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「あんた誰? とは口のきき方のなってないチビスケでしゅね」

 いきなりあんた呼ばわりをされ気を悪くした少女は、目尻を吊り上げ、口の端も小刻みに痙攣し、怒りをあらわにした。
チビスケ呼ばわりをされ、頭にきた千聖は、つい少女相手にさっきの調子で返事をしてしまう。

「うわぁ~よく言うね。そういう自分だって身長変わんないじゃん」

 一瞬でも可愛いと思ったことを千聖は即座に否定したかった。
確かに見た目は可愛いが、よく見れば千聖を睨みつけてくる目つきはとても可愛いとは程遠い。
じっと千聖がみつめていると、少女は無言で人差し指で千聖が手に持つ靴を指して自分のものであると主張をしてきた。

「減らず口だけは大人顔負けでしゅね。それよりチビスケ、お前が手に持っている靴は舞のでしゅ。さっさと寄こすでしゅよ」
「あ、これ。君のか」

 そう言われてみて、千聖は少女の足元に目を向けると、左足は靴を履いておらず、白い靴下が汚れて黒ずんでいた。
では、ダンがどこからか咥えてきた靴というのはこの子のもので、出会って早々機嫌が悪かったのも、全てはこれが原因だったというわけか。

「ごめんなさい。うちのダンが君の大事な靴を盗んじゃったみたいで」

 怒る少女に懇願するように両手を合わせて、誠意をこめて謝罪をする。

「フン、まぁさっきの無礼は許してやるでしゅ。そのかわり靴をさっさと返すでしゅ」

 お供え物を献上するように丁寧に、千聖は靴を少女に返す。
返してこれで終わりなわけはなく、盗んだ張本人を叱ってやらねばなるまい。
ダンの奴を叱ろうと、脇でちょこんとお座りをして構ってほしそうにするダンを見下ろす。
これから自分が叱られるとは思わないのか、千聖と目が合った途端に足に抱きついてきた。
甘えてこられるときつく言えないのは重々承知だが、言わねばならぬ時はあるものだ、と自分に言い聞かせた。
自分と目線があう位置までダンを持ち上げ、やると決めた千聖は強く叱った。

「おい、全くお前ってやつはとんでもないことしてくれたな。ダメだぞ、勝手に人の物を持って来ちゃ」
「クゥーン ’w’) 」
「いいかい。これは人の物なんだ。今後はこういう事をしたら餌を一回抜きにするからな」
「アン!!」

 叱ったにもかかわらず、ダンは元気よく吠えてよくわかっていない様子だ。
叱られてもあまりくよくよせずにめげないところは全く誰に似たのだろう、と千聖はつくづく呆れてしまう。
あ、自分に似たのか、と思いいたると決まりが悪くて怒る気力がなくなっていた。
溜息をつきつつ再び少女の方へ顔を戻すと、返した靴を履きもせずに黙ってみつめていた。

「どうしたの?」
「これ、犬の涎で汚くなってる。こんなんじゃ履きたくない」
「どれどれ」

 少女から靴を受け取り、かかとをみてみれば、べったりとダンの涎がついていて、履きたくないのもわかる。

「あ、そうだ。僕、靴磨きを仕事にしているんだ。この靴を磨いて返すから待っていて」
「別にいいでしゅ。新しいのを買うでしゅよ」
「よくないって。こんな状態で返したら、靴磨きの仕事をしてる意味がないもん。ちょっと待ってて」

 これは名案だ、と千聖は商売道具を広げ、靴磨きを始めたのだった。

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