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彼女らのやったコト ◆321goTfE72



リナとドロロは決断を迫られていた。

目の前には様変わりした協力者たちがいる。
服装がガラっと変わっていたり、明らかに体型・年齢が変わっていたりするが…
変身やらそういったものに耐性がある2人にとってはそれはさほど問題ではない。
いや、問題ではあるにはあるが―――今対処すべきことは他にあった。

2人が操作していた、そして今、朝倉が凝視しているパソコンのディスプレイには
プロフィールが表示されている。

"県立北高校1年、対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース"である
朝倉涼子のプロフィールを。


友好的な振舞いを見せていた人物が、裏でこそこそと自分の素姓を調べていた―――
これを面白く思う者はいないでござろう。

―――ドロロは素直に謝罪すべきか否か、真剣に吟味していた。


もう画面は見られてしまった。ごまかしが効くような相手とは思えない。
あたしの世界では普通のことだと言い張るか、ドロロが言い出したことにするか…

―――リナは開き直るか責任転嫁するか、真剣に吟味していた。




気まずい沈黙が辺りを漂う。
沈黙を保てば保つだけ悪いことをしたと思っていると言っているようなものだ、
そう判断したあたし、剣士にして美少女天才魔道士であるリナ=インバースが
意を決して開き直ろうとしたとき。

「それが、キーワードを入力した結果得られる情報というわけね」

アサクラが先に口を開いた。
突然の反応に思わずあたしはビクっと肩を震わす。
となりのドロロがハラハラしている雰囲気も伝わってくる。

「なるほど、参加者の顔写真と簡単なプロフィールさらに最初の支給品まで分かるのね。
 ちょっと面倒だけど、これを全員分覚えておけば…かなり有用なのは間違いないわね」

あたしとドロロの脇を通り抜け、パソコンの前まで歩を進めながら飄々と言葉を紡ぐ。
画面を覗き込んでいるのでその表情は伺いしれないがえらくあっさり風味である。

「あ…朝倉殿。気を悪くしてないのでござるか?」

なんだかあまりにあっさりしすぎているので不審に思たようでドロロが尋ねた。
ディスプレイを覗き込んでいた朝倉は、ゆっくりと身体を反転させる。

「ええ」

短い一言を言ったその表情は、笑顔だった。
無理して作った笑顔でもなければゼロスのような胡散臭さも感じさせない、
バックで光がきらきらしている満面の笑顔。
その見事なまでのスマイルが
『気を悪くしない?うん、それ無理』
と逆に物語っているような気がしてドロロ、あたしのみならず
ヴィヴィオちゃんまでも思わず後ずさった。


● ● ●


場は丸く…かどうかは非常に怪しいけど、とりあえず収まった。
そしてまずアサクラはあたしとドロロにヴィヴィオがどうして突然"成長"したのか説明してくれた。

新・夢成長促進銃―――効果を目の当たりにしなければ絶対に信用しないようなアイテムであるが…
肉体年齢を操作することができるなんて、異世界って広い。
これが平時なら解体してその原理を調べレポートするなり転売するなりしてひと儲けするところだが
あいにくとそんなことをやっている場合ではない。
まずは、今後の方針をしっかりさせておく必要がある。

「…いまさら確認するまでもないかもしれないけど、念のため。
 あたしもドロロもさっきのズーマのときのような状況にならなきゃ
 進んで殺し合いをする気はないわ。アサクラたちもそうと思っていいわね?」

あたしの問いに大きくなったヴィヴィオちゃんがこくりと頷く。
しかし、その隣にたたずむアサクラは凛とした瞳でこちらを見据え、はっきりと言った。

「私は少し違うわ」

静かに言った。
これはすぐに肯定されるだろうと思っていたあたしはちょっと面食らい、場の空気が張り詰める。

「もちろん、無駄な争いは起こさないつもりだし、進んで殺し合うつもりもない。
 ………だけど。例外もいる」

ヴィヴィオちゃんの左腕につけてある、メイド服とは不釣り合いな腕章に目をやりきっぱりと言った。
その"例外"が誰なのか察したヴィヴィオちゃんは物哀しげな様子を見せる。

「…オーケー。その人に関してはアサクラの判断に任せるわ。
 今は話を進めるわよ」

ある程度話は聞いていたのであたしも言いたいことを推察できた。
あとで話を聞くことにして会議を進行させる。
何せあと30分ないし40分もすればまたショウたちとのチャットが始まる。
情報が増えるまでにできる限り情報整理は終えておきたい。

「時間が惜しいから、あたしがアサクラたちに聞きたいことをざっと挙げるわ。
 まず第一にあなた達の知り合いについての情報。危険人物については最優先で。
 次に、首輪について。
 アサクラが『どうにかできるかもしれない』って言った根拠も教えてもらいたいわ。
 あとそれと―――」

「"対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース"とは何か―――
 とかもどうかしら?」

素晴らしき笑顔でそういった朝倉に思わず、うぐっと言葉に詰まる。

確かに気になってる、気にはなってるけども………
ああああああ、やっぱりこっそりプロフィール見たの根に持ってる!!?

などと頭の中で冷や汗を流しながらも、

「あはははは、うんそれもお願い…」

とりあえずひきつった笑顔で返事するぐらいしかできない。
………彼女から話してくれるまで、この話題には触れないでおこう…。

「…朝倉殿たちが拙者らに聞きたいことは何かあるでござるか?」

トラブルを引き起こしたくないとか言ってたドロロが助け舟を出してくれたおかげで、
話の軌道が修正された。ガウリイにはできない気遣いである。ナイス。

「そうね…私たちもあなた達の知り合いについては最低限押さえておきたいわ。
 それにこの殺し合いのシステムやパソコンなどの情報においても
 二人のほうが知っていることは多いようだし、教えてほしいところね。
 そんなに悪くない条件のはずよ。情報交換に関してはこれでどうかしら?」

「こちらとしてもそれでいいわ」

あたしは内心ほっとしていた。
"首輪解除"についての情報は脱出を目論む参加者としては必須の情報、
その価値はあたしたちが考察したり集めたりした情報全ての価値よりも上になり得る。
最悪、アサクラが首輪の情報と引き換えにこちらの情報から支給品まで全て要求してきたとしても
突っぱねるかどうかは非常にきわどいほど、最最最重要なもの。
それがこの程度の対価で得られるならば願ってもない。

だからといってここであからさまに喜べば足元見られる可能性もある。
あたしとしてはそこらへんで手を抜くはずにもいかない。
ここは冷静に、そういった感情は伏せて情報交換をしよう。

「よし、それじゃあ情報交換を始めましょう」

「拙者はそれと並行して参加者のことをkskコンテンツで調べるでござる。
 晶殿とチャットする前に『雨蜘蛛』『川口夏子』について調べておきたいでござるからな」

「それがいいわ。
 ついでに、『草壁姉妹』と『トトロ』、『冬月コウゾウ』についても
 調べてもらってもいいかしら、ドロロさん?」

「承知したでござる。それだけでいいでござるか?」

ドロロの問いにアサクラは綺麗な眉をぴくりと動かし眼を右上の虚空へと遣る。
他に何かなかったのだろうかと思案しているようだ。

やがて、何か思い至ったのか手をポンと叩き口を開いた。

「そうそう。大柄で浅黒い肌の中年男がいたら教えてちょうだい」

アサクラのその言葉にあたしとドロロは目を合わす。
なんつーか…あんまり思い出したくないんだけど………思い当たる節があるという説が…

「ねぇドロロ…」

「察するに…彼奴でござろうなぁ…」

ドロロは布越しにでも分かるほどの大きな溜息を吐き、
あたしは眉間をひっつかんで頭が痛いことをアピール。
皆まで言うなかれ、あたしのような繊細な心を持つ乙女にはあれを思い出すのは精神衛生上よろしくない。

「二人とも、彼に会ったの?」

「明け方に………一戦交えたでござる。この眼も彼奴――ギュオーにやられたのでござるよ」

そう言ってドロロは左目を指差した。
その痛々しさに、ヴィヴィオちゃんは思わず目を背ける。
対照的にアサクラは平然としているが。

「そうなの。それについては情報交換のときに聞かせてもらってもいいかしら」

「もちろんでござる。
 リナ殿とヴィヴィオ殿は他に何か調べておくことはござらんか?」

ヴィヴィオちゃんはドロロのほうを向いて首を横に振る。
あたしはしばらくあごに手を当て考えてみた。

このkskコンテンツとやらには各参加者が最初に持っていた支給品情報が記述されているようだ。
逆に言えば特定の支給品が誰の手に渡っているかの手がかりにもなるし、
この島の中に存在するアイテムを特定することもできる。
そうなるとすると、その存在を確認しておきたいアイテムはいくらかあった。

あたしは口を開く。

「『光の剣』別名『烈火の剣(ゴルンノヴァ)』、それと『タリスマン』。
 あとさすがにないと思うけど異界黙示録(クレアバイブル)。
 こいつらが支給品にないかチェックして」

「有用なアイテムなのね?」

アサクラが微笑を浮かべながらこちらを見る。
あたしはその眼を見てこくんと頷いた。

「ええ。もし支給品としてこの島にあるのなら説明するわ。
 それじゃ、時間もないし―――始めましょうか」

『Yes』

かくして、kskコンテンツを用いた情報収集と4人+1機による情報交換という一大イベントは幕を上げた。


● ● ●


これまでの軌跡。
出会った人物。
元の世界の知り合いetc.

情報交換は滞りなく行われた。
ドロロにしても朝倉にしても、誰も言ってくれないので自分で言っちゃうがあたしも
"聡明"と称して差し支えがない程度には切れ者だと思う。
語り手は話す内容は最低限に絞り、聞き手も実に的確に質問をするという理想的な情報交換であった。
ヴィヴィオだけはそうもいかないが、そこはバルディッシュがいる。
彼が手早くフォローに入るため問題なかった。

「………と、拙者についてはこんなものでござる。
 他に質問はござらんか?」

最後の一人であったドロロが全てを語り終え、キーボードを叩く手を休め3人に目を遣る。
もっとも道中はほとんどあたしと一緒だったし出身世界の仲間たちの話をしたのみ。
よって大した量ではなかったのですぐに終わったけど。

見渡してもアサクラもヴィヴィオちゃんも手を挙げる様子も口を開く様子もない。

「うん、それじゃあ…これで最低限だけど、情報交換は終了でいいわね?」

ふぅ、と息を吐き一息入れるためにあたしは首をコキコキ鳴らした。

アサクラの話によると、どうやらギュオーはあたしたちとの戦闘直後に滝付近で倒れていたらしい。
そこをウォーズマンとかいうまっくろくろすけが保護して治療したということだ。

ちぃっ、余計な真似を。

それにしても、ウォーズマンが滝に駆け付けた時は周囲には誰もおらず
ギュオーだけがいたそうで、荷物も盗られていなかったようだ。
ということは誰かに奇襲を受けて倒れたわけではなく
あたしたちとの戦闘によるダメージによって力尽きたのだと推測できる。

竜破斬を受けてまだ戦っていたりドロロとあたしを撃退したことからしても
タフなのは間違いないようだが…その後倒れちゃうようじゃマヌケとしか言いようがない。
もしかしたらギュオーのおつむは発酵してるんじゃなかろうか。
おまけにストーカーな上に変態なので脳みそが半分溶けてるガウリイよりもタチが悪い。
だが、性格もなんとなく掴んでるし上手くやれば利用してやれるかもしんない。
………できればもう会いたくないもんだけど。

「それじゃドロロ、kskコンテンツのほうはどう?」

「報告するでござる。
 まず、これを見てほしいでござる」

ドロロはそう言い、マウスを操作してページを送る。
瞬間的に誰かの写真が映り、すぐにまた別の写真が映る。
クリックに反応してまたすぐに別の写真に切り替わる。
そんなことを繰り返して映し出された画面には―――

「あっ…あの温泉の怪物!?」

風格漂う、獲物を狙うヘビの眼を持つ紫の怪物の写真が映されていた。
肩書きは『ワルモン四天王』。
非常に悪そうな団体名?と四天王というなんだか強そうな肩書き。
分かりやすいのはいいけどもうちょっとどうにかならなかったのか…などと
心の中でツッコミを入れるがこの際どうでもいいので捨て置く。

その名前を見ると―――

「こいつが、やっぱりナーガか」

「先程放送で呼ばれた名前ね」

「ええ。ショウから名前は聞いてたけど…間違いなかったみたいね」

「それと、この写真も見てほしいでござる」

ドロロがそう言いもう一度カチカチとマウスを操作する。
顔写真が流れるように表示されていき映ったのは。
顔を覆った布から鋭い瞳と針のような髪を覗かせる、見慣れた顔。

「っ…ズーマ」

「やはりそうでござったか。拙者は顔こそ知らないでござるが
 『凄腕の暗殺者』という肩書きを見てそうではないかと思ったでござる。
 ラドック=ランザード…それが彼奴の本名のようでござるよ」

「あたしも初めて知ったわ。けど…」

この名前は先程の放送でも呼ばれていた。
だが、今まで散々苦しめられた相手の名前だろうと今知ったところで役に立つわけでもない。

「殺し合いに乗って死んだような連中はどうでもいい。他になんかなかった?
 光の剣が支給されてました―――とか」

「リナ殿が探してほしいと言われたアイテムは光の剣とタリスマンが確認できたでござる。
 もっとも、光の剣はレプリカでござったが…」

「れぷりかぁ?」

「レプリカ…ね。ということは別に入手する必要はないかしら」

「んー…でも普通の剣よりはずっと便利なのよね、レプリカのほうでも」

光の剣のレプリカといえば、
おそらくポコタが持っていたタフォーラシアの技術で作られたものであろう。
レプリカと聞いてアサクラはパッチもんの劣悪品というイメージを持ったのかもしれない。
だが、美術品でもそうであるようにレプリカでも出来がいいものは結構ある。
このレプリカもその類で、本物にこそ及ばないものの使い勝手は十分に良いのだ。

「どういった効果の剣なの?」

「物質的な破壊力と、相手の精神そのものを断ち切る、
 持ち主の意志力を具現化した光の刀身を生み出す剣で切れ味はそれなりにいいわ。
 魔法を上からかけてやることでそれを収束・増幅して威力を上げたり
 光の刀身だけを打ち出したりと応用も利くし、あるに越したことはないんだけど」

「で、それは誰に支給されたの?」

「…彼でござる」

そういってドロロが表示させた画像は………
銀色のマスクが光る強面でごつい身体。
肩書きは『悪魔超人軍の首領』!
その名は悪魔将軍!!

どう見ても悪人です本当にありがとうございました。

「また厄介そうな人の支給品になっちゃったものね…」

「でも、この人が持ってない可能性もあるんだよね?」

「ヴィヴィオちゃんの言う通りね。
 もうここに連れてこられてからかなり経ってるし…
 こいつの手を離れてても全然不思議じゃないわ」

うまく手に入るといいんだけどなー、と思うが…まぁそう都合よくはいかないだろう。
島の中にあるのが分かっただけでも良しとしよう。

「で、ドロロ。タリスマンは?」

「彼でござる」

カチリと手元を動かし表示させたその画面に映ったのは
ブタ鼻とタラコ唇、額に『肉』と書かれたマスクを付けた
できれば関わり合いになりたくないようななかなかお目にかかれないブ男の画像だった。

全身写真じゃないため断言こそできないがいい身体つきをしている。
筋肉も見せ筋ではなく実戦で鍛えたもののようだ。
肩書きの『キン肉星王子』やら『超人オリンピックV2達成』が
どれほどすごいのかあたしにはイマイチ判断できないが…
なんだか単純そうだなぁ、と直感的に思った。
あと肩書き。
先程の悪魔将軍みたいなのが『人を超えた』とか名乗るのはまだ納得いくのだが
こんな不細工な奴が『超人』、おまけに『正義』なんか名乗っていたら胡散臭さ大爆発だ。
と、散々な評価をあたしは下していたが
ヴィヴィオちゃんとアサクラには別に思うところがあったようだ。

「キン肉マンさん!」
「あら、キン肉マンさんじゃない」

「こいつがゼロスと一緒にいなくなったっていう奴なの?」

「ええ」

ゼロスと同じところに転移したのかどうか知らないけど…
もし今も一緒にいるのならいいようにされてないことを祈るばかりである。

「キン肉マンさんはあたしが確認した時点では初期支給品は全て持っていたはずよ。
 ところでそのタリスマンはどういったアイテムなの?」

「魔法発動前に短い増幅魔法と唱えてやると使用者の魔力容量が一時的に上がるのよ。
 これがあると使える魔法のレパートリーも威力も増えるし便利なんだけど…」

そこでふとある考えが頭をよぎった。
『タリスマンがあると使える魔法』というのはあたしの場合は
獣王牙操弾(ゼラス・ブリット)だったり神滅斬(ラグナ・ブレード)だったり
暴爆呪(ブラスト・ボム)だったりするわけだが…

この暴爆呪、火炎球(ファイアー・ボール)よりも数倍の火力を誇る火球を数発撃ち出す
凶悪無比な火系統の魔法なのだが、実はあたしはゼロスくんが(タリスマンを使ってだが)使用しているのを見たことがあるのだ。

ゼロスと一緒に消えたタリスマン(+ブタ鼻)。
そしてさっき市街地のほうであった大規模な火事。
アサクラの話では迷惑極まりない放火犯はゼロスではなかったそうであるが、
精神生命体である魔族にとって外見なんてかりそめのもの。
高位魔族である彼は少なくとも元の世界では外見を自由に変えることができる。

つーことはつまり。

………まさか…ね。


……

………ゼロスならやりそうだなぁ。
あいつの魔力容量考えるとタリスマンなしでもやれそうだからなお怪しい。

「リナさん、どうしたの?」

アサクラの声ではっと我に返る。
そうそう、んなこと考えてる場合じゃなかった。
時間を見るともう19時直前、ショウたちとチャットをする約束の時間だ。

「ドロロ、もう時間がないわ。冬月コウゾウとかそこらへんについてはあとからでもいいけど、
 川口夏子と雨蜘蛛についても調べてくれた?」

「全員分の記述は一応は目を通したでござる。
 もちろん、川口夏子と雨蜘蛛に対する記述にも。
 前者は『元オアシス政府軍下士官』『反政府組織特殊部隊所属』だそうでござる。
 後者は『魂すら取り立てる地獄の取立人』だそうでござる」

レジスタンスと取立人。…どうも、これだけの情報で彼らが
ショウを利用しようとしているかどうかの判断を下すのは難しそうだ。
じゃあどうするか?

「その二人の顔を表示してくれる?
 もうかったるいし人相で判断しちゃいましょ」

「人を見た目で判断するのは良くないでござるよ。
 それにもう約束の時間が―――」

「"深町晶"だし待たせても問題ないわ」

「どんな理由でござるか!?」

あたしがこう主張しても、ドロロは『約束は守るべき』の一点張り。
ヴィヴィオちゃんも非難するような目でこっちを見てくるし
アサクラも『協力者の信頼を損ねる行為は慎むべきよ』と笑顔で言ってきた。
………"やっちゃった"あたしとしては彼女にそう言われると反論できない。

「分かったわよ。それじゃドロロ、そっちは頼むわね」

「…リナ殿、どこかに行く気でござるか!?」

あたしが自分のディバックを担いでいるのを見て、ドロロが驚きの声を上げた。

「ちょっと遊園地を調査してくるわ。昼間に来た時は使える道具がないか、って調べてたけど
 リングとかそういったギミックが仕掛けられている可能性があるって分かったし
 そういうのをちょっと探してみようかなって」

あたしは遊園地に何かしらが仕掛けられている可能性は非常に高いと推測していた。
もし何もないのなら禁止エリアをわざわざ3つも使ってここを封鎖する理由が説明できなくなる。
ドロロと考えていても結局何も思い浮かばなかったが―――なら実際に見て調べてみるっきゃない!

………本当に気まぐれで禁止エリアを選んでるとかだったら泣くぞあたしは。

「しかし一人で行くのは―――」

「だいじょーぶだって。魔力もそこそこ回復したし、何かあってもムチャする気はないから。
 それに深町晶とのやりとりはずっとドロロがやってきたから
 ここをアサクラに任せてドロロ連れていくってのも向こうが戸惑うでしょ」

ドロロが心配そうにこちらを見てくるが、あたしは手をぱたぱた振ってそう答えた。
アサクラかヴィヴィオちゃんのどちらか一人を連れていく…というテもあるけど、
これまでの二人の様子を見る限りヴィヴィオちゃんはアサクラのことをかなり信頼しているようだ。
今の外見こそあたしやアサクラと大差ない年齢になっているが精神年齢はまだまだ子供。
しかも、今は落ち着いているが放送直後の様子からしても精神的にかなり負担がきているのは
会ったばかりのあたしでも容易に想像がつく。
そんな彼女とアサクラを引き離すのはどーも忍びない。

「しかし…」

あたしの考えを知ってか知らずかなおも心配そうなドロロ。
うーん、仕方がない。譲歩してあげよう。

「ドロロはあたしが一人だと、もしギュオーとかズーマみたいなのに襲われたら危険だ。
 …こう言いたいのね?」

「そ、そうでござる」

まぁ、それはそうだろう。
正直なところ、一人だったらとっくに放送で名前を呼ばれてたはずだ。

「ならこうしましょう。あたしとアサクラとヴィヴィオちゃんの3人で調査に行く。
 ドロロはここに残る。うん、完璧」

「拙者が一人!!?」

ドロロが不服のツッコミをいれる。我儘なヤツである。

「それじゃ、いっそ何かトラブルに巻き込まれたことにして
 ショウのことはほったらかしに―――」

「ヴィヴィオちゃん、リナさんに付き合ってあげて」

予想外の人物の予想外の発言によりあたしの発想の転換をしたナイス提案はストップさせられた。
あたしもドロロもヴィヴィオちゃんも驚きの目でその発言者、アサクラのほうを見る。

「え…でも、涼子お姉ちゃん…?」

ヴィヴィオちゃんも戸惑いの色が強いようで、目をぱちくりしながらどうにかその言葉を発した。
アサクラがそれを制し、言葉を続ける。

「いい、ヴィヴィオちゃん?
 さっき言ったように自分で自分の身も守れるようになっておいたほうがいい。
 けれど、有機生命体というものはそんなすぐに簡単に強くなれるように作られてないわ。
 そして、私はあなたを守ってあげることはできても強くしてあげることは――残念ながらできない」

そこまで言い終えたところで、アサクラはすっと腕を上げ―――
こともあろうにあたしのほうを指差した。

「でも、リナさんは同じ魔法使い。リナさんにアドバイスをもらえば、
 少なくともあたしといるよりは強くなることができると思うの」

いや、確かにそうかもしんないけど…あたしの意思は!?
正直なところヴィヴィオちゃんがどれほど戦えるのか知らないが頼りに出来るとは思っちゃいない。
ドロロが心配しているような有事の際には足手纏いになること請け合いである。
そもそも、ヴィヴィオちゃんもアサクラと一緒にいたいはずだ。
何か反撃してやれっ!

「………」

何か考えるように伏目になるヴィヴィオちゃん。
考えるちゃいけない、感じるのよ!そして反論してあげなさい!!

「涼子お姉ちゃんがそういうなら…うん、私リナさんと一緒に行くことにする」

少し悩んだ末、力強い瞳でヴィヴィオちゃんは言った。
流されるなぁぁぁっ!!!
仕方ないのでここはあたしも口を出すことにしよう。

「アサクラ。悪いけどあたしはヴィヴィオちゃんを連れていくことに賛同できない。
 一人なら逃走できるような場面でも二人だとそうもいかないこともあるし―――」

「けれど、ヴィヴィオちゃんを連れていけば"逃走するような場面"を
 回避できるかもしれないわよ。ね、バルディッシュ?」

『Yes.』

ヴィヴィオちゃんの胸元のブローチがきらりと金色に光り、返事した。
ああ、そっか。ヴィヴィオちゃんが装備してるデバイス・バルディッシュ。
そういえば索敵機能みたいなものがついているんだっけ。
少々彼女には失礼な考え方かもしれないが、もれなくバルディッシュが付いてくるのならば
まわりへの警戒はバルディッシュに任せてあたしは調査に集中できるし確かに悪くはない。
異世界の魔法についてじっくり話を聞くいい機会でもあるが―――

「言っておくけど、最善は尽くすけども、
 いざってときにヴィヴィオちゃんを絶対に守れるなんて保証はちょっと…」

「それを保証してくれるのなら――さっきのあなたたちの行動は許してあげるわ」

笑顔でアサクラが言った。
さっきの行動、とやらは…もしかしなくてもこっそりkskコンテンツでアサクラの情報を見たことだろう。
………まだ根に持ってたのね…。

「それに…なんで私が"一番あなたたちが知りたい話"をしてないか。
 単に時間が足りなかったというのもあるけど…どうしてか分かる?」

そう、実はまだ首輪についてやアサクラの正体については一切話を聞いていない。
"あたしたちが一番知りたい話"とは十中八九、首輪解除についてのことだろう。
つまりは彼女、『私の言うこと聞かないと首輪のことしんないゾ☆』と言ってるのだ。
さっき教えてくれるって言ったぢゃないか、ヒドい!
…なーんて思うが後の祭り。
まぁ、この提案自体はさっき考えたように悪いことばかりではない。
もっとも今後も首輪をネタに同じような脅迫を繰り返すならそれ相応の応酬をさせてもらうが。

「―――仕方ないわね。あんまり無茶しないように1時間かそこらで帰ってくるようにするわ。
 よろしくね、ヴィヴィオちゃん、バルディッシュ。」

やり口はちょっと不服だけど、まぁいっか。
あたしはウインクをしながらヴィヴィオちゃんに手を差し出した。
その手を見たヴィヴィオちゃんはパーッと明るい顔をしてあたしの手を握る。

その笑顔は…悔しいがかわいい。
背も胸もあたしより大きいし…くそぅどいつもこいつも。

ヴィヴィオちゃんと手をつないだまま部屋を出ようとして―――
危ない危ない、これだけは確認しとかないと。

「アサクラ。あなた、空を飛ぶことはできる?」

もし、何かトラブルに巻き込まれた際にはドロロとアサクラを置いてきぼりにして
遊園地を離脱する必要があるかもしれない。
そうなったとき、置いてきぼりにした二人が禁止エリアのせいで立ち往生しました―――
とか笑い話にもならない。
そう考えて念のために尋ねたのだが―――

「…涼子お姉ちゃん?」

「どうなさった、朝倉殿!?」

その質問を境に突然アサクラの笑顔がひきつったものに変わる。
よく見ると冷や汗までかき始めている。
………なんか聞いてはいけないことだったのだろうか?

「飛べない…ことはない、わ」

消え入りそうな声でアサクラはぼそっと呟いた。
…何がそんなに嫌なのかは知らないが、飛べるのだったら話は早い。

「もし遊園地が封鎖されちゃった後に、
 あたしたちが帰ってこなかったりここを離れないといけない事情ができたりしたら
 ドロロを抱えて飛んで脱出してもらっていい?
 安心して、ヴィヴィオちゃんはちゃんと面倒みるから」

「………分かったわ」

ものすごく躊躇の混じった返答。
………何がそんなに嫌なのか。

「できればそういう状況にならないように祈りたいけどね。
 じゃ、リナさんも気をつけて。
 さっき話をしたようにこの会場には転送装置がいくらかあるみたい。
 ヴィヴィオちゃんとはぐれるのだけは避けたいからそれだけは注意してね」

『お願い』と手を目の前で合わせてウインクする彼女に、あたしはコクリと頷いた。
―――はぐれたくないのならなんでわざわざ別行動を促すような真似をしたのか分からないけど…
ゼロスといい彼女といい笑顔を絶やさないヤツはホント何考えているんだか。

「それじゃ二人とも、ショウの相手よろしく。
 アサクラ、首輪については戻ってきてからちゃんと聞かせてもらうわよ?」

あたしはディバックを担ぎそのまま部屋を出た。
左手に引いているのはサイドポニーの綺麗な茶色い長髪を持つオッドアイの美少女メイド。
ふと目が合い、彼女はニコっと笑いかけてくれた。
その笑顔にはどうも緊張の色がある。
まぁ状況を考えればそりゃ緊張もするだろうけど。

引率なんてガラじゃないんだけどな…。

あたしは彼女の手を引き、夜の遊園地へと繰り出した。
………デートに行くカップルじゃあるまいし何やってるんだろ。


◆ ◆


「さて、それでは晶殿が待ちわびているやもしれないでござる。
 すぐにチャットを―――」

リナたちが出て行ったのを確認したドロロがマウスを握ろうとして―――
いつのまにかそのマウスを朝倉が握っていることに気付いた。

そして操作する。今はキン肉マンのページが表示されているkskコンテンツを。
マウスに連動する矢印は支給品情報が書かれている下の
青い『→』のマークに移動し、

カチカチカチカチカチッとクリック連打。

「あ、朝倉殿!?」

「ごめんなさい、ドロロさん。どうしてもこれだけは確認しておきたいの」

そう言ってページを送り続けた先に表示されたのは―――
金髪の髪とオッドアイの瞳を持つ少女のページだった。

朝倉は対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースである。
そのためか、相手の外見にとらわれず冷静に相手の性質に気付くことができる。
ギュオーもゼロスも直感的にただの人間ではない、
もしくは人間ではないと気付いたのはそのためだ。

そんな彼女がヴィヴィオに抱いたわずかな"違和感"。
最初は『異世界の人間だからだろう』ぐらいにしか思っていなかった。
だが、どうも違うと確信したのはリナと出会ってからだろうか。
同じく『異世界の人間』で『魔法を使う』存在でありながら彼女には"違和感"を感じなかった。

こうやってその違和感の正体を突き止めようとしているのは単純に知的好奇心からだけではない。
疑問や迷いは咄嗟の判断を遅らせる。
そしてこの"違和感"というノイズは有事の際に自身の判断を鈍らせるかもしれない。
だからこそ、彼女を守り通すためにはそれを知っておくのも必要なことだと結論付けた。
とは言っても本人やバルディッシュに
「ヴィヴィオちゃんは普通の人間と何か違う。その理由を教えて♪」
と言えるわけもなく、一時的にリナにヴィヴィオを預けこういう行動に出たのだった。

そして、朝倉はヴィヴィオの肩書きを見る。

"魔法学院初等科所属、聖王の器"

「聖王………の…器?」

「器…とはまた面妖な表現でござるな」

朝倉もドロロも怪訝とする。
『聖王』というだけならまだ理解できるのだが…『器』の意味がさっぱり分からなかった。
だが、わざわざここに特記事項として書かれているのだ。
"違和感"の正体の鍵は、この言葉が握っている可能性が高い。

(機をうかがって、本人かバルディッシュに聞いてみればいいかな)

「ありがとう、もういいわ」

朝倉はそう言いマウスを手離した。
溜息を吐きつつ、ドロロがそのマウスを握る。

「ここで出会う女性は押しが強いでござるな…」

苦笑しながら、ドロロはマウスを操作し始めた。


【D-02 遊園地(スタッフルーム)/一日目・夜】

【ドロロ兵長@ケロロ軍曹】
【状態】切り傷によるダメージ(小)、疲労(大)、左眼球損傷、腹部にわずかな痛み、全身包帯
【持ち物】匕首@現実世界、魚(大量)、デイパック、基本セット一式、遊園地で集めた雑貨や食糧、
【思考】
0.殺し合いを止める。
1.晶たちとチャットで情報交換する。
2.リナとともに行動し、一般人を保護する。
3.ケロロ小隊と合流する。
4.草壁サツキの事を調べる。
5.後で朝倉と首輪解除の話をする。主催者が首輪をあまり作動させたがらない事も気になる。
6.後で朝倉やバルディッシュとさらに詳しい情報交換をする。
7.「KSK」という言葉の意味が気になる。

【備考】
※ガイバーの能力を知りました。
※0号ガイバー、オメガマン、アプトム、ネオ・ゼクトールを危険人物と認識しました。
※ゲンキ、ハムを味方になりうる人物と認識しました。
※深町晶、スエゾー、小トトロをほぼ味方であると認識しました。
※深町晶たちとの間に4個の合言葉を作り、記憶しています。
※参加者が10の異世界から集められたと推測しています。
※晶達から、『主催者は首輪の発動に積極的ではない』という仮説を聞きました。
※参加者プロフィールにざっと目を通しました。



【朝倉涼子@涼宮ハルヒの憂鬱】
【状態】疲労(大) 、ダメージ(中)、自分の変質に僅かに疑問、ドロロとリナに対してちょっと不快感?
【持ち物】鬼娘専用変身銃@ケロロ軍曹、小砂の首輪
     綾波のプラグスーツ@新世紀エヴァンゲリオン、ディパック(支給品一式)、新・夢成長促進銃@ケロロ軍曹、
     リチウムイオンバッテリー(11/12) 、クロスミラージュの銃身と銃把@リリカルなのはStrikerS、遊園地で回収した衣装(3着)
【思考】
0.ヴィヴィオを必ず守り抜く。
1.晶たちとチャットで情報交換する。
2.武器もないので、気は進まないが鬼娘専用変身銃を使う事も辞さない。
3.キョンを殺す。
4.長門有希を止める。
5.古泉を捜すため北の施設(中学校・図書館・小学校の順)を回る。
6.基本的に殺し合いに乗らない。
7.ゼロスとスグルの行方が気がかり。
8.『聖王の器』がどういう意味なのか気になる。
9.できればゲーム脱出時、ハルヒの死体を回収したい。


【備考】
※長門有希が暴走していると考えています。
※クロスミラージュを改変しました。元に戻せるかどうかは後の書き手さんにお任せします。
※クロスミラージュは銃身とグリップに切断され、機能停止しています。
 朝倉は自分の力ではくっつけるのが限界で、機能の回復は無理だと思っています。
※制限に気づきました。
 肉体への情報改変は、傷を塞ぐ程度が限界のようです。
 自分もそれに含まれると予測しています。
※遊園地で適当な衣装を回収しました。どんな服を手に入れたかは次回以降の書き手さんにお任せします。
※kskコンテンツはドロロが説明した参加者情報しか目を通していないため
 晶たちといる雨蜘蛛が神社で会った変態マスクだと気づいていません。

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彼等彼女等の行動 (08) 朝倉涼子 寸善尺魔~憎魔れっ子が世に蔓延る(中編)~
ドロロ兵長
リナ=インバース 彼女らにできるコト
ヴィヴィオ




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