ロクノベ小説保管庫 ロックマンコードⅠ 第壱章~目覚め~

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第一話

念入りに色々な機械と現実を見比べながら、一人の調査員は立っていた。
同じ動作を、今までどれくらい繰り返しただろうか?
考えるだけでも疲労は溜まる・・。
そんなこんなの繰り返しが、既に一週間は経過していた。
数年前から議論されていた「ROCKMAN復活計画」。
何年も、何百年も前に、何度も地球を救ったという、伝説の英雄ROCKMAN。
彼の再来を願っての計画だとか。
今のハンターベースに残っている、伝説のROCKMANのデータは、
数えて三つ。『ロックマン・エックス』『ゼロ』『ロックマン・セイヴァー』。
彼らの身体は、未だこの地球上に存在している・・と、後の捜査で発覚し、
妖しいと思われる地点に、彼のような調査員が送り込まれているのだ。
あ~あ・・疲れた・・と、左手で肩をトントンと叩く。
深い溜め息をつきながら、首を軽く回すと、かなりの疲れがたまっているのか、ボキボキと音がした。
そして再びセンサーに目をやる。
別になにも変わって・・・いた。
異常な金属反応が、この地下数mの所に埋もれている・・と、センサーは叫んでいる。
それを確認した調査員は、目の色を変えて他の調査員に声をかけた。
「ついに見つけた!」と・・。

作業用のメカニロイドにセンサーを直結させ、今一度場所に確認を入れる。
足もとから五m地点・・そこに異常金属反応は現れていた。
調査員の一人が、メカニロイドの起動ボタンを押すと、数秒の沈黙の末、
メカニロイドはゆっくりと己の足もとに、その巨大なドリルを進めていった。
数秒の後の甲高い金属音。
何か特別強固なモノに、ドリルの刃先が激突した音だ。
すぐに周りをスコップで掘り返す。
本当は発掘用メカニロイドを使いたいところだが、それでは先程のモノを破損してしまう可能性がある。
いや・・既に破損してしまった可能性さえある。
数分後、ようやく周りの土砂を掘り返すと、中には埃まみれの物体があった。
全体的に蒼いカプセル。中には、薄蒼色の髪に紅色のアーマーを着た少年が眠っていた。
二度と目を覚ますことがないだろうこの少年の顔は、本当に眠っているだけのよう穏やかであった。
調査員は、小脇に抱えていた小型PCを起動させた。
データによると、ロックマン・エックスは蒼い髪に蒼いアーマー。年の程は十五、六歳。
ゼロ。長い金髪に紅いアーマー。人間で言う十八歳程度。
そして最後に、ロックマン・セイヴァー。
薄蒼色の髪に、紅いアーマー。十三歳ほどの少年。
間違いない。この少年はロックマン・セイヴァーだ。
それを確認した調査員は、ただちにベース本部へと連絡を入れた。

第二話

一際整った巨大な建造物。
その所々に見え隠れするカタパルトには、整備されたライド・チェイサーや、
本格的に戦闘用と化したライド・アーマーが、無理なく収納されていた。
敷地内で一人のハンターが跳び回り、他のハンターと組み手を繰り広げているここは、
ネオ・イレギュラー・ハンターの本部だった。
早速ベースに運搬した、セイヴァーの身体は、
Dr.ルビウス・・ネオ・イレギュラー・ハンターの専属研究員の研究室に渡り、
一日の殆どの時間を、彼の解析に当てていた。

新たなる救世主の誕生・・。
それに辿り着くまでには、ゆうに三年間の歳月を費やした。
しかし、今日・・Dr.ルビウスの研究室で、
新たなる地球の救世主は誕生することとなった。
「ついに完成したぞ・・新たなる救世主・・。」
部屋の中は、所々にあらゆる部品が転がっていて、お世辞でも片づいているとは言えない。
おまけに調節用のオイルの匂いなどが漂っているため、この部屋の空気は極めて悪い。
三年間、一度も掃除をしなかった事を裏付けるには、充分すぎるこの部屋は、
天才と謳われるDr.ルビウスの研究室であった。
ルビウスが右手を添えたカプセルの中には、蒼い髪の少年が一人・・眠っていた。
新たなるROCKMANとして創造された彼は、今までのレプリロイドとは一閃を覆す存在だった。
まず・・素体となる肉体は、人間の遺伝子を操作し、想像以上の身体能力・剛性を得た。
もはや機械の類では、激闘と呼べる闘いの中で、予想以上に脆くなってしまうのだ。
その分、人間の肉体ならば、月日と共に成長・進化し、機械ではなし得なかった、
自己再生機能を持ち合わせている。
そして、セイヴァーを元にギリギリまで出力を上げたアーマー。
これもまた、機械の類では、その圧倒的な出力に絶えられず、崩壊してしまう。
平和の色『蒼』。それが彼のシンボルカラーだった。
セイヴァーが所持していたモノと同様の、そして更に実戦的に改造された、
通称『Φ(ファイ)・バスター』と、ビーム・セイバー『オルティーガ』。
恐らく、今のベース内では、実戦経験の無さを差し引いても、この少年に敵う者はいないだろう。
そして・・そんな彼の名は・・。
「『ロックマン・コード』・・。」
ルビウスは、そう呟いて、カプセルを開いた。
しかし、未だにコードと呼ばれた少年は眠っている。
遺伝子操作型の人間と言う存在になった以上、今までのレプリロイドの様に、
スイッチ一つで起動させられる者では無い。
自然にも目を開けるまで待つしかないのだ。
もしかしたら、このまま目が醒めない場合だってある。
「ん・・・・。」
だが、そんな心配は無用の長物だったようだ。
数分間の静寂の後、コードは小さく声を上げた--と共に目を開けた。
「ん・・ここは・・?」
数回瞬きをしたコードの瞳は、空のような青い色をしていた。
辺りをきょろきょろと見回すと、目の前に白衣を着た、一人のレプリロイドが立っていることに気がついた。
「気がついたか・・?ロックマン・コード・・。」
柔らかく頬笑み、ルビウスはコードの蒼い髪を、そっと右手で撫でた。
蒼い髪が目に入るのを、鬱陶しそうに片目を瞑りながら、
コードはこう返した。
「コ・・・コード・・?」
珍しいモノでは見るような目線で、コードは自分の名を再度口にした。
それが僕の名前なの?とでも言いたそうな目線で・・。
「そう・・それが君の名前だ。宜しくな、ロックマン・・いや・・コード。」
頭の撫でていた右手を離し、今度はコードの胸の辺りに持ってくる。
俗に言う『握手』の催促だ。
一瞬、驚いたように目を見開いたコードも、次の瞬間には太陽のように頬笑み、
まだ成長途中の少年の掌を、ルビウスの大きな掌に絡ませた。
「・・はい・・。」

第三話

数体の実体型ホログラフが、一斉に飛びかかってくる。
最初の一撃をバック転で避け、追撃してくる二人目に、身を翻しての蹴りを撃ち込む。
その反動で体制を立て直したコードは、すぐさま肩のオルティーガを抜いた。
至近距離の三人を相手にするには、高出力のΦ・バスターでは分が悪いのだ。
間髪入れずに三人目が放ってきたバスターの雨を、凄まじい反応速度で叩き落とし、
真横から斬り掛かってきた二人目に足払いをかけ、直ぐ様オルティーガで斬り裂いた。
刹那・・空中で停止していたホログラフだったが、すぐにその役目を終え、
その場で跡形も無く消え去った。
軽く地面を蹴り、横に跳躍する。
と、同時に飛びかかってきた一人目のサーベルとオルティーガが、
激しいスパークを発しながら激突した。
しかし、出力面で大きく勝っているオルティーガは、いとも簡単にサーベルをビームごと斬り裂いて、
一人目を真っ二つに分断した。
残るは三人目だけ・・。
「・・・っ!?」
迂闊だった。
一瞬気が緩んだ間に、三人目は背後に回り込んでいた。
振り下ろされたサーベルを、なんとか左手で受け止めて、そのまま受け流す。
オルティーガを握ったままの右腕で、肘撃ちを撃ちこみ、直ぐ様後方へ飛ぶ。
そして、既にチャ-ジを開始していた、左手のΦ・バスターを、前方へ向けて思いきり解放した。
轟音と共に、ホログラフは蒼い閃光へ呑み込まれ、消滅した。

「ふぅい~・・。疲れたぁ・・。」
バーチャル・トレ-ニングル-ムの扉を開けながら、コードは呟いた。
カポッとメットを脱ぐと、綺麗な蒼い色をした頭髪が露出する。
コードが誕生してから、今日は数えて半年の日だった。
先程のバーチャル・トレーニングは、過去の特A級に位置するイレギュラーの
ダミー・ホログラフ。
現状で最も危険なバーチャルである。
今のハンターベースに、このランクをクリア出来るものはいない。
この少年-コードを除いては。
コードが落ちかかってきた前髪を、軽く右手で上げ直していると、
途端にハンター・ランクを計測していた機器が、けたたましい音を発し始めた。
メットを小脇に抱え、軽く走り寄ろうとすると、その前に一人の男性型レプリロイドが、
機器のスイッチを押していた。
『ロックマン・コード。登録No.641・・ハンター・ランクSA。』
感情のない機械音が、機器の画面に映り込むと共に吐き出された。
SA・・つまり特A級を意味する事だが、
コードがこのランクを手に入れるまでに、そう時間はかからなかった。
誕生して一ヶ月の頃には、既に今と同じランクのバーチャルと闘っていたのだから。
そんな事より、コードは機器のスイッチを捜査した人影の方に目がいっていた。
頭一つ分・・いやそれ以上の身長差なので、コードからでは、この男性型レプリロイドの顔が分からない。
「SA・・か・・なかなか優秀だな・・。」
「えっ・・?」
男性は、そう言いながら、少し腰を落としてコードと目線を合わせた。
彼の顔を見た途端、コードは驚いたように目を見開いた。
「そ・・ブリエス総監!?」
「やぁ。コード。」
そう言ってニカッと爽やかな笑顔を浮かべたのは、紛れも無く、
今のネオ・イレギュラー・ハンターの総監である『ブリエス』だった。
彼自身の戦闘力はさほど高くはないのだが、長年の戦闘経験、
長けた頭脳などは、実力以上の強さを発揮するのだ。
それらを含めた、色々な要素が重なって、ブリエスは五年ほど前から総監を務めている。
「なんでここに?」
「ハハハ。たまにはトレーニングでも・・と、思ったら、
お前が物凄い事やってたからなぁ。」
「アハハ・・そうですか・・?」
ポリポリと、照れくさそうに鼻の頭を掻いてみせると、
ブリエスは再び、その持ち前の爽やかな笑みを浮かべた。

第四話

事態は突然の急変化を見せた。
数分間、トレーニング室でブリエスと雑談していたコードを、突然の轟音が襲った。
恐らく・・中規模の爆発。
トレーニング室に備えつけてある、ベース内のマップを呼び出すと、
ルビウスの研究室で、原因不明の爆発が発生したとの事だった。
ブリエスの指示が通る前に、コードの足は動いていた。
抱えていたメットを深く頭に被り、そこから最短のルートで研究室へ向かう。
--あと少し・・!!
最後の周り角を曲がるときには、既に通路は大破していた。
床が粉々に砕かれ、壁は削がれ落ち、バチバチとスパ-クしている。
何人かのハンターが、鮮血の海の中に倒れ込んでいた。
息は・・ある。
助けたいが、今は優先順位を考えなければならない。
唇を噛み締めて、大破した研究室の扉を、多少乱暴に蹴破った。
「た・・助けてくれぇ・・!」
「・・・っ!」
最初に目にしたのは、血塗れになりながらも、必死になってこちらへ手を伸ばす、
一般隊員の姿だった。
助け起こすように手を伸ばすと、刹那-隊員の頭部を、紫色の閃光が貫いた。
一瞬・・何が起こったか理解できなかった。
ベチャッ・・と、不気味な音を立てながら、頭部を失った隊員の身体は、そのまま床に突っ伏した。
誰だ・・?
目を見開いた状態のまま、ゆっくりと顔を上げる。
そして、絶句した。
「き・・・みは・・?」
目の前に立っていたのは、紫色の青年型レプリロイドだった。
コードよりも幾分高い身長。
紫色と赤紫のアーマー。そして、メットから見え隠れする紅い髪。
しかし、そんな事はどうでも良かった。
ただ・・重要なのは、その青年の顔から、アーマーの作り、武装まで、
何もかもがコードと瓜二つだった事だ。
青年は、バスター状態にしていた左手を、軽く頭上に上げて、素手の状態に戻した。
そして、笑った。
頬笑むなんて可愛いものではない。
嘲笑っている・・と言う形容詞がピッタリはまるであろう笑み。
「コード!逃げるんだ・・!コイツはお前が敵う相手じゃ・・!」
声のした方へ振り返ると、部屋の隅でルビウスが拘束されていた。
ビーム・ワイヤーを用いているため、戦闘用ではないルビウスでは振りほどくことが出来ない。
すぐにでも走り寄りたい衝動に駆られるが、それを目の前の青年が許す筈もない。
ルビウスを助けるには、この青年を倒すしかない。
そして・・負ける=死は確実。
咄嗟に腰を落として戦闘体制に入る。
右手は細心の注意を払って肩のオルティーガにかける。
妙なプレッシャーを感じる・・。
その影響で、コードの頬を一滴の汗が滑った。
そして、それが滑り落ちる前に、コードは問うた。
「一応聞いておく・・。一体何のためにこんなことを・・!」
「ロックマン・コード・・。登録No.641・・。所属・・今のところ無し。
ハンター・ランクはSA~GA・・。」
青年は初めて口を開いた。
コードを多少成長させれば、こうなるであろう声。
「間違いないだろう?」
「っ・・・。」
言葉が出ない。
「自己紹介がまだだったな?オレの名はフラット・・。『ロックマン・フラット』だ。」
「ロッ・・クマン・・?」
「そうだ・・。お前と同じ・・な。」

第五話

何故だ・・?
ロックマンは今のところ、自分一人だけのはず・・。
なのに何故・・このフラットと名乗った青年は、自分と同じ名を持っているのだろう?
そして、何故この青年は、こんなにも自分に似ているのだろう?
一気に込み上げてくる疑問符を、寸での所で食い止めて、コードは口を開いた。
「な・・にが目的で・・!ルビウスさんを離せ!」
右手をかけていたオルティーガを、今度こそ本当に抜き放った。
二十cmほどの筒から、蒼い閃光が飛び出し光剣を象った。
「一応忠告しておこう。今の貴様では、到底オレに敵う筈もない。
おとなしく剣をしまって帰るんだな。そうした方が身のためだぞ?」
心底楽しそうに言うフラット。
帰れと言われて・・帰るはずが無い・・。
コードは意を決し、思いきり床を蹴って、フラットに飛びかかった。
「だりゃぁぁ!!」
しかし、オルティーガがフラットを真っ二つに斬り裂くことは無かった。
「フッ・・聞き分けがないヤツだ・・。」
「な・・なに・・っ?」
フラットは面倒臭そうに右手を上げ、高出力のビーム・セイバーであるオルティーガを、
何の強化もしていない素手で受け止めていた。
コードは驚愕した。
避けるならまだしも、受け止めるなんて・・。
フラットはそのまま、余った左手でコードの腹部にブロウを撃ち込み、
更に浴びせ蹴りを放ち、コードを床に叩き付けた。
「ぐっ・・うぐぐ・・。」
コードの手から離れたオルティーガは、ビームの収束性を失い、
ただの長めの筒となって、地面に落下した。
コード自身、今の攻撃で思いの外ダメージを受け、立ち上がろうにも、
身体に力が入らない。
「わかったか?所詮オレとお前では格が違うのだ。どうした?
悔しかったら立ち上がって見ろ。」
「くそぉ・・・。」
それでもなんとか壁によりかかりながら立ち上がる。
右手を上げ、Φ・バスターをフラットに向けるが、
コードが閃光を放つより前に、フラットの姿は視界から掻き消えていた。
「っ!?」
「無力だな・・!!」
不意に頭部を鷲掴みにされ、そのまま床に叩き付けられた。
「う・・・ぐっ・・・・。」
必死に両腕を床に突き立てて、立ち上がろうとするが、
意識が朦朧として、バランスが保てない。
頭にクラクラと不快感が走り、吐き気すらもようした。
「そのタフさだけは認めてやるよ。フッ・・あばよ。」
「くそ・・・ま・・て・・。」
コードが最後に目にしたのフラットの姿は、ビーム・ワイヤーごとルビウスを抱え、
大破した天井の穴から姿を消した時のモノだった。
嫌だ・・!待ってくれ・・!!
必死の頭の抵抗も、ダメージを受けた身体には敵わなかった。
コードの意識は、そのまま闇へと溶けた。

第六話

誰かが自分を呼んでいる・・。
未だ休息を求める身体を無視して、意識を覚醒させると、
一斉に眩しい太陽光が視界へ広がった。
重たい上半身を無理矢理に上げ、頭をブンブンと二、三回振ると、
傍に立っていた人影に視線を巡らせる。
「そ・・総監・・!」
「大丈夫か?コード。良かった・・どうやら無事の様だな。」
ブリエスはそう言って、コードを助け起こした。
表情を曇らせ、コードは被っていたヘルメットを乱暴に床に叩き付けた。
乾いた音を立てて、部屋の向こう側へバウンドしていくヘルメットには、
皮肉なことに傷一つついていない。
コードにはそれが、何も出来なかった自分を嘲笑っているかのようにも思え、唇を噛み締めた。
「くそぉ!!僕は・・俺は!!なんにも出来ずに、ただやられただけだったんだ・・!!
俺は・・無力なんだ・・。」
勢いのあったコードの叫びも、口が動くに連れて、段々とその声量のなくしていき、
最後には消え入れるように小さくなってしまった。
ブリエスは、そっとコードの肩に手を置き、こう言った。
「お前のせいではない・・ただ・・あいつ・・フラットが余りに強力過ぎたのだ。」
コードは彼の言葉に、一つの引っ掛かりを感じ、えっ・・?とブリエスを見上げた。
「総監は・・アイツを・・ロックマン・フラットを知ってるの・・?」
「あぁ・・まぁな。」
ロックマン・フラット。
彼は紛れない、コードと同じROCKMAN復活計画によって生まれた、新たなる地球の守護神である。
実は彼は、コードよりも前に開発されたブロトタイプであったが、
その桁違いの出力のアーマーと、膨大な身体能力の為、今までカプセルで冷凍睡眠させていたのだ。
基本的にコードと同タイプの遺伝子を持っているため、
彼とコードと瓜二つだった原因はここにあった。
先日、ルビウスがフラットの調整のため、カプセルを開けたことが原因だったのかもしれない。
--しかし・・この事をコードに伝えて良いのだろうか?
ブリエスは自問した。
大元の両親の事や他の家族についての事など、何一つ知らないコードに、
この事を話しても、特に問題はないはずだが、彼は完全なレプリロイドでは無い。
増してや、優しすぎる・・多少甘いとまでとれる性格のコードに、
自分と同じ血を引くフラットと闘うことが出来るだろうか?
--この事については・・まだ黙っていた方が良さそうだな・・。
しかし・・この場をどうやって切り抜けよう・・と、ブリエスは内心、頭を抱えた。
対するコードは、疑惑の念を込めた視線で、ブリエスを睨み付けている。
--仕方がない・・。
「総監!!大変です!!」
意を決し、口を開きかけたブリエスの声を掻き消したのは、
飛び込むように駆け込んできた、一人のハンターだった。
「何事だ?」
「はい・・それが・・。」
かなりの距離を走ってきたのだろう。
ハンターはぜぇぜぇと息を切らし、真面に話す事が出来ないでいた。
右手を胸に当て、ゆっくりと息を整えながら、ハンターは左手に握りしめていた、
携帯用のTVを、二人の前に差し出した。
「これは・・・?」
ハンターからTVを受け取り、コードは目を凝らした。
そして、そこに映り込んでいた人物の名を、そっと呟いた。
「フラット・・ロックマン・フラット・・。」

第七話

「初めまして。人類・レプリロイド諸君。私の名はロックマン・フラット。
唐突に番組にお邪魔させて頂いた事に、深くお詫びしよう。」
モニターの中のフラットは、丁寧かつ滑らかにそう言い、礼儀正しく頭を下げた。
--フラット・・何をするつもりなんだ・・!
「単刀直入に言おう。本日、私が貴君らの前に姿を表したのは、
貴君らに宣戦布告をするためである!!」
コードの目に、困惑が宿ったのが、ブリエスにはハッキリとわかった。
多少力が入ってしまったのだろう。
ギリッ・・と、軽く携帯用TVが、コードの握力に軋んだ。
「人類は今まで何をしてきた!?海を汚し!森を切り倒し!!
挙げ句の果てに空気までも汚染して!!更に・・自身らが完全では無いにも関わらず、
レプリロイド等と言う不完全で危険な存在をも創り出した!
レプリロイド達はイレギュラー化が絶えない。
人間を大きく上回るイレギュラー達は、何度地球を滅ぼしかけた!?
二百年前のユーラシア墜落事件がいい見本だ!」
「っ・・・!」
完全に否定する事は出来ない・・。
コードは更に強い無力感に、唇を噛み締めた。
握りしめた右手の皮膚に爪が突き刺さり、鮮血が溢れて、床に赤い染みをつくった。
「このままでは・・地球は滅亡の一途を辿るしか道はない。
しかし・・それを黙って見過ごしわけにはいかない。
よって・・私は全人類・レプリロイドに対して、宣戦布告を断言する!
抵抗などしようとするなよ?まぁ・・無駄だとわかって抵抗する者などいないとは思うがね。
一応貴様等の重要拠点は全て占拠させてもらった。それでもまだ・・抵抗しようとするなら・・。」
フラットは不意に左手を上げた。
大きく開いたバスターの銃口に、紫色の閃光が宿る。
「こうなる・・!!」
フラットがそう言った直後に、紫色の閃光は放たれた-と共に、画面は砂嵐へと変わった。
「くそ・・っ!」
手に持った携帯用TVを、コードはいつの間にか床に叩き付け、破壊していた。
否定することは出来ない事実-しかし、放っておくことも出来ない。
しかし、自分達で彼を倒すことが出来るだろうか?
いや・・仮に倒せたとしても、彼の言っていることは真実だ。
百年・・二百年先には、既に地球は滅亡してしまっているかもしれない。
「落ち着け・・。」
包み込むように、ブリエスは呟いた。
コードは自分を無力だと言った。
しかし、自分はどうだろう?彼の意思に関係なく、総監という立場によって、
彼を戦場にむかわせなければならない。
許して欲しいとは言えないが、ただ彼には自分の納得した道で闘って欲しい。
と・・ブリエスは彼が生まれる前から決めていた。
本当に無力なのは自分だな・・と、ブリエスは自嘲した。

第八話

「俺は・・俺は・・どうすれば・・総監・・!僕はどうしたら・・!」
俯き、曇った表情で、コードはブリエスに問う。
「いいか・・?今のお前では、あいつに勝つどころか、傷一つ付けることさえ出来ない。
さっきの闘いで分かっただろう?」
コードは無言で頷いた。
「無理強いはしない。フラットと闘いたくないなら、ハッキリそう言ってくれればいい。
しかし、私から・・一つだけ言い渡す事がある。」
「・・・?」
声を出そうと思ったが、声が掠れて出すことが出来なかった。
その代わりに、コードはゆっくりと顔を上げた。
「お前には占拠された重要拠点の解放を行ってもらう。
恐らくフラットは、一つでも欠けると大惨事になるほどの拠点を占拠したはずだ。
だから・・・な?」
一瞬、驚いたように目を見開いていたコードだったが、すぐに真顔に戻り、
ふっ・・と笑顔を浮かべた。
「だから・・だからもっと強くなれ・・。」
「・・・はいっ。」

数時間前から、ざわざわと騒がしいオペレ-ション・ル-ム。
作戦内容の映し出されたモニターの前に、コードは立っていた。
「・・・これが作戦内容です。ご理解頂けましたか?」
「・・はい。充分です。」
一人のオペレータに了解の意を伝え、コードは今一度モニターに視線を映した。
作戦内容-ロックマン・コードは、単独で拠点に潜入。
占拠している、敵軍を壊滅。
一見、無謀と思われる作戦だが、この様な任務の場合、
大勢による正面突入よりも、単独での潜入戦闘の方が都合がいいのだ。
更に、他のハンターは、ベースや都市などの護衛に廻るため、
事実上、余っている戦力はコード一人。
しかしながら、コードはベース内最強のハンター。
それらを全て計算しての作戦だった。
「すまないな・・コード。お前一人に抱え込ませてしまって・・。」
「いえ・・。それに、こうして欲しいって言ったのは僕ですから。」
この作戦について、負い目を感じているブリエスに、コードはそう言って笑った。
不安がないわけじゃない。
もしかしたら、明日にはもうこの世にいないかもしれない。
それでも・・何故だろう?
こんなにも穏やかに闘いへと出向く事が出来るのは・・。
自分に良く似た、微かながらに年上の誰かが、目の前で《大丈夫》と笑った気がした。
脇に抱えていたメットを深く被り直し、先程までメカニック・チームが、
必死になって出力を引き上げたオルティーガを、肩のパックに挿入する。
「じゃあ・・僕・・そろそろ行きます。」
「あぁ。頼んだぞコード。」
「はい・・。登録No.641、ロックマン・コード、これより出撃します!」
「ネオ・イレギュラー・ハンター総監ブリエス・ノヴァ。出撃を許可する。」
右手を額に当て、ビシッと敬礼すると、
コードは穏やかに笑って、オペレーション・ルームを後にした。

第九話

23XX年現在、100%の森林は、存在しないと言っても過言ではないだろう。
しかし、ここサキルスジャングルは、管理用のコンピューター・ルームと、
森林栽培に必要な資材などを除けば、ほぼ完全な自然の森林と言えた。
空気汚染や水質汚染が目立つ近年では、サキルスジャングルはかなりの高確率で、
重要拠点とされている。

木々の茂りの間から見え隠れする太陽光。
自然独特の落ち着いた雰囲気は、今の混乱し始めた世界など、微塵も感じさせなかった。
「サキルスジャングル・・か・・。」
歩く度に、落ちている小枝などが音を立てる。
一見、油断しているように見えるコードも、実は360度余すことなく警戒していた。
・・微かな木々のざわめき・・。
「・・そこだっ!」
コードが放った蒼い閃光と、茂みから小型メカニロイドが出現したのは、ほぼ同時だった。
寸分の狂い無く、蒼い閃光はそのままメカニロイドを包み込み、跡形もなく消滅させた。
「・・・・ふぅ・・・。」
右手をゆっくりと降ろし、一つ息をつく。
「・・・!?」
二度目のざわめき。
聴覚だけを頼りに、抜き放ったオルティーガを振り下ろす。
と・・。
「・・・えっ・・・?」
座り込んでいたのは、緑色のレプリロイド。
イレギュラー化していないのか、ウィルス反応がない。
レプリロイドは、心底怯えたように顔を引きつらせていた。
余りの恐怖に声すら出ない・・と、そんな印象だった。
今まで、色々な戦闘の舞台で、恐怖の余り逃げ出すイレギュラーや、
ハンターを目の当たりにしたことがある。
確かに怖いと感じたことある。死ぬギリギリの位置で闘ったことだってある。
それでも、声が出ないほど恐怖に怯えたことは、今まで無かった。
恐怖に怯える前に、死ぬかもしれないのを覚悟してでも前に進んできたからだった。
「お・・お願いしま・・す・・!命・・命だけは・・!」
上手く発音出来ていない。
声が掠れている。
どうやら、自分もここを襲った一派の一員だと思われたらしい。
コードは「それっぽく見えるかな?」と、頬を掻きながら、振り下ろしたオルティーガを、肩に納めた。
「大丈夫・・。僕はあいつらの仲間じゃないよ。」
なるべく刺激しないよう、柔らかい声で言ってみせると、
レプリロイドの引きつった表情が、ほんの少し和らいだ。
「えっ・・?本当・・です・・か・・?」
「あぁ・・。僕はコード。ロックマン・コード。」
「ロッ・・・クマン・・?」
レプリロイドは、まるで神でも前にしたかのように、神妙な表情で疑問符を現した。
ROCKMAN-ロックマン。確かに自分はロックマンとして生まれてきた。
しかし、それはそれ・・自分は自分。
ロックマンとして産み出されようが、自分はコードなのだ。
生まれて半年以上たった今でも、ロックマンに対する違和感が拭いきれない。
これじゃ・・守護神失格だよね・・。
と、コードは心の中で呟いた。
「君の名前は?それと・・いまここでなにがどうなっているのか・・出来るだけ詳しく話して欲しい。」

第十話

コードがそう尋ねると、レプリロイドは小さく頷き、ゆっくりとその口を開き始めた。
「ハイ・・。私はマルスと言います。無人森林であるこの森の、たった一人の管理者を勤めていました。
普段は違う場所で管理を行っていたのですが・・。突然調子がおかしいのに気がついて・・。」
「それで・・ここへ来たら、アイツらに占拠されてた・・と。」
「ええ。確か『ガイア・リカバリーズ』と名乗っていました・・。」
ガイア・リカバリーズ。
ガイアは地の神。リカバリーは回復の理。そして`Sは複数形。
つまり、『地球を回復させる為の集団』。
「ガイア・・・リカバリー・・ズ・・・。それで・・今この森は・・?」
「管理コンピューターと雨天システムが占拠されています。
このままでは・・サキルスジャングルは・・。」
マルスはぐっと拳を握った。
余程この森が好きなのだろう。
その様子に、コードはフッと笑みを浮かべると、ビシッと親指を立てた。
「・・?」
「良し!あとは僕に任せて。絶対になんとかして見せる・・。
だから・・君はこの森をまた・・護ってくれ。」
マルスの表情が、先程とは打って変わって明るくなった。
「はい!ありがとうございます。それでは・・どうかお気をつけて・・。」
コードは優しい少年の笑みを浮かべると、名残惜しそうに、その場を走り去っていった。
「コード・・・ロックマン・コード・・。」
マルスは、どんどん小さくなっていくコードの背中に向けて、小さく呟いた。

第十一話

数十体に渡って出現したメカニロイド群も、もはやコードの敵ではなかった。
コードの放った蒼い閃光が、何の抵抗も出来ぬまま、
メカニロイド達を包み込み、木っ端微塵に消滅させた。
ここらに来て、急激に護りが堅くなってきている。
それは恐らく、この先に彼らの重要なポイントがある事を意味する。
つまりそれは・・。
不意の発射音。
それに超人的な反射神経で反応したコードは、素早くバック転で後へ跳び上がった-と共に、
コンマ0.00五秒前のコードの身体が、粉々に粉砕された。
「くっ・・・誰だ!!」
発射音の方向から、大体の発射元は特定できた。
コードはその方向へ向け、右手のバスターを撃った。
拳大のエネルギー弾は、近くの茂みに着弾すると同時に、何者かによって弾き返された。
カザガサと茂みを掻き分け、わざとゆっくりとした動作で、それは姿を現した。
先の割れた舌先を不気味に躍らせた蛇の頭部を持つ亜人型レプリロイド。
世話しなく動き回るその舌先に、コードは微かに嫌悪感を覚えた。
「お前さんかい?フラット様の出来損ないの『兄弟』って言うのは・・?」
正直、フラットと自分が同じ使命を持って生まれてきたとは思いたくなかった。
更に自分を『出来損ない』呼ばわりされる筋合いなど、あったものではない。
「フラットはなにをしようとしてるんだ!?地球を守ると言っておきながら、
地球を破壊して・・!!」
「ふん・・貴様の小さな観点で到底理解出来ぬとは思うが・・一応教えてやろう。
フラット様は、今の地球を一度滅ぼし、今一度再生させると仰った!」
「なにをバカな・・!!」
「ロックマン・コード・・。私の名はサンダー・スネーキング!
フラット様からの伝言だ!『止めたいのならば、力づくで来い!』」
「わかった・・意地でも止めてみせるさ!!」
コードの右手のバスターに、蒼い光が宿った。
既に銃口内に納まりきらなくなった閃光は、更にその規模を高め、バチバチとスパークし始めた。
「喰らえっ!!」
それを数mmの誤差無くスネーキングへ向け、ありのままに解放した。
しかし、スネーキングは目の前のエネルギー弾にも一向に動じず、
それどころか、こう言い放った。
「遅い遅い!!」
着弾する寸前、視界から消え去るように閃光を回避すると、
スネーキングはそのまま茂みの中へと理没した。
ガサガサと草木の擦れる音だけがコードの耳を打つ。
「くそっ・・どこだ・・奴は・・?」
前からも後からも音が飛び込んでくる。
コ-ドの鋭利な感覚を持ってしても、スネーキングの僅かな気配を察知することが出来ない。
--視界だ・・目に見える世界だけを頼りにするな・・!そうすれば・・!
強く眼を閉じる。
暗黒に塗りつぶされた世界の中で、音だけが無造作に響き渡る。
そして・・掴んだ。
「そこだ!!」
あらかじめチャ-ジしていたバスターを、音を頼りに放つ。
眼を開くと、周囲の木々が吹き飛び、不自然に立ち尽くすスネーキングの姿が見えた。
「もう隠れるのは無しだ!」

第十二話

バスターを構え直し、連続的に浴びせ掛けると、
悔し紛れに叫んだ言葉と共に、スネーキングは青白い球体を、応射するように投げかけてきた。
「私の能力が隠れるだけだと思ったら大間違いだぞ!」
バスターの雨と、妙な青白い球体は一瞬の激突と同時に、バスター弾の消滅と言う結果で幕を閉じた。
確かに球体だったそれは、バスターが激突した瞬間、一気にその膨張していた。
そして、それはコードのバスターとは違う、電撃特有のプラズマを宿している。
「なっ・・まさか・・!」
コードが感づいたのを確認し、スネーキングはその不気味な口を、嫌味ったらしくつり上げた。
そして、無造作に両手を掲げ、再び電撃を発生させてみせる。
先程の球体。盾のような板。
次々と芸術の様に姿を変えていく電撃。
「お気付きですか?私の能力は電撃を如何なる形にも変形させ、使用できる能力。
そうですね・・題して・・電気の芸術『エレクトリック・アート』とでも言いますか?」
「・・・。」
「そして更に・・こんな事も出来る!!」
不意に、スネーキングの両手の中で遊んでいた電気の塊が、その形態を一気に変え、
瞬間的にコードの身体を絡め取った。
電気の鎖だった。
「フハハハハ!!」
完全に不意をつき、歓喜の笑い声を上げるスネーキング。
「ぐっ・・あ・・ぁぁぁぁぁぁ!!」
圧倒的な圧力に、悲鳴を上げずにはいられなかった。
どこかの箇所が破損したのか、バキバキと異様な音が響いていた。
「くっくっくっく・・。苦しいだろう?ロックマン・コード君。
もがけばもがくほど、その鎖は君の身体は動かなくなる・・。」
悲鳴を上げ続けるコードを、高目から見下ろすように、スネーキングは余裕タップリで言ってみせた。
「あ・・・うぁぁぁ!!」
少しずつだが、確実に意識が遠ざかっていく。
自分の悲鳴すら、どこか遠くの国で行われている、何の関係もない行いに思えてきた。
「大体・・フラット様に逆らおうとするから、こんな事になるのさ。
曖昧な目標しか持っていない貴様が、フラット様の偉大な信念に敵う筈などないのだ!!」
コードは、ブリエスが・・ルビウスが、そして街のみんなが好きだった。
共に死線を潜り抜け、一緒に笑って、一緒に泣いて・・。
それを護れるのは自分しかいない。
大切な人達を護りたいと言う気持ちは、果たして曖昧なものなのだろうか?
こんな程度の試練を乗り越えられないほど、チャチな気持ちだったのだろうか?
否・・自分は、石に食らい付いてでも、世界の人々を護りたかった。
自分の力不足故に、護りきることの敵わなかったルビウスの為にも。
「違・・う・・・間違っ・・てる・・!お前達のしてい・・る・・事・・は・・!!」
上手く声帯が震えてくれない。
それでも、必死になって声を絞り出した。
「間違っているだと?フハハハ!今の貴様に何が出来る!?一体何をしようと言うんだね!?」
護りたいという気持ちは・・曖昧なものなんかじゃない・・!!
その瞬間、コードの中で何かが弾けた。
「うぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
破損したアーマーの各部から、エレクトリック・アートの電気が流れこんで来るが、
今のコードに、もはやそんなものは関係なかった。
コードの力では、到底引きちぎることなど無理に思えた電気の鎖を、彼は全力で破壊すると、
正面に向けて、そのΦ・バスターを構えた。
「僕・・いや・・俺が闘うと決めた理由・・!!それは・・・!!」
コードのバスターに、辺り一面から蒼い光が収束していく。
「護る!!それだけだ!!!」
大幅に出力の増したバスターの閃光は、触れてもいない辺りの木々をなぎ倒しながら、
真っ直ぐにスネーキングを捉えた。
「フハハハ!!そんな子供騙し!通用するとでも思っているのか!!」
スネーキングは、叫びと共に、連続的に発生させた、電気のエネルギー・ボールを、次々と閃光へ応射した。
が、それはコードのバスターを受け止めるには、余りにも脆弱すぎた。
両者の間に広がる、空気以下の障害にもならなかったエネルギー・ボールを、次々と掻き消し、
蒼い閃光はそのままスネーキングの全身を包み込んだ。
「なにぃぃ!?バカなぁぁぁぁ!!」

第十三話

「やっ・・た・・。」
不意に全身の力が抜け、その場に膝を突く。
コ-ドの僅か五m先には、無残にも木っ端微塵に粉砕された、スネーキングの残骸が、
バラバラと転がっていた。
それを見て表情を曇らせる。
--本当は殺したくなんか・・ないのに・・!!
涙が溢れた。
何のために、殺し合わなければならないのだろう?
いつだったか、ルビウスに言われたことがあった。
『闘っても、平和は勝ち取ることが出来ない・・。それでも、闘ってでしか平和を護れないのなら・・。
すまないコード・・私達は、君にその役目を果たしてもらわなければならない。』
--もし僕が・・闘いたく何か無い・・って言ったら・・?
『君を産み出したのは、私達みんなだ・・。それでも、嫌がる君を無理矢理闘わせる権限など、
誰一人持ち合わせていない・・いや、持っていてはいけないんだ。
だからコード・・。もし君が闘いたくなくなったら、いつでもロックマンの名前を捨ててもらって良い。』
--はい・・。
溢れる涙を、無理矢理右手の甲で拭うと、コードは「行こう・・」と、ヘルメットを外した。
確かめるように足をつき、ゆっくりと右足を前へ進めると、突然、頭上から蒼い光の塊が降ってきた。
「誰・・?」
コードは思わず尋ねてしまった。
普通・・こんな光の塊に「誰?」とは聞かないだろう。
コードだって普通なら「なに・・?」と問うはずだった。
しかし、今回だけは「誰?」と尋ねてしまった。
無意識にわかっていたのかもしれない。
これには意志があることが。
「コード・・ロックマン・コード・・。」
「僕の事・・知ってる・・の?」
「コード・・敵ノ残骸ノ中カラ『武器ユニットチップ』ト呼バレルモノヲ取リ出シテ、
君ノバスターノ中ノ端子ニツナグンダ・・。ソウスレバ・・。」
この光の塊の名は、サイバー・エルフ。
神話などに登場する、妖精を象った電子の生命体。
百年ほど前もネオ・アルカディアと呼ばれた組織が活躍した頃、世界に普及され、
レプリロイドや人類の活動を、大いに助けてくれた。
しかし、彼らの持つ能力の反面、一度使用すると、その場でその小さな生命は断たれてしまう。
いわば『生命と引き換えの力』だった。
そこまで言うと、蒼いサイバー・エルフは、その場を去ろうと、舞い上がった。
どこか記憶の奥底で眠る、自分にそっくりな青年の姿が、不意に横切った気がした。
「待って!君は一体・・。」
サイバー・エルフは、頬笑む代わりに、彼の周りを優雅に舞った。
「ゴメンネ・・。今ハマダ・・何モ言エナイ・・。
ソレヨリモ・・君ハノ今ヤルベキコトヲ・・。」
サイバー・エルフの姿が、消えかけた炎のように、無造作に消えた。
一度挙げかけた左手を降ろし、コードはエルフの言葉を反芻した。
「武器ユニットチップ・・?」
ちらりとスネーキングの残骸に目をやる。
視線が移動にかわった。
屈み込み、一際目を引くチップを一つ取り出す。
「サンダー・スネーキング・・。君のエレクトリック・アート・・。
使わせてもらうよ・・。」
右手のアーマーを開き、中の端子にチップを繋ぐ。
まるで、新たな生命を吹き込まれたように、暖かい感触が宿る。
「さて・・行こう・・!!」
次の目的地は、ロザルト海。

新たなる地球の守護神・・ロックマン・コードよ。
汝の大いなる試練は、まだ始まったばかりだ。

次回予告
突然現れた、もう一人のロックマン。
このままでは、地球全体が滅ぼされちゃう!
フラット・・君の意見もわかるけど、破壊するだけじゃなにも始まらない!
僕は闘う・・みんなを護るため・・そして、みんなの力で地球を護るために!
次回「ロックマン・コ-ド第弐章~激闘~」
「闘いはまだ・・・始まったばかりだ・・・!」