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 夏のハロコンのあたりから、千奈美ちゃんが「ちぃ~す。岡井少年」と声をかけてくるようになった。
がっしりと肩を組んできたりして、ずっと僕らが友達だったみたいに気さくに接してくる。
トレードマークのたれ目をさらにたれさせてにっこりと笑い、「悩みない?」とそればかりを聞いてくる。
あると思えばあるような、ないと思えばないようなもので、千奈美ちゃんに相談するほどのものなんてない。
なので、僕が「ない」と答えると、「いいや、あるはずだ。君の心の奥底に眠ってるのだ」、とどうしても言わせようとしてくる。
仕方なしに僕がペットのパインのことを話すと、「ダメダメ。犬じゃないだろう。もっと大事なことだよ」、としつこい。
もっと大事なことか、と胸に手をおいて考えてみても、僕にはさっぱり思い当たらない。
僕にもわからないことなのに、どうして千奈美ちゃんはやたらと相談させたがっているんだろう。
いくら考えても、まるでわからない。
何なんだろうな、一体。

 私が千聖に絡むようになってしばらく経つのだけど、未だに有効な情報は手に入れられていない。
ベリキューやコンサートで一緒になることがあれば、どんどん話しかけているのだけど、滑りっぱなしなのだ。
絶対に舞美とのことで悩んでいてもおかしくない千聖が、私にはちっとも話してくれない。
警戒されているんだろうか。
でも、あいつがそこまで考えているとは思えないから、これはただ単に鈍いだけなんだ。
舞美はあの桃にも相談した割に、二人の仲は進展がなかったという。
そこでこのわたくし、徳永千奈美さんの出番となったのです。
お話は私と舞美がプライベートで遊んでいたときにまで遡ってしまうのだ。
その日はお互いに休みがあい、久しぶりに遊園地でもいこうと決めていた日だった。
舞美はピンクが大好きだから、この日もピンクの小物を取り入れたファッションをして、かなり目立っていた。

「やっほ~舞美待った?」
「あ、遅いよ。もうすんごい遅刻。何分待たせる気かな」
「ごっめ~んよ。来る途中で面白いものみつけちゃってさ。あははは、ドンマーイ」
「もう。遅れるなら遅れるで連絡くれればよかったのに。それにドンマイはこっちのセリフ」
「はいはい。これからは気をつけます。まぁ、気を取り直して遊園地にレッツゴー」

 舞美とはキッズのオーディションの頃からの付き合いになるから、かれこれもう七年は経つ。
あの時、私がたまたま舞美に声をかけたことから始まった。
舞美は案外人見知りで慣れるまでに時間はかかり、冗談ばかり言って笑わせてあげたことが多かった。
最終オーディションまで進む頃には舞美もすっかり友達になっていたから、舞美からも私に話しかけてきてくれるまでになった。
受かるといいね、と励ましあった最終オーディションは見事に二人とも合格。
そこからは映画の撮影がすぐに始まって、いつの間にか自分たちがアイドルになっていたんだ、と気付かされた。

 どんなに忙しくても、どんなに遠くに離れていても、私たちはずっと友達でいた。
私が先にBerryz工房でデビューして、(正確にいえば、ZYXがあったから向こうが先かも)舞美とは離ればなれになっても、私たちは友達だった。
だから、今もこうして私たちは友達でいられる。

「舞美のせいで雨がここだけ降らないか心配だったけど、安心しちゃった」
「私が雨女だってことは言わない約束でしょ。もう意地悪」
「だって、本当じゃん。コンサートとかイベントで舞美が動くと雲も動くんでしょ。スタッフの人がそう言ってたよ」
「ひっど~い。もうこうなったら、本気で雨降らせちゃうよ」

 冗談を言い合いながら、私たちは手を握って遊園地のゲートを潜りぬけた。
今日は思いっきり遊ぶって決めたんだから、仕事や学校の事は忘れてしまおう、そう思っていた。
ただ、舞美だけが深刻そうな顔で完全に遊びモードに切り替わっていないのが気にかかった。

「ねぇ、さっきから何悩んでるのさ~ちぃに話せることなら何でもいってごらん。ほら、悩みプリーズ」
「何でもないから平気だって。だから、あれに乗ろうよ。ね」
「ダメだって。舞美が乗り気でないのは、この徳永千奈美さんが見逃さないんだよ~ん。友達じゃん。話してって」
「うん。わかった。あのね・・・」

 千聖が男の子だったことも驚きだけど、舞美が千聖を好きなのも驚かれてしまった。
友達の悩みは私の悩み、それならば解決するのが友達の役目。

「ちっさー、愛理と遊園地に遊びに行くんだって。二人って最近仲がいいからどうなのかなって・・・」
「まかせんしゃい。この徳永千奈美さんがばっちり解決してあげるさ。桃なんかより頼りになるから任せてよ」

 この時、私は舞美と千聖少年を結びつけるべくキューピットとなろうと決意したのであります。
これがピンク仮面千奈美の闘いの始まりでもあったのでした。

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