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祝福の風 I reinforce you with my power. ◆MADuPlCzP6



それは小さな願いでした

『私の名はそのカケラではなく、あなたがいずれ手にするであろう新たな魔導の器に贈ってあげて頂けますか?』

それは先代リインフォースの最初で最後の願い

そんな思いのこもった奇麗な名前をもらって私はここにいます

私は、私の名前は祝福の風・リインフォースⅡ

空を駆けるのはいつもこの名前と共に



湯気の篭る部屋の中、ひとつの命のために輝き続けた光がやむ。

魔力の明かりの消えた部屋に満ちるのは疲労と諦観。

魔導の力をもってして治療に当たった三人は肩で息をするほど疲弊している。
彼女らは持てる限りの力で重傷の体に立ち向かった。
しかしその力はスバルを救うのに少し足りない。

青い髪の拳闘士の手に力は戻ってこない。

人ならざる力を持つ彼女達。
しかし彼女達の力は人ひとり生かすにほんの少し足りなかった。

「なん…で……なんでっ!!」
なおもスバルの体へと手をのばすなのは。
その手に宿る柔らかい光は生まれかけて、すぐ消える。
温泉で多少回復したとはいえ、小砂、アスカ、冬月、ケロロと専門でない治癒魔法をかけ続けてきた消耗は大きい。
さらに種族の違うケロロの治療には多大な魔力を注ぎ込んだエースオブエースの身にはもう少しの魔力も残っていなかった。

スバルはまだ息をしている。
手の届くところに存在している。
だが彼女を救う術はもう自分の体のどこにもない。
目の前で、生きているのに………………救えない。

「スバル…スバル……………っ!」
悲痛な声が響く部屋に詰まっているのは落胆、悔恨、絶望、苦悩。
それはまるでギリシャ神話のパンドラの箱の中だ。
ケロロも冬月もトトロも、獣達も俯きあきらめの表情を浮かべていた。

しかし神話は指し示す。この世の災厄を詰め込んだ箱の中、その奥底には希望が眠っていることを。
彼女は休息を要求する体を無視して下を向きそうになる顔をくっと上げる。
その瞳は澄み切って、迷いなく前を見据えた。
停滞した空気に一陣の風を送るのは私の仕事だと。

再びスバルの体へ向けてその手から光が漏れる。
手だけではない。
腕が、足が、全身が、淡く発光をはじめた。



「リイン!?何をするつもり!?」
急激な魔力の発動を感じたなのはは驚きの声をあげる。

リインフォースは脂汗を流しながらつらそうな様子で、それでもにっこりと笑ってこう言った。
「リインは、リインフォースⅡははやてちゃんのリンカーコアのコピーして作られた本体を核とするユニゾン・デバイスです。
 つまり、リイン自身が魔力の塊。
 リインの存在維持を度外視すればもっと治療魔法の出力を上げられるですよ。
 スバルを助けられるかもしれないですぅ」

そんなリインの発言にはじかれるようにケロロが声をあげる。
「存在を度外視ってぇことは消えちゃうってことぉ!?そんなのダメでありますよ!リイン殿!!」
「わたしはスバルの上官ですよ?上官は部下を導き守るためにいるですぅ。
 今リインの持ってる力をスバルの為に使うのはちっともおかしいことじゃないですよ。
 部下を持つケロロ『軍曹』殿ならわかるですよね?」

ケロロと言い合う間にもリインの体はどんどん光の粒子になって消えていく。

治癒の魔法を緩めぬまま彼女は語った。
主の危険を祓い主を守るのが魔導の器の務めであること。
我が主・はやての部下を守ることははやてを守ることと同じだということ。
自分は消えてしまっても、その思いははやてちゃんや機動六課のみんなの心に残るから、
だから自分は笑って逝けるのだということを。
そして、静かに伏せていた視線をなのはに移す。

「なのはさん、はやてちゃんに伝言をお願いしていいですか?」
「リイン…うん、わかった。はやてちゃんになんて…伝えればいいかな?」
「『祝福の風リインフォースⅡは、初代リインフォースに負けないくらい世界で一番幸福なデバイスでした。』
 帰ったらはやてちゃんにそう伝えてくださいですぅ」
普段の彼女にはない、静かに柔らかな口調で言葉を紡ぐリインフォースⅡ
なのはの目にはその姿にあの雪の日に消えていった魔道書の姿が重なる。
「うん。きっと…必ず伝えるよ」
だから、それ以外の返す言葉は見つからなかった。

リインはスバルに向き直る。
ふと眼に入ったスバルの胸元を飾る同僚にもひとつ、頼み事をした。
「マッハキャリバー、スバルが起きたらもう突っ走っちゃだめですよって叱ってあげてくださいね」
『Allright. 必ずそう言い聞かせます。リインフォースⅡ、貴方の旅路が幸せな物でありますように』
それを聞いたリインフォースは満足そうな笑みを浮かべた。
そして彼女はその体の持つありったけの力を振り絞る。もう腕から下は人の形をなしていない。
その唇が紡ぐのは感謝と別れの言葉。

「短い間だったですけど、本当にお世話になったですぅ。ありがとう、そして……………さようなら」

その言葉をきっかけに部屋は今までで最も皓い光に包まれた。
何も見えなくなるほどの強い、けれど優しい光に誰もが目を瞑らざるをえなくなる。
視界が利かなくなったことで敏感になった肌、それをさぁっとひときわ強い魔力によって生まれた風が撫でた。

それが、祝福の風の最後だった。
目を開けるとおしゃべりな空曹長はもうどこにもいなかった。



「っリイン!リイン…フォースっ………!」
なのはの瞳から、零すまいとしていた涙が堰を切ったように流れ出す。
あとからあとから湧いてきて、もう前を向いていられなかった。
ぽたり、ぽたりと頬を伝って落ちるしずくが地面を濡らしていく。

こつん とそこに涙ではない物が落ちる。
涙に歪む視界に映るもの、それは小さな小さなカケラ。指の先ほどの白銀色の剣十字。

そっと触れる。

このカケラははやての許につれて帰ってやらなければならない。
リインの最後の話と一緒に。
そう思ってカケラを胸に抱く。
そして、心優しい一等空尉はただ心優しい魔導の器を思って、泣いた。

「彼女のことは残念だが…本当によくがんばってくれたよ」
治療の済んだスバルの体に上着を掛けながら冬月は言う。

「我々にできることはもうすべてやりつくした。あとはただ…祈ろう」
そう言って老紳士は天を仰いだ。
そこに見えるのはただの天井なのに、その姿はたった今消えてしまった彼女を見送るようで。


小さな鞄から殺戮の島に降りたデバイスは光となって消えていった。
上官として、魔導の器として最も優れたやり方を選んで最後を迎えた彼女の光は
蒼天を行く祝福の風・リインフォースⅡの名にふさわしい、清廉な光であった。



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統ばるーただ一人を助けるその為に スバル・ナカジマ ピエロのミセリコルディア
高町なのは
トトロ
冬月コウゾウ
ケロロ軍曹






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