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 小さな湯船の中で、僕は身体中を伸ばして王様気分でゆっくりとお湯に浸かる。
普段はパパと弟と入ることが多いから、こんなにも体を伸ばしてお風呂に入ることなんて出来ないから快適だ。
その分、パパたちがいないから静過ぎて寂しさも感じる。
いつもなら、お風呂に入ってすぐパパたちと合唱が始まっていてもおかしくない。

 僕は大家族で育っているおかげで、お風呂に入る時はとても賑やかだ。
パパと弟と三人で入った時は、必ずといっていいほど、三人で大合唱をする。
唄うのはもちろん、パパの大好きなマイケル・ジャクソンだ。
お風呂場でマイケルを真似してシャウトしてみたり、意味はわからなくても英語で唄ってみる。
僕は苦手な英語に苦戦しながら唄い、弟は適当で、パパも聞きこんでいる割には怪しい部分があるけど、そこは岡井家らしく勢いだ。
僕の性格がこんなにもがさつなのはこんな家庭環境のおかげなのかもしれないな。

 と、そんなことを思いながら、僕はお風呂場の天井を見上げてつい一言漏らした。

「ふぅ~極楽極楽♪」
「もぉ~おじさんみたいなこと言ってるの~中学生が極楽って・・・キュフフ」
「ちょ、ちょっと~入ってくるなら言ってよ。心の準備ってものが出来てないんですけどぉ~」

 ドアが開いた音もなく、なっきぃは忍者の如く気づけば目の前にいた。
もちろん体はタオルを巻いていて、綺麗な白い肌もほとんどが隠れてしまっているのをちょっぴり残念に思う。
あくまでもちょっぴりだよ、ちょっぴり。

「ほら、隣に入るから空けてよ」
「はいはい。なっきぃが入ると狭くなって、僕こんなに縮こまらなきゃならないんだよね~あ~狭いな~」
「そんなことされるほど、私は幅とりません。普通にしてよ。これでも早貴ちゃん細いねって皆に言われるんだから」
「あははは、普通にしてもこんなもんなんすけどぉ~」

 なっきぃに半分空けるように強制され、僕は隅っこに寄りながら両腕で体を抱え込んで縮こまった。
これくらいしないと、ホテルの部屋ごとにあるお風呂は小さくて二人も入れないのだ。
たぶん、二人が一緒に入るようには作られてはいないのだろう、僕となっきぃは体の一部分がくっついている。
なっきぃの肌と触れ合うと、体が隅から隅まで熱くなってくる。
さらに脱衣所で見るなと言われたのにもかかわらず覗き見た、なっきぃの脱いでいる後姿が頭に浮かぶ。
いかんいかん、こんなところで大きくなってもらっては困るのに、言うことを聞かん棒なやつだ。

「どうしたの? さっきから顔が赤くなってるけど」
「な、何でもありません。お風呂が熱くてさ。それで赤くなっちゃっただけだって。気にするな」
「あっ、さてはエッチなことを考えてたな。どう、図星じゃない?」
「ううん、全然違います。誓ってそんなことは考えてませんから」

 まさに図星です。

「キュフ、まぁ襲ったりしてこなければ問題ないからいいよ。だって子供の頃からずっといる仲間だしね」
「仲間、か・・・」

 響きが良くて心地よい言葉だけど、それ以上に重い意味を持っている。
信頼しあえる仲だからこそ、気軽には使わずに、大事な場面で使う。
それなのに聞かん棒は元気よく反り返っていて、我ながら情けなくなる。

「どうしたの、急に。何かあった? 私でよければ相談に乗るよ」

 別に何でもない、と返そうとしていたはずなのに、僕の口からは思わぬ言葉がポロッと零れ出ていた。
そして・・・

「二人の間で揺れ動く恋心か。私だとあんまり恋愛経験ないからわからないけど、難しそうだね」

 話を黙って聞いていたなっきぃが終わった頃合いをみて、僕の話を噛み締めながらゆっくりと話し始めた。

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