「びっくりした?」(2009/05/03 (日) 14:22:22) の最新版変更点
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*びっくりした? ◆4etfPW5xU6
影がかかり始めた空から降り注ぐ橙の光が薄暗い空間を少しずつ朱に染め上げていく。
時間の移りを感じさせる光の中にあって、それらを遮る人影が三つ。
それらの影は、身じろぎ一つせずただその場に存在していた。
誰一人言葉を発することはない。
発することは、できない。
誰もが、たった今この場で起こった出来事に頭を支配されていた。
悲劇。
一言で表すのならこれ程適切な言葉は無いだろう。
勇敢な少年と心優しい少女。
二人の前に現れた悪の存在。
悪を前に敗北しかけた少年達の前に現れた名も知らぬ、だが心強い味方。
卑劣な作戦を前に悪に屈しかけた少年達。
だが、絶体絶命のピンチは少年と少女の機転によって最大の好機となる。
結局、悪は正義の前に破れハッピーエンド。
少年と少女は新たな仲間を得て、更に強大な悪に立ち向かう。
あと少し……ほんの少しでも運命がズレていればあるいは、こんなにも素晴らしい未来が待っていたはずだった。
だが、運命の神様はこんな幸せな台本はお気に召さなかったらしい。
無常にも事態は急転。
エピローグはプロローグへと変わる。
無事を感じ、安堵する少年と少女。
傍には新たに加わった頼もしい味方の存在。
場を支配した一瞬の緩み。
その空気を見逃さず現れたのは、気配を消していた少女と悪を滅ぼさんとする凶弾。
哀れ、勇敢な少年は捕らえた悪を襲う凶弾を見過ごすことはできなかった。
かくして少年は命の灯火を掻き消され、少女は喪失の痛みに打ちひしがれ、頼もしい味方は成す術を失っていた。
後に残ったのは、三つの人影のみ。
誰が言ったかこんな言葉がある。
天国から地獄。
今はまさにその言葉通りの状況だった。
なまじ幸せな展開を経てしまったばかりに、後に待っていた悲劇はその色をより濃く発している。
後悔、嫌悪、悲哀、憤怒、焦燥、混乱、動揺。
目には見えない様々な暗い感情が大気中に渦巻いている。
身をもって体感しているような重苦しい空気の中。
それぞれがそれぞれの理由で言葉を失い、ただ静寂が場を支配する。
時折静寂を乱すひゅう、と風の吹き抜ける音が聞こえてくる。
そうして、どれ程の時間が過ぎただろうか。
一分、二分、三分
時計の針は周囲に在る異質な空気など気にも留めずただ己を刻み続けている。
ただひたすら、己の職務を全うしている。
長針が二十程回った頃だろうか、影の一つがおもむろに立ち上がった。
「――――――――――!!!」
張り詰めた空気を引き裂くような怒声が別の人影に向けて放たれる。
しかし、受ける人影は欠片の反応も示さない。
予め予想していたのだろうか、それを気にせず人影は更に言葉を紡いでいく。
その表情から何を思っているのかは判別しがたい。
「――――――――――」
一方的に放たれる言葉とただ受け止めるだけの人影。
それを見かねたもう一つの人影が恐る恐ると言った感じに言葉を制そうとする。
恐らく、一方的なその状況が耐え切れなかったのであろう。
抑えきれない悲しみをありありと見せながらも必死に最初の人影を押しとどめようとしている。
そこで初めて気付いたのであろう。
自分が熱くなっていたことを気付かされた人影は素直に言葉を止め、その場にはまた沈黙が張り詰める。
少しバツの悪そうな顔をしているのは、己の未熟を恥じてるが故かそれとも――
ふと
今まで一言も発さなかった人影が、黙って言葉を受け止めていた人影が微かに表情を変える。
幸か不幸か、残った人影はその変化に気付いてはいない。
もし、その言葉の使用が許されるのなら。
――もしこの時表情の変化に気付くことができていたのなら
運命は大幅に変わっていたであろう。
だが、運命の神様はまたしてもこの台本がお気に召さなかったらしい。
二つの人影は、気付くことができなかった。
沈黙を保っていた人影の僅かな変化を。
そこに浮かんでいたドス黒い絶望を。
+ + +
気まずい。
重苦しい空気を全身にひしひしと感じながら朝倉はそんな事を思う。
まるで沈黙が重さを持ったかのように、全身へかかる負担。
整った美貌を微かに歪め音を殺して嘆息しながら内心で呟く。
可能ならばすぐにでもヴィヴィオを連れてこの場から離れたい所だったが……流石にそうするわけにはいかないだろう。
たった今起こった出来事を前にしてそんな事をするほど朝倉は冷徹ではなかった。
まるで絵に描いたような悲劇だと思う。
失ったものは大きく、得たものは全身を覆う絶望と沈黙。
はぁ、と殺しきれない音が僅かに漏れ出る音と共に朝倉は憂いを深める。
どうやら思った以上に面倒な状況らしい。
窓の外からアスカに向けて発砲した相手――アスカは小砂と呼んでいたか
ともかくその小砂が何の目的で発砲してきたかはわからない。
アスカの口ぶりからして二人は知り合いらしいのだが、とても友好関係にあるとは思えなかった。
この舞台のどこかで出会い衝突し追ってきたのか、はたまた二人は仲間で私達を殺すつもりだったが土壇場で小砂が裏切ったのか。
真相はわからないが、大事なのは小砂が躊躇なく人を撃てる存在であるということ。
そして不利となったら逃げ出せるほど機転が効き場慣れしていること。
厄介だと思う。
同時に僥倖だとも思う。
小砂が無差別に殺して回るような相手だったら今頃朝倉達は全滅していた。
状況を考えてみれば、射線上にいたのはアスカのみ。
狙いはアスカのみで、本来なら話し合いのできる相手だったのかもしれない。
それならば仲間、とまではいかずとも話し合い程度ならできるのではないか?
我ながら穴の多い考えだと自嘲しながらも、朝倉はそう考え次に小砂とあった場合は接触してみようと思う。
小砂がどんな思想を持って動き回っているのかはわからない。
だが、少なくともであった瞬間発砲してくるような危険人物ではないだろう。
それならば、接触の価値はある。
アスカとの関係、仲間の有無、首輪や主催者達に関わる情報、それ以外にも情報を得られる可能性はある。
結局朝倉が下した判断はグレー。
そしてもう一人。
アスカ
小砂と比べて、此方はかなり厄介な相手だった。
まず話が通じない。
冷静に自分の世界に浸り、妄想の世界を現実と重ね、他人の言葉を理解しようとしない。
故に交渉の余地がない。
どれだけ正論を述べようと、理屈で押さえ込もうとしても、それはあくまで同じ考え方ができるもの同士だからこそ有効だったのだ。
普通の人間とは全く異なる考え方をする相手には、そんなもの全く通用しない。
朝倉はその事に早く気付くべきだった。
まず土台からしておかしいのだ。
普通の人間である、ゲンキ君と妹ちゃん。
この二人を化け物だと言い、人工知能を無線と勘違いし、化け物が人間に化けるなど根拠もなく言い始めたり。
とにかく支離滅裂だ。
この危険人物をゲンキ君と妹ちゃんの機転でなんとか捕らえることができた。
……そこで話が終わっていればどれ程助かっただろうか。
(小砂のせいで結局逃がしちゃったのよね……あーあ、困ったなぁ)
朝倉は眉根を寄せて眉間に皺を作りながら疲弊した表情を浮かべる。
そう、結局アスカには逃げられてしまった。
小砂だけならまだしも、アスカにまで。
悔しそうに歯噛みしながらアスカは思案する。
逃がしてしまったものは仕方がない、問題はこれからどうするかだ。
アスカをこのまま放っておけば様々な人に危害が及ぶ可能性がある。
その中には、有益な情報を持ってる人物や、主催者に反抗する意思を持った人がいる可能性がある。
それらの人物を失ってしまうのはなるべくなら避けたい。
なら、どうするか。
今ならまだ、追いかければ殺すことができるかもしれない。
此方にはデバイスがあるため居場所は特定できるし、何よりアスカは手負いだ。
クロスミラージュの非殺傷設定を解除し、離れた位置から狙撃すれば楽に始末することができる。
これからのことも考えれば危険の芽は摘めるうちに摘んでいた方がいい。
当然朝倉はそう考えた……のだが、中々実行に移すことを決断できずにいた。
その理由、それはヴィヴィオとキョンの妹の存在だった。
もしアスカを追いかけるとすれば必然的にこの二人をここに放置することになる。
それはあまりにも危険だと朝倉は思う。
特にヴィヴィオは今回を含め二度も危険人物に接触している。
三度目が起こる可能性は、決して低くないだろう。
ならばアスカを追うのにこの二人を連れて行くしかない。
だが、それはそれでリスクを伴う選択だ。
朝倉自身力を抑えられているこの状況で、二人の足手纏いを連れて歩くのは自殺行為に等しい。
せめてゼロスかキン肉マンのどちらかが残っていれば、と考えるがすぐに頭を振って頭から打ち消そうとする。
ないものねだりをしていても仕方がない、今必要なのはこれからどうするか、だ。
ふと、そこでもう一つアスカを追うのに否定的な理由が見つかる。
(妹ちゃんがこの状況じゃ、連れて行くにも追いかけるにも難しいのよね……)
そう、キョンの妹の状態が目に見えて酷かった。
眼前で起こった出来事が、幼い彼女に許容できる範囲を超えていた。
言葉も無く、ただ青ざめた顔を上げて、ぽかりと口を開いたまま忘我の只中にある。
無理もない、目の前で大切な存在を失ったのだ。
その悲しみの全てを理解することはできないが、伝わってくるものはある。
そして、キョンの妹には劣るとはいえヴィヴィオの方も悲しみがありありと見て取れる状況だった。
ヴィヴィオが目の前で人を失うのは二度目だ。
一度目は涼宮ハルヒを喪失した時。
その時はどんな方法で立ち直ったのかはわからないが、気丈にも自我を失わず耐えたであろうことが朝倉の脳裏をよぎる。
そして二度目。
一度経験したこととはいえ、やはり慣れるようなモノではないらしい。
抱き締めたくなるような愛くるしい表情を今は沈痛な面持ちでくしゃくしゃに歪めて、美しい澄んだオッドアイの瞳からは水晶のような大粒の涙が幾筋も零れ落ちている。
ともすれば吹き飛んでしまいそうな小柄な体躯をさらに丸めて、儚げな、今にも壊れそうな雰囲気を纏いながら悲壮感を背負っている。
どう考えても、この状況からアスカを追うという選択肢を産み出すことが朝倉にはできなかった。
とは言え、いつまでもこうしているわけにはいかない。
アスカ達に逃げられてからどれ程の時間が経ったかはわからないが、少なくとも十分弱は経っているだろう。
こうしている間にもアスカのような危険人物が此処に近付いてきているかもしれない。
幸い此処は学校、隠れる場所はいくらでもある。
できることならどこか人目につきにくい教室へ場所を移し、ゆっくりと情報を交換したいところだ。
チラ、と二人の少女に視線を向けてみる。
当然の如く反応はなく、相変わらず沈痛な面持ちでそれぞれの心の整理をつけている。
仕方ない、朝倉にも当然それはわかっている。
だが、目の前で人を失って悲しいから、このままこうして悲しみにくれている。
そんなことが、正しいわけがない。
(でも、どうしようかしら……話を聞けるような状況じゃないだろうし……うーん)
どうすればいいのだろうか。
基本的に万能な朝倉だが、年齢故か性格故か、この状況を打破する言葉が思いつかなかった。
そうして暫し迷う素振りを見せる。
やがて、ゆっくりと開かれる唇。
そこから紡がれる言葉は、果たして――
+ + +
また……また、守れなかった。
今、ヴィヴィオの胸中を支配するのは後悔と悲しみの混じったそんな言葉だった。
彼女の目の前で人が死んでいくのは今回で二度目だ。
一度目の時。
自分を守ってくれていた人が、自分の目の前で死んでいった。
その時も、ヴィヴィオの心は大きく抉り取られていた。
不安、悲しみ、後悔、憐憫、怒り。
様々な感情、真っ黒な感情に胸を支配され人目も憚らず、泣いた。
だが、その時はモッチーが、フェイトが、ハルヒが、励ましてくれた。
崩れ落ちそうになる心を奮い立たせてくれた。
ヴィヴィオに、勇気をくれた。
だからヴィヴィオは立ち上がることができた。
頑張ろうと、負けないと、守りたいと、心に刻むことができた。
しかし
現実は非情にもヴィヴィオの心を傷つけようとする。
また、目の前で失ってしまった。
幼いヴィヴィオの心には、この喪失の痛みを和らげる方法はわからない。
それだけではない。
失った痛みに加えて、目の前で呆然としている女の子の存在。
自分と同じ……いや、自分以上に深い悲しみに包まれているであろう女の子の存在が、ヴィヴィオの心をきつく締め付けていた。
目の前の女の子の目には、もう涙はない。
そのことが逆にヴィヴィオは気になっていた。
もしかしたら自分達の前だから泣けないんじゃないのか、二人きりにしてあげた方がいいんじゃないのか。
そう考えてみるも、体が言うことを聞いてくれない。
せめて、話しかけて慰めようと思ってみるも、なんと声をかければ上手く慰められるのかわからない。
助けを求めるように隣に立つ朝倉へ視線を送るが、どうやら考え事をしているらしく気付いてくれそうもない。
(どうすればいいんだろう……ハルヒお姉ちゃん……)
心の中でそっと呼びかけてみる。
当然のように、答えはない。
わかりきっていたことだが、それでも悲しかった。
そうして、声をかけることもこの場を離れることもできず、俯いたまま時は流れる。
(やっぱり、涼子お姉ちゃんに話した方が――え?)
このままウジウジしていてもしょうがない。
意を決したようにヴィヴィオが顔を上げ、くしくしと涙を拭っていると、隣にいたはずの朝倉が妹さんの所に向かっている。
どうするんだろう?
ヴィヴィオの頭の中を疑問符が跳ね回り、不思議そうにこてんと首を傾げるが、朝倉を信じて状況を見守る。
きっと同じ気持ちだったんだと思う。
悲しんでる妹さんを見かねて、慰めにいったんだ。
そんな事を思えば、自然とヴィヴィオの表情も柔らかくなる。
(うん、やっぱり涼子お姉ちゃんはやさし――)
「いつまでウジウジしてる気かしら? ……立ちなさい!!!」
一秒で、ヴィヴィオは認識を改める事になる。
朝倉が選んだのは、慰めではなく叱咤。
弱さではなく強さだった。
腕を組み、眉をあげ、全身から威圧感を発しながら呆然としている女の子を見下ろしている。
だが、身じろぎ一つせず全く反応を見せようとはしない。
逆効果だ、とヴィヴィオは思う。
確かに慰めよりも叱咤の方がいい時もあるのかもしれない。
でも、妹さんはまだ小さい普通の女の子なんだ、これじゃ怯えちゃうだけ。
幼いヴィヴィオの頭でもそれはなんとなくわかった。
(でも、どうしよう……ううん、と、止めなくちゃ!)
「ん、と、涼子お姉ちゃん……そんなに強く言ったら、ダメ……
妹さんが、怯えちゃうよ……ね?」
とてとてと小走りで二人へ近付くと、朝倉の服の裾をキュッと握り、恐る恐るといった感じで声をかける。
大丈夫、わかってくれる。
不安に揺れる心にそう言い聞かせ、小さな胸を張って震える体を必死に奮い立たせて朝倉を見る。
そんな健気な想いが通じたのか、朝倉が少し困ったような顔をしてヴィヴィオの頭を撫でてくる。
良かった、素直にそう思いながらも問題は解決したわけではない。
このままずっとここにいるわけにはいかないのだ。
(うぅ……どうしよう)
+ + +
ゲンキ君……どうして目を開けてくれないの?
それじゃ、ちゃんとお話できないよ?
ほら、目を開けてよ……涼子さんもヴィヴィオちゃんも心配してるんだから!
起きて、起きてってば!
もー……ゲンキ君って、意外とお寝坊さんなんだね♪
あ、やっぱ意外じゃないかも……なんかゲンキ君って不真面目そうだし
駄目だよ? ちゃんとしっかりしないと!
私は、しっかりものだもん
そうだ! 無事、皆でおうちに帰れたら、私が毎日起こしてあげる!
これなら寝坊する心配もないでしょ?
ふふっ、……あっ、ゲンキ君口から血が出てるよ?
さっきので切っちゃったのかなぁ……
痛い?
痛いに決まってるよね……
うーん……そうだ!
えへへー、ぺロっ
…………………………………
ゲンキ君の味ー(はぁと)……なんちゃって!
ゲンキ君
……なんで、返事してくれないの?
寂しいよ……っ
目を開けてよ
守ってくれるって言ったじゃんっ
そんなんじゃ、守れないよぉ……
……ゲンキ君……ゲンキ君、ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君、ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君、ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君
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ゲンキ君……返事、してよぉ
+ + +
本当は、わかってるんだ
ゲンキ君は、もういないってことくらい
信じたくなかった
でも、信じなくちゃいけない
……ねぇ
もし私があの時外の人に気付いていたら、撃たれたのに気付いていたら
ゲンキ君は……ゲンキ君は、――なないですんだのかな? また笑ってくれたのかな?
……私、わかってるんだ
外から撃たれた銃弾も、この水着の力さえ使えばきっと止められたって事
ううん……きっと、なんて曖昧な言葉じゃなくて
絶対に、止められたって事
さっきみたいにすれば
一度銃弾を防いでくれたあの盾を、また使えば
ゲンキ君を守る事が出来たんだよ
なのにどうして?
力はあったのに、どうして?
どうして、私はゲンキ君を守れなかったの?
どうして、外の人に気付くことが出来なかったの?
安心したから、外にいて見えなかったから、何回も連続で襲われるなんて思わなかったから……
言い訳が私の頭の中で軽快に踊り始める
でもね
思い浮かぶどんな言葉も、ゲンキ君を返してくれない
気付けなかった私の事を、赦してはくれないんだよ
考えれば考えるほど
言い訳を作れば作るほど
ゲンキ君の――が、実感させられる
私の失敗、取り返しの付かない失敗を実感させられる
だから、ね?
私もゲンキ君の所に行くよ
一人になんかさせない
私が、傍にいるから
でも……まだ遣り残したことがあるんだ
あの二人……ゲンキ君を殺したあの二人に、罪を償わせないと
ゲンキ君の仇は討つから
うーん……ゲンキ君、怒るかな?
やっぱ、怒るよね……
どんな悪い人でも、死んでいいとは思わない
って言ってたもんね
でもね、私にはやっぱり理解できないよ
いくらゲンキ君の言葉でも、この気持ちは抑えられない
あの二人が憎いって気持ちは抑えられない
だから、ごめん
また会ったら……いっぱいいっぱい怒っていいから
あ……でも、無視とかしちゃ嫌だよ?
……はぁ、あ、涼子さん達が何か言ってる……
じゃあね、ゲンキ君
大好き、また……逢おうね
+ + +
うぅん、と愛らしい容姿いっぱいに困った色を浮かべ。
幼子特有の高い唸り声を漏らしつつ、本人は全く気付いていないが朝倉の着ている服の裾をキュッと力強く握り締めながら。
時折考えが口から零れ出ているのにも気付かない様子で精一杯悩んでいる。
あーでもないこーでもないと迷いながら考えに没頭している少女――名をヴィヴィオ、と言う。
何を考えているのだろうかわからないが――可愛かった。
それはもう可愛かった。
恐らくこんな状況でなかったのであれば、自分はすぐにでも抱き締めていただろう。
そんな事を考え、よしよしと頭を撫でるに留めながら朝倉はフッと表情を微かに和らげる。
ヴィヴィオを見ているだけで、先ほどの失敗に対する反省と後悔、自己嫌悪は大分マシになってきていた。
ついさっき、時間にしてみればほんの二、三分前のこと。
朝倉は、塞ぎ込んだ少女を慰めようとコンタクトを取ろうとしていた。
いくつかの選択肢から最終的に選択したのは、叱咤。
下手な慰めは逆効果、反発心でも構わないから気持ちを煽ろう、と考えて怒鳴ってみたはいいが……
(やっぱ向いてないのかなぁ……ヴィヴィオちゃんに任せた方がよかったかも)
結果は、失敗。
あまつさえ、幼いヴィヴィオに諌められる結果になってしまった。
年齢上はヴィヴィオの方が年上、とは言えあまり朝倉にとって好ましいものではない。
何と言うか、朝倉にだってプライドはあった。
だが、やはる人の心の機微を図るのは朝倉にはまだ難しいことだともわかっている。
対してヴィヴィオは、そっちの方向に強い。
人の気持ちを考え、行動することのできる優しい子だ。
こうして特長だけを挙げていけばヴィヴィオの方が慰めに向いてると思うのだが――
(でも、ヴィヴィオちゃんにお願いするのもどうかと思うのよね……)
結局、答えが産まれることはなかった。
リアルとプライド、相反する言葉を抱えている以上それも当然と言えよう。
そのことに気付いているのかいないのか、朝倉が何度目かになる思考に没頭しかけたその時。
今まで全く反応を見せなかった少女が大地から重い腰を上げる。
ふと傍を見れば、ヴィヴィオが驚いたような、嬉しいような、複雑な表情を浮かべている。
恐らく後者の意味合いが強いのだろう。
その表情に浮かんでいたのは、困惑を塗りつぶすような喜色だった。
まずは一安心。
思っていたよりも少女は強かったらしい――兄とは違って。
……とにかく、今は立ち直ってくれたことが最上の一手だと思う。
先ほどの失敗を生かし、なるべく刺激しないように柔らかな微笑を浮かべながら朝倉は足を踏み出そうとする。
だが、その動きは強制的に止められる事となる。
「ごめんなさい、私……ゲンキ君の仇を討ちます」
他ならぬ、少女の手によって。
思考が鈍い。
目の前の少女は今なんと言った?
聞こえてはいる、意味もわかる、ただ理解ができなかった。
先ほど踏み出しかけた足はしっかりと大地に根を張り動く気配を見せない。
同じく脳内も動く気配を見せない。
『ゲロー!!? 何を言ってるでありますか!!?』
『クークック……こいつぁヤベェな』
ナビ達が何か言っているのだが、空しく耳をすり抜けていく。
混乱。
初めて感じる感覚に朝倉の思考能力も追いついていなかった。
こんな時にどうすればいいのか、滅茶苦茶な脳内を必死に漁る。
そこで思い出したのが深呼吸。
大きく息を吸って、吐く。
吸っては吐く、吸っては吐く。
それを何度か繰り返すが一向に混乱が治まる気配はない。
『妹殿! まずは落ち着くであります!!!』
『そうですぅ、そんなことしたって何にもならないですよぉ』
『貴様……そんなことしてアイツが喜ぶとでも思っているのか!?』
『くーくっくっく、大人しく泣いといた方がいいと思うぜぇ』
必死に説得を続けるナビ達。
だが、少女は考えを変えるつもりはないのか全くの無反応を貫いている。
ふと、何とはなしにヴィヴィオの方に視線を移す。
朝倉の瞳に移ったのは、今にも泣きそうなヴィヴィオの表情だった。
透き通るような白い肌は今、微かに青ざめて見える。
瞳からは抑えようもない雫が零れ落ち、頬を濡らす。
朝倉の服を握っていた手はダラリと垂れ下がり、全身から漂う雰囲気は捨て猫そのものだった。
何を思っているのだろうか……わかるはずはないが、朝倉には何故だかわかるような気がしていた。
そんなヴィヴィオの様子を見て、朝倉は自分の全身に冷たいものが通うのを感じる。
混乱は既に収まった。
今の朝倉を支配しているのは、失望と怒り。
冷めた視線を少女へと向ける。
(やっぱ兄妹は兄妹かぁ……仕方ないのかも、ね)
朝倉には許せなかった。
確かに、大事な人を失うの辛い。
朝倉にそんな経験はないが、与えられる情報の中には『胸を引き裂くような痛み』などとあった。
目の前の少女も、辛かったのだろう、悲しかったのだろう。
それは、わかる。
だが、だからと言って復讐に走る安易な考えが。
そして、それによってもたらされたヴィヴィオの悲しみが、朝倉の心に火を灯していた。
(大切な人が殺されたから、仇を討ちます? ……どれだけ愚かなのかしらね。その言葉が、行動が、一番死者を冒涜してるってこと気付いてないのかしら)
目の前の少女の空虚な瞳に自分の姿が映っている。
自分の瞳にも少女の姿は映っていることだろう。
朝倉は、それでも反応しない少女に侮蔑するような瞳を向けながら、ゆっくりと口を開く。
「仇を討つって言ったわよね? 力のない貴方が……具体的に、どう仇を討つのかしら?」
「……力なら、あります。この水「まさかその水着の力ががあれば、なんてこと言わないわよね?」
少女の言葉を遮るように、朝倉が口を挟む。
その口調はあくまで冷たく、その瞳は、どこまでも冷たい。
「どれだけ高性能でも、ナビが付いてても、使用するのは貴方……幼稚園児が銃を持っただけで力とは言わない
武器って言うのは、それを使いこなせる人が持って始めて力に変わるの。わかる?」
「それは……でもっ」
「わかってなかったみたいね……。そんなことすらわからない貴方が仇を討つ? ふふ……冗談にもならないわ」
一言一言、決意をを抉るような言葉に少女は懸命に反論しようとする。
だが、朝倉はそれを許さない。
少女の決意を、想いを全て否定するかの如く言葉を紡いでいく。
「っ……」
「言っておくけど……あの小砂って奴とアスカは、力を持っているわ
武器を持って、明確な意思と殺意を絡ませて、容赦なく人を殺せる。そんな敵を相手に貴方が仇を討てるのかしらね。
それに……貴方に人を殺す覚悟はあるのかしら?」
「……覚悟?」
「そう、覚悟。まさか貴方、仇を討ってハイおしまい、だなんて思ってる? だとしたら、今すぐさっきの言葉を取り消した方がいいわよ」
「そんなことないっ!! 私にだって覚悟はあります!! 仇を討ったら、仇を討ったらちゃんとゲンキ君のところに行く。
行かなくちゃ行けないの! 私のせいでゲンキ君が死んじゃったから、だから……っ
二人を殺して、私もゲンキ君のところへ、行くっ!!!」
悲鳴のような言葉と共に浮かんだ僅かな陶酔の色。
それを見て、朝倉は気付いた。
結局、本質はそうだったのだ。
色々述べてみても、目の前の少女は理性と打算を持って恨みを晴らしたいだけ。
少年の死が納得できずに、その死を理由にして、仇討ちなんて綺麗な言葉で自己陶酔しているだけの存在だった。
だから、告げる。
情けも、容赦も、同情もなく、告げる。
「それって結局、彼の死を人殺しの理由にしてるだけじゃない。それに、何? ゲンキ君の所へ行く? それが覚悟?」
冷めた口調に怒りを込めて。
「甘ったれるな小娘」
吐き捨てるように言った。
「それの何が覚悟よ……ただの言い訳でしょうがっ! 人殺しってのはそんなに甘いものじゃない。
殺された人の思いを、意思を、覚悟を受け継いで……その人の命の重さを一生背負い続けなくちゃいけない。
それを貴方みたいな小娘ができる? できるわけないわよね。そんなの赤子にだってわかるわ」
一息で捲したてながら、心を抉らんと更に言葉を紡ぐ。
「それに……ゲンキ君のところに行く? ……はぁ? 貴方馬鹿なの?
彼はもう死んでる。だから、彼のところに行くなんて無理、絶対に不可能。どれだけ好きだろうと人なんて死んだらただのモノ……天国なんて存在しない。
貴方が彼のところに行こうだなんて妄想しながら死ぬのは勝手だけど――貴方は、一生独りぼっちになるだけ、よ」
理由を、全否定。
しかし、そこまで告げた朝倉は急に満面の笑みを浮かべる。
「でも、どうしても貴方が仇を討ちたいって言うのなら……それ相応の覚悟を見せて頂戴」
急にトーンの変わった朝倉に対して不安そうな声が聞こえる。
「覚悟? ……どうやって?」
「簡単よ、簡単。コレを使って、私を殺してみなさい。因みに、非殺傷設定は解除済みだから……安心して撃ってくれても構わないわ」
そう言って、クロスミラージュを放り投げる。
「え? ……涼子、お姉ちゃん?」
突然の言葉に、今まで事態に付いていけていなかったヴィヴィオが驚いたように口を挟む。
それは無理もないことなのかもしれない。
その言葉を告げられた少女もまた、驚きを隠せない様子だった。
『ちょ……ちょと待て!! なぜそうなる!!?』
『Ms.朝倉、何を言っているのですか?』
一瞬遅れでナビやデバイスも動揺しきった声で朝倉を止めようとする。
だが、それらの言葉を全て無視すると、目の前の少女だけを見て告げる。
「ほら……私を殺してみなさいよ」
クロスミラージュを持ちながら、今にも泣き出さんばかりに見える。
それを見たヴィヴィオは、少しだけ、安堵した。
とても撃てそうな雰囲気じゃない。
その姿は、幼子でもわかりそうな程狼狽していた。
だから、気付かなかった。
朝倉の方を向いて、声をかけようとしてしまった。
なんと声をかけようか、迷ってしまった。
撃てるわけがないと、思い込んでいたから。
そう、思いたかったから。
だから、気付けなかった。
ヴィヴィオが目を離し、迷っていたた数瞬のうちに、覚悟を決めた少女の体から震えが消えていたことに。
ザリ、と床を擦る音が聞こえてヴィヴィオは思わずそちらに視線を向ける。
音の正体は、震えていた筈の少女がしっかりと大地を踏みしめる音だった。
あれ? とヴィヴィオは不思議に思う。
ついさっきまで震えていた筈の少女に、どこか違和感を感じたから。
その少女の震えは、止まっていなかった筈。
その少女は、クロスミラージュを構えていなかった筈。
その少女の浮かべていた表情は、こんなにも悲しそうな、凄惨な笑みじゃなかった筈。
疑問が、ヴィヴィオの足を止めた。
同時。
「ごめん、朝倉さん……死んでください」
心からすまなそうな声が聞こえてくる。
ヴィヴィオは、続いて銃声と共に少女が走り去るのを見た。
一瞬遅れて聞こえてくる、トサリという軽い音。
振り向きたいけど振り向きたくない。
素直にヴィヴィオはそう思った。
だが、体は言うことを聞かず反射的に音のした方を見てしまう。
その瞳に飛び込んできたもの、それは――
「嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
――仰向けに倒れる、朝倉の姿だった。
【C-3 中学校・高校のグラウンド/一日目・夕方】
【キョンの妹@涼宮ハルヒの憂鬱】
【状態】顔に深い切り傷(鼻より上の位置を横一線に斬られている)、地球人専用専守防衛型強化服(起動中)、深い悲しみ
【持ち物】『人類補完計画』計画書、地球人専用専守防衛型強化服(起動中)@ケロロ軍曹、ディパック、基本セット一式
【思考】
0、ごめんなさい……
1、アスカと小砂を殺して自分も死ぬ
【備考】
※キョンはハルヒの死を知って混乱していたのではないか、と思っています。
※kskネット内の「掲示板」のシンジの書き込みのみまともに見ました。
ゼロス以外のドロロの一回目の書き込み、および二回目の書き込みについては断片的にしか見えていません。
※アスカと小砂(顔は未確認)が殺しあいに乗っていると認識。
【ヴィヴィオ@リリカルなのはStrikerS】
【状態】疲労(小)、ショックと深い悲しみ、茫然自失
【持ち物】バルディッシュ・アサルト(6/6)@リリカルなのはStrikerS、SOS団の腕章@涼宮ハルヒの憂鬱
【思考】
0、嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?
【備考】
※ヴィヴィオの力の詳細は、次回以降の書き手にお任せします。
※長門とタツヲは悪い人に操られていると思ってます。
※キョンはガイバーになったことで操られたと思っています。
※149話「そして私にできるコト」にて見た夢に影響を与えられている?
※アスカと小砂(顔は未確認)が殺しあいに乗っていると認識。
(まさか。本当に撃つとは思わなかったわ……)
ぼんやりと、朝倉は考える。
朝倉としては、撃つわけがないと思いつつも残しておいた保険が当たった形になる。
非殺傷設定を解除していたなんて実は全くの嘘だったのである。
(まぁ、解除する理由もないしね。てゆーか、それにしても……本当上手くいかないなぁ)
思考する口調には残念さが滲み出している。
朝倉の考えでは、あのままプレッシャーに負けた少女が崩れ落ちて、そこをフォローする。
所謂アメとムチ……いや、ムチとアメ作戦を狙っていたのだが、どうやらそう上手くはいかないらしい。
「嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
これは本当にヴィヴィオちゃんに頼ろうかしら……などと考えていた朝倉の耳に絶叫が聞こえる。
どうやら、ヴィヴィオも勘違いしているらしい。
(うーん……起きにくいわね……)
声の感じからしてヴィヴィオは泣いているらしい。
段々と近付いてくる足音も聞こえる。
このまま大声で泣かれ続けると、周りの参加者にまで聞こえるかもしれない。
それは困る、非常に困る。
(べ、別にヴィヴィオちゃんを泣かせちゃって困ってるとか、泣き顔は苦手だとかそんなわけじゃないんだからね……って誰に言い訳してんのかしら?)
顔に濡れた感触がある。
どうやら傍まで来て泣いているらしい。
(ど、ど、どうしようっ……えーっと、そ、そうだ! ここは明るくいけば誤魔化せるかもっ!?)
そんな考えの下、パチリと瞼を開いて満面の笑みと共に一言。
「なーんちゃって! びっくりした?」
【朝倉涼子@涼宮ハルヒの憂鬱】
【状態】健康、疲労(中) 、ダメージ(小)
【持ち物】ボウイナイフ、鬼娘専用変身銃@ケロロ軍曹、クロスミラージュ@リリカルなのはStrikerS
不明支給品0~1(武器では無い)、メイド服@涼宮ハルヒ、
ディパック(支給品一式)、新・夢成長促進銃@ケロロ軍曹
【思考】
0、びっくりした?
1、キョンを殺す
2、長門有希を止める
3、古泉、みくる、サツキを捜すため北の施設(中学校・図書館・小学校の順)を回る。
4、基本的に殺し合いに乗らない。
5、ゼロスとスグルの行方が気がかり。
6、小砂とは交渉したい
7、まともな服が欲しい。
8、できればゲーム脱出時、ハルヒの死体を回収したい。
9、ヴィヴィオの変化が気になる。
【備考】
※長門有希が暴走していると考えています。
※クロスミラージュを改変しました。元に戻せるかどうかは後の書き手さんにお任せします。
※制限に気づきました。
肉体への情報改変は、傷を塞ぐ程度が限界のようです。
自分もそれに含まれると予測しています。
※アスカと小砂(顔は未確認)が殺しあいに乗っていると認識。
※キョンの妹についての対処はまだ決めていません
※ゲンキの死体は、外傷がほとんど治され(体内の負傷はそのまま)、ディパック(基本セット一式)がついています。
※グラウンドのどこかに、S&WM10(リボルバー)(3/6)、KRR‐SP(被弾により故障)があります。
※中学校の玄関の一部が、消火器の粉で汚れ、近くには消火器が転がってます。
※デバイスなどの索敵能力やその精度に制限がかかっているようです。
個体差があるかもしれません。
*時系列順で読む
Back:[[It's a show time]] Next:[[学校を出よう!]]
*投下順で読む
Back:[[Girl who does lesson]] Next:[[学校を出よう!]]
|[[Scars of the War(終結)]]|キョンの妹|[[学校を出よう!]]|
|~|朝倉涼子|~|
|~|ヴィヴィオ|~|
----
*びっくりした? ◆4etfPW5xU6
影がかかり始めた空から降り注ぐ橙の光が薄暗い空間を少しずつ朱に染め上げていく。
時間の移りを感じさせる光の中にあって、それらを遮る人影が三つ。
それらの影は、身じろぎ一つせずただその場に存在していた。
誰一人言葉を発することはない。
発することは、できない。
誰もが、たった今この場で起こった出来事に頭を支配されていた。
悲劇。
一言で表すのならこれ程適切な言葉は無いだろう。
勇敢な少年と心優しい少女。
二人の前に現れた悪の存在。
悪を前に敗北しかけた少年達の前に現れた名も知らぬ、だが心強い味方。
卑劣な作戦を前に悪に屈しかけた少年達。
だが、絶体絶命のピンチは少年と少女の機転によって最大の好機となる。
結局、悪は正義の前に破れハッピーエンド。
少年と少女は新たな仲間を得て、更に強大な悪に立ち向かう。
あと少し……ほんの少しでも運命がズレていればあるいは、こんなにも素晴らしい未来が待っていたはずだった。
だが、運命の神様はこんな幸せな台本はお気に召さなかったらしい。
無常にも事態は急転。
エピローグはプロローグへと変わる。
無事を感じ、安堵する少年と少女。
傍には新たに加わった頼もしい味方の存在。
場を支配した一瞬の緩み。
その空気を見逃さず現れたのは、気配を消していた少女と悪を滅ぼさんとする凶弾。
哀れ、勇敢な少年は捕らえた悪を襲う凶弾を見過ごすことはできなかった。
かくして少年は命の灯火を掻き消され、少女は喪失の痛みに打ちひしがれ、頼もしい味方は成す術を失っていた。
後に残ったのは、三つの人影のみ。
誰が言ったかこんな言葉がある。
天国から地獄。
今はまさにその言葉通りの状況だった。
なまじ幸せな展開を経てしまったばかりに、後に待っていた悲劇はその色をより濃く発している。
後悔、嫌悪、悲哀、憤怒、焦燥、混乱、動揺。
目には見えない様々な暗い感情が大気中に渦巻いている。
身をもって体感しているような重苦しい空気の中。
それぞれがそれぞれの理由で言葉を失い、ただ静寂が場を支配する。
時折静寂を乱すひゅう、と風の吹き抜ける音が聞こえてくる。
そうして、どれ程の時間が過ぎただろうか。
一分、二分、三分
時計の針は周囲に在る異質な空気など気にも留めずただ己を刻み続けている。
ただひたすら、己の職務を全うしている。
長針が二十程回った頃だろうか、影の一つがおもむろに立ち上がった。
「――――――――――!!!」
張り詰めた空気を引き裂くような怒声が別の人影に向けて放たれる。
しかし、受ける人影は欠片の反応も示さない。
予め予想していたのだろうか、それを気にせず人影は更に言葉を紡いでいく。
その表情から何を思っているのかは判別しがたい。
「――――――――――」
一方的に放たれる言葉とただ受け止めるだけの人影。
それを見かねたもう一つの人影が恐る恐ると言った感じに言葉を制そうとする。
恐らく、一方的なその状況が耐え切れなかったのであろう。
抑えきれない悲しみをありありと見せながらも必死に最初の人影を押しとどめようとしている。
そこで初めて気付いたのであろう。
自分が熱くなっていたことを気付かされた人影は素直に言葉を止め、その場にはまた沈黙が張り詰める。
少しバツの悪そうな顔をしているのは、己の未熟を恥じてるが故かそれとも――
ふと
今まで一言も発さなかった人影が、黙って言葉を受け止めていた人影が微かに表情を変える。
幸か不幸か、残った人影はその変化に気付いてはいない。
もし、その言葉の使用が許されるのなら。
――もしこの時表情の変化に気付くことができていたのなら
運命は大幅に変わっていたであろう。
だが、運命の神様はまたしてもこの台本がお気に召さなかったらしい。
二つの人影は、気付くことができなかった。
沈黙を保っていた人影の僅かな変化を。
そこに浮かんでいたドス黒い絶望を。
+ + +
気まずい。
重苦しい空気を全身にひしひしと感じながら朝倉はそんな事を思う。
まるで沈黙が重さを持ったかのように、全身へかかる負担。
整った美貌を微かに歪め音を殺して嘆息しながら内心で呟く。
可能ならばすぐにでもヴィヴィオを連れてこの場から離れたい所だったが……流石にそうするわけにはいかないだろう。
たった今起こった出来事を前にしてそんな事をするほど朝倉は冷徹ではなかった。
まるで絵に描いたような悲劇だと思う。
失ったものは大きく、得たものは全身を覆う絶望と沈黙。
はぁ、と殺しきれない音が僅かに漏れ出る音と共に朝倉は憂いを深める。
どうやら思った以上に面倒な状況らしい。
窓の外からアスカに向けて発砲した相手――アスカは小砂と呼んでいたか
ともかくその小砂が何の目的で発砲してきたかはわからない。
アスカの口ぶりからして二人は知り合いらしいのだが、とても友好関係にあるとは思えなかった。
この舞台のどこかで出会い衝突し追ってきたのか、はたまた二人は仲間で私達を殺すつもりだったが土壇場で小砂が裏切ったのか。
真相はわからないが、大事なのは小砂が躊躇なく人を撃てる存在であるということ。
そして不利となったら逃げ出せるほど機転が効き場慣れしていること。
厄介だと思う。
同時に僥倖だとも思う。
小砂が無差別に殺して回るような相手だったら今頃朝倉達は全滅していた。
状況を考えてみれば、射線上にいたのはアスカのみ。
狙いはアスカのみで、本来なら話し合いのできる相手だったのかもしれない。
それならば仲間、とまではいかずとも話し合い程度ならできるのではないか?
我ながら穴の多い考えだと自嘲しながらも、朝倉はそう考え次に小砂とあった場合は接触してみようと思う。
小砂がどんな思想を持って動き回っているのかはわからない。
だが、少なくともであった瞬間発砲してくるような危険人物ではないだろう。
それならば、接触の価値はある。
アスカとの関係、仲間の有無、首輪や主催者達に関わる情報、それ以外にも情報を得られる可能性はある。
結局朝倉が下した判断はグレー。
そしてもう一人。
アスカ
小砂と比べて、此方はかなり厄介な相手だった。
まず話が通じない。
冷静に自分の世界に浸り、妄想の世界を現実と重ね、他人の言葉を理解しようとしない。
故に交渉の余地がない。
どれだけ正論を述べようと、理屈で押さえ込もうとしても、それはあくまで同じ考え方ができるもの同士だからこそ有効だったのだ。
普通の人間とは全く異なる考え方をする相手には、そんなもの全く通用しない。
朝倉はその事に早く気付くべきだった。
まず土台からしておかしいのだ。
普通の人間である、ゲンキ君と妹ちゃん。
この二人を化け物だと言い、人工知能を無線と勘違いし、化け物が人間に化けるなど根拠もなく言い始めたり。
とにかく支離滅裂だ。
この危険人物をゲンキ君と妹ちゃんの機転でなんとか捕らえることができた。
……そこで話が終わっていればどれ程助かっただろうか。
(小砂のせいで結局逃がしちゃったのよね……あーあ、困ったなぁ)
朝倉は眉根を寄せて眉間に皺を作りながら疲弊した表情を浮かべる。
そう、結局アスカには逃げられてしまった。
小砂だけならまだしも、アスカにまで。
悔しそうに歯噛みしながら朝倉は思案する。
逃がしてしまったものは仕方がない、問題はこれからどうするかだ。
アスカをこのまま放っておけば様々な人に危害が及ぶ可能性がある。
その中には、有益な情報を持ってる人物や、主催者に反抗する意思を持った人がいる可能性がある。
それらの人物を失ってしまうのはなるべくなら避けたい。
なら、どうするか。
今ならまだ、追いかければ殺すことができるかもしれない。
此方にはデバイスがあるため居場所は特定できるし、何よりアスカは手負いだ。
クロスミラージュの非殺傷設定を解除し、離れた位置から狙撃すれば楽に始末することができる。
これからのことも考えれば危険の芽は摘めるうちに摘んでいた方がいい。
当然朝倉はそう考えた……のだが、中々実行に移すことを決断できずにいた。
その理由、それはヴィヴィオとキョンの妹の存在だった。
もしアスカを追いかけるとすれば必然的にこの二人をここに放置することになる。
それはあまりにも危険だと朝倉は思う。
特にヴィヴィオは今回を含め二度も危険人物に接触している。
三度目が起こる可能性は、決して低くないだろう。
ならばアスカを追うのにこの二人を連れて行くしかない。
だが、それはそれでリスクを伴う選択だ。
朝倉自身力を抑えられているこの状況で、二人の足手纏いを連れて歩くのは自殺行為に等しい。
せめてゼロスかキン肉マンのどちらかが残っていれば、と考えるがすぐに頭を振って頭から打ち消そうとする。
ないものねだりをしていても仕方がない、今必要なのはこれからどうするか、だ。
ふと、そこでもう一つアスカを追うのに否定的な理由が見つかる。
(妹ちゃんがこの状況じゃ、連れて行くにも追いかけるにも難しいのよね……)
そう、キョンの妹の状態が目に見えて酷かった。
眼前で起こった出来事が、幼い彼女に許容できる範囲を超えていた。
言葉も無く、ただ青ざめた顔を上げて、ぽかりと口を開いたまま忘我の只中にある。
無理もない、目の前で大切な存在を失ったのだ。
その悲しみの全てを理解することはできないが、伝わってくるものはある。
そして、キョンの妹には劣るとはいえヴィヴィオの方も悲しみがありありと見て取れる状況だった。
ヴィヴィオが目の前で人を失うのは二度目だ。
一度目は涼宮ハルヒを喪失した時。
その時はどんな方法で立ち直ったのかはわからないが、気丈にも自我を失わず耐えたであろうことが朝倉の脳裏をよぎる。
そして二度目。
一度経験したこととはいえ、やはり慣れるようなモノではないらしい。
抱き締めたくなるような愛くるしい表情を今は沈痛な面持ちでくしゃくしゃに歪めて、美しい澄んだオッドアイの瞳からは水晶のような大粒の涙が幾筋も零れ落ちている。
ともすれば吹き飛んでしまいそうな小柄な体躯をさらに丸めて、儚げな、今にも壊れそうな雰囲気を纏いながら悲壮感を背負っている。
どう考えても、この状況からアスカを追うという選択肢を産み出すことが朝倉にはできなかった。
とは言え、いつまでもこうしているわけにはいかない。
アスカ達に逃げられてからどれ程の時間が経ったかはわからないが、少なくとも十分弱は経っているだろう。
こうしている間にもアスカのような危険人物が此処に近付いてきているかもしれない。
幸い此処は学校、隠れる場所はいくらでもある。
できることならどこか人目につきにくい教室へ場所を移し、ゆっくりと情報を交換したいところだ。
チラ、と二人の少女に視線を向けてみる。
当然の如く反応はなく、相変わらず沈痛な面持ちでそれぞれの心の整理をつけている。
仕方ない、朝倉にも当然それはわかっている。
だが、目の前で人を失って悲しいから、このままこうして悲しみにくれている。
そんなことが、正しいわけがない。
(でも、どうしようかしら……話を聞けるような状況じゃないだろうし……うーん)
どうすればいいのだろうか。
基本的に万能な朝倉だが、年齢故か性格故か、この状況を打破する言葉が思いつかなかった。
そうして暫し迷う素振りを見せる。
やがて、ゆっくりと開かれる唇。
そこから紡がれる言葉は、果たして――
+ + +
また……また、守れなかった。
今、ヴィヴィオの胸中を支配するのは後悔と悲しみの混じったそんな言葉だった。
彼女の目の前で人が死んでいくのは今回で二度目だ。
一度目の時。
自分を守ってくれていた人が、自分の目の前で死んでいった。
その時も、ヴィヴィオの心は大きく抉り取られていた。
不安、悲しみ、後悔、憐憫、怒り。
様々な感情、真っ黒な感情に胸を支配され人目も憚らず、泣いた。
だが、その時はモッチーが、フェイトが、ハルヒが、励ましてくれた。
崩れ落ちそうになる心を奮い立たせてくれた。
ヴィヴィオに、勇気をくれた。
だからヴィヴィオは立ち上がることができた。
頑張ろうと、負けないと、守りたいと、心に刻むことができた。
しかし
現実は非情にもヴィヴィオの心を傷つけようとする。
また、目の前で失ってしまった。
幼いヴィヴィオの心には、この喪失の痛みを和らげる方法はわからない。
それだけではない。
失った痛みに加えて、目の前で呆然としている女の子の存在。
自分と同じ……いや、自分以上に深い悲しみに包まれているであろう女の子の存在が、ヴィヴィオの心をきつく締め付けていた。
目の前の女の子の目には、もう涙はない。
そのことが逆にヴィヴィオは気になっていた。
もしかしたら自分達の前だから泣けないんじゃないのか、二人きりにしてあげた方がいいんじゃないのか。
そう考えてみるも、体が言うことを聞いてくれない。
せめて、話しかけて慰めようと思ってみるも、なんと声をかければ上手く慰められるのかわからない。
助けを求めるように隣に立つ朝倉へ視線を送るが、どうやら考え事をしているらしく気付いてくれそうもない。
(どうすればいいんだろう……ハルヒお姉ちゃん……)
心の中でそっと呼びかけてみる。
当然のように、答えはない。
わかりきっていたことだが、それでも悲しかった。
そうして、声をかけることもこの場を離れることもできず、俯いたまま時は流れる。
(やっぱり、涼子お姉ちゃんに話した方が――え?)
このままウジウジしていてもしょうがない。
意を決したようにヴィヴィオが顔を上げ、くしくしと涙を拭っていると、隣にいたはずの朝倉が妹さんの所に向かっている。
どうするんだろう?
ヴィヴィオの頭の中を疑問符が跳ね回り、不思議そうにこてんと首を傾げるが、朝倉を信じて状況を見守る。
きっと同じ気持ちだったんだと思う。
悲しんでる妹さんを見かねて、慰めにいったんだ。
そんな事を思えば、自然とヴィヴィオの表情も柔らかくなる。
(うん、やっぱり涼子お姉ちゃんはやさし――)
「いつまでウジウジしてる気かしら? ……立ちなさい!!!」
一秒で、ヴィヴィオは認識を改める事になる。
朝倉が選んだのは、慰めではなく叱咤。
弱さではなく強さだった。
腕を組み、眉をあげ、全身から威圧感を発しながら呆然としている女の子を見下ろしている。
だが、身じろぎ一つせず全く反応を見せようとはしない。
逆効果だ、とヴィヴィオは思う。
確かに慰めよりも叱咤の方がいい時もあるのかもしれない。
でも、妹さんはまだ小さい普通の女の子なんだ、これじゃ怯えちゃうだけ。
幼いヴィヴィオの頭でもそれはなんとなくわかった。
(でも、どうしよう……ううん、と、止めなくちゃ!)
「ん、と、涼子お姉ちゃん……そんなに強く言ったら、ダメ……
妹さんが、怯えちゃうよ……ね?」
とてとてと小走りで二人へ近付くと、朝倉の服の裾をキュッと握り、恐る恐るといった感じで声をかける。
大丈夫、わかってくれる。
不安に揺れる心にそう言い聞かせ、小さな胸を張って震える体を必死に奮い立たせて朝倉を見る。
そんな健気な想いが通じたのか、朝倉が少し困ったような顔をしてヴィヴィオの頭を撫でてくる。
良かった、素直にそう思いながらも問題は解決したわけではない。
このままずっとここにいるわけにはいかないのだ。
(うぅ……どうしよう)
+ + +
ゲンキ君……どうして目を開けてくれないの?
それじゃ、ちゃんとお話できないよ?
ほら、目を開けてよ……涼子さんもヴィヴィオちゃんも心配してるんだから!
起きて、起きてってば!
もー……ゲンキ君って、意外とお寝坊さんなんだね♪
あ、やっぱ意外じゃないかも……なんかゲンキ君って不真面目そうだし
駄目だよ? ちゃんとしっかりしないと!
私は、しっかりものだもん
そうだ! 無事、皆でおうちに帰れたら、私が毎日起こしてあげる!
これなら寝坊する心配もないでしょ?
ふふっ、……あっ、ゲンキ君口から血が出てるよ?
さっきので切っちゃったのかなぁ……
痛い?
痛いに決まってるよね……
うーん……そうだ!
えへへー、ぺロっ
…………………………………
ゲンキ君の味ー(はぁと)……なんちゃって!
ゲンキ君
……なんで、返事してくれないの?
寂しいよ……っ
目を開けてよ
守ってくれるって言ったじゃんっ
そんなんじゃ、守れないよぉ……
……ゲンキ君……ゲンキ君、ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君、ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君、ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君
ゲンキ君、ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君、ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君、ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君
ゲンキ君、ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君、ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君、ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君
ゲンキ君、ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君、ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君、ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君
ゲンキ君、ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君、ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君、ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君
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ゲンキ君、ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君、ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君、ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君
ゲンキ君、ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君、ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君、ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君ゲンキ君
ゲンキ君……返事、してよぉ
+ + +
本当は、わかってるんだ
ゲンキ君は、もういないってことくらい
信じたくなかった
でも、信じなくちゃいけない
……ねぇ
もし私があの時外の人に気付いていたら、撃たれたのに気付いていたら
ゲンキ君は……ゲンキ君は、――なないですんだのかな? また笑ってくれたのかな?
……私、わかってるんだ
外から撃たれた銃弾も、この水着の力さえ使えばきっと止められたって事
ううん……きっと、なんて曖昧な言葉じゃなくて
絶対に、止められたって事
さっきみたいにすれば
一度銃弾を防いでくれたあの盾を、また使えば
ゲンキ君を守る事が出来たんだよ
なのにどうして?
力はあったのに、どうして?
どうして、私はゲンキ君を守れなかったの?
どうして、外の人に気付くことが出来なかったの?
安心したから、外にいて見えなかったから、何回も連続で襲われるなんて思わなかったから……
言い訳が私の頭の中で軽快に踊り始める
でもね
思い浮かぶどんな言葉も、ゲンキ君を返してくれない
気付けなかった私の事を、赦してはくれないんだよ
考えれば考えるほど
言い訳を作れば作るほど
ゲンキ君の――が、実感させられる
私の失敗、取り返しの付かない失敗を実感させられる
だから、ね?
私もゲンキ君の所に行くよ
一人になんかさせない
私が、傍にいるから
でも……まだ遣り残したことがあるんだ
あの二人……ゲンキ君を殺したあの二人に、罪を償わせないと
ゲンキ君の仇は討つから
うーん……ゲンキ君、怒るかな?
やっぱ、怒るよね……
どんな悪い人でも、死んでいいとは思わない
って言ってたもんね
でもね、私にはやっぱり理解できないよ
いくらゲンキ君の言葉でも、この気持ちは抑えられない
あの二人が憎いって気持ちは抑えられない
だから、ごめん
また会ったら……いっぱいいっぱい怒っていいから
あ……でも、無視とかしちゃ嫌だよ?
……はぁ、あ、涼子さん達が何か言ってる……
じゃあね、ゲンキ君
大好き、また……逢おうね
+ + +
うぅん、と愛らしい容姿いっぱいに困った色を浮かべ。
幼子特有の高い唸り声を漏らしつつ、本人は全く気付いていないが朝倉の着ている服の裾をキュッと力強く握り締めながら。
時折考えが口から零れ出ているのにも気付かない様子で精一杯悩んでいる。
あーでもないこーでもないと迷いながら考えに没頭している少女――名をヴィヴィオ、と言う。
何を考えているのだろうかわからないが――可愛かった。
それはもう可愛かった。
恐らくこんな状況でなかったのであれば、自分はすぐにでも抱き締めていただろう。
そんな事を考え、よしよしと頭を撫でるに留めながら朝倉はフッと表情を微かに和らげる。
ヴィヴィオを見ているだけで、先ほどの失敗に対する反省と後悔、自己嫌悪は大分マシになってきていた。
ついさっき、時間にしてみればほんの二、三分前のこと。
朝倉は、塞ぎ込んだ少女を慰めようとコンタクトを取ろうとしていた。
いくつかの選択肢から最終的に選択したのは、叱咤。
下手な慰めは逆効果、反発心でも構わないから気持ちを煽ろう、と考えて怒鳴ってみたはいいが……
(やっぱ向いてないのかなぁ……ヴィヴィオちゃんに任せた方がよかったかも)
結果は、失敗。
あまつさえ、幼いヴィヴィオに諌められる結果になってしまった。
年齢上はヴィヴィオの方が年上、とは言えあまり朝倉にとって好ましいものではない。
何と言うか、朝倉にだってプライドはあった。
だが、やはる人の心の機微を図るのは朝倉にはまだ難しいことだともわかっている。
対してヴィヴィオは、そっちの方向に強い。
人の気持ちを考え、行動することのできる優しい子だ。
こうして特長だけを挙げていけばヴィヴィオの方が慰めに向いてると思うのだが――
(でも、ヴィヴィオちゃんにお願いするのもどうかと思うのよね……)
結局、答えが産まれることはなかった。
リアルとプライド、相反する言葉を抱えている以上それも当然と言えよう。
そのことに気付いているのかいないのか、朝倉が何度目かになる思考に没頭しかけたその時。
今まで全く反応を見せなかった少女が大地から重い腰を上げる。
ふと傍を見れば、ヴィヴィオが驚いたような、嬉しいような、複雑な表情を浮かべている。
恐らく後者の意味合いが強いのだろう。
その表情に浮かんでいたのは、困惑を塗りつぶすような喜色だった。
まずは一安心。
思っていたよりも少女は強かったらしい――兄とは違って。
……とにかく、今は立ち直ってくれたことが最上の一手だと思う。
先ほどの失敗を生かし、なるべく刺激しないように柔らかな微笑を浮かべながら朝倉は足を踏み出そうとする。
だが、その動きは強制的に止められる事となる。
「ごめんなさい、私……ゲンキ君の仇を討ちます」
他ならぬ、少女の手によって。
思考が鈍い。
目の前の少女は今なんと言った?
聞こえてはいる、意味もわかる、ただ理解ができなかった。
先ほど踏み出しかけた足はしっかりと大地に根を張り動く気配を見せない。
同じく脳内も動く気配を見せない。
『ゲロー!!? 何を言ってるでありますか!!?』
『クークック……こいつぁヤベェな』
ナビ達が何か言っているのだが、空しく耳をすり抜けていく。
混乱。
初めて感じる感覚に朝倉の思考能力も追いついていなかった。
こんな時にどうすればいいのか、滅茶苦茶な脳内を必死に漁る。
そこで思い出したのが深呼吸。
大きく息を吸って、吐く。
吸っては吐く、吸っては吐く。
それを何度か繰り返すが一向に混乱が治まる気配はない。
『妹殿! まずは落ち着くであります!!!』
『そうですぅ、そんなことしたって何にもならないですよぉ』
『貴様……そんなことしてアイツが喜ぶとでも思っているのか!?』
『くーくっくっく、大人しく泣いといた方がいいと思うぜぇ』
必死に説得を続けるナビ達。
だが、少女は考えを変えるつもりはないのか全くの無反応を貫いている。
ふと、何とはなしにヴィヴィオの方に視線を移す。
朝倉の瞳に移ったのは、今にも泣きそうなヴィヴィオの表情だった。
透き通るような白い肌は今、微かに青ざめて見える。
瞳からは抑えようもない雫が零れ落ち、頬を濡らす。
朝倉の服を握っていた手はダラリと垂れ下がり、全身から漂う雰囲気は捨て猫そのものだった。
何を思っているのだろうか……わかるはずはないが、朝倉には何故だかわかるような気がしていた。
そんなヴィヴィオの様子を見て、朝倉は自分の全身に冷たいものが通うのを感じる。
混乱は既に収まった。
今の朝倉を支配しているのは、失望と怒り。
冷めた視線を少女へと向ける。
(やっぱ兄妹は兄妹かぁ……仕方ないのかも、ね)
朝倉には許せなかった。
確かに、大事な人を失うの辛い。
朝倉にそんな経験はないが、与えられる情報の中には『胸を引き裂くような痛み』などとあった。
目の前の少女も、辛かったのだろう、悲しかったのだろう。
それは、わかる。
だが、だからと言って復讐に走る安易な考えが。
そして、それによってもたらされたヴィヴィオの悲しみが、朝倉の心に火を灯していた。
(大切な人が殺されたから、仇を討ちます? ……どれだけ愚かなのかしらね。その言葉が、行動が、一番死者を冒涜してるってこと気付いてないのかしら)
目の前の少女の空虚な瞳に自分の姿が映っている。
自分の瞳にも少女の姿は映っていることだろう。
朝倉は、それでも反応しない少女に侮蔑するような瞳を向けながら、ゆっくりと口を開く。
「仇を討つって言ったわよね? 力のない貴方が……具体的に、どう仇を討つのかしら?」
「……力なら、あります。この水「まさかその水着の力ががあれば、なんてこと言わないわよね?」
少女の言葉を遮るように、朝倉が口を挟む。
その口調はあくまで冷たく、その瞳は、どこまでも冷たい。
「どれだけ高性能でも、ナビが付いてても、使用するのは貴方……幼稚園児が銃を持っただけで力とは言わない
武器って言うのは、それを使いこなせる人が持って始めて力に変わるの。わかる?」
「それは……でもっ」
「わかってなかったみたいね……。そんなことすらわからない貴方が仇を討つ? ふふ……冗談にもならないわ」
一言一言、決意をを抉るような言葉に少女は懸命に反論しようとする。
だが、朝倉はそれを許さない。
少女の決意を、想いを全て否定するかの如く言葉を紡いでいく。
「っ……」
「言っておくけど……あの小砂って奴とアスカは、力を持っているわ
武器を持って、明確な意思と殺意を絡ませて、容赦なく人を殺せる。そんな敵を相手に貴方が仇を討てるのかしらね。
それに……貴方に人を殺す覚悟はあるのかしら?」
「……覚悟?」
「そう、覚悟。まさか貴方、仇を討ってハイおしまい、だなんて思ってる? だとしたら、今すぐさっきの言葉を取り消した方がいいわよ」
「そんなことないっ!! 私にだって覚悟はあります!! 仇を討ったら、仇を討ったらちゃんとゲンキ君のところに行く。
行かなくちゃ行けないの! 私のせいでゲンキ君が死んじゃったから、だから……っ
二人を殺して、私もゲンキ君のところへ、行くっ!!!」
悲鳴のような言葉と共に浮かんだ僅かな陶酔の色。
それを見て、朝倉は気付いた。
結局、本質はそうだったのだ。
色々述べてみても、目の前の少女は理性と打算を持って恨みを晴らしたいだけ。
少年の死が納得できずに、その死を理由にして、仇討ちなんて綺麗な言葉で自己陶酔しているだけの存在だった。
だから、告げる。
情けも、容赦も、同情もなく、告げる。
「それって結局、彼の死を人殺しの理由にしてるだけじゃない。それに、何? ゲンキ君の所へ行く? それが覚悟?」
冷めた口調に怒りを込めて。
「甘ったれるな小娘」
吐き捨てるように言った。
「それの何が覚悟よ……ただの言い訳でしょうがっ! 人殺しってのはそんなに甘いものじゃない。
殺された人の思いを、意思を、覚悟を受け継いで……その人の命の重さを一生背負い続けなくちゃいけない。
それを貴方みたいな小娘ができる? できるわけないわよね。そんなの赤子にだってわかるわ」
一息で捲したてながら、心を抉らんと更に言葉を紡ぐ。
「それに……ゲンキ君のところに行く? ……はぁ? 貴方馬鹿なの?
彼はもう死んでる。だから、彼のところに行くなんて無理、絶対に不可能。どれだけ好きだろうと人なんて死んだらただのモノ……天国なんて存在しない。
貴方が彼のところに行こうだなんて妄想しながら死ぬのは勝手だけど――貴方は、一生独りぼっちになるだけ、よ」
理由を、全否定。
しかし、そこまで告げた朝倉は急に満面の笑みを浮かべる。
「でも、どうしても貴方が仇を討ちたいって言うのなら……それ相応の覚悟を見せて頂戴」
急にトーンの変わった朝倉に対して不安そうな声が聞こえる。
「覚悟? ……どうやって?」
「簡単よ、簡単。コレを使って、私を殺してみなさい。因みに、非殺傷設定は解除済みだから……安心して撃ってくれても構わないわ」
そう言って、クロスミラージュを放り投げる。
「え? ……涼子、お姉ちゃん?」
突然の言葉に、今まで事態に付いていけていなかったヴィヴィオが驚いたように口を挟む。
それは無理もないことなのかもしれない。
その言葉を告げられた少女もまた、驚きを隠せない様子だった。
『ちょ……ちょと待て!! なぜそうなる!!?』
『Ms.朝倉、何を言っているのですか?』
一瞬遅れでナビやデバイスも動揺しきった声で朝倉を止めようとする。
だが、それらの言葉を全て無視すると、目の前の少女だけを見て告げる。
「ほら……私を殺してみなさいよ」
クロスミラージュを持ちながら、今にも泣き出さんばかりに見える。
それを見たヴィヴィオは、少しだけ、安堵した。
とても撃てそうな雰囲気じゃない。
その姿は、幼子でもわかりそうな程狼狽していた。
だから、気付かなかった。
朝倉の方を向いて、声をかけようとしてしまった。
なんと声をかけようか、迷ってしまった。
撃てるわけがないと、思い込んでいたから。
そう、思いたかったから。
だから、気付けなかった。
ヴィヴィオが目を離し、迷っていたた数瞬のうちに、覚悟を決めた少女の体から震えが消えていたことに。
ザリ、と床を擦る音が聞こえてヴィヴィオは思わずそちらに視線を向ける。
音の正体は、震えていた筈の少女がしっかりと大地を踏みしめる音だった。
あれ? とヴィヴィオは不思議に思う。
ついさっきまで震えていた筈の少女に、どこか違和感を感じたから。
その少女の震えは、止まっていなかった筈。
その少女は、クロスミラージュを構えていなかった筈。
その少女の浮かべていた表情は、こんなにも悲しそうな、凄惨な笑みじゃなかった筈。
疑問が、ヴィヴィオの足を止めた。
同時。
「ごめん、朝倉さん……死んでください」
心からすまなそうな声が聞こえてくる。
ヴィヴィオは、続いて銃声と共に少女が走り去るのを見た。
一瞬遅れて聞こえてくる、トサリという軽い音。
振り向きたいけど振り向きたくない。
素直にヴィヴィオはそう思った。
だが、体は言うことを聞かず反射的に音のした方を見てしまう。
その瞳に飛び込んできたもの、それは――
「嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
――仰向けに倒れる、朝倉の姿だった。
【C-3 中学校・高校のグラウンド/一日目・夕方】
【キョンの妹@涼宮ハルヒの憂鬱】
【状態】顔に深い切り傷(鼻より上の位置を横一線に斬られている)、地球人専用専守防衛型強化服(起動中)、深い悲しみ
【持ち物】『人類補完計画』計画書、地球人専用専守防衛型強化服(起動中)@ケロロ軍曹、ディパック、基本セット一式
【思考】
0、ごめんなさい……
1、アスカと小砂を殺して自分も死ぬ
【備考】
※キョンはハルヒの死を知って混乱していたのではないか、と思っています。
※kskネット内の「掲示板」のシンジの書き込みのみまともに見ました。
ゼロス以外のドロロの一回目の書き込み、および二回目の書き込みについては断片的にしか見えていません。
※アスカと小砂(顔は未確認)が殺しあいに乗っていると認識。
【ヴィヴィオ@リリカルなのはStrikerS】
【状態】疲労(小)、ショックと深い悲しみ、茫然自失
【持ち物】バルディッシュ・アサルト(6/6)@リリカルなのはStrikerS、SOS団の腕章@涼宮ハルヒの憂鬱
【思考】
0、嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?
【備考】
※ヴィヴィオの力の詳細は、次回以降の書き手にお任せします。
※長門とタツヲは悪い人に操られていると思ってます。
※キョンはガイバーになったことで操られたと思っています。
※149話「そして私にできるコト」にて見た夢に影響を与えられている?
※アスカと小砂(顔は未確認)が殺しあいに乗っていると認識。
(まさか。本当に撃つとは思わなかったわ……)
ぼんやりと、朝倉は考える。
朝倉としては、撃つわけがないと思いつつも残しておいた保険が当たった形になる。
非殺傷設定を解除していたなんて実は全くの嘘だったのである。
(まぁ、解除する理由もないしね。てゆーか、それにしても……本当上手くいかないなぁ)
思考する口調には残念さが滲み出している。
朝倉の考えでは、あのままプレッシャーに負けた少女が崩れ落ちて、そこをフォローする。
所謂アメとムチ……いや、ムチとアメ作戦を狙っていたのだが、どうやらそう上手くはいかないらしい。
「嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
これは本当にヴィヴィオちゃんに頼ろうかしら……などと考えていた朝倉の耳に絶叫が聞こえる。
どうやら、ヴィヴィオも勘違いしているらしい。
(うーん……起きにくいわね……)
声の感じからしてヴィヴィオは泣いているらしい。
段々と近付いてくる足音も聞こえる。
このまま大声で泣かれ続けると、周りの参加者にまで聞こえるかもしれない。
それは困る、非常に困る。
(べ、別にヴィヴィオちゃんを泣かせちゃって困ってるとか、泣き顔は苦手だとかそんなわけじゃないんだからね……って誰に言い訳してんのかしら?)
顔に濡れた感触がある。
どうやら傍まで来て泣いているらしい。
(ど、ど、どうしようっ……えーっと、そ、そうだ! ここは明るくいけば誤魔化せるかもっ!?)
そんな考えの下、パチリと瞼を開いて満面の笑みと共に一言。
「なーんちゃって! びっくりした?」
【朝倉涼子@涼宮ハルヒの憂鬱】
【状態】健康、疲労(中) 、ダメージ(小)
【持ち物】ボウイナイフ、鬼娘専用変身銃@ケロロ軍曹、クロスミラージュ@リリカルなのはStrikerS
不明支給品0~1(武器では無い)、メイド服@涼宮ハルヒ、
ディパック(支給品一式)、新・夢成長促進銃@ケロロ軍曹
【思考】
0、びっくりした?
1、キョンを殺す
2、長門有希を止める
3、古泉、みくる、サツキを捜すため北の施設(中学校・図書館・小学校の順)を回る。
4、基本的に殺し合いに乗らない。
5、ゼロスとスグルの行方が気がかり。
6、小砂とは交渉したい
7、まともな服が欲しい。
8、できればゲーム脱出時、ハルヒの死体を回収したい。
9、ヴィヴィオの変化が気になる。
【備考】
※長門有希が暴走していると考えています。
※クロスミラージュを改変しました。元に戻せるかどうかは後の書き手さんにお任せします。
※制限に気づきました。
肉体への情報改変は、傷を塞ぐ程度が限界のようです。
自分もそれに含まれると予測しています。
※アスカと小砂(顔は未確認)が殺しあいに乗っていると認識。
※キョンの妹についての対処はまだ決めていません
※ゲンキの死体は、外傷がほとんど治され(体内の負傷はそのまま)、ディパック(基本セット一式)がついています。
※グラウンドのどこかに、S&WM10(リボルバー)(3/6)、KRR‐SP(被弾により故障)があります。
※中学校の玄関の一部が、消火器の粉で汚れ、近くには消火器が転がってます。
※デバイスなどの索敵能力やその精度に制限がかかっているようです。
個体差があるかもしれません。
*時系列順で読む
Back:[[It's a show time]] Next:[[学校を出よう!]]
*投下順で読む
Back:[[Girl who does lesson]] Next:[[学校を出よう!]]
|[[Scars of the War(終結)]]|キョンの妹|[[学校を出よう!]]|
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