ロクノベ小説保管庫 プラネット~もう一つのイオ~ 第一章

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イオ―――
それは宇宙に浮かぶ天体の1つ。
小さいながらもその神々しさには心を引かれる。
そして―――太陽系に属する人工星、ヘブン。
ここに、もう一つのイオが生まれる・・・



ロック達、キャスケット家を乗せたフラッター号は、
順調に海の上を飛行していた。
操縦室の中――
「ロック、あとどれくらい食料残ってる?」
「う~ん、あと1、2日分くらいしかないよ」
「じゃあどこかの島に降りましょ。近くにない?」
ロックは操縦室の隅の電子地図に目を落とした。
幸い、近くにはたくさんの小島があるようだ。
そのうちの1つ、中央に位置する大きな島を指差し、
座標を読んだ。
「えーっと・・・ここから北北西におよそ130マイルのところにある
『テチス島』がいいんじゃないかな?」
「じゃあ、そこに行きましょ。」
ロールが舵を握り、速度を上げようとレバーを動かした、その時――!
ズゴン、という鈍い音と共に、左エンジンが黒煙を上げた。
船体は傾き、ギシギシと羽はきしみ、悲鳴を上げ、
少しずつ金属片へと姿を変えていく。
「ロ、ロールちゃん!?」
「あ・・・左エンジンが完全に止まっちゃった・・・」
先ほどの爆発音を聞きつけ、バレルとデータも操縦室に駆け込んできた。
「ロール!一体何が起こったんじゃ?」
「エンジンが故障しちゃったの・・・不時着するわ」
「ハ~~・・・またかい」
バレルは呆れ顔で大きなため息をついた。
と、その時・・・・・
ドォォォォォォォン!!!
「やだ・・・エンジンが片方吹っ飛んじゃった・・・・・」
その直後、船体はきりもみ回転を始めた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ロック達はなす術も無くハイスピードで落下していった。


気付いた時には体の回転が止まっていた。
ロックは体を動かそうと試みた。しかし、
何かが上に乗っているらしく、全く動く気配がない。
手足をばたつかせ、何とか自由になった右手で、
上に乗っていたものを払い落とした。
すると、上にはロール、バレル、データの三人が乗っていたらしく
ばらばらと床に落下した。
偶然にしては上手く乗っていた。何かの陰謀だろうか?
とりあえずロックは周りを見渡す。
木の枝や岩が機械にめり込み、鉄パイプが露出している。
全くこれで良く助かったものだと感心した。
とりあえず三人を連れ出して外に出るしかないようだ。
ロックは三人を揺り起こし、そしてドアを開けた。
そこでロックの目に飛び込んできたのは―――
「テチス島へようこそ」の看板だった。
周りを見渡すと、広い野原に小高い山、
しかし、遠くに小さく船着場のようなものが見える。
どうやらここは島の入り口の様だ。
とりあえずロックは三人をおんぶして外へと連れ出した。
そこには、事故を見に集まったヤジウマとそれを押さえる警官、
そして救急車があった。
ロールは軽い怪我を負ったが、バレルは気を失っていたので
救急車へと乗せられ、病院へ直行した。
「ロールちゃんも病院行った方がいいよ」
ロックが心配そうな声でロールに言う。
「大丈夫よこのくらい」
本人の心配を跳ね返すかのように元気な声でロールは言った。
「でも・・・」
「少し手当てすれば平気。それに、この子を修理しなきゃいけないし・・・」
「そうだね・・・ここにいてもしょうがないし、街の方に行こう」
「そうね、行きましょ」
「ウキッキー!」
ロック達は、ヤジウマ相手に悪戦苦闘している警官たちの横を
足早に通りすぎていった。


テチス島はかなり栄えている島だった。
島の中心部に位置する街は、ビルが立ち並び、
ネオン灯が輝き、レーザー光が夜空に伸びている。
その光景に興味津々なロックは、一旦ロールと別れ、
一人で街を歩く事にした。データはフラッター号でお留守番だ。
あちこちの店に入り、興奮しながら見回った。
(すごいなぁ・・・こんなに発展している街は初めてだ)

だが、光があれば影もある。
ロックは歩いていてふと気付いた。
良く見ればあたりは真暗、廃墟と化したビルが立ち並び、
ガラの悪そうな連中がこちらをにらんでいる。
どうやらスラム街に来てしまった様だ。
足早に立ち去ろうとすると、後ろから怒鳴り声が聞こえた。
「ヤロゥ、待ちやがれ!」
「待てといわれて待つバカがいるかっ!」
ロックが振り返ると、そこには――
紫の髪とやや赤い瞳をした少年と、
銃やナイフを持った男たちだった。

少年と男達はロックの横を風のように走り去っていった。
「何なんだろう?」
ロックは一瞬、後を追うのをためらったが、
あの銃を持った男に追われる少年のことを考えるとじっとしていられなかった。
次に気付いた時には、体が勝手にそ後を追っていた。

少年は袋小路に追い詰められていた。
「もはやこれまでだな・・・最後に言いたいことはなんだ?」
男達はニヤニヤと笑いながらまるで処刑人のような口ぶりで言った。
「・・・ヘッ、テメーらなんかに俺は殺せねえよ」
「フン、減らず口を・・・死ね」
そう言って引き金を引こうとした、まさにその時!
「待てぇっ!!」
ロックだ。すんでのところで追いついたのだ。
男たちの視線がロックに向けられる。
その瞬間を狙っていたかのように、少年は腰のナイフを男の一人に投げた!
そのナイフは腹部を射り、その体に固定された。
「なっ・・・!?」
仲間は残り2人いる。
そいつらに向かって少年は突進していった!
ロックからの視線がそらされる。
まだ一人は銃を持っている。このままでは・・・!
ロックはその男の後頭部めがけて蹴りを放った。
男は前のめりとなって地面に倒れ伏した。
「きっ、貴様!」
残るは一人。挟み撃ち状態で武器もナイフ一本。
どう見ても男に勝ち目はなかった。
すると、男は近くのロックの首をつかみ、
後ろから羽交い絞めにした。
「!」
「ハッハッハ!動くとコイツの首をカッ切るぞォ!」
「テメェ・・・卑怯だぞ!」
「お前だって不意打ちしただろ?さて、と」
男は下に落ちている銃を拾った。
「これで終わりだ、あばよ・・・グハッ!」
男は急に体を曲がらせた。ロックの肘打ちを腹に食らったのだ。
「どけぇっ!」
ロックの目の前に少年が突っ込んできた。
すさかずその場から飛びのく。
「ウ・・グ・・・・・し、死ねェェェェェ!!」
男は最後の悪あがきと言わんばかりにナイフを突き出した。
しかし、それはいとも簡単にかわされ、そして・・・
「掌破ァ!!!」
少年の双掌打が真横から腹部に叩きこまれた。
「グォァァァァア!」
男は血を吐き散らしながらゴミ溜めへ突っ込んだ。

いつのまにかロックは地面にへたりこんでいた。
「大丈夫か?」
少年はロックに手を差し伸べた。
「あ・・うん、ありがとう」
「何、礼を言うのはこっちだ。助かったぜ」
「いや、それほどでも・・・君、名前は?」
「俺はファディス・ガーレット。フィルでいい」
「僕はロック・ヴォルナット。よろしく、フィル」
「よろしくな、ロック・・・ん?もうこんな時間か」
ファディスはロックの腕時計に目をやった。
既に時刻は11時を回っていた。
「わ!もう行かないと!」
「ん?そうか、じゃあな・・・・」
ロックは急いで街の方へと向かった。
ロールとある店の前で10時に会うように約束していたのだ。
案の定、ロールはしびれを切らしていた。
「ごめん、ロールちゃん・・・」
「何よ!ちゃんと時間通りに来てよね!もう明日はゴハン抜き!」
「そんなぁ・・・」
そんなカンカンのロールの機嫌をとりながら帰宅するロック。
しかしロックは、ある一つの事を考えていた。
(あのファディスって人・・・どこかで会ったことがあるような・・・?)


翌日、ロックは街から離れた所にある野原に来ていた。
ここへ来たのに何も特別な理由はない。ただ気がつけば、
ここを歩いていたのだ。それもアーマー姿で。
それがロックには、何かに引きずられてきたようにしか思えなかった。
とりあえず散歩がてら歩いていると、ふいに横の小山のふもとが窪んできた。
そして、少しずつ姿を見せたものは、紛れも無く遺跡、だった。
せっかくアーマーをつけている事だし、とロックが思ったその時、
「何してるんだ?こんな所で」
ふいに後ろから声が聞こえた。
慌てて振り返ると、そこには少し光沢が落ち、
鈍い光を放つ銀色のアーマーに身を包んだファディスがいた。
「フィ、フィル。君こそなんで?」
「いや・・・そこの遺跡をディグアウトしようかと。ロック、お前もか?」
「え?あ、いや僕は気付いたらここに・・・」
不思議そうにうなずきながらファディスは続けた。
「フーン・・・まあいいや。どうせなら一緒に行こうぜ!」
「え?別にいいけど・・・」
「よし、決まり!行くぞ!」
ファディスに連れられるがままにロックは遺跡へと足を進めていった。
遺跡の入り口は他の物より幾分かガッシリした作りになっているようだ。
「ここは結構なお宝がありそうだな・・・」
ファディスがつぶやく。
しかしロックは黙っていた。またあの事を考えている。
(やっぱり会ったことがある・・・それも凄く懐かしいような?)
「・・・てんのか?」
「え?」
「聞いてんのかよ?まあいいや、中に入るぞ」
ファディスはエレベーターの中へ入っていった。
「ちょ、ちょっと待ってよ」
ロックもエレベーターに乗りこむ。
すぐにドアが閉まり、下降を始めた。
遺跡内部は、少し暑い外とは逆にひんやりと冷たかった。
エレベーターは少しずつ高度を下げていき、やがて停止した。
前面のドアが開き、ファディスは足早に前のドアに進んでいく。
少し遅れてロックが続く。
ドアを開け、中に入ると、そこには・・・
「いきなりお出ましか・・・」
「え?・・・・・!」
そこは広めで、ただの四角い部屋だった。
そう、シャルクルスが5体いるという以外は・・・


5体のシャルクルスは一斉に襲いかかってきた。
そして、2人の前で2組に別れ、ロックとファディスに同時に襲いかかった。
「3体か・・・まとめて相手してやる!」
ファディスは腰のビームブレードを引き抜き、引き金を引いた。
光の刃が勢い良く飛び出す。そして、構えた。
まず、1体が飛びかかって攻撃してきた。
その空中で出来たほんのわずかな隙をファディスは見逃さなかった。
「おぉぉぉぉぉっ!!!」
ブレードを振り上げながらシャルクルスに真向から突っ込んだ。
次の瞬間シャルクルスは、真中から2つに分かれ、火花を上げながら爆発した。

一方、ロックの方には2体いる。
今回のロックの装備は、バスターだけであった。
シャルクルスはそれぞれ別々の方向から襲いかかり、ロックを撹乱する。
しかし、ここで焦ってはいけなかった。焦れば焦るほど、狙いは外れてしまう。
ロックは、片方のシャルクルスに狙いを絞り、バスターを放った。
次々と青白い光弾が命中し、シャルクルスは爆風の中に消えた。
「よし!もう一体・・・あれ?」
ロックは目をこすった。
消えた。もう1体いたはずが、どういうわけかそこにいなかった。
「どこに・・・!!」
ロックは焦って周囲を見まわした。そして・・・
「!!!」

ドォォォォン!!
「残り1体!」
ファディスは既に2体を撃破していた。
最後の1体は、体を左右にすばやく移動させながら接近してきた。
どうやら狙いを定めさせないつもりのようだ。
「そんなもの・・・無意味だ!!」
ファディスはシャルクルスに向かって突進し、ダッシュ斬りをお見舞いした。
胴体から真っ二つにされたシャルクルスは、一瞬のうちに消し飛んだ。
「フィル!伏せて!」
ふいにロックの怒鳴り声が聞こえた。ファディスは戸惑ったが、
とりあえず床に身を伏せた。
次の瞬間、頭上で小さな爆発音が聞こえた。少し顔を上げてみると、
目の前にシャルクルスが勢い良く落下した。
「!?」
ファディスが振り返ると、そこにはバスターを構えたロックが。
「そいつ、後ろから飛びかかったんだ」
「・・・そうか、サンキュー、助かったぜ」


安心するのはまだ早かった。
シャルクルスはまだ機能を失ってはいなかった。
「まだ生きてやがったか・・・とどめだ!」
ファディスは思いきりブレードを振り下ろした。
だが、シャルクルスは横っ飛びをして剣をかわした!
「何!」
そして、ロックとファディスは、信じられない光景を目の当たりにするのだった。
なんと、シャルクルスは2人に背を向け、通路の奥へと消えていった。
「・・・・・逃げた?」
「逃げるなんて・・・初めて見た・・・」
それまで、リーバードは1度標的を決めたら、とことん追いかけてくるものだった。
しかし、このシャルクルスは何故か逃げたのだ。
リーバードにも意思があるというのだろうか?

しかし、それだけで終わりではなかった。
………シャン
「あれ?」
「どうした、ロック」
「何か、聞こえない?」
……ガシャン
「え?・・・あ、確かに」
その音は、次第に大きさを増していった。
…ガシャン、ガシャン、ガッシャガシャガシャガシャ!
「おい・・・まさか・・・」
「そんな・・・これって・・・・・」
音はもう、部屋を揺さぶるほどに大きくなっていた。
それは、死神の足音だった。
その音の主が姿を現した。
―――腹部に傷のあるシャルクルス!
しかし、それだけではない。
通路から次々にシャルクルスが現れた。
その数――――ざっと50体。
「何ーーーーーッ!!!!」
ロックとファディスが叫んだ、次の瞬間、
死の軍団は一斉に進撃を開始した。