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輪廻-ただ友のために 2章

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rocnove

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  私は信じていた・・・・・でも、あの人は私を裏切った・・・・・

  あの人は甘い言葉で私を誘惑し・・・上っ面だけの笑顔を浮かべて・・・

  私の全存在意義をぶち壊し・・・あの人は私を捨てた・・・

  行き場所を失った私は眠りについた・・・誰もそれに気付かない・・・

  私はあの人にとって『イレギュラー』な存在・・・当たり前だよね・・・

  でも私は忘れない・・・あの人のことを・・・呪いながらだとしても・・・



 「・・・そう・・・忘れもしない・・・あの人を・・・あの日のことを・・・」
   薄暗い部屋の中、一人玉座に背をもたれつつ半透明の身体の物体が呟く。
 「ふふ・・せっかく蘇ったんだもん。楽しみながらこの恨みを返すべきよね~。」
  そう言いながらピョイっと王座から飛び降りる物体---クルブ島に現れた者---は、
  子供のように床の色が違う部分を選んで、部屋の中央に飛び跳ねつつ移動していく。
  やがて、中央の一際広い範囲に渡って床の色が違う地点を満足げに踏んだあと、
  物体はそこに配置されてある物を見るために顔を上げる。
  そこには一人の青年が居た。均等の取れた体付きに、美形とまでは行かないが整った顔、
  培養液に満たされたカプセルの中でゆらゆらと揺れる、蒼い髪・・・・。
  物体は青年を見つめ、そして恍惚とした表情でカプセルに頬を寄せる。
  青年もそれに反応したのか、コードで繋がれた身体をわずかにゆらす。
 「ふふふ・・・私を感じてくれるのね。かわいい子、今度は有効に利用してあげるからね・・」
  物体はそう言ってカプセルを離れ、また床を選んで踏みつつ部屋の出口へと向かった。
 「そろそろ行かないと。パーティに遅れちゃって、プレゼント貰い損ねちゃうしね~~。
  それじゃあね~~『ゼロ』。ママの居ない間イイコにするのよ~。」
  そう言いつつ物体はカプセル内の青年だけを残して部屋を出て行った。
  ヘブン最強の戦士、そしてマザー3でもある紅き滅神、『ゼロ・ウォーレンツ』を・・。
  この時代で『ダブル・コルド』と呼ばれていた者を・・・・・。



  同時刻、サルファーボトム号内の『ディフレク会社』の休憩室にて・・・・
 「もう!しっかりしてよ~ガーちゃ~~ん!」 
 「エヘ・・エヘへへへへへ・・・」
  半分ほど黄泉の世界に飛んでいるガガを
 「まったく・・・たかが『会合』に参加したぐらいで情けないな。」
  涼しげな表情でコーヒーを飲むセラだが、実際そんな程度の事ではなかった。
  セラに言い渡された仕事をジジがやってる間、ガード役としてセラに付いていったガガは、
  『会合』と銘打った『精神の抉り合い』の場に放りこまれてしまったのだ。
  全世界の統一を図ろうとするセラVSディフレク会社を買収しようとする各国の大企業。
  互いに汚点を探りあい、隙あらば社会的に抹殺!と言う感情を裏に隠した連中。
  全員が近づいただけで全細胞の生気を抜き取るような瘴気を発していた最悪の環境だった。
 「アハアハハ・・マスターハマッタクスゴイモノヲツクッタモンダ・・ハハ・・」
  いかにマザーガーディアンと言えど、財界の頂点を極めている修羅達には為すすべも無かったようだ。
 「・・うう・・このままじゃガーちゃんが再起不能に・・・!! そうだわ!!」
  何かを思いついたユーナ。ガガの目の前に立ちふさがり徐に脚を前に出した!そして!・・

 「・・・はぁ~~い、ガーちゃん・・・悩殺ショット~~~~(は~と)」

  ・・・何処で覚えたのだろうか・・・流し目かつ堂々と出された脚・・・男なら一発KOだろう。
  だが、それをしているのがまだ『少女』のユーナであって、ガガがそれ系の趣味でないのであって・・。
 「・・・・ハンッ・・・・」
 「・・鼻で笑うったぁ、イイ度胸ね~~~!!!」
  結局はキレたユーナの対処と言う無駄な仕事が増える結果に終わったようだ。
  ようやく落ちついたユーナを引っ込んだところで、2番手ジジの登場。
 「ユーナ様お任せを・・・ユーナ様の色香が通用しないのであれば・・・コレだ!!」
  そう言うとジジは瞬速の早さで何かを放り投げる。

  セラは見た。ジジの白のシャツが舞うのを・・。ユーナは見た。茶系のズボンが床にあるのを・・。

  そしてその場に居た全員がはっきりと見た。ガガの目の前でポーズを取るジジを・・。

       鞭のようなしなやかな筋肉美を誇っていたパンツ一丁のジジを・・・

       どうやら、壊れたのはセラだけではなかったようだ・・・・(汗

  その後の事は語るまい・・・・。只、世にも恐ろしい出来事があったとだけ語っておこう。合掌。



 「ちょっとしたアクシデントがあったが、そろそろ本題に入るとするか・・」
  まるで戦争でもあったかのように半壊した部屋のイスに座るセラとユーナ。
  廊下の奥から聞こえる奇妙な呻き声や、一際大きな穴の奥で蠢く物体等は気にしない方向で・・。
 「そうしますか・・・それで、例のチップは?何かわかったの?」
  その問いにセラは黙ってカップを置き、調査結果と書かれたファイルを手渡す。
  ユーナは顎に手を置きながらファイルを眺めていく。一頻り見た後溜息をこぼす。
 「・・う~~ん・・やっぱり結果は『不明』だったのね。」 「ああ、ヘブンの全ての端末を使ってもな・・」
  イライラしてるのか、一気にカップを煽り中のコーヒーを喉に流し込むセラ。
 「全く、どれほどの技術力なのだそれは・・・我々に対する侮辱にしか思えん!」 
  セラが怒りのあまり空の紙コップを握り締める。冷静なセラにしては珍しい。
 「まあまあ落ちついてセラちゃん。今我らが最強がチップを調査してくれてるんだから・・」
  ファイルを置き、セラに向ってウィンク付きの笑顔を向けるユーナ。
 「確かにあやつなら信用できる。待ってみるか・・」
 「そゆこと。気楽に待ちましょ。」
  そう、彼ならば・・・セラもユーナも同時に彼を思い、心を安らげる。
  ロック・ヴォルナット・・・彼に眠る力さえ起きなければ・・・
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そのころ・・・・最後のチップが眠る遺跡では・・・

                 ぐしゃあああ!!!!

  集中して浴びせられたバスターによって弾け飛ぶ左足。それによって完全に地に沈むボスリーバード。
  だが、紅い光を纏った少年の攻撃は止まるどころかさらに激しさを増す・・

                ザアアアアァァァ・・・・・・・・

  彼が斬ったあとが一つ、また一つと砂と化していく・・・生ある物からただの物質へと・・・
 「また笑ってる・・・あの優しいロックが・・・楽しんでる・・・」
  少し離れた位置に居る赤いアーマーを着たロールがロックを見てつぶやく。
  いつもの蒼く光り輝いていたロック、優しくて本当は闘うことなんか想像出来ないロック・・・
  今までのロックとの記憶をスライドのように思い浮かべながら、必死に耐えていた。
  目の前に居る。滅びの刃を振るう『滅神』のようなロックが居るという現実から・・・

                 ズバン!!!!!

  一際大きな音が遺跡中に鳴り響いた。逆手に持たれたロックのZ,Bが敵を裂く音が・・
  ボスリーバードは断末魔の悲鳴を上げ、やがて霧となって消えてしまった。

 「・・・ハハハ・・・・アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ・・・・・」

  狂喜。リーバードが消える瞬間を、断末魔の悲鳴を聞きながら・・・
  纏っていた紅い光に漆黒の闇を見え隠れさせているロックの笑い声が・・・
  まるで新しいおもちゃでも貰ったようなロックの無邪気な笑い声が・・・
 「・・ロック・・・一体どうしちゃったの・・・こんなのロックじゃないよ・・・・」
  ロールが膝を付いて今にも消えそうな声を搾り出した。そんな二人を、敵の残骸の中から現れた、
  黒いチップが見ていた。鈍い光を放つそれは、先の運命を表すかのようにただ闇だけを写していた。



  ・・・・光と闇・・・・

  ・・・・正義と悪・・・・

  ・・・・慈しみと憎しみ・・・・

  全てはコインのように表裏一体。絶対に独立したものではないのだ。

  バランスを崩してやれば、光でうまく隠したものはすぐ・・・・

  ・・・・・・曝け出される・・・・・・

 『おまえもそうなんだろ?『ロックマン・トリッガー』。究極のアンバランスな心の持ち主よ・・・』



 「・・・うわぁぁあぁ?!?!?!」
  驚愕の声を上げてロックがベットから跳ね起きた。勢いの余りでベットからも落ちてしまった。
 「・・・・ゆ、夢?」
  息を整えつつロックが呟き、地面に手をついて立ち上がり周りを見渡した。
  子供が駆けずり回れるほど広い部屋には人一人が寝るには大きすぎるベット。壁に掛けられた
  すばらしい絵画の数々に観葉植物。部屋の隅には何か作業をするときに用意された小さな机。
  間違いなくサルファーボトム号にある客室の一つである。ロックはようやく現実感を取り戻せた。
 「・・・まだこんな時間か。結構寝たはずなのに・・・」
  壁に掛けられた時計を見た後、ロックはベットに座りなおした。
  最後のチップを回収した後すぐに戻ってきたロックだったのだが、かなり疲労していたロックを
  見かねてチップを調べる1,2時間ほど眠るようにとロール達を始めトロンやセラ達に諭され、
  客室に強引につれてこられた後無理やりベットインさせられ眠ったまでは良かったのだが・・・
 「さっきの夢のせいであんまり寝た気分じゃないなぁ。」
  首や肩を廻しながらロックは溜息をついた。
  先ほどの夢・・・アレほどリアルで語りかけてくるような夢は初めて見た。
  ロックは何故かはっきり覚えている夢をもう一度振り返ってみる。
  語りかけてくる夢は薄く闇が掛かっていて見えにくかったがアレだけははっきりと見えた。
  黒い鎧・・いや、身体全体を覆っていた黒いもやのせいでそう見えたかもしれない。
  その黒いもやの中にはっきりと・・・沢山の生物を斬り倒し、笑っているロックの姿が・・・
 「嘘だ!!そんな事があるもんか!!」
  想像を払いのけ頭を抱え込むロック。『自分がそんなこと出来るわけが無い』。だが、
  そう確信することは出来なかった。自分の身体の変化・・・それに気付いていたからだ。
  最初に異変に気付いたのは一ヶ月ほど前・・丁度Z,Bを創った時の頃だった。
  いつものように地下へ潜り、ディフレクターを回収し遺跡の活動を止める仕事・・・。
  だが、その仕事の後に小さな違和感を感じたのだ。なぜか物足りない・・何かが足りないと・・。
  それは日を追うごとに大きくなっていき、鮮明にはっきりと感じられるようになっていった。
  足りないと感じていたもの・・・それは本来の彼にあるまじき欲望・・・・

           『破壊』という名の衝動だった・・・・



  今まで数多くのリーバードを殺めてきた。だが、それを快感に思うことは無かった。
  なのに何故そんな欲が生まれたのか・・ロックにはわからなかった。
  このまま闘い続ければあの夢にでてきた自分のようになるのか。そう考えた時昼間のことを
  思い出した。やはり、狂気に侵されていた遺跡内、その遺跡の奥へ進むごとに、邪魔をする
  リーバードを倒しながら進んでいくたびに奇妙な感覚に心が冒されていった。タールか何かの
  黒い液体をすっぽり頭から被ったかのような・・不気味だが恍惚とするほど黒い何かが・・
  そしてその感情は最後の番人に会った瞬間に弾けた。それと同時に誰かの呼ぶ声がしたような
  気がしたが、戸惑ってるうちに全てが終わっていた・・・惨状という結果を残して・・。
 「アレは僕がやったことなのだろうか・・・アレをやったのが本当の僕なのか?」
  恐ろしい考えが頭を過ぎっていく・・・もしそうだったのならば・・夢が現実となったならば、
  恐らく自分が斬るであろうモノは、今まで大切に思ってきた仲間達になる・・。
 「イヤだ!それだけは絶対に・・・そんなことが・・・」
  ついにベッドに突っ伏し首を横に振り続けるロック。時々嗚咽を上げ、ただ想像の自分から逃れる。
 「何が起こって・・・るんだ・・僕の身体に・・・一体何が起こってるんだ!!」
  ロックは枕を涙で濡らしながら声を荒げる。答えが返ってくるわけが無いが只叫ぶしかなかった。
  そんな彼を机の上に転がりながら、親友の形見『Z,B』が見ていた。鈍く光るそれは
  まるで彼を慰めるようにしていたようにも見えた。



  ロックが思い悩んでいる同時刻、ロールはロックのとは離れた部屋に居た。
  複雑な表情を浮かべたままベッドに座っていた。時折ドアを見る仕草を見ると誰かを待っている
  ようだった。チクタクとなる柱時計の音が響き渡る中、ドアが開いた。
 「話ってのは何なの?つまらない話じゃないでしょうね?」
  そう言いながら入ってきた独特の髪の少女、トロンに向かって顔を上げるロール。
  その顔を見て話の重要さを理解したのかトロンは真面目な顔になり黙ってロールの横に座った。
 「一体どうしたのよ?そんな神妙な顔して・・・昼間の遺跡で何かあったの?」
  口調は荒かったがロールを気遣うトロンの言葉にロールは詰まりながらであるが話し始めた。
  ロックが遺跡で見せたあまりの豹変ぶり。ロックから放たれているとは思えない殺気。
  そうなったのは一度二度ではないこと。そしてロックを取り巻いていた赤黒いオーラ。
  包み隠さず全てをトロンに話したロールはその後泣き出してしまった。そんなロールを
  トロンは抱きとめる。同じ彼を思うトロンにはロールの辛さがわかるからこそ優しく慰めた。
 「そんなに弱々しいあなた見たくないわ!しっかりしなさい!ロックを信じないでどうするの!」
  ・・・・・い、いつもの彼女に比べたら優しいほうである。(笑
 「さ、ピーピー泣いてる暇はないわよ!そら立って!!」
 「え?え?え??ど、どこに行くの?」
  怒り心頭といった感じで立ち上がり無理やり立たせるトロンにロールは戸惑う。
 「決まってるでしょ!私はそんなロック見たくないしロックも気付いてたら嫌がるはずよ!
  だとしたら一日でも治してあげるためにセラかユーナを問い詰めるのよ!きっと何か情報が
  あるはずだわ!早く立ちなさい!でないと私が先にロックを治しちゃうわよ!!」
  拳を振るいながら語るトロンに一瞬呆けてしまうロールだったがトロンの言う事ももっともだ。
  ロールはキュッと歯を食いしばって涙を腕で拭うと勢いをつけて立ち上がる。
 「ありがとう、トロンちゃん。相談してよかった・・・本当にありがとう!」
 「わ・・わざわざ礼なんていいわよ・・それよりさっさと情報を聞き出しにいくわよ!」
  照れているのか顔を背けるトロンをおかしく思いながら共に部屋を飛び出そうとしたその時。

  『非常警報発令!非常警報発令!侵入者を確認!総員直ちに201号室へ!非常警報・・・』

  突如鳴り響いた警報とアナウンスに立ち止まるトロンとロール。その後急いで部屋に戻り、
  神速でアーマーを装着する。ものの三分としない間に二人とも戦闘体制を整えた。
 「201号室・・・セラさんたちが居る部屋ね。」
 「急ぐわよ!ロール!この船に乗ったことを絶対後悔させてやるわ!!」
  そう言いロールとトロンは201号室へと降りるエレベーターに乗り込んだ。



 「セラさん!ユーナさん!ジジさん、ガガさん!!・・・うっ?!?」
  ドアを蹴破るようにして中に入ったロールは思わず立ち止まってしまった。
  結果遅れて入ってきたトロンは勢い余ってロールとぶつかり縺れるように転んでしまった。
 「っっっっ・・・ちょっとあなた!何を立ちどま・・・・って・・・???」
  怒りのままに怒鳴るトロンだったがロールと同様にその場で固まってしまった。
 「な、なんなのこれ?」
  目前のモノを見ながら呟くトロン。それはあまりに不可解なものだった・・。
  部屋のありとあらゆるところにクモの巣のように張り巡らされたジェル状の物体。
  その中心にはロックとロールが回収してきたチップが完全な六角形の形で埋め込まれていた。
  そしてそのクモの巣のようになった部分に四人がが張り付けられた状態で居た。
  その周りには助けようとしたのか水兵達が倒れ伏している。
 「セラさん!ユーナさん!ジジさんもガガさんも大丈夫ですか?!」
  気付いたロールが叫ぶとわずかに動いていたのが見える。とにかく息はあるようだ。
  ともかく助けなければとロールとトロンが身を乗り出したその時・・・

      「あら?かわいいお二人さん・・・オイタしちゃダメよ?」
            「「?!?!?!」」

  突如後ろから聞こえた声に弾かれたように飛びのいた二人。そして各々の武器を突きつけた。
  後ろに居たのは女性だった・・・いや女性という形をしていたがまったくの別物だった。
  透き通った身体はジェルのような物質で出来ていて向こうの景色をゆがめている。
  時折波打つ胸の赤いボールが目立った。恐らく心臓のようなものなのだろう。
 「あ、あんた一体誰なのよ!!!(こいつ・・気配がまったく無かった??)」
  腰から引き抜いた光剣を向けながら動揺してるのを悟られまいと虚勢を張るトロンだったが、
  あまり意味を為していないようだった。そんな彼女をゆっくり見据えながら物体は微笑む。
 「あらあら、もう忘れちゃったの?あなたとは前にあったし、ある意味親密といえるわよ♪」
  場違いなほど軽くしゃべる物体の言葉にトロンは疑問符を浮かべる。物体は無言で部屋の
  中心に歩み寄り二人へむけて軽くお辞儀をする。
 「ま、自己紹介はしときましょうか・・・一年ぶりにご登場~。かわいい私のお名前は~
  『バイス』というレディーよ?コレからもヨロシクねん♪」
  ポーズなども決めながら話す物体『バイス』を見て肩透かしを食うトロンとロール。
 「「(この人一体何なの?敵??)」」
  そんなことを考える二人の前でバイスの自己紹介ショーはまだ続いていた・・・。



 「・・・ねぇ?そろそろ本題に入っていいかしら?」
  3番まで歌っていたバイスに向かって痺れを切らしたかのようにトロンが切り出した。
 「そう?せっかくいいところなのに・・・でもその前に・・・」
  なにやら凝った節回しなどを駆使して歌ってたのを邪魔されて膨れながらバイスが、
  先程の騒動で閉まったドアを軽く指差しながら・・・・
 「そろそろ出てきたら、トリッガー?いつでも攻撃できるようにしてるみたいだけど・・
  そんな不意打ちじゃ私は倒せないわよ?カムヒア~~~~??」
  そう言うバイスに驚き振り返る二人。すると音もなく開いたドアの向こうに確かに彼が居た。
 「・・・・上手く隠れられたと思ったんだけどね・・・・それでバイスさん、何をしたいんです?」
  何かを押し殺したかのような凄みのある口調でロックは問いながら入ってきた。
  するとバイスはそんな凄みをもさらりと流しながら微笑む。
 「もちろん。このチップの回収よ?この子達はチップをすべて集めると何かがわかると思ってた
  みたいだけどなんてことはないわ。これは私の重要な部分の部品なの。奪ってみる?」
  そう言いながらチップを取り外して小脇に挟むバイス。抵抗したくとも彼女の傍には人質が
  大量にいる。ここでの戦闘は出来ない。苦虫を潰すような顔で悔しがるロック達。
 「チップには狂気とも言える特殊な反応を叩き込む必要があったからあんなふうな事に
  なっちゃったけど・・・ま、しょうがないわね。私の知ったことでもないし・・・」
  にやりと笑いながら神経を逆撫でする言葉を選んで話すバイス。明らかにロック達の怒りを
  誘っているように見える。何とか気を落ち着かせるロック達を楽しそうに見ながらバイスの言葉は続く。
 「全ては前システムの復活のため・・・それが狙いよ?よ~くわかった?」
 「何のために!どうしてそんなことを!!」
  ロールが声を張り上げる。知らずか声が上ずっているが無理も無い。彼女も耐えているのだ。
 「さっき一年ぶりって言ったわよね?それでもわからないかしら?私を撃ったくせに・・・」
  バイスの言葉にふと、一年前を振り返る三人。一年前、ロールが撃った、トロンと親密?
 「「「ま、まさか!!!」」」
  三人の声が重なった。同時に同じことを思いそしてある存在を思い出した。
 「そう、私はあの時その子―トロンって言ったかしら?―に取付きゼロ・ウォーレンツと共に
  一年前、前システムを復活させようとしたあの洗脳型リーバードの真の姿よ!」
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