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炎の記録(前編) ◆O4LqeZ6.Qs



 ここは図書館(B-3)の中。
 ドロロ兵長とリナ・インバースは「ゴーレムの友」という妙な名前の相手とチャットをしている最中だ。
 リナが机の上に積み上げられた10冊の本をぽんぽんと叩きながらドロロに話しかける。

「あっちもパソコンってのを使ってるならキーワードが必要なはずよね?
 それをこの本で調べてあげるっていうのはどう?」
「なるほど。よい考えでござる」

 ドロロはそのリナの提案を聞いて、早速「ゴーレムの友」ことガイバーⅠにその話をするべく、キーボードを叩き始める。


  泥団子先輩R>ところで、そちらのパソコンのキーワードでお困りではござらんか?
  ゴーレムの友>キーワードとはなんでしょう?
  泥団子先輩R>このチャットに入る前の画面で、「ksk」というコンテンツがあったと思うでござる。
  泥団子先輩R>その先に行くためには何かキーワードを入れなければならないでござる。
  泥団子先輩R>しかし、どうやらキーワードはパソコンごとに別の世界観に対応しているらしいのでござる。
  泥団子先輩R>だから知らない世界の言葉だったりもするのでござる。
  ゴーレムの友>先に行くと何が書いてあるのですか?
  泥団子先輩R>それはパソコンによって違うようでござる。
  泥団子先輩R>今までは参加者の名簿だったり、ネットへのアクセス記録だったりしたでござる。
  ゴーレムの友>ここのパソコンにもそれとは違う情報が入っているという事ですね?
  泥団子先輩R>おそらくそうだと思うでござる。
  ゴーレムの友>今、別のページを開いてkskをクリックしてみました。
  ゴーレムの友>「光の剣の正式名称。カタカナで」というヒントが出ました。
  ゴーレムの友>残念ながら私にも仲間にも答えはわかりません。そちらはどうですか?


「なーんだ。これたぶん私の世界の問題よ。本いらないじゃない」
「おお! それは好都合でござるな!」
「まあ、そうなんだけど、せっかくこの本が役に立つかと思ったのに肩すかしね。
 とにかく、その答えは『ゴルンノヴァ』よ」
「ゴルンノヴァ……『ヴァ』は『ウ』に濁点をつけて『ヴァ』でござるな?」
「あー。それが、あたしその文字は読めるんだけど、なんで読めるかはわかんないのよ。
 だから、あってるとは思うけど、はっきりとは言えないわね」
「む? つまりリナ殿は日本語は読めぬが、なぜかこのチャットの文字や本の意味はわかるのでござるか?」
「そういうこと。そもそも言葉だってなんで通じるのかわかんないくらいよ」

 ドロロはその話を聞いて、腕を組んで少し考えるが、やはり自分の知識では説明しようがなかった。
 もちろん超小型の翻訳機などは宇宙人であるドロロにはさほど珍しいものではない。
 だが、その原理まで熟知しているわけではないので、推測の域を出ないのだ。


「まるで魔法でござるな」
「そういう魔法も無いことはないんだけどね。でもなんかそれとも違う気がするのよね~」
「これも主催者のしわざという事でござろうな。
 ひょっとしたらこの首輪にそういう機能があるという事も考えられるでござる」
「う、それじゃあ首輪取ったら会話が通じなくなっちゃう?」
「いや、そうとは限らぬでござるが、可能性はあるでござるな。おっと、早く返事をせねば」


  泥団子先輩R>答えは「ゴルンノヴァ」でござる。
  ゴーレムの友>わかりました。少し待って下さい。


「さーて、一体何が出てくるのかしらね?」
「役に立つ情報だと嬉しいのでござるが……」


  ゴーレムの友>次のページに行けました。「特設リングの場所」という地図が出てきました。
  泥団子先輩R>それはどういったものでござるか?
  ゴーレムの友>わかりませんが、地図自体は最初に持っていた地図とほぼ同じです。
  ゴーレムの友>ただし、最初に配られていた地図には何もなかった場所に何かのしるしがあります。
  ゴーレムの友>たぶんここに特設リングというのがあるんだと思います。
  ゴーレムの友>赤いしるしと青いしるしがあります。
  ゴーレムの友>説明によると、青いしるしは出現中、赤いしるしは隠蔽中と書いてあります。
  ゴーレムの友>青いしるしは博物館のすぐ近くにある物だけなので、試しにそれをクリックしてみました。
  ゴーレムの友>すると、またキーワードを求められました。
  ゴーレムの友>ヒントは「聖王国の首都。聖王都、白魔術都市などとも呼ばれる都市の名前」とあります。
  ゴーレムの友>どうしましょう? 続けますか?


「リナ殿。答えはわかるでござるか?」
「えーっと、それなら答えは『セイルーン・シティ』ね」
「了解でござる」


  泥団子先輩R>「セイルーン・シティ」と入力して下され。
  ゴーレムの友>わかりました。


「それにしても特設リングって何かしら? そこで決闘でもするってーの?」
「よくわからないでござるな…… 何のためにそんな物を」
「あ、そういえばさっき本でパンツ一丁の男たちが格闘戦やってる世界の話があったわ。えーと、確かこれよ」


 そう言ってリナが取り出した本は、『ブタ超人でもわかる!ボイルド・エッグ理論攻略法!!』という本だ。
 ぱらぱらと中をめくると、所々にある挿絵は確かにレスラーがリング上で組み合っている図のようだ。

「一体どういう世界なんでござろうか?」
「いや、この本読むと余計わかんなくなってくるのよね。
 なんかあたしの理解を超えた世界法則があるって感じ。この本に書いてあることが本当なら、だけどさ」
「そ、そうでござるか? まあ、異世界という事は何かとんでもない法則の違いがあるやもしれぬが」
「ていうか、う~ん。ま、いっか。当面は考えなくていいと思うし。
 今はあっちからの返事を待ちましょ」
「うむ。それがよいでござるな」






 場面は変わって博物館(H-8)の中。
 ガイバーⅠこと深町晶は「泥団子先輩」から聞いた通りにkskページのキーワードの欄に入力している所だ。

「セ・イ・ル・ー・ン・点・シ・テ・ィ・っと」

 晶がキーワードを入力すると、次の画面が表示される。
 そこには博物館前のリングがどういうリングであるかという説明が細かく表示されていた。
 どうやらあれは「ファイヤーデスマッチ用特設リング」というらしい。
 他にも、博物館の警備員の詰め所にリングの起動スイッチがあることなどが書かれている。
 さらに、作動記録という項目には、このリングが6時27分12秒に起動された事が記されている。

「6時27分か。1回目の放送の後だな」
「でもあそこで何があったんかはわからへんな。
 あのアシュラマンっちゅうヤツを倒したんは誰やろ?
 ええヤツなんか悪いヤツなんかわかったらよかったんやけどな」
「そうだな。……お? わかるかもしれないぞ、スエゾー」
「ん? どうやってわかるんや?」
「これさ」

 晶が指差したのは作動記録の下に表示されていた「録画データ」という項目である。
 そこには「1日目」「0時~」「6時~」という文字が表示されている。
 その文字は、「0時~」と「6時~」だけクリックできるようになっていた。
 そのデータについても説明が書いてあり、それによると、6時間ごとに録画データの閲覧が解禁されていくらしい。
 つまり、18時になれば「12時~」の録画データが。
 24時になれば「18時~」の録画データが見られるようになるという事だろう。


「これで何がわかるんや?」
「ここを押すとたぶんこの時間帯に何が起こったかを見ることができると思う」
「見る? どういうこっちゃ?」
「まあ、やってみればわかるよ」

 スエゾーにそう言った後、晶は少し考えて、「6時~」のデータをクリックする。
 あのリングが起動したのが6時27分ならば、何かが起こったのはその時間帯であろうと予想したのだ。

 「6時~」のデータをクリックすると、やはりまたキーワードを求めてきた。
 主催側の誰かが用意したのだろうが、何とも使いにくいシステムである。
 今回表示されているヒントは「精霊魔術最強の呪文。威力は竜破斬に匹敵する。カタカナで」だった。

「本当に魔法の世界があるって事なんだろうなあ」
「魔法っちゅうのはオレも見たことないしなあ」

 スエゾーとそんな事を言い合いながら、晶はキーボードを叩く。
 晶は何とか入力はできるがタイピングが速いわけではないし、ガイバーのままで長時間のチャットは結構大変だ。
 だが、スエゾーには無理なので自分がやるしかない。
 もちろん無邪気にちょろちょろ動き回っている小トトロに期待するなど論外である。


  ゴーレムの友>次の画面に進めました。
  ゴーレムの友>博物館の前にあるしるしは『ファイヤーデスマッチ用特設リング』だったようです。
  ゴーレムの友>周囲を炎に囲まれた中で行う「ファイヤーデスマッチ」のためのリングだと説明があります。
  ゴーレムの友>博物館の中の警備員の詰め所に起動スイッチがあるようです。
  ゴーレムの友>それを押すと隠されていたリングが出現する仕掛けになっているようです。
  ゴーレムの友>リングを起動させた時間も書いてあります。6時27分12秒に起動したようですね。
  ゴーレムの友>あと、「録画データ」という項目があります。
  ゴーレムの友>どうやら、1日目の「0時~」と「6時~」というデータが見られるようです。
  ゴーレムの友>とりあえず「6時~」のデータをクリックしてみたのですが、やはりまたキーワードを求められました。
  ゴーレムの友>ヒントは「精霊魔術最強の呪文。威力は竜破斬に匹敵する。カタカナで」です。
  泥団子先輩R>あいわかった。
  泥団子先輩R>答えは「ラ・ティルト」でござる。
  ゴーレムの友>ありがとうございます。長くなってきましたが、お時間は大丈夫ですか?
  泥団子先輩R>乗りかかった船でござる。確かめぬ事にはこちらも気になるので、そちらが大丈夫であれば続けて下され。
  ゴーレムの友>わかりました。もうしばらくおつきあい願います。


「さて、ラ・点・テ・ィ・ル・トっと」

 晶がキーワードを打ち込んでエンターを押すと、画面が切り替わって録画データの表示画面が現れた。
 博物館のパソコンのディスプレイは20インチのUXGA液晶ディスプレイである。
 そのディスプレイの上部2/3ほどを使ってやや大きなワイド型の動画表示画面がひとつ。
 その画面の下に再生している部分を示すバーや再生ボタン、早送りボタン、巻き戻しボタンなどが細長く横一列に並んでいる。
 さらにその下、画面の1/3ほどの空間には、横並びで3つの小さなワイド型動画表示画面が並んでいる。

 晶が再生ボタンをクリックすると、4つの画面が同時に動き出し、一時停止すると全てが止まる。
 さらに下の小さな画面をクリックすると、上の大きな画面と場所が入れ替わって見やすくなる。
 どうやら4つのカメラが同時にリングの映像をとらえていて、その4つの映像を自在に切り替えて見られるようだ。
 気の利いたことに、拡大ボタンを押せば、画面内を拡大することまでできるようだ。

「なんだか、やけによくできたシステムだな……」
「うほぉーー! なんや知らんけど、おもろいやっちゃなあ。
 このパソコンっちゅうんはこんな事もできるんかー!」

 スエゾーはその画像に驚いたらしく、大きな一つ目を見開いてやけに興奮している。

 再生開始した時点ではリングは出現しておらず、何もない地面で炎が燃えさかっているだけだった。
 このまま炎が燃えるのを見ていても仕方がないので、晶は早送りボタンを押して映像を手早くチェックする。
 早送りボタンは何回もクリックすればどんどんスピードが上がるので、その気になれば6時間もあっという間だろう。
(あんまり早くすると何が起こってるかわからないが)

「あのリングの周りにはっきりそれとわかるカメラはなかったと思うから、これは隠しカメラなんだろうな。
 しかし何で何もないのに燃えてるんだろう?
 0時からずっと燃えていたわけじゃないと思うんだけど。……あっ!!」
「おお! なんか絵が大きゅう動きよったで!?」

 スエゾーの言う通り、画面に大きな変化があったので、晶は画面を巻き戻して変化の始まりを探す。
 変化の開始点はほどなくして見つかった。
 6時間分の映像を手早くチェックするためなのか、この動画閲覧システムのレスポンスは良好である。

 変化の開始点は炎の前に大小2つの影が現れた所だった。
 どうやら片方は人間の少女。もう片方は小さな生き物のようだ。
 晶はそれを確認して、再生ボタンをクリックした。


 『……って、あれ? なに、これ……』
 『……だから言ったのだ、スバル二等陸士。状況を良く見ろ、と』


 博物館前で燃えさかる炎の前に現れた2つの影がそんな会話をしていた。
 その片方は白い服を着て杖を持った少女。
 もう片方は、紫色の体に紫色の帽子をかぶった鋭い目つきのカエルだった。
 大声で叫んでいるわけでもないようなのにちゃんと声が聞き取れる。
 小さな音声を強調するような処理を自動的に行っているのだろうか?

「お? こいつ、森の中で埋められとったカエルやな?」
「そうだな。この時はまだ生きていたんだ。
 たぶんこの後何かが起こって、死んで、このスバルっていう女の子があそこに埋めたんじゃないかな」
「アシュラマンっちゅうあの首無し死体も、ここで死ぬんやろうなあ。
 なんか空恐ろしゅうなってきたわ」

 スエゾーとそんな話をしながら晶は「スバル二等陸士」「白い服と杖」とメモに書き込む。
(このメモ用紙と書き込んでいるボールペンは、博物館のパソコンの近くに置いてあったものだ)
 そうする内にも画面内の2人の会話は続く。

 会話を聞いた印象では、紫のカエルはスバルという少女の先輩か上司か教師のような立場にいるようだ。
 ただし、ここに来る前からの知り合いなのか、ここに来てからこういう関係になったのかはわからない。
 2人はどうやら炎の煙を見てここにやって来たように見える。

 しばらく見ていると、炎の中の地面が割れて、そこに地響きを立ててリングがせり上がってくる。


 『えーっと……何ですか、あれ?
  火に囲まれた中に……ボクシングか何かの、『リング』……?』
 『……そのようだな……』
 『――竜巻地獄っ! カーッカッカッカ!』
 『いかんスバル二士、避けろっ!』
 『……え?!』


 突然現れたリングに2人が唖然としていると、いきなり別の男の声が聞こえてきた。
 そして、次の瞬間これまた突然現れた竜巻が2人を襲う。
 竜巻はスバルに向かっていたのだが、紫ガエルがスバルを突き飛ばして代わりに竜巻に巻き込まれる。
 紫ガエルは、そのまま高く舞い上がって炎に囲まれたリングの上に落ちた。

「こいつや! この下のちっこい絵の中に竜巻を出したやつが映っとる!」
「こいつは……首の無かった死体の男じゃないか? 確か、アシュラマンという名前の」


 画面内ではさらに状況が動き続ける。
 アシュラマンは自分が起こした竜巻に乗って炎を飛び越え、紫ガエルの居るリングに着地する。
 どうやらこのリングで紫カエルと決闘するつもりのようだ。


 『カーカッカ! 予め言っておくが、このアシュラマンが油断するとは思わないことだ!
  似たような体格ながら、その頭脳で我らを散々苦しめたアレクサンドリア・ミートの例もある。
  そしてカエルの超人よ、貴様が先ほど見せた身のこなしは、それだけで警戒に値する!
  超人レスラーのプライドに賭けて、まさしくカエルのように叩き殺してくれるわ~~っ!!』

 『ほう――なかなかどうして、見る目のある敵性宇宙人のようだな、アシュラマンとやら。
  確かに我らケロン人は、体格という点ではペコポン人などに大きく劣る。それで油断する敵も少なくない。
  だが……このガルル、伊達や酔狂で『ゲロモンの悪夢』などと呼ばれているわけではないぞ。

  その傲慢――『教育』、してやる』


 晶はそこで一時停止ボタンをクリックして映像を止める。
 それからボールペンを持って、メモ用紙に「ガルル」「ケロン人」と書き込む。

「晶。なんで止めるんや?」
「まだ先は長いだろうからね。ここらで『泥団子先輩』に報告を入れて、どうするか決めよう」
「なるほどな。このままこれ、ずーっと見とったら、あっちはどうなってるんかわからんわな」


  ゴーレムの友>お待たせしてすいませんでした。
  泥団子先輩R>む。どうでござったか?
  ゴーレムの友>今、炎に囲まれたリングで戦いが始まる部分を見つけました。
  ゴーレムの友>リングにいるのはガルルという紫のカエルと、アシュラマンという6本腕で3つの顔がある怪人です。
  ゴーレムの友>ガルルさんの仲間と思われる、スバルという女の子も居ます。
  ゴーレムの友>白い服で杖を持ったショートカットの中学生ぐらいの女の子です。
  ゴーレムの友>ただ、彼女はリングを囲んでいる炎のさらに外側に居て手が出せない状態です。
  ゴーレムの友>戦いを仕掛けて来たのはアシュラマンで、ガルルさんたちは不意打ちを受けた形のようです。
  ゴーレムの友>どうやらアシュラマンは燃えている炎を見て近づいてくる相手を襲うために待っていたようです。





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