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風がそよぐ場所に僕らは生まれて ◆YsjGn8smIk



まだ深夜といっていいような時間帯、風がそよぐ草原に4つの影が居た。
大きな影と小さな影がそれぞれ2つ。
山を中心に広がる森の外縁付近、彼らは名簿を囲んで座っていた。

『なるほど、Mr.モッチーの知り合いにゲームに乗る人物は居ないと言う事ですね』

そう言ったのは影の一つ、涼宮ハルヒの手の上にあるクロスミラージュだった。

「ちい! ゲンキもホリィもハムもこんなゲームに乗るはずないッチ!
 ナーガも、もうひどい事はしない筈だッチ!」
「ママ達やスバルさん達もこんなゲームに乗ったりしないよ!」

モッチーとヴィヴィオが元気良く彼の質問に答える。
そして彼らよりは幼くないはずの2人は……むっつりと黙っていた。

『Ms.涼宮の知り合いである
 Mr.キョン、Mr.古泉君、Ms.みくる、Ms.朝倉、Ms.キョンの妹も安全な人物という事でよろしいですか?』

クロスミラージュが聞くと、ハルヒはこくんとうなずいてみせた。
アスカに背を向けながら実に不機嫌そうに。
なるほど、と呟き今度はアスカに聞いてみる。

『Ms.ラングレーの知り合いであるMr.加地、Mr.冬月、Mr.シンジはどうなのでしょうか?』
「……さあね」

彼女の返事はそんなものだった。
こちらもハルヒに背を向けたままそっけなく。
クロスミラージュは内心ため息をつく。

本来魔法使いの魔法をサポートするデバイスである彼が、会話の主導権を握るなどという事はおかしいのだ。
しかし、おかしいといっても他に適任者が居なかった。
幼いモッチーとヴィヴィオに話を纏めることなど無理だというのに、肝心のハルヒとアスカがこんな状態だ。
これでは情報交換が円滑に進むわけも無かった。
しかも……。

「……何よそれ。自分の知り合いの事も判らないの?」
「……うっさいわね。加地さんはともかく、副指令とバカシンジがどうするかなんて知らないわよ」

ハルヒがそんな呟きを漏らすと、聞こえたのかアスカが即座に言い返す。
お互い背を向けたままだというのに次第にヒートアップしていく。

「情けないわね、普通分かるでしょ?」
「バッカじゃないの? そんなの分かるわけ無いじゃない!」
「はあ? どっちがバカなのよ!?」

この二人の相性は最悪だった。
まるで水と油のようなこの二人はすぐに喧嘩になるのだ。
何度目になるかわからなかったが慌ててモッチーとヴィヴィオが二人の間に入る。

「ハ、ハルヒ落ち着くッチ!」
「私は落ち着いてるわ!」

「アスカお姉ちゃん、喧嘩はだめ」
「うるさい! アンタは黙ってなさい!」

しかしそれも効果は無い。
逆に怒鳴られ小さな二人はしゅんとうなだれるのが常だった。
それを見てハルヒはくるりと振りかえるとアスカに向かって叫ぶ。

「ヴィヴィオちゃんに怒鳴る事無いじゃない!」
「……あんたも怒鳴ってるじゃない!」

再び始まった怒鳴り合いにあわあわと慌てふためくモッチーとヴィヴィオ。
出会って30分以上経つと言うのに、ずっとこんな感じだった。
ろくに情報交換も進まず、この危険な状況での大声を出しての喧嘩。
そしてこの喧嘩を止められるのは自分しかいないと言う過酷な現状に
クロスミラージュはかつてないほどのストレスを感じた。

(このままだといずれ自分の回路はショートしてしまうのでは?)

彼がそんな漠然とした不安を感じていた―――そんな時だった。

『移動を進言する』

ハルヒとアスカの怒鳴り声を遮り、どこからか声が響く。

「え?」
「な、なに!?」

思わず喧嘩を止めてハルヒとアスカが辺りを見回す。
声はそんな二人を気にした様子も無く静かに続ける。

『現在地での情報収集はリスクが高い、移動を進言する』

見回しても声の主の姿は無かったが、その声がアスカの体から聞こえてきた事はすぐに知れた。
自然、全員の視線がアスカに向かう。
アスカはゆっくりと自分のポケットに手を入れ―――声の元を取り出した。

『あなたは……』
「バルディッシュ!」

クロスミラージュとヴィヴィオが叫ぶ。
そう、そこに在ったのはフェイト・T・ハラオウンのデバイス、バルディッシュ・アサルトだった。

『Yes ser』

アスカの手の上で彼―――バルディッシュが短く答える。
黄色の宝石が付いた三角形のそれを見ながらアスカは呟く。

「……あんたも喋れたのね」
『sorry.状況が判らないので今まで黙っておりました』
「で、あんたが移動を勧める理由は何?」
『現在地は視界が開けすぎています』

「「??」」

バルディッシュの言葉を理解できなかったのかハルヒとモッチーが疑問符を浮かべる。
だがアスカは理解できたのか静かに考える顔へとなっていた。

(視界が開けるって事はつまり射線が通ってるってことよね)

辺りを見まわすと確かに遮蔽物がほとんどないだだっ広い草原。
スナイパーが居たら一巻の終わりだろう。

「確かにこんな見晴らしのいい場所、狙撃してくださいって言ってるようなもんね。
 ……あんた中々使えるじゃない」
『Thank you』

それを聞いて理解できたのかハルヒが大きく頷くと、気楽に口を開く。

「なるほどね、じゃあ移動しましょ。行くわよみんな!」
「……あんた何言ってんの?」

仕切るハルヒにアスカが冷たく返す。

「何って、行くんでしょ? 早く行くわよ」
「な、あんた、一緒に来る気!? じょーだん! あたしはあんた達と一緒に行く気なんて―――」

アスカが怒鳴るがまたバルディッシュが静かに告げる。

『進言、戦力を分散するのは危険です』

もっともな意見に思わずアスカも口を閉ざしてしまう。
更にモッチーとヴィヴィオも口添えする。

「アスカ、みんなで一緒に戦うッチ!」
「アスカお姉ちゃん……みんなで行こう?」

こうまで言われては流石にアスカも折れざるを得なかった。

「わかったわよ! で、何処へ行くのよ。目的地は?」
「高校よ。きっと有希ならそこに何かメッセージを置いてるはずだわ」

ハルヒが自信満々に言い切る。
有希という言葉を聞いてアスカの目線が一瞬鋭くなる。

「有希、ね。……ま、いいわ。わたしも人が集まりそうな市街地に行こうと思ってたしね」
「じゃあ決まり! みんなで北にある高校へ行くわよ、これは団長命令よ!」
「……なによ団長って?」
「感謝しなさいよ! たった今、あんたたちをSOS団の臨時団員になる事を許可してあげるわ!」
「はあっ!? あんたバカぁ? 誰があんたが団長をやってるみたいな怪しい団に入るっていうのよ!」
「あ、あやしいですって!?」

再びエキサイトする二人の会話をクロスミラージュが声をあげて遮った。

『とりあえず進みましょう!』
「そ、そうだッチ!」
「いこう、アスカお姉ちゃん」

それに賛成する子供二人を見て、むっつりとしながらも怒りを納めて歩き出すハルヒ。
とてとてとそれを追いかけるモッチー。
アスカもヴィヴィオと一緒に黙って、その後ろを歩いた。
しばらくは黙ったままの移動が続いたが、最初に沈黙を破ったのはヴィヴィオだった。

「あの、アスカお姉ちゃん……」
「何よ?」

イライラとした表情を隠そうともせずアスカが聞き返す。
その様子に僅かに怯むがそれでも勇気を振り絞りヴィヴィオは続けた。

「あのね、バルディッシュはフェイトママがとっても大事にしてるの……」
「……だから?」

アスカは肩をすくめて更に聞き返す。
明らかにヴィヴィオの言いたい事を分かっていながら聞き返しているのだ。

「アスカ、意地悪だッチ……」
「ちょっと、ヴィヴィオちゃんのお母さんの物だっていうんだから返して上げなさいよ」

それを聞いていたモッチーとハルヒが口を出す。
しかしアスカは二人を振り返りもせず、淡々とした調子で言ってきた。

「黙ってて。これはあたしの支給品よ。武器をあげるなんて冗談じゃないわ」
「どうせ魔力っていうのが無ければ使えないわ。ねえクロッチ、あいつにも魔力なんてないんでしょ?」

『ええ、残念ながらMs.ラングレーにもリンカーコアの存在を感じられません』

聞かれてクロスミラージュはそう答えた。
それを聞いて偉そうにふんぞり返るハルヒ。

「ほら! どうせ使えないなんだからヴィヴィオちゃんに返してあげなさいよ」
「じょーだん! 例え使えなくっても誰かにあげるぐらいなら捨てたほうがマシよ。
 でもそうね。ヴィヴィオ、あんたのこのディパックの中身と交換……っていうなら考えてあげてもいいわよ?」

と持っていたヴィヴィオのディパックをひょいと掲げながらアスカが言った。
あんまりな提案にハルヒが文句を言うが―――

「ちょ、そん―――」「うん、いいよ!」

彼女が文句を言い終える前に、あっさりとヴィヴィオが承諾してしまった。
口の中でぶつぶつと文句を言うハルヒを無視してアスカはディパックを開く。

「へえ、これって……」

ヴィヴィオのディパックを見ながらアスカが独りごちる。
ついでそこから黒光りする鉄塊を取り出した。

「な、何よそれ? ……って銃じゃない!」
「だから何? こっちは煙幕弾にグレネード弾? これは当たりかもしれないわね」

驚くハルヒを横目に、アスカは取り扱い説明書を読みながら淡々と答えた。
散弾銃であるウインチェスターとそれ用の特殊な弾頭が入っているポーチ。
ヴィヴィオのディパックに入っていたのは大当たりといっていいような武器だった。
アスカはヴィヴィオに向き直って、彼女の方を見やる。

「ヴィヴィオ、どうせあんたじゃこれ使えないでしょ? だからこれ、あたしが貰うわよ」
「うん」
「……変わりにこれ。あんたにあげる……あたしには使えないんでしょ?」
『yes』

静かに答えるのはバルディッシュ。
アスカはバルディッシュをヴィヴィオの手に渡す。
ヴィヴィオはそれを見て嬉しそうに微笑む。

「ありがとう、アスカお姉ちゃん!」

ヴィヴィオの笑顔を見てそっぽを向くアスカ。
その頬が微妙に赤くなっているのに気付いたのはクロスミラージュだけだった。

★ ★ ★ ★ ★ 

「面白い……これを使いこなせれば、或いはゼロスですら……」

ゼルガディスはそう呟くと構えた槍を下ろし、一息付く。
殺し合いに乗ると決めてから既に数時間。
彼がまずやった事は武器の確認だった。
彼の知らない魔法の槍、使ったことの無い武器、それらの使い方をまずはじっくりと調べた。
幸いにも説明書が付いており、簡単な使い方とちょっとした異世界の魔法を知ることが出来た。
アームドデバイスとそれの使い方を会得するのに多少の時間がかったが、それに見合うだけの成果は十分に得られたと彼は考える。

軽い休息の後、明かりもつけずにゼルガディスは地図を開いた。
ゲームの優勝……その為にはまず人が集まるであろう場所へ行かなければならない。
おそらく人が集まるとしたら北の町か山頂の神社と書かれた建物だろうと、彼は考える。
しかし先ほど山のほうから竜破斬が炸裂するような轟音を聴いてしまった。
彼は知り合いであるリナには今は会いたくなかった。
故に彼は選択した、北の町を。

★ ★ ★ ★ ★ 

アスカ達四人がゆっくりと森を避けるようにその外周を歩き出してから、はや三時間。
ヴィヴィオのペースに合わせたせいで、ずいぶん時間がかかってしまったが、
ようやく遠目に町が見えてきた。
そんな時だった。
……出会ってしまったのは。

『Alert』

ヴィヴィオの手の上でバルディッシュが警告を発する。
ハルヒの手の中のクロスミラージュが言葉を継ぐ。

『魔力を纏った何者かが接近してきます』

それを聞いて思わず緊張に顔を強張らせるアスカ達。
自然と銃を構えるアスカとモッチーが先頭に立ち辺りを見回す。
暫くして、闇の中では目立つ全身を白ずくめの男が近づいてくるのを発見した。
男は槍を左手で持ち、悠然とこちらへと歩いてきた。

「止まりなさい!」

アスカはウインチェスターを男に向け、警告した。
男もこちらに気付いていたのか、特に驚いた様子も見せずにこちらの言葉に従ってみせる。

「ちょっと、いきなり銃を向けるなんて」
「あっちが何もしなきゃ撃たないわよ……」

ハルヒが文句を言うが答えたアスカの声にも力が無かった。
人に銃を向ける緊張感で喉がカラカラだった。
後ろから恐る恐る男を見ていたヴィヴィオが、急に声をあげた。

「あ、あれストラーダだよ!」

それを聞いて不思議そうにモッチーが聞き返す。

「ちぃ? すとらーだ?」
『はい、彼が持っている槍はストラーダ。我々と同じデバイスです』

モッチーの疑問に即座にクロスミラージュが答える。
それを聞いて銃を握るアスカの腕にも力が入る。

「魔法……って奴を使えるかもしれないって事ね」

数十メートルの距離を挟みしばらく睨みあいを続けていた両者だが、まず口火を切ったのは男の方からだった。

「おい。もしかしてその子供、ヴィヴィオという名前か?」
「な、なんで知ってるッチ!?」

意外な質問にモッチーが驚いて聞き返してしまう。

「駄目じゃない、モッチー! そんな簡単に答えちゃ駆け引きにならないでしょ!」
「ご、ごめんッチ……」

ハルヒに怒られしゅんとうなだれるモッチー。

「そうだとしたら、何?」

どこか他人事のように二人の会話を聞き流しながら、アスカは男に尋ねる。

「フェイトという女がそいつを探していた」
「フェイトママが!?」

ヴィヴィオの顔に笑みが広がる。
ハルヒとモッチーも嬉しそうに喜ぶ。

「よかったわね、ヴィヴィオちゃん! それでその人は何処に?」
「知らんな、E‐4の森で会ったきりだ」

「よーし、じゃあ目的地変更よ! SOS団はこれよりヴィヴィオちゃんのママを探しにE-4の森に行くわよ!」
「ちぃ!」

「……悪いが、それは無理だ」
「え?」

ハルヒがきょとんと聞き返す。
男は何かをぶつぶつと呟き右手を上げて―――

「お前達にはここで死んでもらう」

あっさりとそんな事を言ってのけた。

『Alert.対象より高魔力反応』
『来ます! 避けて下さい』

バルディッシュとクロスミラージュが同時に警告をあげる。
咄嗟にそれに反応出来たのは身構えていた二人、モッチーとアスカだけ。
アスカは銃を構えたまま男の横に回り込み、モッチーは正面から男に飛び掛った。

「ちぃー! もちきー!」
「火炎球(ファイアーボール)!」

男が右手に生み出した炎の球を投げつける寸前、モッチーの頭突きが決まる。

「くっ」

バランスを崩しながらも男は火球を放る。
しかし狙いは外れて火球はヴィヴィオの横を通り過ぎ、誰も居ない地面へと落ちる。

ズン!!

そして爆発が起こった。

(な、なによコレ!?)

直撃こそしなかったものの、それでも少なからぬ衝撃を受けてアスカは息を詰まらせた。
エヴァンゲリオンのパイロットとして戦場を経験したアスカには判ってしまった。
あれが当たっていたら人間なんて一瞬で焼死するという事に。

(これが……魔法!?)

視線を動かすとモッチーもヴィヴィオもその威力に怯んだのか動けない。
だが……

「見た? ねえ見た? ま、魔法よ、魔法だわ!」

それが判っているのかいないのか、ハルヒだけは興奮したように騒いでいた。

(……なんだってこんな馬鹿女と一緒に居なくちゃならないんだか!)

アスカは内心でそんな事を毒づきながらも、冷静にウインチェスターを構え直してトリガーを引く。

ダンっ!

生身ではともかく銃ならばエヴァンゲリオンに乗り散々撃っていた。
その経験が生きたのか多少反動で銃口がぶれたが、弾丸は狙い違わず男に向かって飛んでいく。
男は横に跳んでかわそうとするがその程度で散弾をかわすなど出来ない。
銃弾は男の足へと命中する。
しかし―――

「効いてないっ!?」

男は銃弾をまったく意に介さずそのまま駆け出す。
その先にはモッチーが佇んでいた。

「ちい!?」

槍が一直線にモッチーへと放たれる。
風切る槍を跳び箱を飛ぶように跳び越え、男の懐へと飛び込んだモッチーはそのままビンタを放つ。

「もんたもんたもんたー!」

モッチーが短い腕でビンタを連発するが、リーチが短すぎた。
バックステップであっさり避けられ、モッチーは槍の柄で打ち据えられる。

「ちー!?」

餅のように地面にばよんと叩きつけられるが、モッチーはそのまま体を丸めて男の周りを跳ねまくる。
予想外の行動に男が怯む。

「くそ、なんだこいつは!?」

「頑張るのよ、モッチー!」
「が、がんばれー」

ハルヒとヴィヴィオが声援を送る。
余りの暢気さに思わず舌打ちするが、アスカもただモッチーの戦いを見ていることしか出来なかった。
そのアスカにクロスミラージュが告げる。

『Ms.ラングレー、あの服はバリアジャケットです。物理攻撃を緩和する効果があります』
「なんですって……?」

それを聞いて思わず呻く。
それはつまりただの銃弾では効かないと言う事だ。
モッチーが男に体当たりで攻撃しているが、やはりたいして効いているようには見えなかった。
逆に槍に切り裂かれ徐々にダメージを負っている。
後ろを振り返るとハルヒはヴィヴィオを抱えて後方で声援を送っている。
実質二対一、アスカは急いでディパックからグレネード弾を取り出し、ガシャガシャと慣れない手つきながら銃弾を交換する。
バリアジャケットがどれぐらいの防御力があるかは知らないが、通常弾が効かない以上これを使うしかなかった。
なんとか装填をし終えるが男とモッチーの距離が近すぎてまだ撃てない。
アスカはじっとタイミングを計る。

男は再びぶつぶつと何かを呟く。いや魔法使いらしく呪文を唱えているのだろう。
案の定―――

『Alert.周辺地面から高魔力反応』
『対象から離れてください!』

バルディッシュとクロスミラージュが再び警告を発した。
その言葉を聞いてヴィヴィオを抱えてハルヒが後ろに走る。
銃を構えたまま横に逃げるアスカ。

しかしモッチーは間に合わない。

男は掲げた右手を地面に叩きつけ、呪文を解き放つ。

「地撃衝雷(ダグ・ハウト)!」

力ある言葉にこたえ草原の大地が隆起し、瞬く間に無数の錐となる。
大地の槍は獲物を貫こうと意思があるかのようにうねり、襲いかかる。
何も知らずにあの場に居たらハルヒ達は針の山のようになったそれによって串刺しにされていただろう。
しかしハルヒ達はすでに魔法の範囲外、そしてモッチーも空中にいた。

「何っ!?」
「さくら吹雪ッチーーーー!!」

モッチーの攻撃態勢が偶然にもゼルガディスの術をかわす結果となった。
空中でくるくると横に回るモッチーから桜の花びらと共に強烈な烈風が吹き荒れる。

「くっ!!」

たまらず吹き飛ばされる男。モッチーと男に距離が開く。
そしてその隙をアスカは逃さない。

「このぉ!!」

炸薬を積んだグレネ-ド弾が一直線に男に飛んでいく。
グレネード弾に気付き、回避運動を取ろうとする男だがこのタイミングでは間に合わない。

ドバン!!

大岩をも吹き飛ばす程の大量の火薬が炸裂した。
衝撃で軽く吹き飛ばされたモッチーがコロコロとこっちに向かって転がってきた。

「ひ、酷いッチ……アスカ」
「贅沢言わないの、ちゃんと避けられたで―――」

しかしモッチーの抗議に答える途中でアスカの言葉が止まる。
いや、止まった。
今だ煙渦巻くグレネードの着弾地点の5mほど横―――そこに男が立っていた。

しかも無傷で。

『高速移動魔法を確認』

冷静に、バルディッシュがそんな報告する。
しかしアスカはそれほど冷静ではいられなかった。

「な、なによそれ! 今のを避けられるなんて瞬間移動でも出来るっていうの!?」
『短時間なら、瞬間移動といっていいほどの速度で動く事は可能です』

静かにクロスミラージュが答える。
それを聞いてアスカは呆然と口をあけたまま、ただ男を見つめる事しか出来なかった。

「これほどの威力がある銃とはな……なるほど異世界の技術か」

男はそういってディパックに手を入れ、右手で大きめの鉄の塊を取り出す。
それを見てハルヒが短く叫んだ。

「マ、マシンガン!?」
「ならばこの銃の威力も試させてもらうぞ」

そう宣言すると男はトリガーを引く。

ドドドド!!

「ちーーー!?」
「え、えええっ!?」

モッチーとヴィヴィオを抱えたハルヒが慌てて逃げる。
弾丸は夜目のせいか、マシンガンに慣れていないせいかは判らなかったが、とにかくあらぬ方へと飛んでいった。
もっとも、抜き打ちで……しかも片手で撃って当たるはずも無かったのだが。

「くそ、なんだこれは……何故当たらん!?」

数発撃っても誰にも当たらないことに業を煮やして男は銃口を覗き込む。
それを横目にハルヒとモッチーが叫ぶ。

「ちょっと! ……逃げたほうがいいんじゃない?」
「モッチーもそう思うッチ! 逃げるが勝ちッチ!」

それを聞いてようやくアスカの硬直が解ける。
いくら下手とはいってもまぐれ当たりの可能性はいつでもあったし、当たればこの状況では致命的。
幸い運が味方をして当たらなかったが、いつまでもそれに頼っているわけにもいかない。
これ以上撃たせるわけにはいかなかった。
アスカは震える手でなんとか煙幕弾をセットし、叫ぶ。

「に、逃げるわよ! アンタ達も死にたくなかった逃げなさい!」

ドムッ!

モクモクと煙幕が辺りを覆う。
薄闇を完全に煙が覆い、それに巻き込まれたハルヒとモッチーの混乱した声が響くが
アスカは既に走り出していた。

「ちー、何も見えないッチ!?」
「みんな、とりあえず例の場所で合流よ! 団長命令だからね!」
「くっ! なんだこれは!?」

混乱したように男も呻いている。
鉄臭いそれが何なのか分からず、男はしばらくじっと様子を見る。
そして危険物ではないと判断すると、構えていた銃と槍を下ろし呪文を唱えはじめる。

「魔風(ディムウィン)!」

刹那、男の前方に強烈な空気圧が生まれる。
押し出された大気は一瞬で煙幕を吹き飛ばし、視界を回復する。
急いで周囲を見回すが、既にそこに四人の姿はない。

「逃がすか!」

男は急ぎ呪文を唱えると、空へと舞い上がった。

★ ★ ★ ★ ★ 

モッチーは走っていた。
その短い足で精一杯の速度を出して。
煙幕から抜けてとにかく一直線に走っていたら、気が付くと森の中へと入っていた。
薄闇が漂う森の中、後ろを見て白服の男が追ってこない事を確認するとようやく足を止めた。

「ちぃ、誰もいないッチ」

男も居なかったが、ハルヒ達ともはぐれてしまった事に気付いて、モッチーは不安そうに辺りを見回す。
暗い森で一人ぼっち。
少し怖かったがとりあえず逃げられた事に安心してモッチーはぺたりと地面に座る。

「ちぃ……おなかへったッチ……」

ぐううと鳴るおなかを押さえてモッチーは呟いた。
早くみんなと合流はしたかったが、長時間歩いた後の激しい戦闘と全力での逃走。
それによりモッチーのお腹は食事を要求していた。
モッチーは何か無いかとディパックに手を入れる。

「ん~、ろくな物がないッチ」

どんぐりと水を取り出してながらモッチーが呟いた、そんな時だった。

「必要ないだろう、ここで死ぬんだからな」

上空から聞き覚えがある声が聞こえたのは。

「ちぃ!?!??」

モッチーは驚いた。それはもう死ぬかと思ったほど驚いた。
空の上には先ほどの白ずくめの男が浮かんでいたからだ。

「そ、空を飛ぶなんてずるいッチ!」

慌てて立ち上がるが、モッチーの足は震えていた。
さっきはみんなが居たから戦えたが、一人っきりで戦うのは怖くてたまらなかった。
その様子に男―――ゼルガディスの殺意が僅かに鈍る。
すうっと地面に降りて、じっとモッチーを見つめるその目には深い苦悩があった。
しかし彼はすぐにそれを振り払い、呪文を唱え始めた。

だがその間にモッチーは逃げ出した。

「ばいばいッチ!」

体を丸めて地面と森の木々を跳ね転がりながら、逃げ出すモッチー。
しかしそれを許すゼルガディスではない。

「振動弾(ダム・ブラス)!」

岩をも破砕する振動波がモッチーの背中へとぶち当たる。

「ちぃぃーー!!」

ゴムまりのように跳ね飛ばされそのまま大地に叩きつけられるモッチー。

「苦しめる気は無い……これで終わらせてやる」

モッチーは震えながらも地面に手をつき、立ち上がろうとする。
それを見てゼルガディスは告げる。

「もう諦めろ、苦痛が長引くだけだ」
「い、いやたッチ!」

ため息をつくと静かにゼルガディスは呪文を唱え始める。
せめて苦しまないようにと、彼の最強の魔術を。

―――永久(とわ)と無限をたゆたいし、全ての心の源よ

朗々と呪文を唱えるゼルガディスを睨みながらモッチーはよろよろと立ち上がる。

「モッチーがここで負けたら、みんなが危ないッチ! だから……諦めたらだめなんだッチ!」

ゆらりと桃色のオーラを身に纏いながらモッチーが叫ぶ。
自身を鼓舞しながらしっかりと地面を踏みしめ更に叫ぶ。

「頑張らなきゃだめなんだッチ!」

―――尽きること無き蒼き炎よ

ゼルガディスの心に僅かに焦りが灯る。
この丸っこいモンスターのガッツを見て、彼の戦士としての勘が告げていた。
早く倒さなければ、こちらがやられる、と。

「ガッツ全開ッチーーー!」

底力を振り絞りモッチーは体中からガッツを振り絞る。
桃色のオーラが膨れ上がり、大きく息を吸うようにモッチーが口をあける。

―――我が魂の内に眠りしその力

ゼルガディスの呪文は……まだ完成しない。
モッチーが必殺の一撃を放とうと―――

「モッ―――」

ドドドドド!

した瞬間、モッチーは衝撃を受けて体を揺らす。
ゼルガディスがディパックから取り出したMINI UZIの銃口から煙が上がっている。
大半は外れたが数発の9mm弾がモッチーの体を打ち据えていた。
モッチーの体から今更のように血が吹き出る。

―――しかしそれでも。
血を吹き、ふらつきながらも……モッチーは倒れない。

「ッチィィィーーーーーーーーー!!」

叫ぶように、口からピンクのビームを――モッチ砲を放つ。

―――無限より来たりて裁きを今ここに!

だがモッチーがふらついた僅かな時間でゼルガディスの呪文が完成する。

「崩霊裂(ラ・ティルト)っぐう!?」

呪文が放たれると同時に、モッチ砲をまともに食らい吹っ飛ぶゼルガディス。

「―――ぉぉぅぅぅおおおおおおっっ!?」

モッチ砲は構えたストラーダを粉砕し、バリアジャケットを貫き、ゼルガディスの体を空へと吹き飛ばした。
その凄まじい熱量にゼルガディスの体は焼き焦げる。

しかしゼルガディスの術も発動し、
モッチーの足元から魂のみを焼き尽くす蒼い炎が噴きあがる。

「ちぃぃぃ……!?」

体ではなくガッツが、心が焼かれる衝撃にモッチーが悲鳴をあげる。
脱力したようにその場にひざを付き、ぱたりと倒れる。

―――ズン!

同時に空高く打ち上げられたゼルガディスも重力に引きよせられ地面に落下する。
全身を焼け焦がし、ピクリとも動かないゼルガディス。
銃弾を浴び、精神を焼かれ痙攣するモッチー。

ここに戦いは終わりを告げた。

★ ★ ★ ★ ★ 

(あの二人、無事に逃げられたかしら?)

ヴィヴィオを抱えながらハルヒは思う。
流石に子供とはいえ人一人を抱えての全力疾走はきつく、息が乱れているのが自分でもわかった。
後ろを振り返るがモッチーもアスカも、あの白服の男も追ってこない。

「クロッチ……どう?」
『はい、付近からは敵対象の魔力反応を感じられません』

手の中のクロスミラージュが答える。
それを聞いてようやくハルヒは足を止めた。

「アスカお姉ちゃんとモッチー、大丈夫かな」

ヴィヴィオが心配そうに呟く。
不安そうなヴィヴィオを力付けるようにハルヒは力強く答えた。

「……大丈夫よヴィヴィオちゃん……きっと、すぐに合流できるわ!」
「そう、ですよね」

「じゃあ高校へ行きましょ。……それとヴィヴィオちゃん……悪いけど降りてくんない?」
「あ、ごめんなさい。運んでもらってありがとうございました」

ぺこりと頭を下げてハルヒから降りるヴィヴィオ。
二人は宵闇の中を歩き始めた。

―――何も知らずに。


【C-5/草原/一日目・明け方】

【涼宮ハルヒ@涼宮ハルヒの憂鬱】
【状態】健康、疲労(大)
【持ち物】クロスミラージュ@魔法少女リリカルなのはSts、 ホリィの短剣@モンスターファーム~円盤石の秘密~、
     SOS団団長の腕章@涼宮ハルヒの憂鬱、ディパック(支給品一式)
【思考】
0.高校へ行く
1.キョン達とモッチーとヴィヴィオの仲間達を探す
2.殺し合いには乗らない
3.長門有希は草壁タツオに操られていると断定。草壁タツオを倒して長門有希を助ける

【ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】健康、疲労(特大)
【持ち物】バルディッシュ・アサルト(6/6)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【思考】
0.高校へ行く
1.アスカお姉ちゃんは、本当はいい人だよね
2.なのはママとフェイトママ、スバル、セイン、ノーヴェをさがす
【備考】
※参戦時期は原作終了時エピローグ時点。

★ ★ ★ ★ ★ 

彼女は恐怖にひきつった顔でゆっくりと辺りを見回す。
後ろに誰も居ない事を確認して、どさっと地面に座り込む。

「まったく……冗談じゃないわ」

激しい動悸にあえぎつつアスカは苦々しく独りごちた。
どうにか逃げられたようだが、アスカは素直に喜べなかった。

「このあたしが逃げる事になるなんて……屈辱だわ」

逃げる。その行為自体がアスカのプライドを大いに傷つけた。
それゆえ、彼女は白服の怪物を憎悪した。
銃も、グレネードも効かない化け物。
会話などする前に油断していた出会い頭に撃っていればよかったのだ。
彼女は暗く考える。

(そうよ、化け物と会話しようとしたのが間違えだったのよ。
 ……今度あんな化け物と出会ったら問答無用で撃ってやる)

彼女の憎悪は人間外の全ての化け物に向けられた。

だが彼女は忘れていた。
彼女と一緒に戦ったモッチーもまた人間ではないという事を。

―――忘れていた。


【B-6/草原/一日目・明け方】

【惣流・アスカ・ラングレー@新世紀エヴァンゲリオン】
【状態】健康、疲労(小)
【持ち物】
アーミーナイフ@現実、予備カートリッジx12@魔法少女リリカルなのはStrikerS、
コントロールユニット(ガイバーⅡ)@強殖装甲ガイバー、デイパック(支給品一式入り) 、
ヴィヴィオのディパック、ウインチェスターM1897(4/5)@砂ぼうず、
砂ぼうずの特殊ショットシェル用ポーチ(煙幕弾(2/3)、閃光弾(3/3)、グレネード弾(2/3)、ガス弾(3/3))@砂ぼうず
【思考】
0.高校へ行く?
1.積極的に殺し合いには乗らない、ただし人間以外は問答無用で撃つ。
2.加地と再会したい。シンジに関しては、そこまで執着はない。
【備考】
※参戦時期は少なくとも第弐拾四話以前。

★ ★ ★ ★ ★ 

彼が目を開けるとその場には彼のほかに誰も居なかった。

「見逃された……?」

彼は呻く。
誰も居ないという事は殺せるはずの彼をあえて殺さずに立ち去ったという事だ。

「うっ……」

僅かに動くだけで激痛が走る。
自身の体を見ると酷い有様だった。
いくらバリアジャケットがあったとはいえ常人なら死んでいただろう。
しかしあいにく彼の体は常人とはかけ離れていた。

「また、この体のお陰で助かったというのか……」

ゼルガディスは痛みを堪えながら治癒の魔法で火傷を癒しながら呟く。
彼の体は岩人形(ロックゴーレム)邪妖精(ブロウデーモン)と融合している。
その為、三分の一は岩で出来ているため、耐久力も人をはるかに越えている。
常人なら死んでいたであろうダメージにも、彼の岩の体は耐え抜いてしまった。
この体を嫌いながらも、それによって命がある。
その矛盾に彼は苦笑する。

そしてゼルガディスは気付かなかった。

モッチーが居た場所にディパックと首輪が落ちている事に。
その横の地面から生えている円盤石に。

―――まだ気付かなかった。


【モッチー@モンスターファーム~円盤石の秘密 死亡】


【C-6/森/一日目・明け方】

【ゼルガディス@スレイヤーズREVOLUTION】
【状態】全身火傷で動けない(魔法で治療中)、魔力大消費
【持ち物】支給品一式、MINI UZI (10/20)@砂ぼうず
【思考】
1.とりあえず動けるようになるまで治療
2.優勝し、元の人間の体に戻る
3.リナとの戦闘は避けたい、ゼロスは警戒

※なのは世界の魔法、バリアジャケットとソニックムーブの魔法の使い方を覚えました。

【地面情報】
C-6にはロストしたモッチーの円盤石があります。
その付近にディパック(地球動物兵士化銃@ケロロ軍曹、どんぐり五個@となりのトトロ、支給品一式 )、
モッチーの首輪、砕けたストラーダが落ちています。



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つよきす~mighty heart~ 涼宮ハルヒ God Knows……
ヴィヴィオ
惣流・アスカ・ラングレー 模倣より生まれ来る創造
モッチー GAME OVER
たとえ消えそうな、僅かな光だって ゼルガディス 白く還りし刻






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