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揺るぎない力と意志貫くように(後編) ◆9L.gxDzakI




 巨獣トトロの足は速い。
 いかにも鈍重そうな外見に似合わず、その走る速度はまさしく駿足。
 重量感たっぷりの巨体が疾走する様は、バッファローの突進にもよく似ている。
 並走する狼が疾風ならば、トトロはまさに猛進する竜巻だ。
 道を遮るあらゆる障壁を、真っ向から粉微塵に吹き飛ばさんばかりの暴風雨だ。
 もちろん、自然を愛する森の主が、いたずらに環境破壊行為に走るはずもない。
 ひゅん、ひゅん、ひゅん、と。
 目の前に木々が立ちはだかれば、すり抜けるようにして避けて進む。
 巨大な身体を苦にも感じさせることなく、紙一重で見事にかわしていく。
 この速度でこの制御だ。大したものと言うほかない。
 どことなく間の抜けた印象だったが、少なくとも走るという点においては、これほどの実力を有していたとは。
 グレーの背中で揺られながら、なのははトトロに対する評価を改めていた。
『生体反応を捕捉しました』
 首にぶら下げたマッハキャリバーが、遂にスバルの所在を察知する。
 ひくひく、と動く鼻。
 青色の毛並みを持った狼――ライガーもまた、彼女の匂いを嗅ぎ付けたようだ。
 ばっ、と。
 スピードを上げ、トトロの前へと躍り出る。
 デバイスの指示を聞くまでもなく、さながら先導するかのように、勢いよく加速し先行した。
 やがてトトロの鼻もまた、その匂いを感知したらしい。
 ライガーにならうかのように、その黒い鼻をひくつかせた。
 だが、しかし。
 それと同時に。
「どうしたの?」
 不意に、トトロの表情が曇った。
 先ほどの笑顔が嘘のように、どこか悲しげに目を伏せる。
 一体何がどうしたのか。
 何か匂いを嗅ぐと同時に、妙な気配でも察したか。
 あるいは薄々予感していたように、スバルが危険な状態にあるということか。
 疑問の答えは、すぐに呈示されることになる。
「ガウッ!」
『うわわわっ!? ななな、何ですかぁ!?』
 前方から2つの声が響いた。
 1つはトトロを先導していたライガーのもの。
 付かず離れずの距離を保っていた青き狼が、一足先に目的地に到達したのだ。
 そしてもう1つの声が、その場所でライガーを待ち受けていたもの。
 この慌てふためく幼い声には聞き覚えがある。
 一瞬遅れてたどり着いた先にいたのは、予想通りの人物だった。
「リイン! それと……レイジングハートも!?」
『なのはさん!』
 名を呼ばれるのを耳にしながら、急ブレーキをかけ静止するトトロの背より飛び降りる。
 高い少女の声の持ち主は、やはりユニゾンデバイス・リインフォースⅡだ。
 水色がかった銀髪に、特徴的な十字の髪留め。
 何より30センチ程度しかない、さながらお伽噺の妖精のような身長が、それが彼女であると何より雄弁に物語っている。
 何やらボディバランスに違和感を感じたが、しかし次の瞬間には吹き飛んだ。
 そこにリインのみならず、予想外の存在が待ち受けていたからだ。
『マスター!』
 機械的な合成音声が響く。
 エース・オブ・エースが愛用する、杖型インテリジェントデバイス――レイジングハート・エクセリオン。
 幾多の戦場を共に駆け抜け、幾多の敵を蹴散らしてきた、なのはの最も信頼する得物だ。
 黄金と桃色に彩られた杖が、目の前の地面に突き立てている。
 いずれ見つけなければとは思っていた。だが、まさかこんなタイミングで再会するとは。
『ってなのはさん、どうしたんですかそのちっちゃい身体は!?』
「説明は後! それよりスバルは――」
 それが気になるのは分かる。通常の人間であるならば、このように10歳も若返ることはあり得ない。
 だが、今はそんなことを論じている暇はない。
 ここまで来た最大の理由はスバルだ。
 あの快活な部下の姿を確認するまで、安心することはできないのだ。
 リインとレイジングハートの向こうへと、半ば焦りながら視線を飛ばす。
「――っ」
 そして。
 見てしまった。
 その先にいた尋ね人を。
 捜し求めたスバルの姿を。
 見るも無惨な姿と成り果て、地面にうつ伏せに倒れた己の部下を。
『相棒!』
 首元のマッハキャリバーが叫んだ。
 思わずそうさせるほどの、ひどい有り様だ。
 純白のバリアジャケットは、至るところに血が滲み、真紅の斑点を浮かび上がらせている。
 ショートパンツから剥き出しになった両足には、おびただしいまでの傷痕が刻まれていた。
 重傷の2文字すら生ぬるい。誰がどう見ても満身創痍。
 さながら打ち捨てられた襤褸雑巾のごとく、ぼろぼろになって倒れ伏すスバルがそこにいた。
「っ……スバル!」
 一瞬の後、我に返った。
 その名を呼びながら駆け寄ると、倒れたスバルの上半身を抱き上げた。
 さながらかつて撃墜された日に、戦友・ヴィータに抱き抱えられた時のよう。
 あの時抱かれる側にあったなのはは、今は抱き止める側にいた。
 今この時抱かれる側にいたのは、自分を慕ってくれた後輩だ。
 重い。さすがにこの体格差はきつい。
 何しろ今は身体が小さい。平時ならこちらが4つ歳上だが、今は逆に6つも負けているのだから。
 それでも、そうせずにはいられなかった。
「スバル! スバル、目を開けてっ!」
 ぐったりと身を預けるスバルを、そのまま抱き止めずにはいられなかった。
 先ほどは後頭部しか見えなかったが、その顔面も相当にひどい。
 体育会系の元気な顔は、目に見えて蒼白になっている。
 おまけに口回りに至っては、大量の血液でべっとりと汚れていた。
 この出血はまずい。下手すれば、失血死ギリギリの状態かもしれない。
「お願い……目を開けてよ……!」
 こんな馬鹿な。
 こんなことがあってたまるか。
 ようやく再会できたのに。
 フェイトを救えなかった時と違って、こんなに近くまでたどり着いたのに。
 今この手に抱えている命が、今にも消えてしまいそうだなんて。
 どれだけ近くで掴み取っても、指先から砂のように零れ落ちるだけ。
 限りなくゼロに近い距離にいるのに、その手はあまりにも遠い。
 一歩一歩と迫り来る死神が、2人を強引に引き裂かんとする。
 刻一刻と消えゆく命を、ただ黙って見ていることしかできない。
 何という無力か。
 何という無情か。
 これでは同じだ。
 進歩がない。
 最愛の友を喪った時と、何一つ変わらないじゃないか。
「スバル……スバル……!」
 そんなのは――嫌だ。
「スバルぅ……っ!」


 ………………


 ………………


 ……あたしは……どうなったんだっけ……
 あれから一体、何があったんだっけ……


 ……ああ、そうだ。
 あたしはあの後で倒れたんだ。
 最後に大声を張り上げた直後に、そのまま気絶しちゃったんだ。
 無理もないよね。
 これだけボロボロになった身体に鞭打って、強引に走らせようとしたんだから。
 死ぬつもりはなかった。
 実際、死ななかった。
 それでも、最低限こうなることは、予測できたはずだったのにね。


 勇猛なのは良いが、注意力が無ければそれは唯の蛮勇に過ぎん。
 周囲をよく見ずに進むのは無用心すぎる。
 一人で抱え込むな。自分の役割を果たし、その上で理想を叶えられるよう邁進しろ。
 全てガルル中尉の言葉だ。
 偉大な軍人だった中尉が、その命を落としてしまうまでに、あたしに伝えてくれた言葉。
 まだまだドジで未熟なあたしに、中尉はたくさんのことを教えてくれた。
 中尉の言葉を忘れかけた時には、ティアが思い出させてくれたっけ。
 もちろん今になっても、その教えを遵守できているわけじゃない。
 キョン君の罠に嵌まったのは、あたしに注意力がなかったから。
 自分の身体に目を背けたから、今まで意識を失っていた。
 1人で何もかも抱え込んだから、そんな不注意を招いてしまった。
 何度言われてもこればっかりは、全く直る気配がない。
 駄目だな、あたしは。
 中尉の説いた軍人の心得、3つも破っちゃった。
.

 ああ――それでも。


 何もかも破ったわけじゃない。
 何一つ守れなかったわけじゃ、絶対ない。


 自分の役割を果たすこと。


 最後の最後の心得だけは――決して破っていなかった。


 あの四角いリングに立った時、あたしは気付いてしまったんだ。
 あたしの中の死の恐怖を察してくれたウォーズマンさんが、自ら死地に飛び込もうとした時、あたしは自覚してしまったんだ。
 あたしにはまだ、この生き方しかできないって。
 理性よりも、本能に従う。
 教え込まれた理論より、溢れ出す感情こそを選ぶ。
 死に行く正義超人の背中を、あたしは黙って見ていられなかった。
 それが無謀だって分かっていても、死なせたくないという想いのままに、あたしはキョン君達と向かい合った。
 誰かを危険に晒すくらいなら、あたしが戦うことを選ぶ。
 たとえボロボロの身体だとしても、何の計算もない蛮勇だとしても。
 誰かを助けたいという願いに、理性で蓋をすることなんてできない。
 冷静沈着に状況を把握し、確かな理性で戦術を構築し、自己の生存を最優先とする。
 正しいサバイバルの姿勢とは、真逆に位置する戦い方だ。
 軍人や管理局員としては、落第ものの姿勢かもしれない。
 それでも今のあたしには、この性分を曲げることはできない。
 あたしの最初の戦いの先生――ギン姉はこう教えてくれた。
 打撃型のスタイルとは一撃必倒。
 刹那の隙に必殺の一撃。ただ一点、相手の急所に叩き込むこと。狙うのはただそれだけでいい。
 出力も射程も速度も防御力も。
 自分と相手の実力差さえも、そんなことは全部関係ない。
 ならあたしは、それでいい。
 今のあたしはそれでいい。
 余計な理屈は考えない。無理に本心を否定したりはしない。
 たったひとつの意志と力を、叩き込むだけの鉄砲玉でいい。
 慣れないことに手を出して、結果的に自滅するよりは、ずっといいと思うから。


 そしてもし叶うなら、せめて一緒に戦う仲間がほしい。
 あたしの貫く無茶や無謀に、中身をくれる仲間がほしい。
 チームがそれぞれに強い部分を持ち寄れば、より万全になる。
 ティアが思い出させてくれた、もう1つのこと。
 悲しいけど、あたしの選んだこの道は、きっと1人では貫けない。
 弾丸は前に進めても、横や後ろには曲がれない。
 そのくせ加速を失えば、後はただ地面に落ちるだけ。
 だから銃には狙いを定めて、引き金を引くガンナーが必要なんだ。
 あのティアのように的確な指示を出して、あたしの力を引き出してくれる誰かが――
.

「――ル……バル……」


 ……あれ……?
 誰だろう、この声は……?
 ティアや中トトロの声じゃない。夢の中のものじゃなく、現実のものだって分かる声。
 あたしを呼ぶのは誰?
 あたしを揺り起こしたのは、一体誰?
 鉛のように重い瞼を、ぐっと力を込めてこじ開ける。
 霧の中のようにぼやけた視界に、映ったその誰かの顔は。


「スバル……!」


 ああ、そっか。
 この人だったのか。


「なの、は……さん……」


 なのはさんが、そこにいた。
 サイドポニーにまとめられた、綺麗な栗毛の髪も。
 きらきらと輝くようなその瞳も。
 あたしがこうなりたいって憧れた、強く優しいエース・オブ・エース。
 あたしの命を救ってくれた。戦う意味を教えてくれた。
 その高町なのはさんが、あたしの所へ来てくれた。
 よかった。また、会えた。
 嬉しくて、嬉しくて。
 身体中が痛むのに、自然と笑みが浮かんでいた。


「よかった……! 気をしっかり持って、スバル……今、安全な所に連れて行くから」


 今にも泣き出しそうな声が、なのはさんの口から紡がれる。
 心配してくれてるんだ。
 心配、かけさせちゃったんだ。
 こんななのはさんの声、今まで聞いたことがなかった。
 いつも凛とした姿のなのはさんの涙なんて、今まで一度も見たことがなかった。


「なのは、さん……」


 口を開く。
 言葉を口にする。
 消え入りそうな意識の中、血の味を感じながら声を発した。
 まだだ。
 まだ気を失っちゃいけない。まだ気を引き締めてなきゃ。
 どうしても確認しなきゃいけないことがあるんだ。
.

「キョン、君……という、少年に……会いました……か……?」


 それを聞くまでは、まだ倒れられない。
 答えをちゃんと聞くまでは、意識を手放すわけにはいかない。
 見失ってしまった彼が、今どうなっているのか知っているのか。
 それを聞き届けるまでは、倒れるわけにはいかなかった。


「……うん……会ったよ。今は、私の仲間と一緒にいる」


 それを聞いて、安心した。
 よかった。
 まだ、手の届く場所にいてくれたんだ。
 なら、次に口にする言葉は1つ。
 願うべきことは、たった1つ。


「おね、がいっ……します……力を……貸して、くだ……さい……キョ、ン、君を……彼を……助けて……あげ、て……」


 ああ、やっと言えた。
 大丈夫。
 きっと、これで大丈夫だ。
 なのはさんなら間違いなく、これ以上ないほどの強力な味方になってくれる。
 彼を暗闇から救い出すために、きっと力になってくれる。
 誰よりも強い、不屈のエースで。
 誰よりも優しい、あたしの先生。
 そのなのはさんと、肩を並べて戦えるんだ。
 見ていますか、ガルル中尉。あたしはようやく、なのはさんと再会できました。
 待っていてください、ウォーズマンさん。なのはさんと一緒に、必ず加勢に駆けつけます。
 そして、キョン君。
 大丈夫。キョン君は必ずやり直せる。
 あたし達の助けが必要なら、いくらでも力になってあげるから。
 あたし達が……必ず――


 再び意識を喪失したスバルの上半身を、なのはは静かに抱えていた。
 瞳を閉じて眠る彼女へと、じっと視線を向けている。
 見れば見るほど、ひどい怪我だ。
 骨折こそしていないものの、打撲や裂傷の数は数十箇所。吐血していたということは、内臓にもダメージがあるということか。
 いかに強靭な戦闘機人といえど、平気でいられるはずもない。明らかに死の一歩手前。
 こんなボロボロになってまで、スバルは戦い続けていたということか。
 あのキョンという少年を救うために、こんな身体で歩みを進めていたということか。
 自分のダメージも決して少ない方ではない。だが彼女に比べれば、ずっと綺麗な身体じゃないか。
 自分よりも弱い部下が、自分よりも遥かに身を削って、誰かのために戦っていた。
 思い出せ。
 スバルが自分に向けた顔を。
 極大の苦痛を抱えたその身で、彼女が浮かべた表情は何だ。
 笑顔だ。
 スバルは笑っていた。
 喜んでくれていたのだ。
 こんな自分なんかとの再会を、心の底から喜んでいたのだ。
「……レイジングハート」
 ぽつり、と。
 傍らに突き刺されたデバイスへ、口を開く。
「スバルは今まで、どうしてた……?」
 その戦いを。
 その行動を。
 その信念を。
 問いかける。
『幾度となく傷つき、挫折しそうにもなりましたが……その度に確たる意志を抱いて立ち上がり、戦い続けていました』
『殺し合いに乗ったキョンを、スバルはずっと助けようとしてたです……
 まだやり直せるって……望んでない殺人に、手を染める必要なんてないんだって……』
 レイジングハートの返答に、浮遊するリインの声が続いた。
 記憶を失う以前のキョンは、この殺し合いに乗っていた。それはそれで驚愕の事実だったが、今重要なのはそこではない。
 スバルはやはり戦っていた。
 幾度となく傷つけられようとも、たとえ立ち止まりそうになろうとも。
 その度に強く踏み留まり、決意を新たに立ち上がってきたのだ。
 自分はどうだろう。
 そのスバルに慕われた、高町なのははどうだっただろう。
 スバルが強固な決意のもとに、戦いの最中にあった時、自分は果たして何をしていた?
 自信を失い迷い続けた。何度も何度も泣き叫んだ。
 挙げ句あの時の自分はどうだ。
 サツキを救えなかったあの時、一体自分は何をしていた?
 失意。そして絶望。
 それは自分自身への猜疑となり。
 エース・オブ・エースの名を――捨てかけた。
 こんなにもなるまで抱き続けた、スバルの尊敬をも否定しようとした。
 あの時ケロロがいなければ。
 あの時自分が独りだったならば。
 間違いなく自分は、スバルの憧憬を踏みにじっていた。
 夢に向かって駆け抜ける少女の、その一歩を踏み出した理由を粉々に打ち砕く、最低の人間に成り下がっていた。
 このままじゃ駄目だ。
 これ以上醜態を晒していては駄目だ。
 改めて痛感した。
 ならば、どうする。
 自分はスバルのために何ができる。
 この一途な少女のために、果たして自分には何ができる。
 覚悟を、決める時だ。
 あの時胸に誓った決意を、再び強固に固め直す時だ。
「レイジングハート・モードリリース」
 紡いだのは号令。
 一瞬、魔導師の杖が光を放った。
 レイジングハートの先端にある、真紅の宝珠が発光する。
 黄金と桜色の外装が解かれ、待機モードへと移行。
 同時にスバルのバリアジャケットが解除され、元の服装へと戻っていく。
 血と泥にまみれた白装束は消え、現れたのは管理局の制服。
 されどその陸士服すらも、決して清潔なものではなかった。
 通常なら戦闘には使わないようなものですら、所々薄汚れ、戦闘の跡を主張していた。
 これまでスバルの歩んできた道が、決して平坦なものではなかったことを、改めて理解させられる。
 ふわふわと浮遊するレイジングハートが、なのはの手元へと納められた。
 そしてその両手を首元へと伸ばすと、マッハキャリバーをそこから下ろす。
「スバルをお願い、マッハキャリバー」
『All right.』
 茶色い首紐が通るのは、短く切り揃えられた青色の髪だ。
 本来の持ち主であるスバルの胸元で、蒼穹色の結晶が煌く。
 音速の具足・マッハキャリバーは、あるべき場所へと遂に帰還した。
 すた、すた、と。
 そこへ歩み寄る四足獣。
 蒼天のたてがみをたなびかせる狼は、トトロの連れてきたライガーだ。
 準備ができたら背中に乗れ、と言いたいらしい。
 既に妖精型のモンスター・ピクシーが乗っているトトロの背中に、
 スバルまでも乗せてしまえば、なのはが乗るスペースがなくなってしまう。
 そこでライガーの出番というわけだ。
 灰の巨獣がこの狼を連れてきたのには、なるほどこういう意味があったのか。
 ひょい、と。
 今度はトトロの太い両腕が、スバルの身体を持ち上げた。
「――助けるよ」
 呟く。
 怪物の背中へと乗せられる、愛すべき教え子へと。
 少女の双眸には既に、一片たりとも迷いはない。
 宿したものは、決意。
 意志を。
 スバルと再会したことによって、より強靭さを増した覚悟を。
 かつて高町なのはという少女は、気弱なスバル・ナカジマに、戦う意志を与えた存在だった。
 今は、その逆だ。
 静かに目を閉じるスバル・ナカジマが、高町なのはの力となった。
「いつだって……どんな人だって」
 力がないのがつらかった。
 魔導師としての力を奪われ、ただの少女へと貶められ。
 故に何を為す自信も喪失し、何かを為す力もないままに、何度も迷い続けてきた。
 しかし、今は違う。
 力なら今まさに取り戻した。
 最強のエースの力の源泉――レイジングハート・エクセリオンは、スバルがここまで運んできてくれた。
 ならば、何を迷うことがある。
 もう立ち止まらない。
 決して迷うことはしない。
 たとえいかなる困難が立ちはだかろうと、信じた道を貫き通す。
 この殺し合いに終止符を打ち、全ての人々を救い出す。
 この手に受け取ったレイジングハートと共に。
 不屈の心は、この胸に。
「レイジングハート――セットアップ!」
 高らかに、叫んだ。
 10年来の愛機の名を、突き上げた左手と共に言い放った。
『Stand by Ready.』
 刹那、世界は激変する。
 湧き上がるのは眩い極光。
 目も眩むほどの魔力の光が、世界を桃色一色へと描き換える。
 光の中心に立つ高町なのはは、さながら宇宙に爆裂する超新星。
 桜花の色に染まる極光の中、その衣服が分解された。
 浴衣も、帯も。髪を留めていたヘアバンドも。
 一糸纏わぬ裸体の中で、左手に持った宝珠が真紅に映えた。
 口づけをする。
 幼い少女の唇が、赤き球体へとそっと触れる。
 ビッグバンの次に待ち受けるのは、新たな銀河の誕生だ。
 全身を覆い尽くす魔力光。薄くまとわりついたオーラが、次第にその姿を変えていく。
 服だ。スカートだ。赤いリボンだ。
 白と青に彩られた、ドレスのごとき華麗な装飾。
 グローブの左手に収まるのは、先ほどは地面に刺さっていた魔導師の杖。
 バリアジャケット、装着完了。
 レイジングハート、戦闘態勢。
 全ての行程は一瞬にして実行される。
 まばたきを終えたその頃には、既に高町なのはの姿は、魔法使いのそれへと変わっていた。
「ありがとう……スバル」
 再び頭上のスバルを仰ぎ、そっと呟く。
 バリアジャケットを纏った彼女の姿は、弱冠9歳でAAAランク認定を受けた、かつての天才少女そのままのようだ。
 否。
 正確には、そのままではない。
 所々に変化が見られるのだ。
 最大の変化は、スカートにある。
 かつて魔導師になったばかりのなのはは、当時通っていた母校の制服と同じ、ロングスカートを身に付けていた。
 しかし今彼女が履いているのは、膝丈にも満たぬミニスカート。
 外気に晒される両足は、代わりにニーソックスによって覆われていた。
 そう。
 なのはが身に纏っているものは、かつてのバリアジャケットではない。
 ほんの9歳の子供であった、かつてのなのはとは違う。
 今その身体を包んでいるのは、管理局のトップエースとしての、19歳の彼女の纏うジャケットだ。
「私はもう迷わない」
 エース・オブ・エース。
 稀代の天才と謳われたなのはに、いつしかついていた称号。
 最強の戦士たるエースの中でも、一際秀でた英雄の名だ。
 時空管理局の魔導師の中でも、最強として認められた勇者の名だ。
 元々派手な肩書きを嫌う、よく言えば謙虚な性分のなのはは、この名を好んではいなかった。
 だが、今は違う。
 管理局最強の称号を、今は胸を張って背負う。
 名を名乗るということは、同時に責任を負うということだ。
 その名に恥じぬ人間となることを、自らに義務付けるということだ。
 最強を名乗るということは、最強の責任を果たすということ。
 常勝無敗を約束し、何物にも屈さぬことを決意すること。
 英雄を名乗るということは、英雄の責任を果たすということ。
 正義の味方として君臨し、自分より弱い者の全てを、命懸けで守ることを誓うこと。
 故に最強の英雄とは、世界全土の者の命を、その身に背負う者を指す言葉だ。
 それがなのはが背負うと決めた、エース・オブ・エースの名の意味だ。
 有言実行の存在だ。
「ちゃんと前を向いて、戦ってみせる」
 全てこの身に背負ってみせよう。
 フェイトが果たせなかった遺志も。
 スバルの抱いた憧れも。
 キョンを救うという役目も。
 ヴィヴィオという最愛の娘の命も。
 この殺戮の舞台に集められた、全ての人々の想いを背負うと。
 固く、決意した。
 敢えてその名を名乗ることを。
 迷いも逃げ道も捨て去ることを。
 この身の全てを捧げてでも、皆を守り抜いてみせる、と。
 愛すべき者達の期待に応えるために。
 スバルの憧れた高町なのはは。
 ヴィヴィオが母と慕う高町なのはは。
 エース・オブ・エースの名に恥じぬ、強くてかっこいい人なんだと、胸を張って名乗れるように。
「行くよ――レイジングハート!」
 高町なのは一等空尉が、真にエースとなった瞬間だった。


【G-3 森/一日目・夜】
【高町なのは@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】9歳の容姿、疲労(小)、魔力消費(中)、決意
【装備】レイジングハート・エクセリオン(修復率70%)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【服装】浴衣+羽織(子供用・下着なし)
【持ち物】ハンティングナイフ@現実、女性用下着上下、浴衣(大人用)、
     ライガー@モンスターファーム~円盤石の秘密~
【思考】
0、もう迷わない。必ずこのゲームを止めてみせる!
1、温泉へと戻り、スバルを治療する
2、冬月、ケロロと行動する。
3、一人の大人として、ゲームを止めるために動く。
4、ヴィヴィオ、朝倉、キョンの妹(名前は知らない)、タママ、ドロロたちを探す。
5、掲示板に暗号を書き込んでヴィヴィオ達と合流?
※「ズーマ」「深町晶」を危険人物と認識しました。ただしズーマの本名は知りません。
※「ギュオー」「ゼロス」を危険人物と認識しました。
※マッハキャリバーから、タママと加持の顛末についてある程度聞きました。
※夢成長促進銃を使用し、9歳まで若返りました。
※リインからキョンが殺し合いに乗っていることを聞きました。


【トトロ@となりのトトロ】
【状態】腹部に小ダメージ
【持ち物】ディパック(支給品一式)、スイカ×5@新世紀エヴァンゲリオン
     ピクシー(疲労・中)@モンスターファーム~円盤石の秘密~
     円盤石(1/3)+αセット@モンスターファーム~円盤石の秘密~、デイバッグにはいった大量の水
【思考】
1.自然の破壊に深い悲しみ
2.誰にも傷ついてほしくない
3.なのはとスバルを温泉に連れて行く
4.ピクシーにスバルの回復をさせる
5.????????????????
【備考】
※ケリュケイオンは現在の状況が殺し合いの場であることだけ理解しました。
※ケリュケイオンは古泉の手紙を読みました。
※大量の水がデイバッグに注ぎ込まれました。中の荷物がどうなったかは想像に任せます




 戦うことは好きじゃない。
 誰かを傷つけるのが怖かった。
 この拳を振るうのが、本当はとても怖ろしくて、いつも手が震えていた。


 だけど――この手の力は、壊すための力じゃない。


 大切なものを守る力。


 悲しい今を打ち抜く力。


 この拳は、そのためのものだ――


【G-3 森/一日目・夜】
【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】ダメージ(瀕死)、疲労(瀕死)、魔力消費(特大)、気絶、覚悟完了
【装備】マッハキャリバー@魔法少女リリカルなのはStrikerS、
    リボルバーナックル(左)@魔法少女リリカルなのはStrikerS メリケンサック@キン肉マン、
【持ち物】支給品一式×2、 砂漠アイテムセットA(砂漠マント)@砂ぼうず、ガルルの遺文、スリングショットの弾×6、
     ナーガの円盤石、ナーガの首輪、SDカード@現実、カードリーダー
     大キナ物カラ小サナ物マデ銃(残り7回)@ケロロ軍曹、
     リインフォースⅡ(ダメージ(中))@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【思考】
0:………………。
1:キョンが殺し合いに戻るようなら絶対に止める。
2:なのはと共に機動六課を再編する。
3:何があっても、理想を貫く。
4:人殺しはしない。ヴィヴィオと合流する。
5:I-4のリングでウォーズマンと合流したあとは人を探しつつ北の市街地のホテルへ向かう (ケロン人優先)。
6:オメガマンやレストランにいたであろう危険人物(雨蜘蛛)を止めたい。
7:中トトロを長門有希から取り戻す。
8:ノーヴェのことも気がかり。
9:パソコンを見つけたらSDカードの中身とネットを調べてみる。
※大キナ物カラ小サナ物マデ銃で巨大化したとしても魔力の総量は変化しない様です(威力は上がるが消耗は激しい)
※リインフォースⅡの胸が大きくなってます。
 本人が気付いてるか、大きさがどれぐらいかなどは次の書き手に任せます。


【備考】
※G-3を中心に、スバルの絶叫が響き渡りました。
 どれだけの範囲に聞こえたかは、後続の書き手さんにお任せしますが、少なくともG-2温泉にはギリギリ聞こえています。



時系列順で読む


投下順で読む


なるか脱出!? 神社の罠(前編) スバル・ナカジマ 統ばるーただ一人を助けるその為に
耐えきれる痛みなどありはしない 高町なのは
トトロ
冬月コウゾウ
ケロロ軍曹
キョン ピエロのミセリコルディア






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