舞いにならないようにするために。
そんな忠告を我輩にしたのは、冬月殿自身、これが危険なミッションであることを理解しているということだろう。
「やはり、我輩が行くべきだったのでは……」
今更そんなことを言っても、仕方ないことは理解している。
探知機の画面は、冬月殿が既に民家の近くまで進んでいる事を示しているのだ。
もう、引き返すことはできない。
ならば、我輩にできることは、我輩の役目を果たすのみ。
決意とともに顔を上げれば、窓の外にはひたすら青い空が広がっていた。
――我輩は絶対に、我が身に代えてもサツキ殿を守り抜くであります。
――だからどうか、我輩達が間違った道へ進まぬよう、見守っていてほしいであります。
――メイ殿。
――ガルル中尉。
――そして、冬樹殿。
【B-6/公民館/一日目・昼過ぎ】
【ケロロ軍曹@ケロロ軍曹】
【状態】全身に擦り傷
【持ち物】北高女子の制服@涼宮ハルヒの憂鬱、ジェロニモのナイフ×2@キン肉マン、自転車@現実、ディパック、基本セット、
サツキのディパック、首輪探知機@現実?、拡声器@現実、サツキの基本セット
【思考】
0.ゲームを止める
1.冬月の指示に従い、サツキを守る
2.加持に対し強い信頼と感謝。何かあったら絶対に助けたい
3.冬樹とメイの仇は、必ず探しだして償わせる
4.協力者を探す
5.ゲームに乗った者、企画した者には容赦しない
6.で、結局トトロって誰よ?
※漫画等の知識に制限がかかっています。自分の見たことのある作品の知識は曖昧になっているようです
※タママについて、やや不安を感じています
※首輪探知機のバッテリーが大分減っています。すぐにではないですが、いずれ使用できなくなります
【草壁サツキ@となりのトトロ】
【状態】睡眠中、全身にダメージ(中・手当て済み)、精神疲労気味、疲労(中)
【持ち物】なし
【思考】
0.メイを守りたい
1.よくわからないけど、ここには怖い人がたくさんいるので怖い
知らない人を信頼していいのかわからない。……もう怖い思いはしたくない
2.タママと加持を待つ。でも――
3.冬月さんや軍曹たちと行動する
4.トトロ……?
※トトロに会う前からの参戦
※ケロロを名前と外見(人外)から、トトロと関わりがあるのかもしれないと考えています
※B-7、喫茶店内の壁に冬月とタママの暗号が残っています
*時系列順で読む
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*投下順で読む
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|[[のこされるもの]]|冬月コウゾウ|[[ななついろ☆デンジャラス(前編)]]|
|~|ケロロ軍曹|[[ななついろ☆デンジャラス(後編)]]|
|~|草壁サツキ|~|
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