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台風の目~they and……~  ◆h6KpN01cDg



夜の暗闇に、わずかに光がさし始めたその時。
冬月コウゾウは、隣の加持に声をかけた。
10分でホテルを出る予定だったのが、やはりもう少しくらい、と延長した結果いつの間にか放送まであとわずかになっていた。
それまでの間にしていたのは、していたのは他愛もない世間話。主にネルフの同僚やエヴァのことだ。
他の人に聞かれていたらいろいろ問題があったが、あいにく周囲には誰もいない。いたとしても、意味が分かるかどうかは別にして、だが。
「加持君、……もう、時間が」
ああ、と加持は思いなおす。そう言えば放送が終われば喫茶店に行く、という話だったはずだ。
そこに小砂という少女とタママが来るはずだ。二人ともまあまあ話せる人物のようだし、利用しない手はない。
「……ええ、そうでしたね」
そう言いながらちらりと自分がやってきた方向を見やる。人影はない。
「……結局高町さんは、来ませんでしたか」
本来決めていた10分を過ぎても尚、高町なのははホテルにやってくる気配はない。やはり10分でここまで戻ってこれるほどの異常能力者ではなかったか。
あの性格だ、死んだ人間でも見つけて追悼しているか弱者を保護しているかのどちらかだろう。
「……本当にいいのかね?待たなくても……」
用事があるにもかかわらず、なのはのことを心配しているらしい冬月。加持は肩をすくめ、頭を横に振る。
「大丈夫でしょう。俺たちって彼女は自衛手段を持っていますから」
「……そうだな、君の同行者を信じよう」
「それはどうも」
さて何を書き残すか。加持は思考する。
なのはとは合流したい。しかし単純に喫茶店に行くという旨を書けるはずもない。
「……さて、どうしましょうかね?」
場所を示せば、それを見つけた危険人物がそちらに向かってくる可能性もある。ここがネルフならば複雑なパスワード化くらい訳もないのだが、ここはただのホテル。そんなことは無理だ。
そしてほかの人には分からないように居場所を伝えることができるほど、加持はなのはのことを知らない。
仲間の名前も、保留にしたっきり聞いていないのだ。これではどうしようもないだろう。
加持はしばし考え、ディパックを地面に下ろし、そこからメモ用紙に走り書きをする。
なのはなら、これだけでも理解してくれるだろう。

『仲間と合流しました。頼りになる人物ですのでこれからは大丈夫です。ありがとうございました』

それだけを書き記す。
「……加持君、合流はしなくていいのかね?」
「この状況では仕方ないでしょう。行く先を書くわけにもいきませんし」
いざというときは冬月を盾にでも使って生き延びればいい。なのはは惜しいが、主催を倒すことを目標にする強者はなのはだけではないだろう。
……もっとも、完全に諦めたわけではないのだが。その小砂、とやらがなのはを拾ってくれやしないかとも思う。
可能なら、今でも利用したい。実現は厳しそうだが。
「……そうだな。では、行くとしようか」
「はい」
冬月の言葉で、加持も歩き出した。
メモを、ホテルの壁面に貼り付けて。

―――みんなおはよう、今日は天気の気持ちいい朝だね、いまはどんな気分かな?

冬月と加持が、その声を聞いたのは、二人が次のエリアに入って少ししてからだった。
「……加持くん、これが……」
「はい、放送……のようですね」
ホテル内に設置されたスピーカーから聞こえてきた男の声に、わずかに眉を上げる冬月。加持はそれに対して小さくうなずいた。
「……あの二人は無事だろうか?」
冬月の声。心配なのだろう。
「セカンドとサードチルドレンがそう簡単に死ぬとも思えませんがねえ。まあ二人ともエヴァがなければただの中学生、油断はできませんが」
加持も心底穏やかでなさそうな表情を作るが、内心は冷静だった。
―――シンジ君はともかく、アスカは生きていそうだ。
自分に必要以上にすりよってくる少女。アスカは人を殺してでも生き延びようとしそうだ。
シンジの方は分からない。普段はてんで役に立たないへたれ小僧だが、仮にもエヴァで戦い続けてきた少年。基本的に殺し合いはよしとしないタイプだろうから、たくましく主催者に反抗しようとしている可能性もある。
「……まあ、とりあえず放送を聞きましょう」

そして男が禁止エリアを読み上げていく。冬月も加持もそろってメモをとる。
いやに偏ったな、と加持は思う。Eに2か所も集まったのは偶然なのだろうか、それとも意図的なことなのだろうか。
遊園地を挟むような結果だということが更に怪しい。遊園地に何かがあるというのだろうか?それともそこに疑問を抱かせ、強者と弱者をかち合わせるための罠か?
まあ二回目の放送になれば、分かるだろう。加持はそのことは保留にする。
どっちにせよ、今から向かうべきは禁止エリアとは無関係の方向だ。
続いて死者の名前も呼ばれる。
やはり、予想通り、と言うべきか何というか、知り合いの二人の名前はなかった。
「……5人、か……多くはないが、確実に人は死んでいるのだな。……人間の手で」
冬月が辛そうにそう漏らす。人の死に今更動揺するような生活はしていないのだが、それでも人の死を悔いるのはいかにも冬月らしい。
それに対して加持が持った考えは、呆れ。
―――たった五人か。俺の予想じゃ10人くらいはいると思っていたんだが。
生き残るためなら、人を殺しても仕方がない。そう考えている加持のような人間は案外少ないということなのだろうか。この会場の参加者の多くが高町なのはのような平和主義者だというのか、それともただ単に出方を窺ってなりを潜めているだけなのか。
一つ目と二つ目ならいい。願ったりかなったりだ。しかし3つ目なら問題だ。迂闊に危なそうな人物には近づかない方がいいだろう。
―――どっちにせよはっきりしたのは、人を殺すような奴がここには確実に数人はいるってことだ。
同一人物が複数の人間を殺した可能性も否めないから、最低3人ぐらいは、と見積もる。
―――そして、仲間もぶっ殺しちまうような割り切った奴もいるってことで。
草壁タツオが言っていた、「昔からの友達を殺した人間もいる」の言葉。その言い回しを聞いた瞬間に、加持は思わず吹き出しそうになり必死でこらえたのだったが。
まるで、自分の今からやろうとしていることを言い当てられたような気分になったからだ。
もし加持が冬月ともう少し早く会っていたら、一回目の放送の前に彼を殺していた可能性もある。そうすれば該当するのは自分だっただろう。
ある意味その仲間を殺したという人間に興味を覚えなくもなかったが、危険人物の可能性が高いので、決して会いたくはない。
―――まあ、俺と冬月のじいさんは友達、なんて可愛い関係じゃないけどさあ。
どちらかと言わなくともビジネスライクな関係だろう。ということはその殺した奴とやらは学生だったのか。どちらにせよ自分たちのことではない。
「……タママ君は平気だろうか」
「タママ……って、あれですか、冬月さんがさっき言ってた宇宙人っての」
「ああ、そうだ。……彼の知り合いの名前が呼ばれていた。落ち込んでいないといいが……」
どうやら、冬月はこの場で知り合った参加者の知り合いの死をも痛んでいるらしい。
ネルフでも確かに彼は良心的な存在ではあった、のだが。
―――優しいねえ、副司令さんは。
少し腹の底がむかむかしてきた。この男は自分の正体を知っているはず。それなのにあくまでそちらに関してはシラを切り続け、宇宙人とやらには肩入れするのか。
―――まあ、こんな場所でわざわざ言う必要のあることでもない、か。

どっちにせよ、必要な情報を引き出した後に殺してしまえば何も問題にはならないだろう。
加持の思考は、冬月の言葉で遮られた。
「……ふむ、ともかく急ごう。ただでさえ遅れている。タママ君のためにも、な」
「はいはい」
加持は軽い調子で返事をし、冬月の後を追った。


場所は変わり、B-7地区。
そこを歩く、3つの人影。
正確に言うなら、2つの小さな影が、1つの大きな影をかついで走っている。
さすがに体力的に限界に近い。倒れそうになりながらも、ケロロはしかし、目当ての建物を見つけていた。
「……二等兵、あそこでありますか?」
「そ、そうですう……」
うむ、とケロロは呟く。そしてタママにあと少しだ、と促しサツキの体を抱えなおす。
「……冬月とやらはいないでありますな」
「……はい」
「仕方ない、先に中に入るとしよう。何よりもサツキ殿の安静が優先でありますからな」
ケロロは小さな体で喫茶店のドアを開けた。ぎい、という音とともに中に転がるように入り込む。
ケロロとタママは、床にサツキを寝かせる。
本当なら椅子の上にしてやりたかったのだが、二人の力では人間用の椅子に背丈が届かないので、仕方なくあきらめたのだ。
「……サツキ殿……」
いまだに目を覚まさないサツキを心配そうに見つめるケロロ。
先ほどの妙な虫のおかげで、死は免れたようだったが、それでもまだ油断はしてはいけない。
「……軍曹さん……フッキー、来るでしょうか?」
「二等兵が約束したのならば、きっと来るでありますよ」
落ち着いた調子で言うケロロ。タママを落ち着かせようとしたわけではない、冬樹のことが頭に引っ掛かり、冷めた声が無意識に出てしまっただけだった。
「……でも……ボク……」
ぐずるタママ。何か引っかかっていることがあるらしい。
「ボク……コサッチにも攻撃して……フッキ―にも酷いこと言ったですう……」
ぽつり、と力なく語るタママ。
ケロロに叱られたことに加え、冬樹の死を知ったことがよほどこたえているのだろう、そこに彼の邪悪な面は微塵も見受けられなかった。
「……だから……二人とも来てくれるか……」
「大丈夫でありますよ!」
言い切った。根拠はなかったが、そう思った。
「ただ到着が遅れているだけでありますよ、タママ二等兵。我輩の言うことに間違いはなあーい!」
「ぐんそうさん……」
タママの前では平気な顔をするものの、内心ケロロは不安だった。
本当に来てくれるのだろうか、サツキが彼の到着より早く衰弱してしまうのではないか、そして何より、彼はサツキの容態を見ることができるのか、疑問はつきない。
ともかく早く冬月が来れば―――そう考えた時だった。
ドアの開く音が、した。
「フッキ―Ⅱ!」
タママの泣きそうな声。ケロロもタママの声に振り向く。

そこにいたのは、もう年配の域にさしかかった男だった。
軍人であるケロロから見ても、到底実戦で勝負になるとは思えない。しかし、確かにどことなく頭が切れそうではある。
「……すまない、タママ君。遅れてしまって」
「そんなことはいいです!フッキ―Ⅱ!お願いですう、サッキ―を……!」
冬月はタママの泣きそうな顔を見て何かに気づいたのか、ケロロとサツキの方に視線を向ける。
そして一瞬困ったように唇を噛んだが、すぐにケロロの方に近づいてきた。
ほっとする。付き合いやすそうな人間だと、すぐに分かった。
「……吾輩はケロロ軍曹であります。冬月コウゾウ殿、でありますな?」
「そうだ。ふむ……怪我をしているのか。こうなった経緯は?」
本職は医者ではないようだが、やはり研究者であるだけあり、冬月はサツキの容態をじっくりと観察している。
「いや……それが……」
言葉を濁すケロロ。説明するのは簡単だったが、タママの前では言いにくい。
案の定タママは、申し訳なさそうに俯いている。
タママはこの場から外した方がいいだろうか、ケロロは考えるが、結論が出るよりも先にタママは口を開いていた。
「……ぼ、ボクが……ボクのせいで……」
ふむ、と冬月は呟く。おぼろげにはことの顛末に気づいていたようだ。
「ボクが……サッキ―を……うっ、ご、ごめん、ごめんなさい……」
大丈夫だ、ケロロはそう判断した。
自分の口で罪を認め、後悔することができたのだ。タママはもう、間違わずに進めるだろう。
「……冬月殿、二等兵は既に反省しているのでありますよ、だから……」
ケロロは男にそう説明しようとしたが、男の穏やかな笑顔にさえぎられる。
「……それくらい分かるさ。……人を見る目はあるよ、私にも」
―――素晴らしい、人でありますな。
ケロロは思う。タママが共にいたのが彼で良かった、そう思った。
「……さて、問題はこの子だ……」
冬月はもう一度床に寝かされたサツキを見やり、服の袖をまくった。
「ど、どうでありますか?」ケロロから、思わず不安そうな声ガ漏れる。
「……私は医者ではないから、細かい症状までは分からないが……さほど傷は深くないと思う。安静にしていれば、意識を取り戻すだろう」
冬月の言葉に、サツキの顔を瞬きもろくにせず見守っていたタママがぱっと顔を上げた。
今にも冬月に飛びつきそうな勢いだ。
「……ほ、本当なのですか!?」
「おそらくは。……しかし、床に寝かせておくのも忍びないな。何か布団のようなものはないだろうか?」
「カーテンはどうでありますか?」
ケロロは冬月の背後にある窓にかかっているカーテンを指差した。
「あれを何枚か使えば代わりになるでありますよ」
「いや、ケロロ君。大丈夫だ、俺がいいものを持っている」
そこに、声がかかる。
聞いたことのない声だった。
ケロロが反射的に顔を持ち上げると、そこにはラフな格好をした若い男の姿。
黒髪を後ろで一つにまとめており、ケロロに穏やかな笑顔を向けている。
「……副司令、これはどうでしょう」
男は冬月に、白い大きな布を差し出した。
「加持君、これは君の……?」
「ええ、支給品なんですがね。使いようもないのでこの子のために、ってね。どうでしょ」
加持、という名らしい男は、冬月の知り合いのようだった。
それならば悪い人間ではないだろう、ケロロはそう考える。
「い、いいのでありますか?」
一見何の変哲もないものに見えるが、配られたものを出会ったばかりの自分に渡すことに抵抗はないのだろうか?
ケロロは悩んだが、自分の思考が杞憂だったとすぐ気付いた。
「何を言うんだ、女の子を男が助けるのは当たり前、大人が子供を助けるのも当たり前、そうだろ?」
加持がそう言ったからだ。
何のためらいもなく、抵抗もなく。
「あ、ありがとう……です……」
タママが加持と冬月の顔を交互に見比べ、今にも泣きそうな顔をしている。
冬月が加持からその布(どうやら、衣服のようだが)を受け取り、サツキをそっと抱きあげ彼女の下に敷いた。
「……ん」
サツキを元の位置に寝かせ直した時、彼女がわずかに寝返りを打った。
「……サッキ―!」
「二等兵!まだゆすっちゃだめでありますよ!」
ディパックを弾き飛ばし、サツキにタックルでも食らわしかねない勢いだったタママを諌め、ケロロもサツキの容態を見守る。
「……う、……ごめんなさいですう……」
タママの謝罪。ケロロは上官らしく、そんな彼に指示を下す。
「……二等兵、君の今の使命はサツキ殿が目覚めるのを見守ることであります」
「……ぐ、軍曹さん……」
―――吾輩は、タママを信じるでありますよ。
これから、彼は罪の意識にさいなまれることになるかもしれない。
そしてもしかすれば、サツキがタママを許してくれるかどうかも分からない。
それでも、ケロロは、この部下をフォローしようと決めていた。
―――冬樹殿……吾輩は、精いっぱいやるであります。
サツキの顔を見る。力のない、普通の少女。それはまるで冬樹を思い出させた。
冬樹のことを考えると、怒りと困惑と悲しみが同時に襲ってくるが、今はサツキのことを考える、その方がいい。
心優しい友人はきっと、この少女を助けることを望むだろうから。
「……っ……う……」
そして、ケロロの願いが通じたかのようなタイミングで―――
サツキは、目を覚ました。


……あれ?
ここ……どこだろう?
目の前がぼおっとする。私……何してたんだっけ?
メイ……メイは……ああ、そうか。
私……殺し合いをしろって言われて、変な場所に連れて来られて……
そこでケロロに出会って……そして、タマちゃんにも出会って……
そして、
「……っ、う」
明るい。ここは……?
ぼんやりとした視界の中、うっすらと何かが見える。
そして、誰かの顔。……だあれ?
「サッキ―!」
タマ、ちゃん?
どうして、タマちゃんは泣いているの?
タマちゃんは、私のこと―――
「サツキ殿!」
「……良かった、意識を取り戻したようだな」
「はあ、これで何とか大丈夫ですね」
ケロロ、そして知らないおじいさんと男の人。
そこでようやく、私は気付いた。
―――ここ、さっきいた場所と違うんだ。
タマちゃん、どうなってるのかな……?
……ああ、そうだ、そう、そんなことより―――
「……た、まちゃん」
上手く声が出ない。言いたいことはたくさんあるのに。
……あ、痛いんだ。全身。喉も思い通りに動かない。
「サッキー!?サッキ―……サッキ―……」
「メイ、は……?放送……メイ……」
そうだ、メイだ。
さっきお父さんが言ってた。死んだ人は放送で名前を呼ぶって!
きっともうその時間のはず。メイは、メイは……?
「大丈夫でありますよ、サツキ殿。メイ殿の名前は呼ばれていないであります」
ケロロ……本当に?
「よか、った……」
メイが無事でよかった。もちろん、ケロロも、タマちゃんも―――
「タマちゃん、ごめんね」
「な、何でサッキ―が謝るんですかあ!ボクが一方的に……!」
ううん、そんなことない。
タマちゃんは優しい子なんだよね。……私には分かる。
私が、ケロロに守ってもらってばかりで、嫌になっちゃったんだよね。
確かにタマちゃんは怖かったよ。
でも、私はここにきて、何もしてなかった。
妹を守りたいって言いながら、怖がるばかりで何もできなかったんだ。
それに、分かる。すごく良く分かるんだ。
今のタマちゃんは、本当に申し訳ないって思っていること。
うん、……私も強くならなきゃ。
今だって、こうやって皆に助けてもらっているんだよね。
ごめんね、私……弱くって。
「……ケロロ、タマちゃん……えっと、そちらのお二方は……」
とりあえず起き上がらなくっちゃ。そう思って体を起こした瞬間、全身に割れるような痛みが走った。
……だめ、まだ、動けない。
ごめん、私のせいで、足止めかな。
「冬月コウゾウだ」
「俺は加持リョウジ。よろしくね、お嬢ちゃん」
二人ともいい人で、よかった。
私―――本当に恵まれてる。
「放送で、何人死んだんですか?」
ケロロに聞く。ケロロは一瞬難しそうな顔をしていたけれど、すぐに応えてくれた。
ちょっと、怖かったけど。
「……5人、でありますよ」
5人。それだけの人が死んでしまったんだ。
……あの時溶けて消えた男の人みたいに。
嫌、怖い。その人たちが死んだのはお父さんのせいなんだって考えると、怖い。
でも―――
私は、きっと幸せなんだ。
大怪我をしているみたいなのに、こうやって普通に話ができる。
タマちゃんは私のために泣いてくれて、ケロロも冬月さんも加持さんも心配してくれている。
メイも、まだ生きてる。――-トトロも。
「タマちゃん……皆さん、ありがとう、ございます―――」
泣いちゃいけない、そう思った。
メイが、待ってる。
メイに会うまでは、絶対に。
「……サッキー……ボク……ボク……」
タマちゃんの小さな体を、抱きよせた。
少し肩が痛かったけど、多分もう、大丈夫。
「ごめんなさい……サッキ―……ごめんなさいっ……!」
タマちゃんは、まるでメイみたいだった。
いたずらっ子で、手がかかって、問題を起こしてしまう、それでも可愛い、弟ができた気分だった。
なんでだろう、すごくすんなりと、私はタマちゃんを許せてしまった。
タマちゃんは、ケロロが大好きだったんだって分かったからかもしれない。ケロロ、すごくいい人だもんね。
「……うん、ありがとう、タマちゃん」
私、がんばるよ。
ケロロだって、怖い思いをして仲間を呼んでくれたんだ。
この人たちがいなければ、私はきっと死んでたから。
「……頑張ろうね」
大丈夫、私は。
ケロロと、タマちゃんと、……優しい人たちと一緒なら、きっとやっていける。
お姉ちゃんなんだから―――強くなろう。
メイのために、そしてタマちゃんのために。



ここで、5人の物語はひとまず折り返し地点へとやってきた。
疑心暗鬼は消え去り、互いをこれからもっと分かりあっていく。
彼らは何があろうとも、これから望み続けるだろう。
仲間たちと合流し、無事元の世界へ帰ることを。
亡くした者のために、忘れてきた定めのために彼らは―――強く進むのだった。
よって、ここで一時、彼らの物語は終わりを告げ―――


―――告げられる訳ないだろうが!
否―――そう上手くいくはずもない。
サツキが意識を取り戻し、タママと仲直りする一部始終を、実に冷静な目で見据えていた人物がたった一人、いる。
―――ああ、何だろうなあ、くそ、どうしてこう無償に煙草が吸いたいんだ?
結論から言うと―――彼・加持リョウジは、苛立っていた。
何に、と言われれば簡単だ。
目の前で繰り広げられる、お涙頂戴の茶番劇に、である。
加持は生きるために手段は選ばない男ではあるが、決して情の欠片もない冷血漢ではなかったはずなのだが―――焦りか、不安か、加持は目の前で起こる光景に深く感動することなどできなかった。
―――副司令、あんたはやっぱりどこまでも善人らしい。
ネルフの副司令官たる男の知識。確かにそれは有用ではある。しかし、自分はいったいいつまでこの男と行動できるだろう?
知識を得てから?隙を見てから?皆の信頼を獲得してから?……それは何時だ?
その間に、こんな感動的名場面を見せられているうちに、敵に襲われたらどうするのだ。
今だって運が良かったから誰も来なかった。こんな傷だらけの小娘一人に構って全滅、なんて最悪にもほどがある。
―――なあ、副司令。俺は生きたいんだ。何としてもな。
おそらく、ケロロやタママは自分のことを既に信頼しているだろう。冬月の仲間であると同時に、可能な限り優しく対応した。問題はない。
サツキの方も会話はできていないが、おそらくケロロとタママが信頼してくれるのならばたやすいだろう。……女性の信頼を得ることは、正直自身がなかったりするのだが。
―――切り時かも、な。副司令と……そして足手まといの草壁サツキは。
加持はそっと、誰にも見えないように掌の上のモノを転がす。
タママとケロロ、冬月がサツキと懸命に話していた時に、加持がサツキのディパックから拝借したものだ。
どうやらディパックの奥に引っ掛かっていたらしく、タママがサツキに駆け寄り弾き飛ばされた際に外の世界へと顔をのぞかせたらしかった。
―――なかなかおあつらえむきのものも、手に入ったところだし。
加持の手にあるもの。
それは―――「毒入り」と書かれたカプセルだった。
小さな袋に、4つ。この但し書きをどこまで信じていいのかは怪しいところだが、本物である確率は高いだろう、と加持は考えていた。
殺し合いを嬉々として語るような人間が、わざわざ嘘を描いてまで偽物を支給するとは思えなかったからだ。
―――とは言っても、試してみた方がいいかもしれないな。
加持はタママに抱きつかれて困っている、ようでいて楽しそうな顔の冬月をちらりと見やる。
―――これで、人を殺せるのかを。

自分の武器は銃だけだった。銃は確かに殺傷能力こそ高いが、どんなに注意深く使用しても周囲に銃声が聞こえてしまうという難点がある。場所がよければ音を消すこともできるだろうが、ここでは厳しいだろう。
その点、これが本当の毒なら、銃で人を殺すよりずっと容易だ。
頭を使えば簡単に毒を盛ることができるし、ケロロやタママのような宇宙人はともかく、人間ならば間違いなく殺すことができる。
だが、そうなると失敗は許されない。銃ならばともかく、毒を間違えて混入するなどどう考えてもありえない。
そう、だからまだ早い。手に入れたばかりのこれをすぐに使うのは早計だ。分かっている、分かっているが。
まだまだ信頼は築ける。しかし、悠長にしている時間はあるのか。
強者に目をつけられてからでは、遅いのだ。
―――さあ、どうしようかね。
わずかに良心が痛むことには、気付かないふりをして。
加持は思考する。
タママが嬉しさのあまり泣き、サツキが心の底から笑い、冬月がうろたえながらも微笑み、ケロロが強く決意を固める中。

自らが、生き残るための手段を。

【B-7 喫茶店/1日目・朝】

【冬月コウゾウ@新世紀エヴァンゲリオン】
【状態】疲労(中)
【持ち物】 ソンナ・バナナ一房(残1本)@モンスターファーム~円盤石の秘密~、 スタンガン&催涙スプレー@現実
      不明支給品0~1、ディパック、基本セット(名簿破棄)
【思考】
0.ゲームを止め、草壁達を打ち倒す
1.サツキの体調が回復し次第、どこに向かうか話し合う
2.シンジ、アスカ、夏子、ガルル、ドロロを探し、導く
3.タママとケロロを信頼
4.首輪を解除する方法を模索する
※現状況を補完後の世界だと考えていましたが、小砂やタママのこともあり矛盾を感じています

【加持リョウジ@新世紀エヴァンゲリオン】
【状態】健康
【持ち物】基本セット ディパック 毒入りカプセル@現実
     グロッグ26(残弾11/11)と予備マガジン2つ@現実
【思考】
0.何としても生き残る
1.4人(最優先は冬月、次点がサツキ)を殺すか否か、殺すならどうするかを考える
2.冬月は利用価値がなくなったら速やかに殺害する
3.とにかく使える仲間を得たい、その際邪魔者は殺す
4.なのはとは出来れば合流し、守ってもらいたい。
※主催の二人はゼーレの上位にいる人間ではないかとも思っています
※カップ焼きそばのうちの一つの中身が捨てられ、代わりにグロッグ26と予備マガジンが隠されています
 ふたつともすぐにでも取り出せる状態です
※今の状況に、やや不安を感じています
【名前】ケロロ軍曹@ケロロ軍曹
【状態】健康
【持ち物】北高女子の制服@涼宮ハルヒの憂鬱、ジェロニモのナイフ×4@キン肉マン(うち2本を装備)、自転車@現実、
首輪探知機@現実?、デイパック(支給品一式)
【思考】
1:サツキの体調が回復し次第、どこに向かうか話し合う。冬月、加持と情報交換をしたい
2:冬樹の仇は、必ず見つけ出し償わせる。
3:メイを探す。協力者も捜す。
4:ゲームに乗った者、企画した者は容赦しない。
5:で、結局トトロって誰よ?
※漫画等の知識に制限がかかっています。自分が見たことのある作品の知識はあいまいになっているようです。

【名前】草壁サツキ@となりのトトロ
【状態】気絶、全身にダメージ(中)
【持ち物】拡声器@現実、デイパック
【思考】
0:メイを守る。怖いけど、できる限り頑張ってみる
1:ケロロや冬月達から詳しい放送を聞きたい
2:トトロ……?

※トトロに会う前からの参戦
※ケロロを名前と外見(人外)からトトロとかかわりがあるのかもしれないと考えています。
※サツキの不明支給品の中身は毒入りカプセル@現実 です。
※アメリアのマント@スレイヤーズREVOLUTIONは布団代わりに使われています。
※第一回放送を聞き逃しました。死んだ人数のみケロロから聞いています。

【タママ二等兵@ケロロ軍曹】
【持ち物】 マッハキャリバー@魔法少女リリカルなのはStS、ディパック(支給品一式入り)
【状態】 全身裂傷(処置済み)、肩に引っ掻き傷、感動
【思考】
1:サッキ―……ありがとう……
2:ゲームを止める。妨害者の排除。
3: サツキの体調が回復し次第、どこに向かうか話し合う。
4:小砂、ネブラは用が済んだら殺害する(?)

【首輪探知機@現実?】
ロワお馴染みのシロモノ。探知可能領域は周囲1エリア程度。

【マッハキャリバー@魔法少女リリカルなのはStS】
スバル・ナカジマ操るローラーブーツ型のインテリジェントデバイス。
リボルバーナックルとのシンクロがされており、リボルバーナックルの収納・瞬間装着・カートリッジロードをマッハキャリバー側で制御している。
当初は機械的な性格であったが、思考や学習に関しては積極的で、「AIだけど心がある」ものとして接したスバルとは互いに相棒と呼び合うまでの信頼関係を築いている。

「……誰もいないな」
アプトムは、ホテルの前に立っていた。
アスカから聞いた「頭が切れる」という冬月や、深町晶がいることを期待したのだが、そう上手くはいかないか。
悪魔のようなあの男に出会わなかっただけ幸福というものだろう。
今のアプトムは全裸にサングラスだけかけていると言った状態。近くに人がいたならばただの変態としか映らないだろうが、あいにく周囲に人影はない。
「……ひとまず休息を取るか」
ホテルに入ろうと入口に近づき、アプトムはふと足を止めた。
「……ん?何だこれは?」
それは、メモ用紙のようだった。男の字でなにやら走り書きがされている。
「ふん、深町晶ではないだろうな」
目を通す。そこにはただ仲間と合流したという旨が書かれていただけだった。
おそらく道中で望まず離れ離れになってしまった弱者のメッセージなのだろう、アプトムはそう推測した。
行動を共にする予定だったが、この書き手は知り合いと出会いそちらに保護してもらうことになったと。身捨てられたも同然だが、この場においては無理もないことだ。
「……まあ弱者がどう交流しようと俺の知ったことではないが……」
ホテルの玄関に目をやる。土にはわずかながら、靴で踏み固めたような跡があった。
ほんの少し前に、人がいたであろう気配が存在している。
「襲われた、か?」
アプトムが考えたのは、ここにいたであろう人間が、突然何者かに襲われこの手紙を残したのでは、ということだった。
そしてこの紙には何か特殊な暗号でもあるのかもしれない、とも。
だがすぐにそれは違うな、と思い直す。
ホテルは窓ガラスの一枚も割れていないからだ。襲撃があったのなら、いかに相手が弱かろうと建物は多少損壊するはずだ。無償などはありえない。
それならただのメッセージでしかないのだろう、とアプトムは納得した。
「……とにかく、罠ではないか」
書き手の意図はまだ判断がつかないが、頭には留めておくことにする。
「さて、傷を癒すとしよう」
そう言えば、このメモを託された相手とやらは、もうこれを見たのだろうか。
おそらく見てはいないのだろう。済んでいれば壁から剥がすはずだ。
―――この相手とやらも、ここに来るかもしれんな。
他人と合流していたということは、一般人の可能性が高い。深町晶のような弱い者を助け歩く強者はそうはいない、そう思いたい。
まあ、あまりに強い相手ならば逃げればいい。自分は「ガイバー」だ、逃げることも訳ない。
そして弱者なら、先ほどのアスカのように必要な情報を絞り取ればいい。その中に冬月や深町らの情報があれば儲けものだ。
―――まあいいさ。とにかく、休みがてらその人物とやらに会うことにするか。

アプトムはロビーのソファ―に腰かけた。
しばし肩を休めるために。
そしてここに来るであろう人物から、情報を得るために―――。


【B-5 ホテルロビー/一日目・朝】
【アプトム@強殖装甲ガイバー】
【持ち物】
碇司令のサングラス@新世紀エヴァンゲリオン、光の剣(レプリカ)@スレイヤーズREVOLUTION
ヴィヴィオのディパック、ウインチェスターM1897(2/5)@砂ぼうず、ディパック(支給品一式入り)
【状態】疲労(小) 肩口負傷、左足負傷(移動には問題なし)
【思考】
1.ホテルでしばし休息を取りつつ、ホテルに来るであろう人物から情報を聞き出す。
2.深町晶を殺してガイバーになる。
3.強敵には遭遇したくない。
4.冬月コウゾウ他 機械や生体化学に詳しい者に接触、首輪を外す為に利用する。
【備考】
※まだ全裸の人間形態のままです
※首輪が有機的に参加者と融合しているのではないか? と推測しています
※ホテルに残されたメッセージはアプトムの手によって剥がされました。


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消える命、瞬く命 ケロロ軍曹 疑惑と、野望
草壁サツキ
タママ二等兵
上と、下(前編) 冬月コウゾウ
加持リョウジ
模倣より生まれ来る創造 アプトム 新たなる戦いの予感




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