ロクノベ小説保管庫 第二章『死闘の始まり』

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もうどれくらい時間が経ったのかわからない。
今だロックとファディスは、シャルクルス軍と交戦中だ。
いくら倒しても、次から次へと兵をどこからか投入してくるのだ。
つまり、数はさっきよりも増えている。
ファディスは、ちっ、と舌打ちをした。
「クソッ!これじゃあきりがないぜ……」
「フィル!これは一旦退いたほうが・・・うわぁぁっ!!」
「!?ロック!おい!」
ロックは、周りを取り囲んでいたシャルクルスに一斉攻撃されていた。
いくらアーマーを着ていても、間接部や顔は外に出している。
ほとんどの攻撃はアーマーで防げたが、顔や肘を切りつけられたのだ。
「しっかりしろ!大丈夫か!?」
「う・・・うん、大丈夫。でも・・・数が多すぎる。一旦退こう。」
そう言ってる間にも、またもシャルクルスたちは襲いかかってきた。
「・・・・・分かった。じゃあ行くぞ!しっかりつかまってろ!!」
ファディスはロックを背負うと、大群に向かって一直線に進んでいった。
「・・・?ちょっ・・・フィル!?」
ファディスは聞いていたのかどうか分からないが、
その足を止める事はなかった。
「どけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!」
当然ながらどくはずはない。
ファディスは腰に下げていたビームブレードを引き抜いた!
「ぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!」
渾身のなぎ払い。その一撃で、シャルクルスが3体ほど弾け飛んだ。
「まだまだぁっ!!!」
今度は真正面から突進してきたシャルクルスのモノアイに
見事な突きを披露した。
「フィル!危ない!横だ!!」
「!!!!!」
慌てて横を振り向くファディス。
そこには、4体ほどが一度に突進してきていた。
「クッ・・・・・」
どう考えても、攻撃は間に合わなかった。
そう、『攻撃』は・・・
(仕方ない・・・あれをやるか・・・)
するとファディスは、くるりと足の向きを変え、
同時にその4体のシャルクルスに向かって飛んだ!
「え!!!!」
ロックは驚きを隠せない。当然だ。
敵のど真ん中に飛び込もうというのだから。
「いくぞぉぉっ!!」
ロックは、ファディスが何をしようか分からなかった。
しかし、それは次の瞬間、判明した。
「はぁぁぁっ!!」
ガツッ、という金属がぶつかる音が聞こえた。
ロックは目を見開いた。すると、なんとファディスはシャルクルスの
頭に足を乗せて、大群の『上を』走っているのだ!
なんというムチャクチャな切り抜け方であろうか!
「出口が近くなってきたぞ!」
ファディスが喜びが多少混ざった声で叫んだ。
しかし、まだ後ろには、目も伏せたくなるほどの
おびただしい数のシャルクルス達がいるのだった。
そして、その魔の手が2人を目掛けて伸びてきた。
「きっ、来たぁ!!!!」

「ハァ、ハァ、ハァ……」
遺跡の壁にもたれかかり、あらい呼吸をしている
人影が見えた。ファディスだ。
そして、その横には腹部を押さえて座り込んでいる
ロックの姿があった。
肩で呼吸を整えながら、ファディスは
考え事をしていた。
何なんだあの大量のリーバード共は・・・
まるで仲間がやられた復讐みてぇじゃねぇか・・・
それに最初に逃げていったやつ・・・
どうしてリーバードが逃げていくんだ。
それにどう見ても仲間を引き連れて戻ってきたみてぇだぞ・・・
まるで人間みたいじゃないか・・・
「・・・フィル?」
ロックの一言で、ファディスは我に返った。
「ん?どうした?傷は大丈夫か」
「大丈夫だけど・・・僕は一旦装備を整えてまた来ようと思うんだけど・・・
フィルはどうする?」
「・・・俺がこの程度で諦めると思っているのか?」
ファディスはにっと笑ってみせた。その中には、堅い決意が
込められているようだった。
「無理するなよ、傷が開くとヤバいぞ」
「大丈夫だよ。じゃあ、30分後にまたここで」
そう言って二人は別れた。

彼らは、知らなかった。
この遺跡が、侵入者を徹底的に排除するものだという事を。
この遺跡に足を踏み入れたものは、二度と日の光の元に
姿を表す事がなかったという事を。
そして、ロックの、あの忌まわしい記憶の出来事が、
再びここで起こるという事を。
彼らはまだ、知らなかった。

30分後、二人は再び遺跡の前で落ち合った。
ロックは特殊武器はハイパーシェルを選択した。
これが凶と出るか、吉と出るかだ。
ファディスは、左腕には何やら連射型らしき武器、
そして背中には、ロックのバスターの5,6倍はありそうな
巨大なバスター型の武器を背負っている。
「ロック、その武器はどんな物なんだ?」
ファディスがロックに尋ねた。
「これは『ハイパーシェル』っていう武器で、広範囲に
攻撃できる武器なんだ。ところでフィルのは?」
今度はロックがファディスに聞いた。
「俺か?俺のはな・・・」
ファディスは左腕にはめた武器を見せて言った。
「これは『バルカンアーム』って言ってな、
まあその名の通り、連射型の武器だ。弾数がとにかく多いのがウリだな。
そしてこっちは・・・」
今度は、背中に背負った武器を親指でぐいっと指差して言った。
「これは『ギガライト・ショット』っていう武器なんだがな・・・
いかんせん弾数は少ないが攻撃力が高すぎてな・・・
使う機会はないと思うが・・・まあいいや、行くぞ」
そう言うとファディスは先に遺跡に入っていった。
あとにロックが続く。

遺跡独特の湿気を含んだひんやりとした空気が頬をなでる。
エレベーターが下がっていくに連れ、2人の心臓の鼓動は高まっていく。
ついに、遺跡の内部にたどりついた。
「準備はいいか?」
「うん、大丈夫。」
「よし・・・・じゃあ行くぞ!!!」
勢い良くドアを開けてファディスが先に入った。
「・・・・・・・・ありゃ?」
ひょうし抜けたような声が聞こえてきた。
「どうしたんだい?」
ロックはファディスの肩ごしに部屋をのぞいた。
そして、そこにはありえない光景があった。

部屋には、何もなかった。
ただ平らな壁と天井と地面があるだけ。
あれほどいた大量のシャルクルスは一体もいなかった。
「これは・・・・・・・・・」
「どういうことだ・・・・・・?」
ロックとファディスは、部屋の中へと足を進めた。
その瞬間、強烈な殺気を2人は感じた。
「・・・・・・・・・・!!!!」
「上だ!!!!!!」
ほぼ同時に2人は上を見上げた。
そこには、手の鋭い刃を天井に突き立て、
この時を待っていたかのように次々と降下してくるシャルクルスの姿があった。
脱出した時より更に数を増している。
「あぶない!!」
ロックはファディスの真上に降下してくるシャルクルスの姿を見とめた。
「・・・・クッ」
まさに間一髪でその攻撃をかわすファディス。
あまりの殺気に背筋が一瞬凍りついた。
―――――殺気?
どうして俺はリーバードから殺気を感じるんだ?
それにさっきの最初の時のあの仲間を呼んでくるような行動・・・
妙に人間味があるぞ・・・
まさか・・・・コイツらは『生きている』のか?――――
しかし、はっと我に返った。
すぐに攻撃態勢へと移る。ロックもハイパーシェルを構えた。
「食らえェェーーーーーッ!!!!」
バルカンアームを乱射するファディス。
大量の弾が次々にシャルクルスの頭を、胸を、体を貫く。
「行っけぇぇ!!!!」
ロックもハイパーシェルを発射する。
その放たれた巨大な火弾は、部屋の中央部に近い位置で
大爆発を引き起こした。
爆風になぎ倒され、シャルクルス達は吹き飛び、又は粉砕され、
その姿を消してゆく。
しかし、まだまだ敵は大量にいる。
どうやら通路の奥から敵が補充されているようだ。
「ロック!通路の奥だ!あっちから敵が来てるぞ!!」
「わかった!でもコイツらをどうにかしないと・・・」
いくら広範囲に攻撃できるハイパーシェルといっても、
あまりの敵の多さにはかなわない。
「・・・クソッ、これはあまり使いたくなかったが・・・」
ファディスは舌打ちすると、背中のギガライト・ショットに手を伸ばした。
「ロック!伏せてろ!!」
ふいにロックは呼ばれて、一瞬困惑した。
しかし、ファディスはなにかやるつもりだ。迷ってる暇などない。
ロックは、迫り来るシャルクルスの攻撃をかわし、床に伏せた。
「消えろぉぉぉぉぉぉッ!!!!!」
ファディスの叫びがこだました後、部屋は閃光に包まれた。

凄まじい轟音。地響き。そして閃光。
ロックは、目の前で何が起こったのかわからなかった。
一瞬、光弾が部屋をよぎったと思ったら、
次の瞬間はもう視界は青白い閃光に支配されていた。

しばらくして、視界が戻ってきた。
目をぱちぱちと瞬かせ、薄暗さに目を慣らす。
そこにあった光景は、到底信じられるものではなかった。
部屋は、ほとんど廃墟と化していた。
地面、壁は大きくえぐりとられ、大量のシャルクルスは
ただのガラクタの山と化していた。
そして、ロックは部屋の隅にうずくまっているファディスを発見した。
「フィル!!」
ロックは荒い息をしているファディスの元へと駆け寄った。
「・・・・・・どうだ・・・これがコイツの威力だ・・・」
そういって、右腕にはめているギガライト・ショットを目の前に出した。
「それは使いたくないって・・・」
「まあやむを得なかったからな・・・・・さあ行くぞ!」
すっくとファディスは立ちあがった。
「うん、行こう!」
ロックも後に続いて立ちあがった。

広間から伸びている通路は、横幅が約5mほどの、先の見えない
暗い通路だった。
2人はその通路をどんどん進んでいった。
途中でシャルクルスやアルコイタンなどのリーバードが出てきたが、
2人の前に跡形もなく消滅していくだけであった。
……さすがにカルムナバッシュが出てきた時には少々苦戦したが。
そして、しばらくして巨大な壁に差し掛かった。

「行き止まり・・・・・?」
「おかしいな・・・なんでいきなり壁があるんだ?
あのリーバード達は一体どこから・・・」
「でもこの壁、なんか他のとちょっと違うみたいだ・・・」
ロックの言う通り、この壁は他のと多少違っていた。
あの奇妙なくねった線ではなく、直線が描かれ、
色も金色に近かった。
「・・・この壁・・・壊せないか・・・・・・・!?」
ファディスは我が目を疑った。
目の前にあった壁が、ガクガクと揺れ始めたのだ。
トラップ―――彼は一瞬そう思った。しかし、それはまったくの見当違いだった。
ロックもその光景を見ていた。突然壁が動けば、誰だって驚くだろう。
しかし、その壁を良く見てみれば、いきなり動き出したことは理解できた。
それは壁ではなく―――――巨大リーバードだったのだ。
そして、ロックはそれを見たことがある。
忘れもしない、カトルオックス島。
『メインゲート』のスイッチで地上に姿を現した地下都市。
その中に『奴』はいた。
次々とリーバードを生み出す、見たこともない巨大リーバードを。
2人が壁だと思っていたものは、大型リーバード『ガイニー・トーレン』だった。

「これは・・・」
ロックは愕然とした。
「どうした?ロック」
ロックの様子が少しおかしい事を感じた
ファディスは声をかけた。
「・・・・・・・一度見たことがある。
気をつけて。こいつはリーバードを生み出すんだ。」
「だったらコイツがさっきの大軍を出してきたわけか・・・。
……よし、ぶっ壊してやろう!」
威勢の言いファディスをロックが制止する。
「待って。今は攻撃を受け付けない。ハッチが開かないとだめなんだ。」
そうして、2人は攻撃のチャンスを待った。
しばらくして―――――ハッチが勢いよく開いた。
「今だ!!」
ロックは声を張り上げてハイパーシェルを放った。
ファディスも負けじと言わんばかりにバルカンアームを猛連射する。
――――――――が。
カキン。金属的な物をはじく音が聞こえてきた。
「・・・・・・!?」
「全然効いてないぞ!?どういうことだロック!」
「僕だって・・・・わからない!」
焦る2人にガイニー・トーレンが反撃をしてきた。
ハッチの中からシャルクルス、アルコイタン、クルグルが一斉に飛び出してきた。
「マジかよ・・・・・ッ」
腰のビームブレードを引きぬき、一斉に斬りかかるファディス。
その斬撃の前に次々とリーバード達は消えていった。
「くッ・・・・・!」
ロックもバスターを撃ちまくる。
青い光弾が次々にリーバードを撃ちぬく。
やっとガイニー・トーレンから射出されたリーバードは全滅した。
「コイツはやっかいだな・・・・・」
ファディスはぼそりとつぶやいた。
いまだに目の前の巨大リーバードは活動を続けている。
「・・・・・・・・・・・・・・ロック、離れていろ。」
ファディスがこれから何をするつもりなのかを予測し、
ロックは通路を出て壁に身を寄せた。
「同じ日に2回も使う事になるとはな・・・・・」
ファディスは背中の巨大な『怪物』に手を伸ばした。
「これなら・・・・・・どうだッ!!!!」
開いたハッチの中めがけ、ギガライト・ショットが火を吹いた。

通路に閃光が走った後、爆炎が走りぬけていった。

そのあまりの眩しさに、ロックは目を手で覆った。
しばらくして閃光がおさまった後、その目を開いた。
そこにあった巨大リーバードの姿は、ただの鉄クズとなっていた。
その時ロックは、はっとして後ろを振り返った。
反動で吹き飛んだファディスが、壁にもたれかかって荒い息をついている。
「フィル!!!」
ロックは焦ってファディスの元へ駆け寄った。
「しっかり!」
ロックは更に声をかけるが、頭を打ったらしく、焦点が定まっていない。
「う・・・・いてて・・・」
やっとのことでファディスは反応を示した。
頭から少し出血している。
「この状態で先に進むのは危険だよ。一旦引き上げよう!」
ロックは言うが、次に帰ってきた返事は・・・
「いや・・・先に進む・・・」
なんだって、とロックは言いたかった。
なぜそんなに進みたがるのか、分からなかった。
しかし、それは言っているファディス自身すら分からなかっただろう。
ただ、何かが先へ進めと言っている。
いや、進まなければならないと言っている。
まるで磁石に引きつけられる鉄釘のように、何かに引き寄せられている感じがした。
「どうしてそんな・・・」
「分からない・・・ただ先に行かなきゃいけない気が・・・するんだ・・・」
頭を押さえながらファディスは言った。
もうこうなっては止めても無駄だろう、とロックは悟った。
ファディスの腕をつかんでいた手を離し、すっくと立ちあがった。
そして、地面に座り込んでいたファディスもまた、一緒に立ちあがった。

しばらく進むと2人は、エレベーターに差しかかった。
このエレベーターは下のフロア行きのものである。
2人は何も考えずに、ただ自然に乗りこんだ。
この下の階で、おぞましい物がある事など、2人は知る由もなかった。

エレベーターはゆっくりとその高度を下げていく。
降りて行くにつれ、こころなしかあたりの空気が不気味なものへ変わっていく気がした。
なぜこのような感じがするのかを、2人はこの直後知ることとなる。

ガクン、という音と共にエレベーターは地下2階に到達した。
この先は一本道になっており、先のほうは暗くて見えない。
「…………なんか妙な感じがするな……」
ファディスが呟く。
たしかに1階と比べ、あたりは静まり帰っており、
何か不気味な空気が漂っている。
普通なら今すぐにでもひき返したい所だ。
「とりあえず進んでみようか。」
ロックは言うと、今度は1階の時と違い自分が前に進み出た。

先に進むにつれ、2人は嫌な感覚を覚えた。
何かがこの先にある。それも、あまり良くないものが―――
だが、2人はその足を止めなかった。
たとえ何があろうとしても、何故かは分からないが、先に進まなければいけない気がした。
一体それが何故なのか、2人はしばらく後ほど知る事となる。
しばらく行くと、直角に曲がる曲がり角に突き当たった。
そこを認めたとたん、2人の心臓の鼓動が跳ね上がった。
ドクドクと早いリズムを刻み続ける。
2人はその妙な気持ちを押さえ、通路を曲がった。
そして、ロックが先に曲がった。次の瞬間――――――
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっっっ!!!!!!」
凄まじい悲鳴が上がった。
そして次の瞬間、ロックは尻餅をつき、恐怖に歪んだ顔で先を見ていた。
「どうした!?」
ファディスがあわててロックに近寄る。
だが、ロックは驚きのあまり声がでないようだ。
一体何を見たんだ―――?
ファディスはロックが見つめている方に目を向けた。
そして、ファディスも声を失った。
そこにあったのは、人間の死体の山であった。
白骨化したもの、腐りかけたものがあたりに転がって、強烈な異臭を放っていた。
そして、更に驚くべき事に、いずれの死体も、首と体が分離して転がっていた。

「こ・・・これは・・・・」
ファディスは思わず絶句した。
ロックはあまりの恐ろしさに思わず吐きそうになっている。
首とその主であったと思われる死体は、いずれもディグアウターで
そしてどの顔も恐怖に歪んでいた。
一体この者達は何を見たのだろうか・・・。
ファディスが疑問に思っていると、ガシャン、と大きな金属音が側面で響いた。
即座に横をみると、なんと突然今通ってきた通路がシャッターで閉じられていた!
さらに、次の瞬間、通路の反対の壁が大きく開き、ゴウンゴウンと不気味な音が聞こえてきた…。
「フィル……まさかこれって…」
今まで顔を伏せていたロックがその顔を上げて呟いた。
「ああ…閉じ込められた上に……どうしても進まなきゃならないようだな」
ファディスは今開いた壁の向こうをじっと見ていた。
不気味な低い音と共に、何かがこちらに迫ってきているのが分かる。
壁―――彼は即座に思い当たった。
いつまでもここにいても、迫り来る壁に押しやられて前に進まなければならない。
しかし、この死体を見る限り、必ず恐ろしいトラップが仕掛けられているに違いない。
今までディグアウトしてきて、様々なトラップを目にしてきたが、
いずれもディグアウターを先に進ませない仕掛けであって、命を奪うものではなかった。
この遺跡は何か、どこか他の遺跡と違う。
先ほどの大量のシャルクルスといいこの恐ろしいトラップといい。
だが今はそのようなことを考えている場合ではなかった。
ファディスは覚悟を決めた。
「ロック、俺が行く。」
「!?そ、そんな…ムチャだ!いくらフィルだってこのトラップがどんな物かも分からないんだよ!?
それに失敗したら死んじゃうんだ!」
「だからといっていつまでもここにいられないだろ?俺は行く」
「…………………わかった…………」
ロックはその驚きと恐怖を押し殺し、静かに言った。
「よし……行くぞ」
ファディスはそう言うと、足を前に踏み出した。

この死体から見る限り、おそらくこのトラップは首あたりを狙う刃物系のものだろう。
だが、一体それがどこから迫って来るかも分からず、いや、もしかしたら
刃物系ではなく、通路の向こうから狙うレーザー系のものかもしれない。
とにかく、トラップが来たら即座に動ける様に身を構えて足を進めた。
そして、いよいよ死体の転がる死の領域に足を踏み入れた。
ふいにその時、ファディスは頬に軽くそよ風が当たるのを感じた。
「…………?」
ふっと横を見ると、壁のあの奇抜な模様のなかに、小さく溝が彫られているのに気がついた。
そして、その奥には鈍く輝く薄いものが…
「!!!!!!」
ファディスはそれに気付き、即座に身を屈めた。
次の瞬間、彼の頭の上を鋭い刃が疾風の如く駆け抜けてゆく!!
切りぬけた―――そう思った次の瞬間・・・
ジャキン、という音を耳にした時には、屈んだファディスの目の前にもう一枚の刃が迫っていた!
「クッ………」
今度は側転でその刃をかわす!が、まだ終わらなかった。
こんどは地面から体を真っ二つに切り裂くように刃が迫っていた。
体を無理矢理起こし、その刃をかわすが、更に両側の壁からファディスの顔面を狙って
2枚の刃が迫り来る!
「うおっ………ッ!!」
また体を屈め、その刃をかわすも、更に目の前に地面から刃が飛び出してきた!
すばやく横に転がってかわす。しかし、またも地面から2枚の刃がファディスを
3つに輪切りにするかのように飛び出した!
もはやこれは避けられないかもしれない―――
そんな考えがファディスの脳裏に浮かんだ。だが……
なにも考えず、ただ体を小さく丸めた。すると、彼のすぐ両側を
刃が猛スピードで通りぬけていった。
ファディスは、無我夢中で目の前のスイッチを押した。
すると、あれほど激しく動いていた刃がみるみる速度を落とし、そして―――止まった。

「や…やったぞ……!」
トラップを切りぬけた嬉しさのせいか、多少声が震えてた。
「ロック!もう大丈夫だ!」
ファディスが言うが、ロックからの返事はない。
「……ロック?」
ファディスが振り向くと、そこには魂の飛び出しかけている状態のロックが・・・。
おそらく先ほどのファディスのムチャクチャな切り抜け方でほとんど魂が飛んだ状況にあるようだ・・・
まあ当然だろう。誰が見てもこんな事態を目の当たりにして驚かないものはない。
「お~い、しっかりしろー」
既に止まったトラップをくぐり、からかうようにファディスは
ロックの頬をぺちぺちとたたく。ふいに、ハッとロックは我に返った。
「あ・・・フィル!?だ、大丈夫だった!?」
「見て分からないか?全然平気さ」
両手を広げて、傷一つ無い事を得意げに示すファディス。
「す…すごいよフィル!よくあんなトラップを抜けられたねっ!!」
ロックは子供の用にはしゃいでいる。ファディスもまた得意げそうに自慢する。
だが、そんな和やかな時間も長くは続かなかった。

ズズズズズズズズ・・・・・・・

「・・・・・・・・?」
「何の音だ・・・?」
先ほどまで迫ってきていた壁の方から、なにか低い音が聞こえてきた。
リーバードか?と2人は思ったが、そんな甘いものではなかった。
パシャ、と音が聞こえた次の瞬間、『それ』はもう目で確認できるところまで近づいていた。

それは――――水。

通路を埋めて津波の如く迫り来る、大量の水であった。
その量は毎秒100、いや、200tはあるかというほどである。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
2人は叫びながら、猛ダッシュで駆け出した。

2人は走り続けている。
後ろから猛烈なスピードで追いかけてくる水から逃げる為に。
ロックは一応走りに自信はあるほうだが、
ファディスと比べるとその自信は消えうせた。
速い。とにかく速いのである。
既にロックの5m以上先を走っている。
「何やってんだ!はやく走れ!!」
そう言われるも、これがロックの限界なのである。
スピードを上げようにもこれ以上は上げれない。
見かねたロックは、空中に高々と飛びあがった。
そして、空中でダッシュシューズのスイッチを入れた!
地面に着いた瞬間、ロックは猛烈なスピードで進み始めた!
(空中でONにしたのは、地上でやると一旦止まらなければいけないため)
火花を上げながら車輪は回転する。
しかし、これでやっとファディスと同じ位の速さになったのだ。(速!)
ともかく、2人はいまだに後ろから迫り来る怪物から逃げ惑う身に変わりは無い。
一体どこからこんな大量の水を持ってきているのか不思議であったが、
ここは海の近くなので、海水を持ってきているのだろう。
だが、そんなことは今は関係ない。
この大量の水に飲みこまれれば、凄まじい衝撃が全身を襲うだろう。
しかも、その後はアーマーに水が入りこみ、あっという間にどざえもん(水死体)である。
2人はそのようなことを考えると、全身が恐怖に包まれて動けなくなりそうな気がした。
なるべくそのことを考えないように…というか、考える余裕もないのだが。

いまだに先の方は見えてこない。
まさかこのまま進んでも結局は水に飲まれるのかも……
ありえる事である。なにせ、この遺跡は侵入者を「排除」どころか、
「殺害」するトラップが多いからである。
もしかすると、この遺跡にはもともと何も無く、
ただ入ったものの命を奪うものだけなのかもしれない。
そのような考えが2人の脳裏をかすめた………が。
その心配は次の瞬間、曲がり角を曲がった瞬間消えうせた。
そこにあったのは、扉である。
目の前10mほど先に見えている。
あと少し行けば助かる―――2人は疲労の蓄積を忘れ、更にスピードを上げた。
10mをほんの1秒ほどで走りきった。世界新記録を狙えるかもしれない。
2人は、その扉に手を叩きつけた。
次の瞬間、その扉は横に開き、そして、もう一枚重なっていたのだろう。
今度は上下に開いた。水を防ぐためにこの仕組みになっているのであろうか。
2人は無我夢中でその扉の向こう側に体を押し入れた。
とたんに扉は勢いよく閉まり、もう目前に迫っていた水をシャットアウトした。
閉じる直前に水が激突したのか、わずかに水飛沫が隙間からはねた。
「………た……助かった……」
2人は同時に同じ事を呟いた。そして、お互いの顔を見合わせ、小さく笑った。

少し休憩の後、2人は後ろのもたれかかっていた、入ってきた方とは逆の扉をくぐった。
そして、2人は息を飲んだ。

そこは、真っ白な木の根のようなものが広がり、妙に明るい部屋であった。
しかし、それ以上に目をひくのが、中央部においてある、巨大な2つの、
神々しいばかりの光を放つディフレクターであった。

「す…凄い……」
ロックは思わず声を漏らした。
なにせそこにあったディフレクターは、2メートル以上の大きさがあり、
更に目もくらみそうな輝きを放つものであったからだ。おまけに2つもある。
これは一体何ゼニーになる物だろう。
数百万、いや数千万でもまだ足りないかもしれない。
ファディスもまた、同じ事を考えながら、そのディフレクターに近づいていった。
―――と。
バチッ!!
強烈な電流が走ったような痛みがファディスの腕を襲った。
「ッ・・・・・!」
思わず腕を引っ込めるファディス。
シールドがはってあるようだ。まあ当然であろう。
こんな巨大なディフレクターが無防備にさらされているワケがない。
とすると、シールドを解除するスイッチを探さなければいけない。
「ロック、近くにスイッチ、ないか?」
そう言われて、ロックはあたりをキョロキョロと見まわした。
しかし、どこにもスイッチらしきものは無い。
「……ないよ、ここには」
「う~ん、だとすると…どこだ?」
ファディスもまた周囲をキョロキョロ見まわす。―――と。
部屋の一角に、埃に埋もれたように、一部が盛り上がっていた。
「あれか・・・?」
ファディスが呟き、そこに近づいていく。
上にのっている汚れを払い落とし、そこにある物を見つけた。
スイッチとは多少違うが、コンパネらしきものがそこにあった。
彼は何も迷わず、手のアーマーを取り外し、上に乗せた。
ロックはディフレクターに見入っている。
と、突然、OS音声が部屋に鳴り響いた。
「コード確認。ロック解除します。」
ただ短くそれだけ言うと、低い機械音が部屋に鳴り響いた。
そして、部屋が揺れ始めた。
地震でも起きているかのような揺れであった。
ロックもファディスも、地面にへたり込む。
そして、しばらくして揺れがやんだ。
「……なんだったんだ、今のは…」
ファディスは小さく呟き、ゆっくり立ちあがった。
「ロック、大丈夫か?」
そう言って、後ろを振り向いた時、彼は思わぬ光景を目にした。
そこにあったのは、驚愕に満ちたロックの顔と、
そして、輝きを失った2つのディフレクター…そして、その中に浮かぶ、
2つの人影らしきものがあった。

振り向いたファディスもまた驚愕した。
そこにあった2つのディフレクターの中に、
それぞれ1つずつ人影が浮かび上がっていたのだ。
それは、自分の肩を抱え込むようにしてうつむいた体制の、人間…らしきものだった。
と、突然その者が目をカッと見開いた!
同時にディフレクターにヒビが走ったと思ったら、一瞬で粉々に散らばった!
ロックもファディスも、手で顔を防いだ。
そして、その手を下ろすと、そこには2人の男の姿があった。
一人は緑のマントに青い長髪の、22,3歳ほどに見える。
もう一人は長い布を首に巻きた、短い緑髪をした、18歳ほどの少年であった。
そして、長髪の男の方が口を開いた。
「これはこれは…あなたはトリッガー様…それにイオ様まで。」
「何だって!?」
ロックは自分の心臓の鼓動が跳ね上がるのをしっかり感じ取れた。
トリッガー―――今、たしかにこの男は言った。
この名を知っているのは、マスター、マザー、ロックマンシリーズ、つまり、ヘブンのシステム関係者だけだ。
だとすると、この男達は―――――?
そして、こいつは別の名をも呼んでいた。
イオ―――たしかにそう言った。
それは、今までロックは聞いた事もないが、一体何のことか大体見当がついた。
………信じられない事だが。
「ロック、知ってるのか?コイツ等のこと」
ファディスが後ろから声をかけた。
だがロックには聞こえていなかった。
(まさか―――まさかフィルは―――)
その奇妙な様子を見て、長髪の男が口を開いた。
「どうしました?…私達をご存知ありませんか?
……私達はこのテチス島のマスター、二等粛正官ロックマン・ダイモスと、
ロックマン・フォボスです。」
その言葉を聞いて、ロックは卒倒しそうになった。

やはり、この二人はロックマンシリーズの者達だったのだ。
それも、二人とも二等粛正官という、かなり高い階級の、だ。
「き・・・君達は…二人とも粛正官なのか?」
「ええ、そうですよ」
ダイモスはさらりと言い返した。と、
「ロック…一体何なんだコイツラは…」
ファディスがロックに尋ねるが、ロックの返事はない。
「………?イオ様、どうされました?」
ダイモスがファディスに対して言う。
そして、その言葉を聞き、ロックは確信した。
ファディスもまた、ロックマンシリーズの1人であるということを。
そして、ロックマン・イオという名前を持つと言う事を。
「イオ…?なんだそれは……」
「まさか……まさか貴方は…」
「……メモリーを失っている。」
今までなにも喋らなかったフォボスが初めて口を開いた。
やはり、という感じでダイモスはフゥ、と息をついた。
「そうですか…じゃあ説明してあげましょう。
貴方は私達と同じ生命体であり、名をロックマン・イオというのです。
そして、この御方も…」
ダイモスがロックの方に顔を向けた。
「あなたは…1度は封印されていたと聞きました。
しかし、どうにかしてメモリーを取り戻したようですね…トリッガー様」
なんだって、という表情でファディスがロックの方を向いた。
「…しかしメモリーを失ったあなたがいると、これからの初期化の申請の邪魔になります。」
初期化―――その言葉を聞いてロックは飛び跳ねそうになった。
コイツは、あのカトルオックス島のジュノのように、島の人達を……
「誠に申し訳ありませんが……貴方がたを排除させていただく」
急にダイモスの口調がかわり、表情が殺気立ったものへと変わった。
二人の粛正官は、戦闘体制へと入った。
そして、ロックとファディスも困惑しながらも、同じく身構えた。

――――――死闘の火蓋が、切って落とされた。