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接触! 怒涛の異文化コミュニケーション! ◆2XEqsKa.CM



リナ・インバースは小川のほとりで、パイプ椅子に腰掛けて周囲を見渡していた。
その視線は敵を警戒するものではなく、何かを探しているようだ。

「はぁ……」

物憂げに溜息をつくリナ。
整った顔立ちと均整の取れたプロポーションを持つ彼女がするそれは、男性を魅了してやまないだろう。

「食料になりそうなものはあんまりないわね……」

彼女の真意を知らなければ。
リナは自分のディパックを覗き込み、二人分の食料をしげしげと眺める。
常識的に考えれば六、七日分――― 一人三日分といったところだろうか。
主催者はこの殺し合いがあまり長期にわたるとは想定していないようだ。

(ドロロくんが置いてった荷物から拝借した分を合わせても、あたしが食べたい時に食べたら二日位で無くなりそうだなぁ。
 意地汚いと言うなかれ。栄養が必要な年ごろなのだ! )

しれっと窃盗を綺麗に言い換えつつ、空腹に堪えるリナ。
いや、やっぱり堪えられなかった。


グルグル、ギュゴーと、耳障りな音が場に響く。

グー! グー! ゴゴゴゴゴ!
ギュオー! キュウウウウウウ!!!

次第に自己主張を激しくする腹の音。
その音は今や歌のように緩急をつけたメロディと化していた。
歌はいい、歌は心を潤おしてくれる。だがこの歌は食欲を催す。

グルルルルルッリリリリモッコスモッコス! ギュギュギュギュギュ……!
ダダダッダーン! ダダダッダーン!
ダラダラダラダラぐごっごー!

それはもはやオーケストラだ。

リナは足元に転がる焼き魚数体の残骸に目をやり、もう一度溜息をつく。
支給された食料を毒見もせずに食べる気にはなれず、現地調達で済ませようとしたようだが、結果は芳しくなかったらしい。
焚き火が醸しだす香ばしい焼き魚の残り香が、リナの食欲をさらに加速させた。

「そうだ! 川ごとぶっ飛ばせば、もっと魚取れるかも! 」



物騒な事を言い出すリナ。
どうやら冗談ではないらしく、ブツブツと呪文の詠唱を始める。
詠唱が完了する直前、影が木々を伝って飛来し、リナの前で立ち止まった。
リナは詠唱を中断し、小柄な影―――ドロロ兵長に話しかけた。

「あ、ドロロくん。どうだった?」

「リナ殿の言うとおり、彼奴……ゼロス殿は移動の痕跡を残していなかったでござる」

「そ。ま、追跡されるようなヘマする相手じゃないしね」

ドロロは頷き、視線を焚き火に遣った。

「火の手があがっているのが見えたので、急いで帰ってきたんでござるが……」

「うん、ちょっと腹ごしらえをね。煙に人が寄ってくるかもしれないし」

「危険な者が引き寄せられてきたらどうするつもりでござる? 」

「え? ぶちのめすけど」

「……いと逞し」

汗を拭い、自分のディパックを手に取るドロロ。
ガサゴソと探りながら、リナに断りを入れる。

「拙者も探索でいささか空腹になったので、軽食を……む? 」

「どうしたの?」

「食料がなくなって……」

「きっと気付かないうちにゼロスに盗られたのね、可哀想に・・・・・・。あいつ、ああ見えて手癖悪いから」

「うう……あんまりでござる……」


涙ぐむドロロに憐れみの眼差しを向けながら、リナが自分のディパックから携帯食料を一つ取り出してドロロに差し出した。
驚くドロロに、優しく声を掛けるリナ。

「はい、私の分を分けてあげる。ああ気にしないで! 私達仲間……いえ、友達じゃない! 」

「と、友達! 」

「さあ、遠慮せず、ぐっといって! あ、水もあげるね」

「かたじけない……ああ、心に染み渡る味でござる」

(うん、食べても大丈夫みたい)

食料と水を交互に頬張るドロロをしばらく眺め、胸を撫で下ろすリナ。
自分も携帯食料を取り出し、一口でもふもふと咀嚼する。

「しかし、いつまでもリナ殿の好意に甘えるわけにもいかぬ……自分の食い扶持は確保せねば」

「あら、気にしなくてもいいのに。魚とか獲るならあたしの分も獲ってくれると嬉しいな」

「う、うむ。御安い御用でござる! 」

手近の小川に向かい、忍ならではの技術で魚を獲り始めるドロロ。
その後姿を見ながら「出来た人(?)だなあ」とか思いつつ、リナは4つ目の携帯食料を口に入れた。

(ごめんねドロロくん、一応食料のお代は入れといたから。まだ気付いてないみたいだけど)

「リナ殿」

「え!? な、なぁに? 」

「魚は十分獲り終わったでござる。先の探索の際、あちらに滝を見つけたので、そちらに向かいたいのでござるが……」

「滝? 何で滝に?」

「拙者、この状況に少々困惑しておる故。滝に打たれ、平常心を取り戻したいのでござる」

少々なのか、とリナはドロロの精神の強さに感服しつつ、おーけぇ、と軽く返す。
二人というかむしろ一人と一匹は、どちらが先ともなく移動を開始した。




衣・食・住は生活において最も重要な三つの要素である。
リナ・インバースが食の問題について心悩んでいた同時刻、リヒャルト・ギュオーは衣についての悩みを抱えていた。

「忘れていた……獣神変を解けばこの身は一糸纏わぬということをな!」

鍛え上げられた肉体の全てを外気に晒しながら、頭を抱えるギュオー。
しばらく全裸のまま行動するか目立つ獣神将形態になって行動するか悩んでいたが、ハッと思い出したように手を叩く。

「そうだ! 先ほど荷物入れを見たとき、確か……」

ディパックを漁り、一着の服を取り出す。
ギュオーが手に取ったそれは、真っ赤なスーツだった。
あちこちに金属的な部品が付いており、どことなくギュオーの趣味に合致する、なかなかの衣装である。

「女物のような気がするのがネックだが……まあ、贅沢は言えまい」

いそいそとスーツを着込むギュオー。
かなりサイズが違い、ピチピチにも程がある、といった外見ではあったが、なんとか体裁は保てた。
しばらくするとギュオーの体に馴染むようにスーツが伸び、軽快に動けるようになる。

「服はこれでいいとして、さて、どちらに向かうか……」

地図とコンパスを見比べながら、思考するギュオー。
ゼクトール達がどちらに向かったかわからなかった為、下手に動くと再び鉢合わせする恐れがある。

「一対一ならともかく、パワーアップしたゼクトールと戦闘機人ガイバーを同時に相手取るのは得策ではないからな」

思案しながら、ギュオーは喉の渇きに気付き、ディパックに手を伸ばす。
水筒を取り出し、口に当てたところで、水がなくなっている事に気付いた。

「ぬ……穴が開いてやがる! さっきの戦闘の時か、糞ッ! 」

穴が開いた水筒を地面に叩き付け、重力波を放って粉砕。
ギュオーは憤慨しながら、何か飲むものはないか、とディパックを荒々しくかき回す。
しかし都合よく飲料が入っているわけもなく、ディパックの側部の大きなポケット・スペースを見てみても、
何の嫌がらせか空のビール缶が大量に詰まっているだけだった。

「水分を確保する為には……町か? いや、島なら浄水もどこかにあるかもしれんな……とりあえず水場に向かうか」

ディパックを背負い、ギュオーは近くの水場……滝へと駆けだした。


ギュオーが滝壷にたどり着くと、そこにはなかなか異様な光景が広がっていた。
嫌な感じのサイズのカエル人間が滝に打たれ、その様子を少女が脇でじっと見つめているのだ。
何かの儀式だろうか。

「フッ、並みの男ならば、あのカエル人間を見て驚いていただろうが……私は違うぞ! あの姿、あの顔、見覚えがある! 」

木陰に隠れ、デイパックから分厚い紙束を取り出す。
漏れた水で濡れてふやけているが、これがギュオー自慢の支給品、『詳細参加者名簿』である。
先ほどはノーヴェとの接触で彼女の記述しか読めなかった為、目次の小さい顔写真を見比べながら、個別のページを捲る。


「まずはあちらの小娘……リナ・インバース! 」


ページを読み込む。


       ま  ど  う  し  。

             ま   ほ   う   。


「魔法……とは……? 」

ギュオーが沈黙する。
そういえば先の戦闘機人・ノーヴェの記述部分にもそのような単語が見受けられた。
違う世界の事だと認識はしているが、ギュオーにはとても理解できる単語ではない。

「異世界を支配するこのギュオーが異世界の常識を知らぬわけにもいかん……魔法とやらは一度見ておく必要があるな」

あのアルカンフェルのような驚異的な能力を持つ者ばかりの世界を侵略対象に選びでもしたら、
ここで生き残っても意味が無い。
ギュオーの最終目的は、生き残って自分の物に出来る世界へ移ることだ。
草壁たちが願いを叶えるという約束を守らなくても、生き残って首輪さえ外せれば、異世界の人間を集める技術は奪える。
問題は優勝してもこの首輪すら外してくれない場合だが、参加者の中には首輪を解析して外そうとする者もいるだろう。
そういった知恵者を味方につければ、
こちらの弱みも消え、草壁らとイーブンな立場で交渉できる(もっとも、技術さえ手に入れば生かしておくつもりもないが)。


                                                   アサシン
「さて、あちらのカエル男は……チッ、判別しづらいな……ドロロ兵長か。ケロン人、暗殺兵! 」


ページを読み込む。


  け  ろ  ん  じ  ん  。

   う  ち  ゅ  う  じ  ん  。



「はわわ……」

ギュオーが見る影もないほど動揺する、何故だろうか。
彼の脳裏に浮かんでいたのは絶対的服従と恐怖の対象、アルカンフェルの姿だった。
最古の獣神将にしてクロノスの総帥、宇宙から飛来した降臨者が直接『調整』した唯一の存在。
ギュオー……そして全ての獣神将の創造主であるアルカンフェルを創造した、それが降臨者だ。

(う、宇宙人だと……それはつまり……降臨者、ではないか! )

降臨者が兵器として自分達人間を作り上げた事から考えても、あのカエルが降臨者、
あるいはそれに敵対する存在である事は間違いない。
ギュオーの心臓が、畏敬を超えた何かで揺れる。

(おお落ち着け、ギュオーよ……あれが我々の世界の存在とは限らん……降臨者とは何の関係もないかも知れん……)

早鐘を打つように高鳴る心臓を押さえ、平静を保とうとするギュオー。

(だが……この一件に降臨者が関わっているとすれば、俺が魅奈神山でアルカンフェルから逃れられたことにも、
 存在しない筈のGユニットがあのノーヴェに支給されていた事にも説明がつく……い、いや! 偶然だ! )

嫌な予感を押しつぶすように、ギュオーはしばらくだんまりを決め込み、なんとか平静を保った。

(……ククク。ともあれ今は、奴等から必要な事を聞きだすのだ……恐れるなギュオー、俺は強い! )


滝に打たれているドロロを眺めながら、リナは再びパイプ椅子を広げて座り込んでいた。
寒そうだなぁ、と呟き、滝の飛沫が飛んでこない位置を見定め、ちょこちょこと移動する。
数分ほどして、ドロロが滝から離れ、体を震わせて水を弾きながら、リナの側に歩いてくる。

「どうでござるか、リナ殿も? 」

「いやーあたしはこういう苦行系はちょっと……ゼル辺りはちょっとやりそうだけどー……もういいの? 」

「平静は取り戻せたでござる。本来ならあと数刻打たれていたいでござるが……来客が、あちらに」

「あ、やっぱ気付いてたんだ。あそこの森んところで……一人だよね? 」

ドロロが頷き、リナが指した方向に大声を張り上げる。

「そこの者! 拙者らは争う気はござらぬ、出て参れ! 」

声が届いたのか、男……ギュオーが、木陰から姿を現す。
不快な笑みを浮かべながら近づいてくるギュオーに、ドロロが臨戦態勢を取る。

「お主は……」

ドロロの額を一筋の汗が伝う。
ギュオーの力量は、暗殺兵術(アサシンマジック)鑑定眼力を使うまでもなく、ひしひしとドロロを威圧するように伝わった。

「お前は後だ。そこの、小娘……リナ・インバース! 私の名はギュオー! まず貴様に用がある! 」

「……リナ殿、知り合いでござるか? 」

「いや、知らないわよこんなオジン。あのー、ひょっとして誰かと勘違いしてませんか、ギュオー閣下様様。
 私はただのしがないズボンの裾上げ職人ですけど……」

「ほう……情報どおり、口が悪いようだな! 天才魔道士にして戦士! 盗賊殺し! トモダチになりたくない奴ベストテン!
 命にかかわる危険な生物ベスト100! ドラまた、リナ・インバース! 」



薄笑いを浮かべ、リナを指差すギュオー。
そんな彼を尻目に、リナとドロロは円陣を組むようにして秘密会議を始めた。
                       ストーカー
「どう思うでござるか? もしやリナ殿の棲透家という奴では……」

「えー、あたしってば流石だなぁ。あんな変なスーツ来た中年にまでニーズがあるなんて! 」

「あまり私を怒らせない方がいい……」

失礼なことをわざわざ聞こえるように言うリナに、怒りを露わにするギュオー。
リナは悪びれる素振りも見せず、平淡に返す。

「いえおじさま、あたしは別に悪気があって言っているわけではないのよ。ただ思ったことを素直に言っているだけで」

「俺は貴様のような小娘に興味などない! 貴様の情報はこの詳細参加者名簿で……」

「それは便利ね! 寄越しなさい! 」

「くっ……き、貴様のペースに乗っていては埒が開かん! このギュオーに見せろ……魔法というヤツをな! 」

リナの言葉に翻弄されそうになりつつ、ギュオーは自分の目的を告げる。
ドロロは魔法、という言葉を聞き、先ほどの戦闘でリナとゼロスが使っていた面妖な術を思い浮かべた。

「それは、要するに宣戦布告……でござるか? 」

「そう思ってもらっても構わんよ、ドロロ兵長。だが君達が大人しく私の言うとおりにするなら、命だけは助けてやらんでも」

ファイヤーボール
「 火炎球 ! 」

ギュオーが言い終らないうちに、リナが"力ある言葉"を唱え、魔力を放出する。
具現化された火球が猛スピードで飛び、ギュオーに直撃、炸裂した。
爆炎と熱風が発生し、ギュオーの姿が見えなくなる。

「はい、大サービス! 魔法見せたげたわよ! 」

「リ、リナ殿!? いくらなんでも話も聞かずにというのは……」

「ドロロ君、あれはどう見ても悪人で、しかも変態でしょ。ただでさえ悪人に人権はないのにその上変態となるともう、
 話を聞く時間すら惜しいわ。ストレスが溜まる前に相手をぶっ飛ばすのがあたしの流儀だし! 」

「まあ、確かに悪辣な面構えの上に珍妙な格好ではござったが」

「あ、詳細参加者名簿とやらも一緒に燃えちゃったかな?
 うーん、そーゆーのがあれば因縁持ってる奴等を探してぶつけて楽できたのになぁ」

「そのような陰湿な手段を!? 」

ドロロとリナがすっかり終わった終わった、な空気を出しているうちに土煙が晴れる。
そこには、先ほどとなんら変わらず、平然と立つギュオーの姿があった。
見れば、ギュオーの周囲にはなんらかの力場が形成されており、バリアーのような効果を生み出している。

「フフ……この程度か? イキがいいのはいいが、実力が伴なわんのではな」

「うわっ、生きてるよ」

「結界とは……やはり只者ではない、か」

即座に戦闘態勢を取り戻す二人に、怒気を孕んだ声でギュオーが語りかける。

「人が下手に出ていれば付け上がりやがって……いいだろう、お望みどおりねじ伏せてから情報を聞き出してくれる!! 」

「いつ下手にでたのよ!? 」

リナの突っ込みを無視し、ギュオーはおもむろにスーツに手を掛けた。
一気にスーツを脱ぎ捨て、宙空に飛び上がる。
リナが両手で目を覆い、ドロロが迎撃のために飛び上がる刹那、ギュオーの体は変質した。

「獣神変ッ! 」

「なっ!? 」

(魔族……!? )

一回り以上も大きくなったギュオーに驚愕した一瞬の隙を突かれ、ドロロは空中から地面に蹴り落とされる。
地面でバウンドするドロロに追い討ちのように飛び掛るギュオー。
両手を離して変化したギュオーの姿を見たリナは、それを阻止する為に呪文の詠唱を始める。

 エルメキア・ランス
「烈  閃  槍! 」

「!? グ……」


リナが打ち出した光の槍を受け、数秒動きを止めるギュオー。
その数秒の間にドロロはその場を飛びのき、リナの前に留まった。



「不覚……! リナ殿、かたじけない」

「いーっていーって。あいつ、烈閃槍喰らっても平気なとこ見ると魔族じゃないみたいだけど、何者かしら? 」

「敵性宇宙人……でもござらぬようだが……」

「冥土の土産に教えてやろう……世界の王にして最強の獣神将、リヒャルト・ギュオーとは俺の事だ! 」

「自分で世界の王とか言っちゃった! た、たまらん! 」

「リナ殿、何を喜んでおられるぅ!? 」

何故かテンションを上げるリナ、釣られるドロロ。
そんな二人には一切構わず、ギュオーは右手を掲げ、重力の波動を撃ち出した。
不可視の衝撃波が迫り、リナとドロロに牙をむく。
リナはドロロを抱きかかえ、周囲に風の結界を張り、翔び上がった。

               レイ・ウィング
「ドロロくん、飛ぶわよ! 翔封界! 」

風の結界で重力波を凌ぎ、同時に滝壺に向かって飛ぶリナ。
滝を割るように飛び上がり、その場を離脱しようとする。

「リ、リナ殿! ここで逃げてはヤツが今後他の参加者に危害を加える可能性が……」

「ぅにげるわけないでしょーがっ! あのオジンが追いかけられるくらいのスピードで飛んで、
 いい感じの地形まで引っ張ってって相手が疲れたところを叩くのよ! 」

「な、なるほど……しかし、魔法とは凄まじいものでござるな」

「この翔封界って術はあんまり使える人いないけどねー。ま、こうも可憐に空を舞えるのはあたしくらい……」

「!! リナ殿、彼奴が! 」

滝を昇りきり、軽口を叩くリナの目の前に、ギュオーが飛び出してきた。
ギュオーは驚愕するリナに掌を向け、重力を発生させる。

「まさか空も飛べるとはな! だが、それは俺も同じことだ! 」

「わっ! 」

「地べたに平伏せ、下郎共が! 」

逃れる暇もなく、二人の体を重力が襲い、地面―――滝が流れ落ちている崖の上に叩きつける。
風の結界も破れ、しこたま地面にぶつかるリナとドロロ。
不幸か故意か偶然か、ドロロはリナのクッションになるような形で押しつぶされ、リナは跳ね上がって地面を転がった。

「本気で来い、リナ・インバース。俺の用とは、俺が魔術とやらにどの程度耐えられるかの実験なのだからな」

リナ達を見下すように、空中で挑発するギュオー。
ドロロは即座に立ち上がり、リナの元に駆け寄って抱き起こす。


「リナ殿、大丈夫でござるか!? 」

「いちち……あんのやろ〜……」

「彼奴の足は拙者らより速い……どうやら、ここで戦うしかないようでござるな」

「そうね……ドロロくん、いい事考えたんだけど、聞いてくれるかしら」

「おお、どんな作戦でござるか? 」

「まず、ドロロくんが我武者羅に突っ込む。で、ドロロくんがあいつを抑えて、動けないようにする」

「成る程、そしていかに? 」

「あたしがそこにすっごい威力の術をぶち込む! 」

「拙者はどうなるんでござるか!? 」

「『多少の犠牲はしかたない』ってことばもあるし……」

「犠牲!? 」


ギュオーは紛糾している二人をしばらく眺めていたが、業を煮やしたように重力波を放つ。
重力波は二人の目の前を流れている滝の直前の川にぶつかり、巨大な飛沫を上げる。
警告のつもりでござるか、とドロロが気を取り直してギュオーに向き直った。

「随分と楽しそうだが、状況が分かっているのかね? リナ・インバース。まあ、貴様が本気でやらんというなら、
 お仲間に相手をしてもらうだけだ。ゼルガディス……とか言ったかな? あちらもそれなりに魔法は使えるんだろう? 」

「ゼルはあんまり……それより、ゼロスって子の方がオススメよ! そっちに行ってくれれば嬉しいなぁ」

「では、貴様を殺してから行くとしよう! 」


お喋りはお終いだ、といった剣幕で叫び、手に持ったスーツとディパックを脇に放り投げ、リナたちに突撃するギュオー。
ドロロはリナを守るように前に進み出ると、リナに確認を取る。


「……彼奴の動きを止めればいいのでござるな? 」

「うん、ごめんね……貴方の犠牲は無駄にはしないわ! 」

「犠牲は御免被る! 」



叫ぶと同時に、ドロロは迫るギュオーにカウンターを掛けるように一足で飛び上がる。
ディパックから取り出したロングホーンを手に持って迫るドロロに、ギュオーが力を込めた拳を突き出した。

「貴様は後だといったろうが! 」

「……朧分身」

ギュオーのパンチはドロロを正確に捉え、粉々に砕いた。
力加減を間違えたか、とギュオーが硬直した一瞬の隙。それを逃さず、ドロロの分身がギュオーに組み付いた。
ギュオーが何が起きたか把握できないうちに、分身数体がギュオーを地面に蹴り落とす。

           ウソテク
「新・暗殺術……虚偽技! 」

「分体……? 味な真似を! 」

着地し、全身の球体を発光させるギュオーに、四方八方からドロロの分身が突撃する。
ギュオーはいくつもの衝撃斬……先ほどのバリアーを変形させた物を放出し、迎え撃つ。
1,2,3,4,5……次々とドロロの分身が切り刻まれ、両断されていく。
ギュオーは鋭く分身体達を見渡し、ロングホーンを手に持った個体を発見した。

「本体は貴様か! 重力指弾ッ! 」

ギュオーの全力を注ぎ込んだ重力指弾が放たれ、その標的がロングホーンごと消し飛ぶ。
同時に、分身体も次々と消滅していく。
ギュオーは高笑いを上げ、リナに向き直った。

「降臨者との関わりを聞き出したかったが……まあいい。軍曹だの二等兵だの、似たようなのもいるしな。
 さあ来い、リナ・インバース! 」

「拙者の仲間に手は出させぬ。忍の秘技、ここに成ったり」

「!? 」


消し飛ばしたはずのドロロの声が、ギュオーの背後から響く。
慌てて振り返るが、その動きを逆に利用され、ギュオーの体は細いロープで縛られて自由を奪われた。
力を込めて引き千切ろうとするが、どういうわけか叶わない。

                                 ドラゴン
「説明によると、魔力で強化されたロープ……小型の竜族の自重にも耐える、そうでござる」

「ぐっ……がああああああああ!!!!!! 」

「無駄でござる。素材の強度に加え、忍式の縛りを……ッ!? 」


ブチブチ、と何かを引き千切る音が、ドロロの言葉を遮る。
ギュオーが重力を自分を縛るロープに集中・歪曲させ、無理矢理その戒めを引き千切ろうとしているのだ。
当然、そのような事を自分の肉体の真近ですれば、ギュオーの身体も無事ではすまない。
ミシミシ、と獣神将形態の強固な皮膚が悲鳴をあげるが、ギュオーは構わず重力操作を続けていた。
戦慄するドロロに、ギュオーが不敵な笑みを投げつける。

「リナ殿! 急……」

「おーけぃ! いい仕事したじゃない、ドロロくん、割と全速でそこ離れないと、巻き込まれるわよっ! 」

「! 承知ッ! 」

「き・さ・ま・ら……! 」

唸るギュオーを置き去りに、俊敏な動きで離脱するドロロ。
それを確認し、リナが詠唱を開始する。
次々と並べられる力ある言葉が、ギュオーに焦りをもたらす。


「黄昏よりも 昏きもの 血の流れより 紅きもの」

「おのれッ! 」

「時の流れに埋もれし 偉大な汝の名において 我 ここに 闇に誓わん」

「こんなッ! こんな物ッ! すぐに引き千切って……」

「我等が前に立ち塞がりし すべての愚かなるものに」

「グッ……」

「我と汝が力もて 等しく滅びを与えんことを! 」

「おおおおおおおおおおおおッッッッ!!! 」


追い詰められ、遂に全力で自分の内奥を中心にした重力の爆発とも言うべき強力な波動を放つギュオー。
ロープは千切れ飛び、ギュオーは来たる強大な魔術に耐える為、バリアーを展開しつつ、飛びながら後退する。
滝を数十m先から見下ろせるくらいの位置まで後退したところで、ギュオーは異変に気付いた。
宙空に浮かび、バリアーを張っている筈の自分の目前に……収束されるように、赫い光がどこからともなく集まっている。
その光はやがてギュオーを包み込み、閃光を放ち――――。

            ドラグ・スレイブ
「――――――――竜破斬!! 」



爆発した。
その規模は先ほどの火炎球などとはまるで規模が違い、ギュオーを中心とした数十m四方が、一瞬で消し飛んだ。
地形を削るようにその光は暴れ続け、"滝の始まり"を20m程早めるに至り、ようやく収まった。
ギュオーが空中にいたのが幸いだったことは、ドロロの目にも明白だった。
もし彼が地上でこの術を受けていれば、あの光はこの崖をも完全に崩し去っていただろう。
地形が変わった為、数秒滝が水を流さなくなり、リナが一息ついたころにようやく、元のように水が下方に流れ始めた。


「すさまじいでござるな……」

「本当はこんなもんじゃないんだけどね。なんかここ、精神世界との同調がし辛いから。
 あのくらいの威力で済んでよかったよ、ウン。結果おーらいってやつ? ……っと、こりゃいかんわ、気分悪い」

歩み寄り、呆れたように言うドロロに、リナが軽く返して、フラっと倒れこみそうになる。
ドロロは気を抜かず敵の姿と気配を探そうとするが、分身を多数使った彼にはもうそれ程の集中力は発揮できなかった。
ドッと押し寄せる疲労に、一瞬目眩を覚えるドロロ。


――――これは、疲労による物ではない。


ドロロの鍛え上げられた直感がそう告げ、リナを掴んでその場を飛びのかせた。


「ド、ドロロくん!? 」

「急な殺気ゆえ、御免! 」


直後、リナたちが先ほどまで居た地面に亀裂が走り、衝撃波が地殻を吹き飛ばす。
見れば、崖の斜面から続くトンネルが、立った今地面に開いた穴に続いていた。
そこから姿を現したのは他の誰でもない……リヒャルト・ギュオーだった。
その姿は正に満身創痍、といった有様で、全身から血を流し、頭部にあった立派な角の片方が折れてなくなっていた。
歴戦の暗殺兵であるドロロですら目眩を覚えるほどの憎悪と殺気を撒き散らし、宙に浮かんでリナたちを睥睨するギュオー。
搾り出すように、笑い声をあげる。

「ク……ククククク……グァッハッハーッハッハッハッハッハッハ!!!! 」

「うっそぉ……竜破斬をまともに喰らって……生きてる……」

「―――――怪物でござるな」

驚愕する二人を睨みつけ、ギュオーは地上に降り立った。
一歩一歩近づいてくるギュオーを牽制する為、リナが精神の疲労を押して12本の"炎の矢"を放つ。
ギュオーはそれを事も無げに重力波で自分に到達する前に地面に叩きつけ、悠々と歩き続ける。

 バースト
「"烈火――――"」

「遅いわッ!! 」


リナが強力な攻撃術を唱えようとした瞬間、爆発的な加速でギュオーが迫り、リナの喉を片手で掴んで持ち上げた。
疲労で反応が鈍ったが、ドロロもギュオーの後ろに一瞬で回りこみ、リナを助ける為に攻撃を仕掛ける。


「かっ……」

「ふん、やはり声が出せなければ魔法は出せないようだな……しゃっ!!! 」

「ぐぅっ!! 」

背後に回りこみ、手刀で攻撃を仕掛けようとしたドロロを、ギュオーの指突が襲う。
ギュオーの鋭い指はドロロの左眼窩を抉り、眼球を切り裂いた。
視界が半減したドロロに追い討ちをかけるように、全力のパンチを見舞うギュオー。
腹部にめり込むほどの威力のパンチを受けたドロロはディパックの中身を撒き散らしながら盛大に吹き飛ばされた。
ギュオーは哄笑しながら、ドロロのディパックから落ちたおもちゃの光線銃を踏み砕く。

「ぐっ……あっ!!! 」

左目を失い、激痛に耐えるドロロ。
彼の思考には、それでもリナを救うことが第一に来ていた。
ばら撒かれた荷物を残った右目で見渡し、なにか武器になるものを探す。

――――とはいえ、自分の三つの支給品はすべて失われた。
                                   ギミック
ロングホーンはおとりの分身体に注意を引かせるための仕掛けに使って失った。
おもちゃの光線銃は今しがた踏み砕かれた。魔力のロープは、ギュオーに引き千切られて回収不可能だ。
ドロロが諦めかけた時、目の前に一本の匕首(あいくち)が回転しながら飛来し、地面に突き刺さった。

(僥倖ッ!)

ドロロは何故こんなものが、と疑いを持つのも後回しにして匕首を手に取った。


「……」

「落ちたか。このまま首を圧し折ってやる」

片手で持ち上げるようにして首を絞められ、リナは既に気絶していた。
無論抵抗してギュオーを何度も蹴りつけ(主に股間を)たのだが、まるで効果はなかった。
さらに力を込めようとして、ギュオーが一瞬意識を失いかける。

(チッ……こいつらを始末したら、休息を取らねばな……)

「零次元斬ッッ!! 」

「!? 」


次の瞬間、ギュオーの身体の回りに、渦を巻くような斬撃の軌跡が描かれていた。
ギュオーが驚いて離した手から、ドロロがリナを掠め取る。

「よく片目で平衡感覚を失わずに正確に動けたものだな……これは何だ? 」

「暗殺兵は視力に頼って動くようななまなかな訓練は受けておらぬ故……零次元斬。
 次元を斬り、敵を零に還す技でござる。去らばッ! 」

斬撃が次元を裂き、その狭間がギュオーを飲み込もうと唸る。
だがギュオーは慌てることもなく、ドロロをせせら笑う。

「暗殺兵? 先ほどは忍だと言ってなかったか? 今の動き……片目だというのに、見違えるようだったぞ。
 貴様、他人を救うより……殺すほうが、向いているんじゃあないか? クック……」

「……消えよ」

「バカめッ! 」


動揺したドロロを一笑し、ギュオーが全身の球体―――G・P(グラビティ・ポイント)を発光させる。
同時に重力場が形成され、ギュオーを次元の狭間に落とし込もうとしていた空間の裂け目が歪曲し始めた。

「重力とは……"固定"のエネルギーだッ! 存在を固定し、保つ……"安定"の力ッ! 」

重力場が空間の裂け目を収束させ、通常空間に回帰させる。
ギュオーは、次元の狭間に消失することなく、再び土を踏んだ。

「なッ……」

「去らば、だ」

ギュオーの蹴りがリナもろともドロロを吹き飛ばし、滝の渕まで追いやる。
ギュオーは両手を前に構え、重力の波動を急速に高め始めた。

「君へするはずだった質問は他のケロン人にさせてもらうよ、ドロロ兵長」

「ぐ……」

「貴様等はこの私を本気で怒らせたッ!ウジ虫共が、まとめて地獄に……行けいッ!!!」



最大級の重力波が地面を割り、水面を渦巻かせながら放出された。
水しぶきと砕かれた地殻の雨でドロロ達の姿は目視できなくなる。
やがて静寂が戻り、その場に立っているのはギュオーだけだった。


「クックク……勝ったぞ……消してやった……よしんば滝に飛び込んでいたとしても、
 あの傷ではどちらもそう長くは生き延びられまい……俺は勝てるッ! 相手が魔法使いだろうがッ! 宇宙人だろうがなぁッ!」

狂ったように笑うギュオー、しかし再び、糸が切れるように気を失いかける。
先ほど脇に放り投げたディパックから空のビール缶を取り出し、
見る影もなく変形した滝前川の水を汲んで、プルタブを閉じる作業を繰り返す。

(とはいえ……限界か……安全な場所で……休まねば……)

途切れそうになる意識をなんとか保ちながら、ギュオーは獣神将形態を解き、真紅のプラグスーツを着込む。
そしてフラフラとした足取りで、安全に休める場所を探すため、歩き始めた。


激流に流される。
だが、左手に持った少女の手は放せない。
半ば意識を失った状態で、その意志だけがドロロの身体を動かしていた。
半減し、混乱した意識の中で、ひとつの言葉がドロロの脳裏に響いている。
消えかけた思考が、その言葉を必死で否定する。

(貴様、他人を救うより……殺すほうが、向いているんじゃあないか?)

―――――違う、拙者は……。

そこまで考えて、再びドロロの思考は途絶えた。



【F-5 森/一日目・明け方】
【リヒャルト・ギュオー@強殖装甲ガイバー】
【状態】 全身打撲、大ダメージ、疲労大、気絶寸前 
【持ち物】参加者詳細名簿&基本セット(水損失) 
     E:アスカのプラグスーツ@新世紀エヴァンゲリオン
     空のビール缶(大量・全て水入り)@新世紀エヴァンゲリオン
【思考】
1 優勝し、別の世界に行く。そのさい、主催者も殺す。
2 安全に休めそうな場所を探して休む。
3 油断なしで全力で全て殺す。
4 ケロン人に会ったら降臨者との関係を問いただす。



【G-03/小川・水中/一日目・明け方】

【名前】 ドロロ兵長 @ケロロ軍曹
【状態】 軽い火傷、疲労大、左眼球損傷、腹部鈍痛、気絶
【持ち物】匕首@現実世界、魚(大量)、デイパック(支給品一式)
【思考】
1、リナの手を放さない。
2、殺し合いを止める。
3、ケロロ小隊との合流。
4、冬樹殿含む一般人の保護。

【名前】 リナ=インバース@スレイヤーズREVOLUTION
【状態】 精神疲労極大、疲労大、気絶
【持ち物】確認済み支給品1、パイプ椅子@キン肉マン、デイパック(支給品一式)
【思考】
1、殺し合いには乗らない
2、なんか術使ったらやたら疲れるなぁ


【支給品解説】

アスカのプラグスーツ@新世紀エヴァンゲリオン

アスカが本編で着ていたエヴァンゲリオン操縦用の真っ赤なスーツ。
実質アスカの専用着であることから、サイズはそう大きくないと思われる。
そこそこの耐熱性あり。身体に密着する為、着心地もとてもよろしい。

空のビール缶@新世紀エヴァンゲリオン

ミサトさんがだらしない生活の上で散らかしていた『YEBISU』または『YEBICHU』という製品の空缶。
ミサトさんとの関節キスを味わえる。シンジ君に見せると露骨に嫌な顔をするかも知れない。

細いロープ@スレイヤーズREVOLUTION

リナがザックに入れているマジック・アイテムの一つ。
小型の竜ならぶら下げられる程の驚異的な強度を誇る。

パイプ椅子@キン肉マン

悪魔将軍がキン肉マンを凶器攻撃する際に使った武器。
折りたたみ式で便利。こころなしか歪んでいる?

匕首@現実世界

リナに支給後、ドロロ本人が知らないうちにドロロの食料と交換される。
短刀形の暗器。


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殖装、ガイバーⅨ! リヒャルト・ギュオー 犯罪! 拉致監禁○辱摩訶不思議ADV!
ドロロ死す!? であります ドロロ兵長 夢で会いましょう
リナ=インバース




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