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ロックマンコードⅡ第四章~破壊と守護~  君が私に勝つ事など不可能だ ・・・・・  幾ら頑張ったところで この差は埋められない ・・・・俺は  さぁ どうする。ロックマン ロックマンはもう死んだんだ・・・!  ほぉ? ・・・ここにいるのは・・・!! 第一話  破壊された街並み。 辺り一面に満遍なく転がっている、血染めの人形達。  手を伸ばしたまま死んでいる、青年。 我が子をしっかりと抱き締めたまま息絶えている、母親。 驚いたように目を見開いたまま、胸にぽっかりと穴を空けた子供。  彼は、小さな男の子を抱き締めていた。まだ息がある。鮮血と埃で顔が汚れているが。 「飛鳥・・飛鳥!!」  必死に男の子の名を叫ぶ。 と、男の子はゆっくりと眼を開いた。  その仕草に、心のどこかがホッとする。 しかし、そんなものは一瞬の幻想でしか、無かった。 「・・ロックマ・・」  男の子が、ゆっくりと自分の名を口にしようとした瞬間、 男の子の頭部は、彼の目の前で粉々に砕け散った。  彼の腕の中からずり落ちた男の子の身体は、地面にぶつかると、真っ赤な液体を勢いよくぶちまけた。 「・・・ぁ・・・」  ぴちゃっと地面に跳ね返った鮮血が彼の頬を染める。  彼は、その光景が余りにも信じられなくて、ゆっくりと首を横に振る。 けれど、その光景は未だに目の前から消えてくれない。 「・・嘘・・だ・・」  手が、身体が震える。  今すぐこの場から逃げ出したい。  彼は、誰かの悲鳴を聞いていた。 それは、彼自身の物だったのかもしれないし、本当は別の者の悲鳴だったのかもしれない。 《ネェ・・ロックマン》  不意に、あの男の子の声が聞えた。  彼は、目を見開いたまま顔を上げる。 視線の中に飛び込んできたのは、今まさに砕かれた筈の、男の子の頭部だった。 「・・あ・・・すか・・」 《ドウシテ・・・?》  そう呟く男の子の目は、酷く哀しそうであり、彼に失望したような、軽蔑したような、そんな光を宿していた。  目を瞑って、耳を塞いでも、男の子の声はひたすら彼の頭に直接呼びかけてくる。 《ネェ・・ドウシテ・・・?》 「やめてっ・・・・・やめて・・・ぇ」 《ドウシテ・・・》 「・・・止めて・・・・ぇ」  目から涙が止めどなく流れてくる。 それでも、血に濡れた男の子の頭部だけは、嫌にくっきりと視界の中で喋り続ける。 《・・君ガボク達ヲ殺シタンダヨ》 「もう・・っ・・やめっ・・」 《嘘吐キ・・》  彼の身体が、びくりと跳ねた。 《護ッテクレルンジャナカッタノ・・?》 「・・俺は・・っ・・俺はぁぁっ・・・っ!」 《ネェ・・・》 《ドウシテ護ッテクレナカッタノ?》  べちゃり、と、彼の頭部が再び粉々に砕け散った。  四方にぶちまけられた真っ赤な液体が、彼の全身を濡らしていく。 いつの間にか、彼はあの街ではなく、何も無い空間に立っていた。  何も見えない、何も無い。けれど、不気味な声だけが響き渡る、そんな空間。  声達は、口々に『ドウシテ』『オ前ガオレ達ヲ殺シタ』と、囁き続ける。 「ぁ・・・ぁぁ・・・」  振り向くと、そこには見覚えのある者達が立っていた。 サンダー・スネーキング、スクリュー・フロッグス、フレイム・カンガルート・・。  それは全て、彼自身が討った者達。  彼が後ずさりをしても、彼等は問答無用で迫り寄ってくる。 そして、無数の手が彼の身体を掴んだ。 「あっ・・ぁぁぁぁぁぁああぁっぁっ!!」 《貴様ガオレ達ヲ殺シタンダ》 《ドウシテ護ッテクレナカッタノ?》 《ドウシテ》 《何故》 《今度ハオレ達ガ貴様ヲ殺ス》 第二話  ロックマン・コードは、ハッとしたように目を開けた。  視線をそのままに、感覚だけで周囲の気配を探る。 数十体。いや、百体前後。恐らくメカニロイドだろう気配が多数。  コードは、そんな気配なぞ最初から存在していないように、ボソリと呟いた。 「夢・・」  そして、薄く、不気味に笑う。  飛びかかってきたメカニロイドの一体を片手で引っ掴み、力任せに粉砕する。 破壊されたメカニロイドの破片と、オイルが、彼の全身を染めていく。  たらりと頬を滑るオイルに、笑みすら浮かべつつ、コードは自分を取り囲むメカニロイド達を見渡した。 「雑魚ガ・・」  メカニロイド達の銃口が一斉に爆ぜた。 中心に立っているたった一人を標的にした、無数のエネルギー弾が降り注ぐ。  標的を地面ごと掘り返したエネルギー弾は、辺りに土ぼこりを上げた。 これだけのエネルギーを受けたのだ。標的は粉々に粉砕されて-いなかった。  蔓延する土埃の中、彼は立っていた。依然として不気味に笑いながら、無傷のまま。 「・・・全テ消シテヤルヨ」  不意に数十体のメカニロイドが爆裂した。 その全てが、全身を細切れに斬り裂かれていて、もはや原型を止めていない。  他のメカニロイドがターゲットをロックするよりも早く、 別の方向から放たれた無数のエネルギー弾が、次々とメカニロイド達を撃ち抜いていった。 「アハハ・・ハハハハ!!!」  次から次から爆裂していくメカニロイド達にバスターを連射しながら、コードは笑っていた。 楽しくて仕方がない。これ以上の至福は無い-そんな笑み。  最後の一体が、土埃の中から飛び込んできた。  コードは、小さくクスリと笑って、片手の手刀を真っ直ぐにメカニロイドの胴体に突き刺した。 完全に動力を貫かれたメカニロイドは、コードの腕からするりと抜けて、地面にそのまま砕かれた。 「アハハ・・アーハッハッハッ!!」  スクラップの山と化した空間の中、コードは狂ったように笑った。 いや、既に狂っていたのかもしれない。  心底楽しそうに笑う彼の瞳に、光はない。 蒼い色をしていた鎧は、禍々しさの色味が強い紫色に変色していて、フォルムも変わっている。 その上を、オイルや鮮血が被っていて、その禍々しさを更に強調している。  ヘルメットの要所から見え隠れする蒼い頭髪も、既にその輝きを失っていた。 「アハハハハ・・ハハハハ・・」  瞳の色は、鮮血に似た真紅。  もはやそこに立っているのは、『ロックマン・コード』でも『松浦 輝』でも無かった。 ただの憎しみの塊であり、世界で最も危険な兵器。 「・・全テ消シテヤル・・」  ゆらりと向けた彼の視線の先で、再び大量のメカニロイドが銃身を構えていた。  コードは、低く肩で笑うと、バッと両手を広げ、わざとターゲットしやすいようにその場に棒立ちを務めた。 「オイデ・・」  メカニロイド達の銃口に、少しずつ光が宿っていくのを見詰めながら、コードは呟いた。 「・・・消シテアゲルカラ」  カッと、再び大量のエネルギーがコード目掛けて解放された。  コードは、自分に向かって殺到するエネルギーの雨を見詰めても、その笑みを崩さない。 寧ろ、更に楽しみが増えたかのように、その笑みを強めた。 「・・フフ・・フ」  メカニロイド達の放つエネルギー弾など、今のコードに取っては雨以下の障害だった。  懲りずに連射してくるメカニロイド達に向かって、ユラリと片手のバスターを向ける。 収束していくのは、いつもの蒼い光では無く、漆黒の光-絶対の暴力。 「アハハハハ!!!」  漆黒の光に晒されたメカニロイド達がこの世に残した物は、何一つ存在しなかった。 第三話  ハンターベースは大混乱に陥っていた。  約数十時間前、突然にロックマン・コードの反応がロストしたからだ。  四つ目の拠点を破壊しに向かったコード。 任務が成功した事は、担当オペレータのヒカル・チェレスタから司令部に通達されたのが既に確認済みだったと云うのに、 帰還の途中、彼の反応は何の前触れも無く消え失せた。  一体何があったと云うのか、任務途中で何か致命的なダメージでも受けていたのか、 敵が突然出現したと云うのか。  可能性は出していけば幾らでも出てくる。  オペレーションルームは、コードの反応を少しでも拾おうと、神経を尖らせているし、 指令室では、コードを差し引いた際の戦力ダウンについての計算を急いでいる。  ロックマン・コードの死-まだ確定したわけではないが-は、今のハンターベースにとっては、大きすぎる影響だった-。  オペレーションルームの隣の部屋。そこは、オペレート機器の在庫が備えつけてある、いわゆる準備室だ。  コードの反応を捜索するのを、多少でも手伝おうと思っていたロックマン・フラット。師道 響が扉を開くと、 不意に甲高い金切り声が、彼の耳に飛び込んできた。 「判っているのですか!!」 「・・・・うん?」  ひょいっと首を伸ばして、覗き込んでみる。  部屋の隅っこで、オペレータのティーチ係の女性が、何やら怒鳴っているのが見えた。 「これは彼をオペレーションした貴方の責任でもあるのですよ!!」 「・・・・・すみません・・・でした」  ティーチが投げかける容赦のない言葉に耐えながら、もう一人居た少女-ヒカルは、ただ俯いたまま、そう返すだけだった。  響は、少し表情を顰めた。  端から見ても理解出来る状況は、つまりコード・・輝をオペレーションしたヒカルに、 責任を擦り付けている様なもの-と云うことだ。  響に言わせれば、誰がオペレーションしたところで、大して結果は変わらなかった筈なのだが。 「貴方の為に世界レベルで影響が出るやも・・」 「その辺にしておけ」  いい加減見るに耐えなくなっって、響は簡潔にそう云った。  響がいる事に気付いていなかったのか、ティーチは酷く驚いたのか、目をガッと見開いた。  俯いていたヒカルも、響の姿を確認すると、「あっ・・」と小さく声を上げた。 「フラットさん」 「殆ど用の無い物置で何をしている」 「そ、それは」  ティーチは、言葉を詰まらせた。  当たり前だ。正式な違法行為をしていないヒカルに、誰もいない準備室で八つ当り同然の事をしていたのだ。 後ろめたさも多少は出てくる。 「アンタ達はコードの反応を捜すんじゃなかったか?」 「そ、そうであります!」 「だったらこんな所で見習いオペレータを怒鳴り付けている暇があるのか?」 「し、失礼しました!!」  ビシッと大袈裟に敬礼すると、ティーチはカクカクとぎこちない足どりで部屋を出ていってしまった。  まさに脱兎の如くだな-響は、そんな後姿を見詰めつつ、心の中で呟いた。 「大丈夫か?」  完全にティーチの気配が遠くなったのを確認してから、響はクルリと振り返った。  ヒカルは、未だに辛そうにしながら、俯いている。 唇を噛み締めて、その小さな拳を力いっぱい握りしめて。 「・・すみません」 「謝る必要は無い」 「・・・でも私が、悪いんです」 「そうだろうか」  響は、ヒカルの隣に歩み寄り、背を壁に預け、天井を見上げた。 「嬢ちゃんは精一杯やったんじゃないのか?」 「でも、私がもっと注意していれば・・・」 「なら聞くぞ?どこをどう注意すればこうならずに済んだのか云えるか?」  響の率直な質問に、ヒカルは口籠もった。  戦闘に突入してから、拠点を破壊し、完全に戦闘領域から抜け出す所まで、ずっと通信を続けていたヒカル。 切ったのは、輝が帰還すると云った直前だけだ。  その時意外は、絶えずモニターやレーダーと睨めっこしていたし、指示もなるべく落ち着いて、正確に送ったつもりだった。 「オレから云わせれば、誰がアイツのオペレートをしていようと同じだったと思うぞ」 「えっ?」 「任務開始から帰還まで、ずっと通信を繋いでいるオペレータなんてものは希だ。  そして、希に通信を繋ぎっぱなしなのを嫌うハンターもいる。  それに、見た限り、嬢ちゃんのオペレーションはなかなかだったと思っている」 「でも・・・」  輝も嬢ちゃんも一緒か-響は、俯いたままのヒカルを見下ろしたまま、ふと思った。  何か悪い事態に陥ると、必ず自分の所為だと認識して、自分を責める。 例え、その時のその行為が、自分の限界であったとしても-だ。  謙虚なのは結構だが、二人とも度が過ぎている。響は、心の中で溜息をついた。 「嬢ちゃんは、アイツを信じていないのか?」  響がそう呟くと、ヒカルはハッとしたように顔を上げた。 「本当にアイツが死んだものと思っているのか?」 「そ、そんな事絶対無い!」  ぶんぶんと首を振るヒカルに、響は小さくクスリと笑った。  軽くヒカルの頭に手を乗せる。 「だったら待っていればいいだろう。アイツのことだ。何がなんでも戻ってくるさ。  それがどんな形であれ、必ず」 「・・はい!」  ヒカルは、目に浮かんでいた涙を、ゴシゴシと制服の裾で拭った。  特注の蒼い色をした制服。それは、オペレータをする時は制服着用が義務だと云われて、 仕方なく輝に借りたのを、着たままだったものだ。  輝よりも身長が低いヒカルは、裾を何度か折り返して着ている。 それでも、ダボダボな事に代わりは無いが。 第四話  いつまでも準備室に留まっている事も出来ず、響とヒカルは、二階の外の風景が見える談話室に移動した。  窓の外に見える景色は、ミュートとの戦闘の傷跡がクッキリ残っていて、 お世辞にも綺麗とは云えなかった。 ベースの内部自体も、オペレーション室付近はボロボロで、壁が消滅している所も点々とある。 「ほら」  最寄りの自販機で適当に買ってきた缶を、響はコトリと机の上に置いた。 ヒカルは「すみません」とだけ呟いたが、缶に手を伸ばす気配は無かった。 「少し飲んで気分をスッキリさせたらどうだ?」 「いえ、お構いなく・・」 「まぁいいが」  響は、手に持っていたもう一本の缶のタブを、軽く指で開くと、 内容物を一口だけ喉に流し込んだ。  少々濃い目の珈琲。眠気覚ましには丁度いいが、好きな者で無いとこの濃さを飲むことは出来ないだろう。  響は、そんな珈琲をまるでオレンジジュースでも飲むかのように、平然と飲み下しつつ、 荒れてしまった外の景色を眺めるために、そっと窓硝子に手をついた。 「嬢ちゃんは、オレの事を知っているだろう?」 「えっ?」 「師道 響じゃなく、ロックマン・フラットを・・だ」  一年前の地球の逆襲の時の記憶は、響には無い。  気が付いたときには、輝と海とヒカルがいて、それが普通だと思っていた。 だが、フェルマータとの闘いが始まってから、嫌に気になってきた。  輝達に訪ねても、上手くはぐらかされてしまって、今まで知る機会が殆ど無かったが。 「・・・知って・・ます」  察しがいいのか、それともただの誤解なのか、ヒカルは小さく答えた。  響は、多少の沈黙の後、続けた。 「オレと輝が闘ったことも・・か」 「・・・はい」 「オレがロックマン・フラットだと知った時、どう思った?」  ヒカルは、少し吃驚したよな、何度か瞬いたが、すぐに小さく笑った。  疑問符を浮かべる響に、ゆっくりと云う。 「最初は吃驚しましたけど、恐くは無かったです」 「何故」 「なんとなくなんですけど・・。あぁ・・この人は違うんだなって思って」 「違う?」 「私が知ってる人とは違う。輝君と一緒で、凄く優しい人なんだ・・って」 「そうか」  そこで話しを切った響は、再び濃い目の珈琲を喉に流し込んだ。  意識が別の所にある所為か、味はそんなに気にならなかった。 一番気になるのは、彼、輝のことだ。  彼が本当に死んだとは毛頭思っていない。だが、不安要素がないわけじゃない。  生きていたとしても、反応が消失し、ベースに戻ってこれない理由が何かしらある筈だ。 彼をそこまでさせるモノは、一体。 「やれやれ。全く何をしているんだアイツは・・」  嬢ちゃんに心配かけたくないんじゃなかったのか。 「ロックマン・コード。・・松浦 輝」  お前がいないベースは、ただの腑抜けだ。  不意に腰の通信機が声を上げて、響は落ち着いた動作でそれのスイッチをノックした。  通信の相手はオペレータの一人だ。 まだダメージが完全に回復したわけじゃないから、一度Dr.ルビウスの所にいけとの指示が下された。 「響さん、怪我大丈夫ですか?」 「別に。もう問題無いんだが、シカトすると煩いんで、ラボに行ってくる」 「あっ、はい」  クルリと振り返った響は、不意に立ち止まると、顔だけを巡らせて、横目でヒカルを見た。  首をかしげるヒカルに、小さく微笑を投げかける。 「アイツは生きてる。そう信じて待っていればいいさ。嬢ちゃんがしっかり信じてやってりゃ、それだけで充分だ」 「・・・・はい!」  後姿のまま手を上げた響は、そのまま早足で自動ドアを潜って行った。  ヒカルは、少しだけその後姿を見送ると、視線を窓の外に移した。 輝達とミュートが戦闘した傷跡。  どういうわけかは判らないが、自分を狙っていたミュート。 その所為で、彼等三人は重傷を負ったのだ。  それが原因で、最後の任務は傷が浅い輝が一人で担当する事になって-。 「・・・輝君」  ギュッと手を胸の前で握りしめて、ヒカルは彼の名を呟いた。  いつも気丈に笑っている彼。でも、その裏側はとても哀しそうで。 皆を、自分を安心させる為に笑ってくれているのは判っている。しかし、それは逆に痛かった。  護るために傷つく彼に、自分は何もして上げられないんだ-。 「・・・帰ってくるよね」  涙が浮かびそうになるのを必死で堪えながら、ヒカルは少し掠れた声で囁いた。  もう一度袖でグシグシと両目を拭う。  信じてるから-その最後の一言を、ヒカルは心の中で笑う蒼い髪の少年に向けた。 第五話  少しの苛つきを覚えながら、海はトントンと机を叩いていた。  三階の談話室。ベース中が大忙しの中、こんな所で呑気にお茶をしようという者なぞ居ない。 海は先程から一人、募るイライラを、机を指で叩くことで抑えていた。  輝が行方不明だというのに、一人で何もしていない自分に対してもそうだし、 それ以外にも、何か言い様のない苛立ちが、海を責める。  一体何があったというのか。何故、輝の反応はロストした? 報告では、輝が潰しに向かった拠点には輝の遺体等は全く無く、 パーツ等も何一つ発見出来なかったらしい。  ただ、すぐ近くに位置する街が全滅させられていて、 街の人間とレプリロイド全員に加え、敵メカニロイドの亡骸が数多く発見されたと云う。  その街で何があったのかは不明だが、直接的な関係があるようには思えないと、 それについては別件扱いだ。  海は、飲んでいた缶ジュースを片手で握りつぶすと、大きめの溜息を一つ吐き出した。 「はぁ・・」 「なぁに湿ってんのよ!」  不意に後から声をかけられたが、海は振り返る気も起きなかった。 何より、その声の持ち主が誰だか、既に判っている。 「何だよイリー」 「何だよとは何よ。折角相棒が湿ってるから心配で声かけて上げてるって云うのに」 「大体からして君もオペレータなら、輝の捜索に忙しいんじゃねぇのか?」 「今機材運んでる途中だわよ」  オペレーション室は一階じゃないのか。 海が心の中でそう云った事に、イリスは気付かない素振りで続けた。 「あっそ。だったら急がねぇと怒鳴られっぞ?」 「私一人いなくても全然気付かれ無いから平気よ」  相変わらずのアバウトさだな。 海は二度目の溜息をついた。 「ほらまた溜息!感じ悪いわねぇ」 「溜息の一つや二つつきたくもなるっつうの」 「輝さんがロストしたのがそんなに不安?」  前に回って顔を覗き込んでくるイリスに、少しの鬱陶しさを感じながら、 海は「不安にならねぇわけないだろ?」と怪訝に答えた。  イリスは、機材を机の上に置くと「ふーん」と両手首をぷらぷらさせた。 「君は不安じゃないってのか?」 「不安?どうして」 「どうしてって・・」 「私は輝さんの事信じてるしねー。あの人が簡単に死んじゃう様じゃ世も末だけど」  少し可笑しそうに笑いながら、イリスは手首の動きを止めた。 そんな答えに、海は少し拍子抜けをした。  自分が彼を心配して不安になっている中、この少女は彼を信じきっている。 信じきっているから、彼が死んだものとは全く思っていないし、不安にもならない。  海は、時々イリスのこういう面に、尊敬の念を感じることがある。  同時に、少しだけ自分を恥ずかしいと思った。  自分も元は彼の一部だったと云うのに、彼を完全に信じられていなかった。 それはつまり、自分を信じていないと云うことだ。  闘いの中で自分を過信する事は禁物だが、自分の力を信じない事は、それより更にも禁物だ。 「海は輝さんの事信じてないわけ?」 「し・・信じてるに決まってんだろ!?」 「だったらそんな湿った顔しないの!失礼でしょ!」 「あ・・あぁ!」  海は、両の頬を掌でパチンと叩いた。  こうする事は、古くから気合を入れる行為として伝わっているし、実際気が引き締まるような気がしてくる。 何より、海はこうやって気合を入れる行為を、少しだけ気に入っていたりもする。 「OKOKそれでOK。やっぱり海はそうでなくっちゃ!」 「そうか?」 「そうそう。海はこうじゃないと格好良くないよ!」 「あっ・・そう」  少しの照れくささを感じて、海はポリポリと頬を掻いた。  まさか、真っ向からこんな事を云われるなんて思ってもみなくて-。 「だからー」  はっ?続きがあんのか?-海は、不意を突かれた様に片眉を上げた。 「なんか喉乾いたなー、なんてー」 「・・・それで?」  恐らく今は自分は、漫画やアニメで云う汗マークを垂らしているだろうな。 心の中で再び溜息をつく。  確信犯的な笑みで、後頭部で縛ってある髪を弄ぶイリスに、海は「うっ・・」と小さく声を漏らした。 「喉乾いたなー」  海は、小さな溜息を一つ落としてから、ガックリと肩を落としつつ 「わーったよ。何飲みたいんだ?」 仕方無しにポケットの中に手を入れた。  イリスは、蔓延の笑みを浮かべると、早速といったように、最寄りの自販機まで駆け寄って、 一番左上のボタンを指さした。 「アレがいい!」  何気に一番値段が高い物だ。 「わーったよ・・」  もはや何か云う気力も無い海は、素直に自販機に数枚のコインを投下してやった。  イリスがボタンを押すと、ごとりと下に缶が落下してきた。 「海ったら太っ腹!グッ!」 「飲んだらさっさと仕事に戻れよ」  財布をポケットの中に戻しつつ、海は溜め息交じりにそう云った。 第六話  海と響が身体のダメージの確認と、簡単な処置を済ませてから、数時間後だった。 海と響が不意に指令室に呼び出されたのは。  なんでも、重要な情報を入手したとの事で、海と響にだけ極秘裏に通達すると云う。  他のハンター達に公開する事はまだ出来ない-その一言に、二人は妙に引っ掛かりを感じていた。 「一体何が判ったんですか!」 「まずは落ち着いて欲しい」  少し急かし気味に問う海を一言で制して、ブリエスはごそごそと一枚のデータディスクを取り出した。  型はハンターのものでは無い。 Fの刻印が入っていることから、恐らくはフェルマータ側のものだ。 「つまり、オレ達以外の者に見せれば、より一層の混乱を招くだけの情報。  それだけ重要であり、インパクトの高い物-そうだろう?」 「うむ」  コクリと頷いたブリエスの表情は、怪訝だ。  果たしてあのデータディスクの中には何が入っていると云うのか。 海と響は、ブリエスがディスクを挿入したモニターを、睨むと云っていい程の目付きで凝視した。  一拍置いてから、モニターに映像が映し出された。  画面は極めて荒い。モニターの所為では無い、ディスクの所為だ。  荒れた荒野。自然に荒れていると云うよりは、何か人為的な力によって抉られた、と、そんな感じだ。  ノイズの走る画面の丁度真ん中。 土煙の上がるそこに、一体の人影が立っていた。  よく全容が確認出来ないが、体型・姿からして、少年だ。 全身を鎧が包んでいる。よく見えないが、所々に紅い跡が残された、漆黒の鎧。  一体のメカニロイドが、少年に向かって飛び込んでいった。 ガシリと掌で掴まれて、その場でそのメカニロイドは粉々に砕け散った。 「殺シテヤル・・」  音声修正が施されているのか、その声だけは嫌なはっきりと聞き取れた。 そして同時に、その声がとても聞き覚えのある物に感じられた。  フッと少年の姿がその場から掻き消えた。 その僅か0.二秒後に、画面は砂嵐に変わっていた。  キュルキュルと目紛るしく画面が巻き戻る。 「殺シテヤル・・」  再びその音声が入力された所で、画面はピタッと静止した。 ブリエスが一時停止をかけたのだ。  海と響は無言だ。無言で、画面に映っている漆黒の鎧の少年の姿を見詰めている。  その瞳からは感情が読み取れない。 驚いているようでもあるし、酷く冷静な様でもある。 -実際は酷く困惑していたが。 「修正を」  静かにブリエスがモニターを操作する隊員に命じると、了解の返事と共に、 画面が一気に鮮明さを増した。  海と響は少し表情を顰めた。 今ならはっきりと判る。画面内の少年の容姿が。  攻撃的、寧ろ禍々しいと云っても過言では無いフォルムを持つ漆黒の鎧。 所々にある紅いラインは、塗装では無い。それは、そう-オイルや鮮血の類だ。  メットから見え隠れする髪の色は-元は-蒼色。 しかし、やはり鮮血の類に染まって、ドス黒く変色している。  瞳の色は血の様な真紅。双眼が狂ったように見開かれている。 「どう思う?」  静寂をやぶったブリエスの第一声がそれだった。 「間違いないな」  響が、視線をモニターからブリエスへと移した。  その拍子で肩にかかった紅の長髪を、鬱陶しげに払いながら、低く声を絞る。 「輝。コードだ」 「あぁ」  海が付け足した事によって、ブリエスは「やはりな」と表情を顰めた。  正直、理解出来なかった。 何故彼がこのような姿をして、あの様な台詞を吐いているのか。  もしかしたら、このディスク自体が偽物なのでは無いか-。 「コイツはどこで入手したんだ?」 「最後の拠点から十数km離れた地点で戦闘の跡があってな。唯一原型を止めていたメカニロイドのアイカメラのデータだ」 「成る程」  ぶっきらぼうに返して、響は再びモニターへと視線を戻した。  画面内に映る輝の顔は、心底楽しそうだ。 しかし、海と響から見れば、それは酷い哀しみに歪んでいるようにしか見えなかった。 「・・輝・・」  ぼそりと彼の名を呟く海の脳裏を、彼と共有している記憶が駆けた。  殺したくない-いつもそう思っていた。  闘いたくない-そうは思っていた。だが、闘うことを止める事は許されなかったし、何より諦める気は毛頭無かった。  誰も死なせたくない-そう、それがいつも『自分』の願いだった。  彼をここまで変貌させてしまった原因は、きっとここにある筈だ。 「ブリエス」  響は、ボキッと軽く指の節を鳴らした。 「次に輝・・いやコードに逢うときは、恐らくオレ達とアイツが殺し合う時だ」 「なっ・・」 「総監。悪いとは思っていますけど、俺も同意です」 「フラット。カイト」 「今のアイツに勝てる奴はそうそういない。なにせ奴の力は無限大と云っても過言じゃないからな。  ・・・オレ達がアイツを止めるしか無い。最悪、破壊する」  響はわざと『破壊』と云う単語を使った。  『殺す』とは云えなかった。あの輝を。  輝をレプリロイド扱いする事で、イレギュラーとして扱う事で、少しでも自分の心を納得させたかった。 「えぇ、それに」 「あぁ」  ピクッと、二人は何かに反応したかの様に肩を疼かせた。  疑問符を浮かべるブリエスに、少し苦しそうな笑みを向ける。 「その時は意外と、いいや・・もうすぐそこまで来てますよ」  海の台詞と共に、ドンっとベース全体が振動した。 第七話  大きく抉られた地面は穴の底が見えなかった。 モヤモヤと浮かんでいる砂埃。当分止みそうも無い。  グッと拳を握り絞めるカイトとフラットの視線の先に、ロックマン・コードは立っていた。  先程データの中で見たばかり、そのままの姿で。  見開いた真紅の瞳。そこから発せられている殺気は想像を絶する物だった。 フラットでさえも気圧されてしまいそうになる殺気。  そんな殺気を受けながらも、カイトとフラットは静かに肩のビーム・セイバーを抜いた。 「輝・・」  カイトがコードの名を呼んだ。 だが、彼は一向にその名に反応しようとはしない。 「・・・ロックマン」  コードの放つ声は、何時もの彼と変わらずに耳に響く。 しかし、音声の波長とは別に、カイトとフラットには、その声が全く別人の物に思えた。  彼特有の柔らかさを持たない声。 包み込むような優しさを持っていた声は、今は鋭いナイフだ。  その声を聞くだけで、下級ハンターなら竦んで動けなくなるだろう。 「止めろ輝」 「・・殺ス」  フラットの呼びかけも、何の意味も成さなかった。  オルティーガを抜き放ったコードは、既にいつでも飛びかかってこれるほど、臨戦態勢を整えている。  闘うしかないか-カイトとフラットは、ギリッと外に音が漏れる程、大きく歯軋りをした。 「一体何があったんだ輝!!こんなの全くお前らしくねぇじゃねぇか!!」 「ロックマンガイルカラ・・闘イガアルンダ」 「何っ!?」 「ダカラ僕ガ消ス。殺シテ上ゲルヨ」 「っ・・!?」  コードが向けたバスターから、瞬時に光が迸った。  チャージ時間が全く無いに等しいと云うのに、それに比例しない威力の閃光。 カイトとフラットは、その速射性に驚愕を覚えつつも、左右に側転する事でそれを躱した。  体制を直すと同時に地面を蹴って、二人同時にコードの左右に回り込んでいく。 「寝惚けてんじゃねぇ!!」  カイトが続けざまに五発。バスターを連射したが、 そのエネルギー弾がコードを射止める瞬間に、彼の姿はもうそこには無かった。  カイトとフラットの二人にも目で追えない程の素早さだ。 カイトがコードの姿を捜すより早く、カイトの腹部に強大な圧力が減り込んだ。 「ぐぁっ!?」  地面を掻くカイトに、コードはカイトの腹部にブロウを叩き込んだままの姿勢で、ニヤリと笑った。  強い-ソニック・アーマーを装備していたと云うのに、彼の動きを捉えることは出来なかった。 血混じりに咽せながら、カイトは休まぬ様に、そのまま横へと跳躍した。 「それがお前の結論か?輝」  空中から、静止したままのコードに向かって、フラットはエルティーグを思い切り振り下ろした。 が、コードは視線をフラットに向けぬまま、抜き身のオルティーガを上に持ち上げ、 両手持ちのエルティーグを、片手のオルティーガで受け止めた。 「簡単ナ事ダヨ」 「オレにはお前がただ泣いている様にしか見えないがな!!」 「黙ッテ」  カチャリとコードのバスターがフラットに突きつけられた。  そして、フラットが回避運動を取るよりも前に、その銃口から光が爆ぜた。 「殺すだとか消すだとか!そんなの全然お前らしくねぇっ!」  反転したカイトのフレイム・ストライクが、隙だらけのコードに向かって叩き込まれた-かのように見えた。 しかし、カイトの焔の拳は、しっかりとコードのバスターから元に戻された掌に包み込まれていた。 「くっ!?」 「煩イ」  異常な握力に拳を握りしめられて、カイトは思わず声を上げた。  ミシミシと拳が悲鳴を上げている。 元々、コードにそれ程の腕力は無かったと云うのに。 「あっ・・きらぁぁぁっ!!」  苦し紛れにもう一方の腕のバスターを向けるが、 カイトの銃口からエネルギーが放たれる時間よりも、コードがカイトの拳を握りしめている手を離し、 彼の後から浴びせ蹴りを放つ方が断然に早かった。 第八話 「はぁぁぁ!!」  追い打ちをかけようとするコードに、無数の紅い閃光が降り注いだ。  その光の全てを素手で叩き落としつつ、コードはそれを放つ張本人の姿を見て、ぼそりと囁いた。 「ライトニング・ドール・・」 「そんな簡単に勝てると思うなよ輝ぁぁ!!」  コードがフラットのバスターを叩き落としている間に起き上がったカイトは、 真後ろからコードに回し蹴りを打ち込んだ。  前のめりにつんのめったコードに、フラットが瞬時にチャージしたバスターを浴びせ掛ける。  が、全力の紅い閃光を受けても、コードの漆黒の鎧には、全く傷が入っていなかった。  フラットが放った第二射は、今までコードが立っていた位置の地面を抉っただけだ。 コード本体は、もう既にフラットの眼前にまで迫っている。 「くっ・・!」 「・・死ネ」  コードが抉り込むようにして撃ち出してきた拳を、フラットはフレイム・ストライクの拳で真っ向から受け止めた。  それは次第に拳と拳の応酬となり、両者の間で火花を散らせた。 一見互角のスピードに見える応酬だが、実際はフラットは不利だ。  コードは全力のスピードを出していない。フラットは、拳が砕け散るような感覚を覚えつつ、 そう悟った。 「響!!」 「あぁ!」  耐えきれなくなったフラットがバックスェーするのに合わせて、カイトが真上からコードの眼前に着地し、 タップリとエネルギーを注ぎ込んだバスターを向けた。 「うぉぉぉ!!」  至近距離で爆裂した光には、流石にコードも後退した。  ガリガリと音を立てる足場。 一瞬怯んだコードに、ここぞとばかりにエネルギーの雨を降らせる! 「ロックマンがいるから闘いがある!?そんなものはただの幻想だ!!」 「例えこの世にレプリロイドが生まれていなくとも、結局は人間同士の闘いが起こる」 「黙レ・・!」  一瞬で懐に飛び込んできたコード。 しかし、彼がカイト目掛けて薙いだオルティーガは、フラットのエルティーグが辛うじて受け止めていた。  それに更にカイトがアルティーヴを上乗せして、ググッとコードのオルティーガを押し返す。 「お前は護るんじゃなかったのか!!?」 「何があっても護るそう云っていたのはお前だ。輝っ!」 「ッ・・!!」  バチバチとスパークする三本のビーム・セイバー。 その圧力に耐えられなくなった三人は、それぞれ別の方向へと展開した。 「闘イガアルカラ誰カガ死ヌ・・」 「そんな事は、お前が一番よく知っている事だろう!!」  ブラスト・レーザーの豪雨。 もはやエネルギーの残量なぞ関係なしに連射するカイト。 フラットも同様だ。  コードは、無数に向かってくる光の線を、一発のバスターで掻き消すと、 再びその銃口に闇色の光を収束させた。 「僕ガ彼等ヲ殺シタ・・!!」 「っ!?」  闇色の光がカイトの左肩を掠めて、肩アーマーの半分以上を蒸発させた。  しかし、カイトは強引に突っ切った。 バスターの反動で一瞬動きを止めたコードの胴に拳を叩き込み、グッと顔を近づける。 「どうしたって云うんだ輝!!」 「結局殺サナケレバ誰モ護モナイ!!」 「確かにそうかもしれないな」  コードがカイトに至近距離から向けようとしたバスターは、横からフラットが掴む事で阻止された。  もう片方の手に握られたオルティーガも、カイトがバスターで柄を撃つことで、彼の手から滑り落ちた。 「しかし、お前はそれでも諦めなかった」 「僕ハ・・・僕ハッ・・!!」 「敵も味方も殺さないで、皆を護りたかったんじゃないのか!?その為に闘ってきたんじゃないのか!?」 「僕ハ・・」  不意にコードの力が抜けた。 これを機に、カイトはコードの頬に、思い切り拳を叩き込み、地面に叩き付けた。  馬乗りになる様にコードを見下ろして、彼の胸ぐらを掴む。 「お前はそんなに弱虫だったのか!?答えろ輝ぁっ!!」 「僕ガ・・・ッアノ時アイツヲ殺サナカッタカラ・・!!」 「輝・・・」 「ダカラアイツハ街ノ人ヲ・・飛鳥ヲ殺シタ!!僕ガ甘カッタカラ!!」 「だから争いを元から絶つためにロックマンを・・フェルマータ達を・・闘う力全てを消そうって云うのか!?」 「全テ消シテヤルンダ・・ソウスレバ・・ソウスレバ!!」 「馬鹿云ってんじゃねぇっ!!」  カイトの拳が更にコードの頬を打った。  つーっと口の端から鮮血がにじみ始めているコードに構うこともなく、カイトは更に語勢を強めた。 「お前は護るべきモノ全てを失ったのか!?違うだろう!?」 「殺シテヤル・・・殺シテ・・・ヤルッ・・」 「あぁ判るよ!お前が辛いことは俺達が一番よく知ってる!でもそれは『輝』の辛さだ!  今のお前は輝じゃねぇ!!」  もはや、カイトには何も見えていなかった。  ただ、コードの頬を殴りながら、ひたすらに感情をぶつけているだけだ。  理不尽だとは判っている。彼の辛さも、凄く判る。  詳しくは判らないが、しかし、彼が自分自身の弱さの所為であの拠点の近くの街の人々を死なせてしまい、 その責任を感じている物だと云うことだけは判った。 「辛いなら・・辛いって云えばいいんだよ!!なにもそんな形で哀しみを発散する必要なんか無いんだ!!」 「殺シテ・・・ヤ・・」 「ヒカルが泣いてるのに!お前はそれでもそんな事を続けるのか!?」 「ァッ・・」  カイトが放った一言に、コードの身体がびくりと跳ねた。  両手で頭を抱えて、ひたすらに絶叫する。 フラットは、ダメージから来る気怠さに耐えつつ、ただ静かにその光景を眺めるだけだった。 「ァ・・あ・・あぁぁぁぁっ!!!」 「輝っ!!」 「・・・僕は・・・っ」  不意に、彼の声の鋭さが消えた。  何時もの優しさを孕んだ、柔らかで、それでいて酷い哀しみに溢れた声。  そして、真紅から蒼へと輝きを取り戻した彼の瞳から、大粒の涙があふれ始めた。 「僕は・・誰も殺したく・・無いっ・・」 「・・・輝・・」 「・・・それなのに・・・どうしてぇ・・・」 「お前が悪いわけじゃない・・」 「・・・僕・・・はっ」  再びコードの身体が跳ねた。  今度は首の付け根の部分を両手で抑えながら、何かに侵される様な悲鳴を上げて。  涙が溢れ出る彼の瞳が、再び真紅へと染まり始めた。 びくんびくんと全身と痙攣して、馬乗りになっていたカイトは、コードが苦し紛れに放った拳によって、軽々と吹き飛ばされた。 「っ!?」 「海!」  フラットに受け止められたカイトが見たのは、ユラリと立ち上がった、真紅の瞳のコードの姿だった。  さっきよりも明らかに殺気の度合いが増していた。 「殺ス」 「どうやらそう簡単にゲームクリアをさせてくれる気は無い様だぜ」 「輝・・・っ」  口の端から滑り落ちてくる鮮血を手の甲で拭ってから、海はその拳をギリッと握りしめた。  次にコードを押さえ込める自信は-全く無い。 やはり彼を殺すしか無いのか-。 「もうコイツにさっきみたいな輝の意思の欠片を期待するのは野暮だ。  どうやら完全に憎悪に乗っ取られた様だしな」 「輝・・・輝!!」 「最悪の場合、やはりコードを破壊するぞ海」  フラットは、敢えて輝を『コード』と呼んだ。 第九話  モニターに映る三人の姿を見詰めることしか出来ないヒカルとイリスは、 自分の無力さに怒りすら覚えていた。  これでは、オペレーションなんて何の意味も無い。 自分達が指示を出せる戦闘では無いからだ。  何より、目が離せなかった。 「輝君・・」  あの漆黒の鎧を持つ少年が輝だと云うことは、先程海と響がブリエスと会話している所を偶然覗いてしまった為、判っていた。  海達が別の扉から出ていった後、耐えきれなくなって指令室に飛び込むと、イリスもほぼ同時に飛び込んできた。  ブリエスは、一瞬だけ驚いた様だったが、今は混乱している時間すら無いと、 彼等の戦闘の様子をモニターに映し出してくれた。  戦闘が開始してから、まだ五分も経っていない。それなのに、この別次元の戦闘には声も出なかった。 彼等が地面を蹴ってから、次の地点まで移動するのは、彼女等から見れば、ワープに近い。 それ程に、彼等の戦闘スピードは物凄かった。 「輝君・・!」 「ちょっ・・ヒカルちゃん!」  思わず扉の方へ駆け出しそうになるヒカルの肩を、イリスは慌てて片手で掴んだ。  勢いよく振り返ったヒカルの顔を現す形容詞を、イリスは知らなかった。 ただ、何かをしたい-そんな念だけは充分に伝わってくる。 「ヒカルちゃん!どこ行くつもりなの!?」 「・・・行かないと」 「駄目よ!あんな中に飛び込むなんて無茶にも程があるわ!」 「でも!」  ヒカルが声を荒げた所を初めて見たイリスは、少し気圧されたように肩を縮めた。 しかし、ヒカルの肩を掴む手を離さないままに、声の音量を上げる。 「でも・・行かないと・・」 「私達が行ったところで何が出来るって云うの!?」 「でも!でも・・でも私が行かないと駄目なんだ!」  バッとイリスの手を振り払ったヒカルは、そのまま扉を潜り抜けて、あっと言う間にイリスの視界から消え去っていった。  イリスは、少し呆然としたまま、ヒカルの肩を掴んでいた手を降ろせずにいた。  モニターの中で、カイトとフラットはさっきにも増して劣勢になっていた。 もはや彼等が攻撃を放つ隙は無い。コードの攻撃は、それ程に絶え間なかった。 「・・っ!」 「待て」  扉の方へと駆け出しそうなったイリスを制したのは、今度はブリエスだった。  イリスは、振り返らないままに立ち止まった。 その繊細な拳から少しの血が滲むほど、力いっぱい握りしめて。 「君まで危険に身を晒すことは無い」 「・・総監」 「・・イリス君」 「ここで私が行かなかったら・・・ヒカルちゃんに・・海に申しわけが立たないんです!  死んでも構いません!私は行きます!!」  力一杯の叫びをブリエスに叩き付けてから、イリスは扉を潜り抜け、指令室から姿を消してしまった。  ブリエスは、余程二人の後を追おうと思ったが、 すぐに伸ばしかけた手を降ろした。  ここで自分が命を落とすことは出来ないのだ。 組織に指示を下す存在として、この判断は正しいのだ。  頭ではそう判っていた。しかし、感情の方は、彼女たちと同じように、自分の無力さに苛立ちを覚えていた。  自分はいつもそうだ。ただ総監と云う立場を持つだけで、実は最も楽をしている。 もっと自分に力があれば、本来闘うべきではない彼等の中に割って入って、闘いを止めることも出来ただろうに。 「戦闘状況の分析を続ける。コードをクローズアップしたまえ」  モニターの操作をしている隊員に、ブリエスは務めていつの口調でそう命ずる。 だが、そんな彼の口の端を、つつっと真っ赤な液体が伝っていた。  絶え間なく歯軋りをしていた所為か。 掌も、握りしめる力が強すぎて、今ごろは両手ともに真っ赤になっているだろう。 「カイト・・フラット」  既にモニターの中の二人は、立っているのがやっとの状態にまで追い込まれていた。 第十話  息が苦しい。 全身に斬り傷を入れられて、バスターを向けるために腕を上げようとするだけで、言い様のない激痛が全身を駆け巡る。  武器ユニットチップのエネルギーも使い果たした。 全ての特殊武器、ラーニング技をつぎ込んでしまった。  それなのに、目の前のコードは未だに平然としている。 いや、寧ろ完全に無傷と云っても良かった。  こっちは初めから全力で闘っているのに-。 「・・くっ・・」  左腕を右手で抑えながら、フラットは小さく呻いた。  間合よりも遠くのコードは、その真紅の瞳でただこちらを睨んでいるだけだ。 その鋭い視線は、見るだけで殺傷されてしまいそうだ。 だが、ただそれだけだ。  今の自分達二人なら、遠距離からバスターを放つだけで消滅させられると云うのに、 コードはそれをしていない。  バスターが故障したわけではない。 もしそうなら、オルティーガによって近距離で刻んでしまえばいいだけのことだ。  なら何故-既に戦闘不能もいいところの自分達に止めを刺さないのか。 「・・・輝」 「輝!!」  輝の意思はまだ少しでも残っている。 それを悟った二人は、再び彼の名を叫んだ。  コードがびくりと動きを止める。 それを機に、二人はそのまま言葉を連ねた。 「もう止めろ輝!止めてくれ!!」 「いい加減にこんな事を続けるのも飽きてきた。そろそろ元のお前に戻ったらどうだ」 「・・・ッ・・殺シテ・・ヤルッ・・」 「輝っ!!」  コードのバスターには光が収束されている。  だが、一向に放つ気配は無い。 ただもう片方の掌で頭部を引っ掴んで、まるで発作にでも耐える病人の様に表情を顰めている。 「輝・・輝!お前と殺し合うなんてゴメンだ!!もう嫌なんだよ!!」 「ア・・・ウァァァッ!!」 「輝!」  再び絶叫しながら、コードはバスターの照準を二人へと合わせた。  ポロポロと滑り落ちてくる涙。その意思を嘲笑うかのように向けられたバスター。 バスターと化した右腕を止めるかのように、左腕がその銃身を抑えつけているが、 バスターの照準は一向にずれなかった。  バスターから膨れ上がったエネルギーの塊が撃ち出された。 ターゲットは、フラットだ。 「アッ・・・アァァァァッ!!」 「・・・!」  回避する事は容易だった。 しかし、フラットは敢えてそれをしなかった。  殺人的等と云う言葉自体を超越した閃光は、フラットの胴に直撃すると共に、彼の身体をそのまま後方へと引っ張っていった。 「っ・・!響っ!」  十数m先で、フラットの身体がベースの側壁に激突し、轟音を響かせた。  駆け寄ってやりたい衝動に耐えながら、カイトは再びコードを睨み付けた。  止めどない涙が頬を伝う彼。 それなのに、まるで右腕だけに破壊衝動があるかのように、その銃口に再び光が宿り始めた。 「ァッ・・・アッ・・ァァ・・」  ずっと先に見えるハンターベースの側壁に激突したまま動かないフラットを見詰めたまま、 コードはただ首を横に振っていた。  撃ってしまった-兄を、フラットを、響を。  殺してしまったのかもしれない-自分自身が。  しかしこの状況を望んでいたのではないのか-・・・・違う。 「輝っ・・」  カイトがバスターにエネルギーを試みると、不意にバスターの銃身が爆ぜた。  暴発だ。無理もないだろう。 コードとの戦闘が開始してから、常にバスターを連射していたような物だ。  そもそも武器ユニットチップを使用する事は、バスターにかなりの負担をかける事だとも云われているのに、 四つのチップの全てのエネルギーを使いきるまで放ち続けたのだ。 暴発しない方が不自然だ。 「っ・・・くっ・・ぅ」  ぶらんと垂れ下がった腕。 至近距離の爆発の所為で、その腕は真っ赤に染まっていた。 持ち上げようにも、もう力が入らない。  俺もゲームオーバーかな-カイトが心の隅でほんの少しだけそう思った時、 コードのものではカイトのものでも、増してやフラットのものでも無い声が、不意に辺りに響いた。 「輝君っ!」  その声に、コードは更に表情を歪めた。 第十一話  ハァハァと肩で息をして、額に汗を浮かばせながら、ヒカルは立っていた。  コードとカイトから十歩分程離れた、抉られた地面の上に。  コードもカイトも、反応はほぼ同じと云って良かった。 突然に現れた彼女の姿に、驚きに目を見開いている。 「ヒ・・ヒカル!なんでこんな所に来たんだ!」  先に我に返ったのはカイトの方だった。  ヒカルは、カイトの投げかけた言葉を、耳で拾いはしたものの、敢えて無視をすることにした。  ゆっくりと足を踏み出して、つい先日逢ったときとは全く違う容姿になっている彼の前に立ちはだかる。 「ヒカルっ!」 「・・・輝君」  ヒカルの前まで走っていって、ヒカルとフラットの盾になってやりたかった。  しかし、それを実行しようとすると、足に力が入らなくて、逆に姿勢を崩してしまった。  がっくりと膝を地面に突く。ポタポタと汗と鮮血が混じったピンク色の液体が地面に落ち、吸収されていく。 「違うよね。本当はこんな事したいわけじゃないんだよね?」 「ッ・・クッ・・・クゥッ・・」 「ただ、哀しくて哀しくて仕方ない・・。それだけだよね?」  声が上擦らないように注意しながら、ヒカルは意識してゆっくりと、一語一語に気を配りながら、語りかけていく。  コードが放つプレッシャーに、足が竦んでしまいそうになる。 しかし、不思議と恐怖で逃げ出すことは無かった。  今は、自分の恐怖よりも、彼の心を優先したかった。あくまでも。 「でももう止めよう?輝君だって、海君や響さんと殺し合うなんて・・嫌でしょ?」 「・・・僕ッ・・・ハァッ・・・ッ」 「輝君・・・還ってきて・・・?」 「殺シテ・・ヤル・・。もう・・嫌だっ・・・。殺シテヤッ・・」  まるで彼の内に二つの意思が混在するように、コードは矛盾した二つの台詞を交互に呻き続ける。  悲痛な叫びと、殺意に満ちた威圧。 それは共存するには余りにも不安定過ぎて、互いを拒絶し合っている。  右腕のバスターを止めようと必死になる左腕。 しかし、そんな抵抗を無理矢理に押し込めて、バスターの銃口は、照準をヒカルにピッタリと合わせた。 「輝・・君・・」 「ぁっ・・・ぅぁぁっ・・・ぁぁぁっ・・っ!」  逃げ出したくても、もう足が動かなかった。  ただゆっくりと光が集まっていく彼の銃口を見詰めながら、ひたすら彼の名を呼び続ける。  -コードのバスターが、ヒカルをターゲットした。 そんな状況を目の当たりにしているのに身動きすら出来ない。 そんな自分に、カイトは今までにない程の悔しさを噛み締めていた。  輝にヒカルを撃たせてはならない。もし、輝がヒカルを撃ち抜けば、 その後に彼が正気に戻ることは、まず・・無いだろう。  戻ったとしても、今度は激しい後悔に見回れて、もう二度と何時ものロックマン・コードは、松浦輝は戻ってこない。 「やめ・・」 「止めてっ!!」  海の声に被さる様に響いたのは、ヒカルとは別の、もう一人の少女の声だった。 「止めて!もう止めてよ!!」 「・・・イリーちゃん・・」  不意に走り込んで、自身の眼前で両手を広げるイリスの姿に、ヒカルは目を見開いた。  まさか彼女まで来てくれるとは思わなかったし、彼女が自分の盾になってくれるなんて-。  ヒカルの前で両腕を大きく広げるイリスの全身は、震えていた。 勢いで飛び込んできてしまったが、非戦闘員である彼女等に、今のコードのプレッシャーは、それだけで危険な凶器だ。  竦んでいる自分を奮い立てる様に語勢を強めても、声が上擦ってしまって、余計に情けなく見える。 それでも、イリスは広げた両腕を降ろそうとはしなかった。 「ヒカルちゃんを撃つなんて許さない!撃てるわけなんか無いっ!!そんなの輝さんじゃないっ!!」 「イリー・・ちゃん・・」  バスターは依然として、ヒカル-ヒカルとイリスをターゲットしたまま微動だにしていない。 しかし、コードは更に表情を顰めている。  まるで信号機のように、彼の瞳の色が紅から蒼、蒼から紅へと点滅するように色彩を変える。  こんな事・・したくない-その輝本来の意思と、 全ての闘う力を消して、闘い其の物を根本から消滅させてしまおうと云う破壊衝動。 二つの闘いは、今まさに臨界を迎えていた。 「アアッ・・・ァッ・・アァァッァッァッ!!」  再び絶叫するコードのバスターが、更にエネルギーの規模を高めた。 「あっ・・!!」  やばい・・!-カイトは、もはや動かない身体の事を気にもかけず、 力の入らないままの足で、大きく地面を蹴った。  両手を広げるイリスの前に更に立ちはだかって、グッとコードの瞳を睨み付け、叫ぶ。 「輝ぁぁぁ!!!」  漆黒の閃光が爆ぜた。 第十二話 「・・・・あっ・・・・」  大きく目を見開いて、コードはハッとしたように小さな声を上げた。  目の前にあるのは、今まさに放たれて、煙を立ち昇らせているバスターと、 大きく抉り取られた地面。  そして、地面に仰向けに転がっている、自分にそっくりな蒼い髪の少年だった。 「あっ・・・ぁぁ・・・あっ・・・・ぁ」  ふるふると首を横に振りながら、コードはただただ言葉にならない呻きを上げる。  今まで鮮血の紅色だった瞳が、一瞬にして元の蒼色へと輝きを取り戻した。  しかし、その瞳からは、涙が流れていた。止めどなく。  僕が彼を・・・撃ったんだ-今までボンヤリとしていた意識が不意に鮮明になると共に、その感覚だけかしっかりと残っている。 「うぁぁぁぁぁ!!!」  コードが何度目かの絶叫を放った時、 彼の全身を包む鎧には亀裂が走っていた。  ビキビキと急速にその規模を高めていく亀裂。 数秒後には、彼の全身を包む禍々しい鎧は、その場で粉微塵に砕かれた。 「海ぃぃぃ!!」  ボロボロと砕け散っていく鎧の破片を振り払いながら、コード-輝は、自らが撃ってしまった少年の元へと駆け寄った。  倒れたまま、ぐったりとしているカイト。 彼の脇腹には、真っ赤な池が出来ていた。  コードが放ったバスターは、カイトの脇腹を掠り、イリスとヒカルの真横ギリギリの地面を抉っただけだった。 それが、輝の懸命な抵抗だったのか、それとも、カイトとフラットとの戦闘で、バスターがいかれていたのか。 真相は定かではない。そして、今はそんな事はどうでも良かった。 「海っ!!海ぃぃぃ!!」  必死に彼の身体を抱き起こし、何度も揺さぶる。  激化した戦闘の中で、彼の顔は血と埃で汚れていた。 「・・・あ・・きら・・」 「海・・!」  零れ落ちた輝の涙が、カイトの頬に落ちた。  カイトは、それを片手で拭うようにして目を開けて、彼の名をそっと呟いた。 「・・・よぉ・・・。気が付いたか・・?」 「海・・!僕の・・・僕の力の所為でこんな・・!!海ぃぃ!!」 「はは・・・何泣いてんだよ輝・・・。死ぬような怪我じゃないんだぜ?お前がギリギリで外してくれたからな・・。  全然ヘーキ・・」  言葉とは裏腹に、鮮血の溢れる脇を抑える彼の掌は真っ赤になっていた。 しかも、血液の流出は全く止まる気配が無い。  輝は、一際辛そうに表情を歪めた後、少し先で呆然としたままのヒカルとイリスに、バッと視線を移した。  グシグシと手の甲で涙を拭って、叫ぶようにして云う。 「二人とも・・!海と響を・・・!」 「あっ・・は・・はい!」  先に我に返ったのは、イリスの方だった。  慌ててこちらの方へ駆け寄ってきて、輝の腕の中のカイトを刺激しない様に抱き起こす。 「っ・・・」 「海・・!今Dr.ルビウスの所に連れていくわ!」 「すまねぇ・・っ」  イリスに肩を借りて、カイトはやっとと云った感じで立ち上がった。  カイトの顔色は、少し青ざめている。 このままにしておけば、いずれ出血多量で死ぬ事になる。 「イリスさん」  ゆっくりとベースの方へと歩いていく二人の背中を、輝は少し涙ぐんだままの声で呼び止めた。  イリスは、顔だけを輝の向けた。 その表情は、頬笑んでいた。 「海の事をお願い」 「了解!」  イリスは、状況とは裏腹にニコッと頬笑むと、そのままカイトを連れて、ベースの方へと歩みを進めていった。  ベースの側壁に激突したままのフラットは、既に別の隊員に支え起こされていたところだったので、輝はホッと胸をなで下ろした。  輝が自ら抉ってしまった辺り一面の景色を一巡していると、不意にヒカルと視線がぶつかった。 「あっ・・」  目を逸らすことも出来ない。そして、どんな表情を浮かべていいか判らなかった。 笑えばいいのか・・・それとも泣けばいいのか・・・。  見つめ合ったまま固まっている輝。 ヒカルは、優しくニッコリと頬笑みを投げかけた。 「輝君」 「・・ヒカル・・・・僕・・・は」 「お帰りなさい」  そっと、ヒカルが手を伸ばしてきた。  少し腕を伸ばせば、その掌を握れる距離。  輝は、それに泣き笑いの様な表情を浮かべながら、そっと片腕を伸ばした。 「ヒカル・・・」  しかし、その二つの掌が絡むことは、無かった。 第十三話  腕を伸ばした姿勢のまま、輝は戦慄した。  視界の中にいる『モノ』。それは絶対に有り得ないと思っていた人物だった。  口元に嫌らしい笑みを浮かべた、銀色の鎧を身に纏う男性型のレプリロイド。 輝は、今この瞬間にこの場に出現するとは思ってみなかった者の名を、ゆっくりと呟いた。 「ミュート・・・・・」  彼の左肩には、蒼い制服を着た茶髪の少女が抱えられていた。  彼女が彼の姿を意識する前に気絶させたのか、全くもって反応が無い。  輝は、もはや戦闘が出来る様な状態では無い身体で、ぎりっと取り出してオルティーガの柄を握りしめた。 「先日はどうも」 「・・・ヒカルを離せっ!!手を手出すな!ヒカルは関係ない!!」 「そうはいかないな。この少女がフェルマータ様の生体ユニットとしての逸材だと云うことは先日話しただろう」 「くっ・・・!ふざけるなぁっ!!」  全く持って力の入っていない輝の剣撃を受け止めることなど、 ミュートにとっては容易いことだった。  オルティーガごと地面に叩き付けられて、輝は少量の鮮血を吐き出した。  噎せ返り、涙目になる瞳で、グッとミュートの睨み上げるが、 ミュートはそれを、嘲笑と共に見下ろした。 「こんな絶好のチャンスを見逃すと思ったか?」 「止めろ・・っ・・・ヒカルを返せ・・っ・・!」 「残念だが、それは出来ないな。自分の無力さを存分に味わうがいい。ロックマン・コード」 「ま・・待てぇぇぇ!!」  輝が起き上がり、再びオルティーガを薙いだときには、彼の姿はそこには無かった。  辺りを見回しても、既にあの銀色の鎧はどこにも無い。  輝は、刃が発生したままのオルティーガを足元に突き立てると、 拳を力任せに地面に叩き付けた。 「くっそ・・くっそぉぉぉぉぉ!!!」  ガンガンと拳を地面に叩き付け続ける。  人間の拳とは比べ物にならない硬さを持つ地面は、 輝が拳を叩き付ける毎に、彼の手を真っ赤に染めていく。  痛みがないわけじゃなかった。 寧ろ、激痛に見舞われている。  それでも、悔しかった。悔しくて悔しくて仕方なかった。  自分が不甲斐無いばかりに、闘う力の無いヒカルを護ることが出来なかった。 全て自分の判断ミスが招いた結果だ。 「畜生・・畜生ぉぉぉぉ!!」  いい加減に手に力が入らなくなって、輝は両掌を地面に突いた。  涙と怒りと情けなさと激痛で、息が荒い。 輝は、それを整えようともせずに、地面の表面の砂をぎりっと握りしめた。 「ヒカル・・・っ・・・」  最後にヒカルの名を呟く。  同時に急速に意識が遠くなってきた。  あの拠点を潰してから今まで、無休だった所為だろう。カイトとフラットの二人を相手にした事もある。  輝が抗う意思を見せる前に、彼の身体は、どさりと地面に倒れ込んでいた。 第十四話  無造作に上半身を起こす。  頭が薄ぼんやりとしていて、今自らがどんな状況に立たされているのか、よく判らなかった。  ただ、独特の匂いが鼻をついていた。 本当に独特な匂い。簡単に云えば、それは薬だとか、消毒液の類だ。  半開きの眼で右掌を掠める。 手首から服の裾の中に到達するくらい、包帯がグルグル巻きにされていた。  それはほのかに赤く染まっていて、それによって抑えている傷の深さを、言葉無くして語ってくれた。  そっと右手を降ろして、彼は何かを思い出そうと、眉間に皺を寄せた。  ぼんやりとしていた頭が、少しずつ鮮明さを取り戻していく。 そして、最初に脳裏に駆けた映像は、銀色の鎧を纏った戦闘用レプリロイドの姿だった。  腰にビーム・ダガーを装備したレプリロイド-ミュート。 彼の肩には、茶髪の少女がぶら下がっていて、そして彼女を助けようと、自分は彼に斬り掛かっていって、それから-。 「・・・あっ!」  完全に脳が覚醒したところで、輝はハッとした様に声を上げた。  ぐるりと辺りを見回す。 見覚えがある。とてつも懐かしいとすら思えるほどの一室。  そう、ここはDr.ルビウスのラボ-自分が生を受けた場所だ。  輝は、その部屋の端っこに備えつけてあるベッドに横たわっていた。  着替えさせられたのか、戦闘の痕跡が待ったく残っていない制服の前を開くと、 胴に何重にも包帯が巻きつけてあった。  頬に手を当てると、大きめの絆創膏が貼ってあった。 輝は、それを無造作に引っ剥がし、掌の中で丸めた。 「・・・・」  無言のままにベッドを降りる。  幸い身体の方は、気を失っている間に処置が済ませれていたのか、 殆ど痛みと云える痛みは残っていなかった。  部屋の中には誰もいない。 生憎時計も無い。それに、あったところで自分が気を失った時間が何時だったのかを知らない為、それは意味を成さない。  輝は、ゴキゴキと身体の節々を鳴らした後、ぐっと拳を握りしめた。 「・・・・行かないと」  誰に云うでもなく呟いて、輝は衝動的にラボの扉を潜り抜けた。 目指すは、指令室。  輝が指令室の扉が開くと共に姿を見せると、 指令室にいた殆ど者の視線が、輝に集中した。  輝は、その反応に眉一つ動かさずに、ゆっくりと、正面のブリエスの前に歩み出た。  少し視線を左右に動かすと、所々に包帯やら絆創膏やらが目立つ海と響が、こちらを見詰めているのが判った。 「コード」  輝に最初に声をかけたのは、ブリエスだった。  輝は、表情の緊張を崩さないままに、ブリエスの瞳を見詰める。 「総監。僕は・・」 「とりあえず無事帰還おめでとう。皆がお前の身を案じていたのだ」  申しわけなさそうに視線を逸らした輝に、ブリエスは、柔らかな笑みと共にそう告げた。  輝は、驚いたように再びブリエスの瞳に自分の瞳をぶつけた。 目が合った彼の瞳。その瞳に、嫌悪や憎悪と云う感情は全く無かった。 ただあるのは、労るような優しさだけだ。 「で・・でも僕は!」 「カイトとフラットも大事には至らなかった様だ。Dr.ルビウスがそっ急に処置を施してくれた」 「・・・僕は二人と・・・」 「結果的にお前は誰も殺してはいない。フェルマータ側のメカニロイド達を大幅に撃破しただけだ」  視線を左右に振り回す。 輝の視界の中にあったのは、柔らかく微笑した、海と響の顔だけだった。  その表情に、思わず涙が込み上げてきそうになる。  彼等は、もう少しで取り返しのつかない事をしていた自分を許してくれている-こんなに嬉しいことは、無い。  しかし、そんな暖かな感情も、長くは続かなかった。  不意にミュートとヒカルの姿が脳裏を掠って、輝はハッとした。 「総監!」  ブリエスは、何かを察したように頷くと、背後のモニターを表示させた。  瞬く間に画面が切り替わって、電子メール受信画面へと切り替わった。 一般市民からあらゆる企業にまで繋がっている、フリーアドレスの画面だ。 ここに送られてくるメールは、重要視される情報であったり、単なる苦情であったりと様々だ。  未読メールは、一件。差出人の表示は-。 「お前宛にメールだ」 「・・・フェルマータ」  輝は、差出人の名を、ゆっくりと、自分に言い聞かせるように呟いた。  未だ見ぬ、敵の総大将・フェルマータ。 ヒカルを糧にして、『完全体』とやらになろうとしてる存在。  隊員の「映像メールを開きます」と云う言葉と共に、 モニターに設置されている映写装置から、ゆっくりと3D映像が映し出された。  写し出されたのは、漆黒の鎧を纏った、黒髪の青年型レプリロイド-少なくとも輝にはレプリロイドに見えた-。  その顔立ちは、彫刻の様に美しかった。 だが、余りにも人間味が無い。今までその顔に、真実の笑顔等と云う類のものは浮かべられたことは無いだろう。 「コイツがフェルマータか」 「成る程な」  海と響が一言ずつ呟いた後、辺りは静寂に包まれた。  輝は、ただ表示されたまま微動だにしない立体映像の瞳を見詰めるだけで、同じように動きを見せない。  立体映像が表示されてから、本当は僅か数秒だった筈なのに、 輝には、立体映像のフェルマータが口を開くまでが、酷く粘っこく感じられた。 《初めまして。お初を目にかかりますよロックマン・コード。御存知かと思いますが、私の名はフェルマータ》  敢えて柔らかい言い方をしているように聞える台詞だった。 だが、輝にはその裏側にある、鋭い何かが、今の一瞬だけで見えた気がした。 《私は今、すこぶる気分が良い。何故なら、もうじき私は究極の生命体として君臨するからです》  まるで何かに見惚れるような動作で、フェルマータは続ける。 《気分はどうです?ロックマン・コード。大切な者を奪われて絶望していますか?  それとも、私に対する椅怒りでうち震えていますか?》 「・・・・・」  立体映像に答えを返しても、反応が再び戻ってくる事が無いことは充分に承知だったので、 輝は無言で一方通行の会話をするフェルマータを見詰めることにした。 《くっくっくっ。何度も云いますが私は今とても気分が良い》 「・・・・」 《失礼。こんな事を云いにわざわざメールを差し上げたのでは無いのですよ》  低く喉で笑った後、フェルマータはすぐにその笑い声を止めたが、 口元には未だに嫌らしい笑みが浮かんでいる。 《ロックマン・コード。あなたを特別なパーティーに誘おうと思いましてね》 「・・・パーティー・・」 《今私がいるのは、ムーン・・つまりは月です。残念ながら、兎の餅つきを見ることは出来ませんが》  詰まらないな-輝は心の中で毒づいた。 《私は貴方にとても興味があります。無限大の可能性を持つロックマン・コード。  スペック上で明らかに劣っている相手にも勝利を納める貴方に》  ギリッと、輝は小さく歯軋りをした。 まめでゲームをしているかのような口ぶりのフェルマータに、怒りが隠しきれない。 《貴方ご自身も私と闘いたいでしょう》 「・・・・っ・・」 《彼女もなかなか強情でしてね。なかなか糧になってくれようとしないのです》 「・・貴様・・っ!」  一瞬、目の前で話しているフェルマータが立体映像だと云うことを忘れて、 ポケットの中のオルティーガを展開させるところだった。  だが、すぐにこれが映像メールだと云うことを思い出して、輝は拳を握りしめた。 《実は私が完全体になるのには、まだ暫く時間がかかりそうなのです。  急いで月までお越し頂ければ、或いは間に合うかもしれませんよ》  そう云っているフェルマータの笑みは、余裕そのものだ。  云っていることは恐らく本当だろう。 しかし、その笑みの裏には、完全体にならなくとも、自分程度を倒す事はわけない、と、そういう念が込められている。 《来るも来ないも、あなた次第。因みに、パーティーに招待したのは貴方一人だと云うことを忘れずに。  その他のお二人には、別の催しをご用意いたしましたし》  フェルマータがそこまで云ったところで、オペレータの一人が絶叫した。  報告は、ハンターベースの周囲に無数のエネルギー反応が確認されたとの事だ。 その数は、二百だとか三百だとか、そんな生優しい数字では無い。 「やれやれ。パーティーの余興にしては楽しめそうだな」 「豪華なパーティーですこと。こりゃ参加するしかねぇだろ?輝」  ポンっと肩に手を乗せる二人に、輝は小さく笑って、コクリと頷いた。  ヴンッと云う残留音を残して、フェルマータの立体映像が消えた。メールの内容が終了したのだ。 「ノーマル・アーマー、ブラスト・アーマー共に整備完了だコード。いつでも使える状態になってる」  不意に声をかけたのはDr.ルビウスだった。  輝は「ありがとうございます」とだけ云って、軽く頭を下げた。  顔を上げると共に表情を引き締める。 ブリエスは、そんな輝に小さく微笑すると、すぐに近くの隊員達に指示を下した。 「至急シャトルの用意をしろ!目標は月だ!」 「総監」 「当然、行くのだろう?」 「はいっ!」  ブリエスは、ビシッと右手を額に当てて、綺麗に敬礼を作った。  輝も慌てて敬礼を現す。 通常、上官が先に敬礼をする事など有り得ないことだが、これはブリエスが最後の闘いに臨む輝に出来る、唯一の手向けだった。 「ネオ・イレギュラー・ハンター総監ブリエス。隊員・ロックマン・コードの出撃を許可する」 「総監」 「何か異論か?」 「ロックマン・コードは死にました」  率直に言い放った輝の言葉に、ブリエスは少しだけ驚いた様だったが、 すぐにその意味を理解し、再び出撃許可を言い直した。 「隊員・ロックマン・コードと一般人・松浦 輝の出撃を許可する!異論はあるか!」 「了解!出撃します!!」 第十五話  彼女はただ目の前の光景に絶句する事しか出来なかった。  足の踏み場も無い程に敷き詰められているのは、肉と機械の塊。 もう動かないそれらは、ただ目を大きく開いたまま、その動きを止めていた。  少しでも足を動かせば、それらが止めどなく流出させている独特の粘着液が、べちゃりと嫌な音を立てる。 「・・・ぁっ・・・・・ぁ・・・」  出てくるのは、言葉にならない呻きだけ。 少しでも足を後退させると、丁度足元に転がっていた肉の塊が足の裏に触れて、嫌な感触を伝わらせてくる。  そんな感覚にビクリと身体を震わせて、彼女はその場に縮こまることしか出来なかった。  不意な轟音。 余りにも唐突すぎる爆音に、彼女は慌てて辺りを見回した。  ザッと真横に着地したのは、既にボロボロになっている、紺の鎧の少年と、紫の鎧の青年だった。  二人共、鮮血にまみれた両手で、力無くビーム・セイバーを握りしめている。  彼等の視線の先にいるのは、銀色の鎧を纏ったレプリロイド。 その姿に傷は無い。両手に握られたダガーの柄は、返り血でびっしょりと濡れていた。 「うぉぉぉ!!」  再び二人が地面を蹴って、銀色のレプリロイドへと飛び込んでいく。  そして、二本の光剣が空間を薙ぐ-よりも前に、銀色のレプリロイドのダガーが、深々と彼等の胴へと突き刺さっていた。  声を上げる暇も無く、二人はその場にひれ伏した。 銀色のレプリロイドが強引にダガーを引っこ抜いた傷口から、噴水の様な鮮血が吹き出し、辺りの紅い世界を更に朱へと染めていく。 「嫌・・・・・・嫌・・・・ぁ・・」  ゆっくりと歩み寄ってくるレプリロイドに、足が竦んでしまって動けなかった。 拒絶しようと声を出しても、声はただ上擦るだけで、全く力が入らない。  ゆっくりと伸ばされたレプリロイドの腕。 それを阻止したのは、不意に真横から閃光を放った、蒼い鎧の少年だった。 「待てっ!!」  肩のビーム・セイバーを抜き放った少年は、勢いよく地面を蹴ると、 彼女の目の前で薄く笑うレプリロイドに、横薙ぎの刃を浴びせ掛けた。  火花。二本のダガーによって、彼の光剣は、アッサリと受け止められた。 「ヒカルに手を出すなっ!!」  ザシュ  少年-輝の叫びを無視して、彼の胴に、前の二人と同じようにダガーが突き立てられた。  力無く倒れ伏す輝。 ヒカルは、耐えきれなくなって、竦んだ足で彼の元へと必死で駆け寄った。  いつの間にか、目の前のレプリロイドは消え失せていた。 辺り一面の血の海も、亡骸の山も消え、真っ黒な世界が広がっている。 「輝君・・輝君・・!!」  涙が溢れるのを止めようともせず、ヒカルは彼の身体を揺すった。  もう息が無い。アーマーを着ているため、体温は伝わってこないが、 それは酷くヒヤリとしているように思えた。 「輝君・・・嫌・・・嫌ぁぁぁぁ!!」 《ネェ・・ヒカル》  不意に聞えた声。腕の中の輝は、眼を開いていた。 生気のない瞳。完全に瞳孔は開いていた。 「あっ・・・ぁ・・・」 《僕ハ君ヲ護ル為ニ殺サレタンダ》 「・・・・あ・・きら・・・く・・」 《アノ時ダッテソウ。君ヲ護ル為ニ必死デ闘ッタ》 「・・・い・・・やぁ・・・・ぁ」 《君ガイルカラ、僕ハ殺サレタ。ダッテソウダロウ?君サエイナケレバ、コンナ事ニハナラナカッタ》  腕の中の輝の姿が、煙のように消え去った。  ヒカルは、漆黒の闇と化した世界で、ひたすら両手で耳を塞いだ。 それでも、彼の声は執拗に彼女を追い立てる。まるで、生を持つ彼女が憎ましいかのように。 《君ガイタカラ僕ハ殺サレタ》 「嫌・・・・・ぁ・・・」 《君ガイタカラ》 「嫌ぁぁぁぁぁぁああっ!!」  漆黒の世界に、少女の絶叫が響き渡った。 次回予告 闘いはクライマックスを迎えた。 地球を・・いや・・ヒカルを護るために、僕は最後の戦場である月へと向かう。 そこで待ち受けているのは、因縁の敵ミュート。 そして、最強の敵であり、この闘いを引き起こした張本人・フェルマータ。 地球では、無数に現れる敵達を前に、海と響が苦戦を強いられている。 急がないと・・・! フェルマータ・・俺は貴様を超えてみせる・・・! ・・・ヒカルを護るために。 次回 ロックマンコードⅡ第伍章~輝き~ 「・・・何度でも・・・・何度でも・・・闘ってやる・・!」

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