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 僕を好きだって言うのは人間として好きという意味だろうか、それとも男の子として好きという意味だろうか。 僕は後者ならどれ程嬉しいかわからないけれど、それは都合のいい受け取り方な気がする。 告白じみた言葉であっても、まだそうだと決まったわけじゃないのだ。 もしもだ、あくまでもしもりぃちゃんが僕を好きだとしても、何がきっかけで好きになったんだろう。 山口に映画を撮影しに行った時以来、それ程お仕事でもプライベートでも会う事は少なかったはずだから検討がつかない。 しょっちゅう楽屋に来ていた理由からすると、男の子として好きな可能性も少ないはないんだ。 だからって、それを鵜呑みにするのもどうかなとも思う。 「セッティングってあんまり聞きなれないけど、まるで合コンみたいだね」 「合コンなんてしたことないからわからないよ。私はちさととこうしていられるだけで嬉しいんだよ」 「りぃちゃん、そんな顔しないでよ。照れるよ」 「まった~愛理がちさとはモテるから早くしないと舞ちゃんにもっていかれちゃうって言ってたよ」  くすくす笑う仕草も上品な印象を与えるりぃちゃんは、愛理と似てお嬢様っぽい。 似ている部分が多いだけに二人は仲良くなりやすかったかもしれないな。 愛理といえば、お茶入れてくると言ったきり戻ってこないけど、どうしちゃったんだ。 このままりぃちゃんと二人っきりで話していると、僕は誘惑に負けてまたとりかえしのつかない事をしそうだ。 何をしてるんだよ、早く戻ってきてくれ。 お茶でもいいから一口飲んで、緊張して乾きっぱなしの喉を少しでも潤したい。 「愛理遅いね。なかなか戻ってこないけど、キッチンってそこだよね」 「う~ん、どうしたんだろう。私はわからないな」  りぃちゃんも本当に知らないって顔で、キッチンの方を向いている。 これが演技なら、やっぱり僕は愛理とりぃちゃんに騙されて、初体験をしちゃうんだろうか。 それにはまだ決心がつかないし、いくら相手が知り合いだからってよく知りもしないで出来るわけないよ。 愛理が怖い手を使ってきても、こればっかりは出来心でしちゃったって後から思えるわけもない。 りぃちゃんが望んでいるにしても、きっぱりといかなくても断らなくちゃ。 「ねぇ、愛理とは普段どんな話をしてるの?」 「うぅ~ん、学校の話とかファッションとか、あとはお仕事かな。それと、最近はちさとの話もよくするよ」 「そうなんだ。愛理は僕の事を何て言ってたの?」 「中学になってからは男の子だから余計に女の子らしくしようって頑張ってるみたいだって言ってた」 「へ、へぇ~確かにそういう努力はしてるね。でも、元が男の子だからどんなにやってもなりきれないんだけどさ」 「私は可愛いと思うよ。ちさとが頑張ってるのをみて、ちらっと愛理にカッコイイねって言ったのね。  そしたら、愛理が実はなんていいだすから、そうなんだってすんなり納得しちゃった」  そうなんだよな、何でか皆知ると納得しちゃうんだ。 嘘、信じられないとかどうして?とか慌てたり驚いてほしいのに、納得したってなるんだよね。 やっぱり男の子だと皆思ってるのかな、バレてはいないはずのえりかちゃんや栞菜にも。 二人ならずっと一緒にやってきたんだし、拒否したり事務所に話すなんて事はしないって信じてるけど、どうかな。 その内、えりかちゃんや栞菜にも話した方がいいのかな、同じグループのメンバーとして大事な話だし。 知らないで活動をするよりも知って活動した方がいいものな。 でも、前からすると今の僕の気持ちの変化って考えられないよ。 前はバレたら終わりだって言われていたから、バレないようにって必死だったのに今では話した方がいいとまで思ってるんだから。 「りぃちゃんは、あの・・・いつから僕を・・・ううん、やっぱりやめておこう」 「何、気になるじゃん。言ってよ、いつから僕を?」 「そ、その・・・好きになったのかなって」 「わりと最近かな。それまではボーイッシュな女の子だと思ってたから。でも、フットサルしてた時のちさとは好きだったよ」  聞いてしまった、それも願望むき出しの聞き方だった。 あれでは僕を男の子として好き?と聞いたようなものだ。 何だ、自分でも呆れるけど、やっぱりりぃちゃんにも男の子として好きでいてほしかったんだ。 とんだ浮気者だよな、僕って。 「ちさとさ、舞ちゃんと付き合ってるの?」 「そ、それは・・・」  僕は何て答えればいいんだ、舞ちゃんとの関係を。 付き合ってはいないけれど、でも、舞ちゃんは・・・僕にとって・・・ 「付き合ってるわけじゃないでしょ、ちっさー。悩むことないじゃん」 「あ、愛理~どこから出てきたのさ」 「はい、お茶とお菓子。もう二人っきりになったからって何をじっくり話しこんでたの」  愛理はキッチンにはさっきまでいなかったと思ったのに、手にはカップの載ったトレイを持っていた。 いつそんな準備してたのかな・・・ でも、よかったのかもしれない。 このままりぃちゃんと二人きりだと何だか心臓がバクバクして冷静でいられるか心配だったし。 といっても、これから愛理が何をするかわからないから、今度は別の意味で心臓がバクバクいってる。 りぃちゃんとキスをしたりする間違いを犯すよりもいいか、って、これから三人で初体験って言ってたんだった。 さっきのりぃちゃんの様子だと知ってるのかなって気がしたんだけど、愛理だけが知ってる計画じゃないよね。 震える手でカップを取り、僕は一人気持ちを落ち着けようとした。
 僕を好きだって言うのは人間として好きという意味だろうか、それとも男の子として好きという意味だろうか。 僕は後者ならどれ程嬉しいかわからないけれど、それは都合のいい受け取り方な気がする。 告白じみた言葉であっても、まだそうだと決まったわけじゃないのだ。 もしもだ、あくまでもしもりぃちゃんが僕を好きだとしても、何がきっかけで好きになったんだろう。 山口に映画を撮影しに行った時以来、それ程お仕事でもプライベートでも会う事は少なかったはずだから検討がつかない。 しょっちゅう楽屋に来ていた理由からすると、男の子として好きな可能性も少ないはないんだ。 だからって、それを鵜呑みにするのもどうかなとも思う。 「セッティングってあんまり聞きなれないけど、まるで合コンみたいだね」 「合コンなんてしたことないからわからないよ。私はちさととこうしていられるだけで嬉しいんだよ」 「りぃちゃん、そんな顔しないでよ。照れるよ」 「まった~愛理がちさとはモテるから早くしないと舞ちゃんにもっていかれちゃうって言ってたよ」  くすくす笑う仕草も上品な印象を与えるりぃちゃんは、愛理と似てお嬢様っぽい。 似ている部分が多いだけに二人は仲良くなりやすかったかもしれないな。 愛理といえば、お茶入れてくると言ったきり戻ってこないけど、どうしちゃったんだ。 このままりぃちゃんと二人っきりで話していると、僕は誘惑に負けてまたとりかえしのつかない事をしそうだ。 何をしてるんだよ、早く戻ってきてくれ。 お茶でもいいから一口飲んで、緊張して乾きっぱなしの喉を少しでも潤したい。 「愛理遅いね。なかなか戻ってこないけど、キッチンってそこだよね」 「う~ん、どうしたんだろう。私はわからないな」  りぃちゃんも本当に知らないって顔で、キッチンの方を向いている。 これが演技なら、やっぱり僕は愛理とりぃちゃんに騙されて、初体験をしちゃうんだろうか。 それにはまだ決心がつかないし、いくら相手が知り合いだからってよく知りもしないで出来るわけないよ。 愛理が怖い手を使ってきても、こればっかりは出来心でしちゃったって後から思えるわけもない。 りぃちゃんが望んでいるにしても、きっぱりといかなくても断らなくちゃ。 「ねぇ、愛理とは普段どんな話をしてるの?」 「うぅ~ん、学校の話とかファッションとか、あとはお仕事かな。それと、最近はちさとの話もよくするよ」 「そうなんだ。愛理は僕の事を何て言ってたの?」 「中学になってからは男の子だから余計に女の子らしくしようって頑張ってるみたいだって言ってた」 「へ、へぇ~確かにそういう努力はしてるね。でも、元が男の子だからどんなにやってもなりきれないんだけどさ」 「私は可愛いと思うよ。ちさとが頑張ってるのをみて、ちらっと愛理にカッコイイねって言ったのね。  そしたら、愛理が実はなんていいだすから、そうなんだってすんなり納得しちゃった」  そうなんだよな、何でか皆知ると納得しちゃうんだ。 嘘、信じられないとかどうして?とか慌てたり驚いてほしいのに、納得したってなるんだよね。 やっぱり男の子だと皆思ってるのかな、バレてはいないはずのえりかちゃんや栞菜にも。 二人ならずっと一緒にやってきたんだし、拒否したり事務所に話すなんて事はしないって信じてるけど、どうかな。 その内、えりかちゃんや栞菜にも話した方がいいのかな、同じグループのメンバーとして大事な話だし。 知らないで活動をするよりも知って活動した方がいいものな。 でも、前からすると今の僕の気持ちの変化って考えられないよ。 前はバレたら終わりだって言われていたから、バレないようにって必死だったのに今では話した方がいいとまで思ってるんだから。 「りぃちゃんは、あの・・・いつから僕を・・・ううん、やっぱりやめておこう」 「何、気になるじゃん。言ってよ、いつから僕を?」 「そ、その・・・好きになったのかなって」 「わりと最近かな。それまではボーイッシュな女の子だと思ってたから。でも、フットサルしてた時のちさとは好きだったよ」  聞いてしまった、それも願望むき出しの聞き方だった。 あれでは僕を男の子として好き?と聞いたようなものだ。 何だ、自分でも呆れるけど、やっぱりりぃちゃんにも男の子として好きでいてほしかったんだ。 とんだ浮気者だよな、僕って。 「ちさとさ、舞ちゃんと付き合ってるの?」 「そ、それは・・・」  僕は何て答えればいいんだ、舞ちゃんとの関係を。 付き合ってはいないけれど、でも、舞ちゃんは・・・僕にとって・・・ 「付き合ってるわけじゃないでしょ、ちっさー。悩むことないじゃん」 「あ、愛理~どこから出てきたのさ」 「はい、お茶とお菓子。もう二人っきりになったからって何をじっくり話しこんでたの」  愛理はキッチンにはさっきまでいなかったと思ったのに、手にはカップの載ったトレイを持っていた。 いつそんな準備してたのかな・・・ でも、よかったのかもしれない。 このままりぃちゃんと二人きりだと何だか心臓がバクバクして冷静でいられるか心配だったし。 といっても、これから愛理が何をするかわからないから、今度は別の意味で心臓がバクバクいってる。 りぃちゃんとキスをしたりする間違いを犯すよりもいいか、って、これから三人で初体験って言ってたんだった。 さっきのりぃちゃんの様子だと知ってるのかなって気がしたんだけど、愛理だけが知ってる計画じゃないよね。 震える手でカップを取り、僕は一人気持ちを落ち着けようとした。 [[←前のページ>20]]   [[次のページ→>22]]

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