新しい上司はケロン人、ボディランゲージは歯が立たない ◆NQqS4.WNKQ
闇に覆われた森の中を、息を切らせて走る人影が一つ。
僅かに息を切らせているもののその足取りはしっかりとしたものであり、その人影がある程度の修練を積んでいる事が見て取れる。
闇に動くその影は、『一箇所』を除いて、まるで無駄がなく引き締まった体つき。
そう一箇所、その箇所が人影の性別を雄弁に語る。 ……胸部の豊かなふくらみ、人影は女性であった。
木々の隙間から僅かに差し込む月明かりによって映し出されるその顔つきは、まだ少女と呼んでも良い年頃であろう。
強い意志の光を見せる碧の瞳。 短くショートに揃えられた髪型と相まって、あたかも少年であるかのようにも見える、整った顔立ち。
恐らくは、彼女の身を包む枯色の女性制服と前述の身体的特徴がなければ、彼女を見た人間の半数は少年と勘違いしたかもしれない。
そのボーイッシュな少女、名をスバル・ナカジマと言った。
僅かに息を切らせているもののその足取りはしっかりとしたものであり、その人影がある程度の修練を積んでいる事が見て取れる。
闇に動くその影は、『一箇所』を除いて、まるで無駄がなく引き締まった体つき。
そう一箇所、その箇所が人影の性別を雄弁に語る。 ……胸部の豊かなふくらみ、人影は女性であった。
木々の隙間から僅かに差し込む月明かりによって映し出されるその顔つきは、まだ少女と呼んでも良い年頃であろう。
強い意志の光を見せる碧の瞳。 短くショートに揃えられた髪型と相まって、あたかも少年であるかのようにも見える、整った顔立ち。
恐らくは、彼女の身を包む枯色の女性制服と前述の身体的特徴がなければ、彼女を見た人間の半数は少年と勘違いしたかもしれない。
そのボーイッシュな少女、名をスバル・ナカジマと言った。
(なのはさん……、フェイトさん……)
心中に戸惑いと動揺を抱えながらも、元来の性格故か行動に不備は起こらず、スバルは森の中を一心不乱に駆け抜けていた。
突然告げられた、殺し合いという状況。 人の身体が、液体に変化すると言う怪奇な現象。
それらが、彼女の思考から冷静さを奪っていた。
とはいえ、彼女は未だに至らぬとはいえ時空管理局の局員であり、憧れのエースオブエース、高町なのはの部下である。
あの場に居た二人の命令に従うなど、最初から考えも付かないことではあった。
むしろその逆、管理局の一員として、そして幼き日の憧れに従い、困っている人を助ける。 それが、彼女の至った思考であった。
心中に戸惑いと動揺を抱えながらも、元来の性格故か行動に不備は起こらず、スバルは森の中を一心不乱に駆け抜けていた。
突然告げられた、殺し合いという状況。 人の身体が、液体に変化すると言う怪奇な現象。
それらが、彼女の思考から冷静さを奪っていた。
とはいえ、彼女は未だに至らぬとはいえ時空管理局の局員であり、憧れのエースオブエース、高町なのはの部下である。
あの場に居た二人の命令に従うなど、最初から考えも付かないことではあった。
むしろその逆、管理局の一員として、そして幼き日の憧れに従い、困っている人を助ける。 それが、彼女の至った思考であった。
そして、彼女は今走っていた。
元よりじっとしているのは性には合わない。
捜すのは、最初の時に見かけた憧れの人とその親友。
そして、何よりも力無い人々を救う、その誓いの為。
彼女は猪突猛進、全力全開で走っていた。
元よりじっとしているのは性には合わない。
捜すのは、最初の時に見かけた憧れの人とその親友。
そして、何よりも力無い人々を救う、その誓いの為。
彼女は猪突猛進、全力全開で走っていた。
そう、正に猪のごとく、真っ直ぐに、わき目も振らずに。
故に、
故に、
「……はえ?」
彼女は、気付けなかった。
ソコに、己を命を奪うものがあるという事に。
ソコに、己を命を奪うものがあるという事に。
「ええええええええええええ!?」
ビターン!
と見事な効果音を立てて、スバルは頭から真正面に転んだ。
コントであるなら大笑いが起こるような、見事な転び方であった。
左足は、木と木の間に張られた蔦に引っかかっており、これが転倒の原因であろう。
もう片方の足は膝の角度が綺麗に45°を描いており、勢い付いて居た為か、スカートの隙間から下着がのぞきかねない状態であった。
両の手は万歳のポーズのように綺麗に地面に付けられており、見れば見るほど見事な転倒姿勢と言わざるを得ないだろう。
と見事な効果音を立てて、スバルは頭から真正面に転んだ。
コントであるなら大笑いが起こるような、見事な転び方であった。
左足は、木と木の間に張られた蔦に引っかかっており、これが転倒の原因であろう。
もう片方の足は膝の角度が綺麗に45°を描いており、勢い付いて居た為か、スカートの隙間から下着がのぞきかねない状態であった。
両の手は万歳のポーズのように綺麗に地面に付けられており、見れば見るほど見事な転倒姿勢と言わざるを得ないだろう。
「うう……いたた……一体何ー?」
少しして、顔をさすりながら、スバルは状態を起こす。
闇の中であり、見通しの悪い森の中である。
地面近くに張られた蔦など見えるはずも無く、スバルには何が起きたのか理解の外であった。
そう、これが、状況を理解していたならば、少しは違ったのかも知れないのだが。
闇の中であり、見通しの悪い森の中である。
地面近くに張られた蔦など見えるはずも無く、スバルには何が起きたのか理解の外であった。
そう、これが、状況を理解していたならば、少しは違ったのかも知れないのだが。
「動くな」
言葉と共に、未だに起き上がれないスバルの後頭部に、硬いモノが押し付けられる。
スバルの心を、驚愕が襲う。
つまり、先ほどスバルが転んだのは、
スバルの心を、驚愕が襲う。
つまり、先ほどスバルが転んだのは、
「あれほど簡単に引っかかるとは思わなかったが……軍人失格だな」
この、やたら渋い声の男の仕業という事だ。
視界の悪い森の中、そしてそこにある人の通る道。
材料はそのあたりの木に巻きついている蔦で充分。
実にシンプルな罠に、スバルは掛かってしまったという事だ。
視界の悪い森の中、そしてそこにある人の通る道。
材料はそのあたりの木に巻きついている蔦で充分。
実にシンプルな罠に、スバルは掛かってしまったという事だ。
「勇猛なのは良いが、注意力が無ければそれは唯の蛮勇に過ぎん。 戦場では真っ先に死んでいくタイプだな」
そう、この時スバルは冷静な判断力に欠けていたと言えよう。
ここは殺し合いの場。
命のやり取りを行なう間違える事なき戦場である。
その戦場を、武装もせず注意もせずに走りまわっていたのだから、これは自殺行為といえよう。
その結果が、この現実。
男が指を僅かに動かすだけで、スバルの命は容易く奪われる。
ここは殺し合いの場。
命のやり取りを行なう間違える事なき戦場である。
その戦場を、武装もせず注意もせずに走りまわっていたのだから、これは自殺行為といえよう。
その結果が、この現実。
男が指を僅かに動かすだけで、スバルの命は容易く奪われる。
「さて、最期に言い残す事はあるか?」
男は、あくまで冷静に、何の感情も見せずに、冷酷に告げた。
(……死ぬ?)
死。
スバルの世界においては、戦闘とはあくまで非殺傷を旨とした魔法によって行なわれるもの。
故に、軍人ではありながらも、死とはある意味遠い存在ではあった。
その死が、今スバルの間近に存在している。
七年前、高町なのはに助けられたその時と同じ様に、いや、それよりももっと間近に。
(わたし……ここで?)
暗く、冷たい、死の感触。
それが、後頭部から、全身へと伝わり、スバルの力を奪う。
死、終わり。
そう、これで終わり。
誓いも果せぬまま、強さの意味も知らぬまま、ここで終わる。
(……死ぬ?)
死。
スバルの世界においては、戦闘とはあくまで非殺傷を旨とした魔法によって行なわれるもの。
故に、軍人ではありながらも、死とはある意味遠い存在ではあった。
その死が、今スバルの間近に存在している。
七年前、高町なのはに助けられたその時と同じ様に、いや、それよりももっと間近に。
(わたし……ここで?)
暗く、冷たい、死の感触。
それが、後頭部から、全身へと伝わり、スバルの力を奪う。
死、終わり。
そう、これで終わり。
誓いも果せぬまま、強さの意味も知らぬまま、ここで終わる。
(そんなの……)
スバルの右足から、僅かな光が生まれる。
青いその光は、あたかも光のベルトのように踵から流れ出し、
スバルの右足から、僅かな光が生まれる。
青いその光は、あたかも光のベルトのように踵から流れ出し、
「いやだあーーーーー!!」
スバルの後頭部に押し付けられている筒を、弾き飛ばす。
光のベルト
正式名称は『ウイングロード』と言い、スバルが得意とする魔法である。
魔力により、空中に『道』を生み出すスバルとその家系の固有魔法。
本来は移動用の魔法ではあるが、そのその道を生み出す魔法である故に、無論物理的な影響が存在する。
この場合はソレを男の妨害に使用したという事だ。
光のベルト
正式名称は『ウイングロード』と言い、スバルが得意とする魔法である。
魔力により、空中に『道』を生み出すスバルとその家系の固有魔法。
本来は移動用の魔法ではあるが、そのその道を生み出す魔法である故に、無論物理的な影響が存在する。
この場合はソレを男の妨害に使用したという事だ。
「む!?」
男が、僅かに驚愕の声を漏らす。
だが、そんなことには構わずに、そのまま光の流れに合わせるように、後ろ回し蹴りの要領で振りぬく。
と同時に、右手を握り、裏拳として相手に振り回す。
拳と脚、同時に突き出す事によって威力が分散されてしまうが、この場合は相手に当てて体勢を崩す事が重要。
加えて、半身を勢いよく回転させることによって、その反動を利用し、身体を起こす。
絶対的に不利な体勢からの、起死回生の一撃。
少なくとも、これで五分と五分な状況までは持っていける
だが、そんなことには構わずに、そのまま光の流れに合わせるように、後ろ回し蹴りの要領で振りぬく。
と同時に、右手を握り、裏拳として相手に振り回す。
拳と脚、同時に突き出す事によって威力が分散されてしまうが、この場合は相手に当てて体勢を崩す事が重要。
加えて、半身を勢いよく回転させることによって、その反動を利用し、身体を起こす。
絶対的に不利な体勢からの、起死回生の一撃。
少なくとも、これで五分と五分な状況までは持っていける
「成る程、動きは悪く無い」
筈であった。
男の身体が、想像以上に小さくなければ。
男は、僅かに驚愕を覚えたスバルに構わず、彼女の右袖を掴み、そしてスバルの勢いを利用して、
男の身体が、想像以上に小さくなければ。
男は、僅かに驚愕を覚えたスバルに構わず、彼女の右袖を掴み、そしてスバルの勢いを利用して、
「わわっ!?」
一本背負いの要領で、投げ飛ばした。
くるりと綺麗に一回転して、地面に叩きつけられるスバル。
衝撃が全身を襲い、呼吸もままなら無い。
今度こそ、どうしようも無い。
それでも、何とか諦めずに男の顔を睨みつけようとして、
くるりと綺麗に一回転して、地面に叩きつけられるスバル。
衝撃が全身を襲い、呼吸もままなら無い。
今度こそ、どうしようも無い。
それでも、何とか諦めずに男の顔を睨みつけようとして、
「………………へ?」
固まった。
スバルの思考は、完全に停止した。
男の手に握られていたのは、銃ではなくて、木の棒であった。
それはいい、だがそれよりも、
スバルの思考は、完全に停止した。
男の手に握られていたのは、銃ではなくて、木の棒であった。
それはいい、だがそれよりも、
「戦場では、諦めた者から死んでいく。
そういう意味では、お前の不屈の意志は戦士としての条件を満たしているといえるだろう、スバル・ナカジマ二等兵、いや二等陸士だったか」
そういう意味では、お前の不屈の意志は戦士としての条件を満たしているといえるだろう、スバル・ナカジマ二等兵、いや二等陸士だったか」
そこにいたのは、一言で言うならば直立したカエル(?)であった。
ついでに、よく判らないがやたら強面で男前であった。
ついでに、よく判らないがやたら強面で男前であった。
□
男、その名はケロン軍所属A級侵略部隊隊長、ガルル中尉。
ケロン軍とは、ケロン星を中心とする強大な軍事組織の事であり、ペコポンこと地球にもその手を伸ばしている。
その中でも彼ガルルは、『ゲロモンの悪夢』とも称されるケロン軍最高精度スナイパーであり、誇り高きケロンソルジャーでもある。
ケロン軍とは、ケロン星を中心とする強大な軍事組織の事であり、ペコポンこと地球にもその手を伸ばしている。
その中でも彼ガルルは、『ゲロモンの悪夢』とも称されるケロン軍最高精度スナイパーであり、誇り高きケロンソルジャーでもある。
「俄かには信じがたい話だが、そうなるとこの現状にも多少説明はつくな」
『理解が早くて助かります、二尉殿』
『理解が早くて助かります、二尉殿』
その彼と話しているのは、彼に支給された謎の赤い宝石、名を『レイジングハート・エクセリオン』
ガルルにとっては未知のテクノロジーによって製造された、小型の機械であった。
ガルルにとって、スバルら地球人(スバルは厳密には違うが)通称ペコポン人は、一応敵対種族という事になる。
最も、そのテクノロジーには天と地ほどの開きがあり、そもそも戦闘になる、という自体があり得ないレベルではあるのだが。
加えて、彼は誇り高い軍人である。
民間人を殺す事など容易いが、それは彼の矜持とは激しく対立する行為だ。
故に、彼には最初から殺し合いなどするつもりは無かった。
そして、彼は支給された謎の宝石との会話により、多元世界というモノと、彼女(?)の知り合いについて予め知っていたということだ。
故に、仕掛けておいた簡単な罠に引っかかったの少女の名を、予め知っていたという事だ。
ガルルにとっては未知のテクノロジーによって製造された、小型の機械であった。
ガルルにとって、スバルら地球人(スバルは厳密には違うが)通称ペコポン人は、一応敵対種族という事になる。
最も、そのテクノロジーには天と地ほどの開きがあり、そもそも戦闘になる、という自体があり得ないレベルではあるのだが。
加えて、彼は誇り高い軍人である。
民間人を殺す事など容易いが、それは彼の矜持とは激しく対立する行為だ。
故に、彼には最初から殺し合いなどするつもりは無かった。
そして、彼は支給された謎の宝石との会話により、多元世界というモノと、彼女(?)の知り合いについて予め知っていたということだ。
故に、仕掛けておいた簡単な罠に引っかかったの少女の名を、予め知っていたという事だ。
□
「だが、周囲をよく見ずに進むのは無用心すぎる。
慎重さに欠けるものは長生き出来んな」
慎重さに欠けるものは長生き出来んな」
倒れたスバルに構わず、言葉を続けるガルル。
相手が若い下士官故に、教え諭すような話になっているのはご愛嬌。
相手が若い下士官故に、教え諭すような話になっているのはご愛嬌。
「だが、体力、技術においてはなかなか優秀である事は確かなようだ、ならば、ム?」
なおも続けようとするガルルの言葉が、遮られる。
何故か、それは。
何故か、それは。
「……何を、している?」
「いや、マイクはどこかなーって」
「………………」
「いや、マイクはどこかなーって」
「………………」
当然のごとく、この場に居るもう一人の人物、スバル・ナカジマ。
どうやら彼女は、ガルルをぬいぐるみか何かと判断し、中の人を捜しているようであった。
どうやら彼女は、ガルルをぬいぐるみか何かと判断し、中の人を捜しているようであった。
……数分後
「相手を見かけで判断する事ほど愚かな事は無い。
よく覚えておく事だ」
「い…いえっさー…………中尉殿……」
よく覚えておく事だ」
「い…いえっさー…………中尉殿……」
ボロボロになったスバルが、地面に倒れ付す。
特に外傷は無いのだが、何故かやたらボロボロであったという……
特に外傷は無いのだが、何故かやたらボロボロであったという……
【J-5 林道/一日目、未明】
【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】多少疲労
【持ち物】 デイパック(支給品一式入り)
【思考】
1.人殺しはしない。
2.い…いえっさー…………(バタ)
【備考】
※まだデイパックを見ていません。 最初の場所でなのはとフェイトの姿だけ見ています。
※登場時期は、ヴィヴィオがなのはに保護された以降です。(細かい時期については次回以降の書き手さんにお任せします)
【状態】多少疲労
【持ち物】 デイパック(支給品一式入り)
【思考】
1.人殺しはしない。
2.い…いえっさー…………(バタ)
【備考】
※まだデイパックを見ていません。 最初の場所でなのはとフェイトの姿だけ見ています。
※登場時期は、ヴィヴィオがなのはに保護された以降です。(細かい時期については次回以降の書き手さんにお任せします)
【ガルル中尉@ケロロ軍曹】
【状態】健康
【持ち物】落ちていた枝、デイパック(支給品一式、レイジングハート・エクセリオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS、不明支給品×0~2(本人確認済み))
【思考】
1.ケロンソルジャーとして秩序ある行動を取る。
【備考】
※登場時期はペコポン撤退以降
※レイジングハートより、なのは関係の知識を得ました。
【状態】健康
【持ち物】落ちていた枝、デイパック(支給品一式、レイジングハート・エクセリオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS、不明支給品×0~2(本人確認済み))
【思考】
1.ケロンソルジャーとして秩序ある行動を取る。
【備考】
※登場時期はペコポン撤退以降
※レイジングハートより、なのは関係の知識を得ました。
そして、ガルルのデイパックの中では、
『All right……』
紹介のタイミングが飛ばされたレイジングハートが、孤独に光っていたという。
『All right……』
紹介のタイミングが飛ばされたレイジングハートが、孤独に光っていたという。
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GAME START | ガルル中尉 |