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260 :1/12:2009/03/13(金) 23:23:10 ID:+zMMaYdE ガタンッ!!! いきなり玄関から物凄い音がした。驚いてポケットに薬を突っ込み、壁に立て掛けてあるモップを手にとる。 強盗か?モップを構えながらテーブルの下に隠れ、恐る恐るこちらに近付く足音に集中する。ゴト、ゴト、と いう音は遂にキッチンまでやって来た。緊張がピークに達したとき、覚悟を決めてそっと向こうを伺う。 「ハ…ハーマン?!」 足音の主はハーマンだった。久しぶりに見るハーマンはコートの襟を立て、帽子を深く被り、ゆらゆらと歩いている。 「ああ…ロイドか…」 ハーマンは帽子を取るとどかっとソファーに座り込む。だるそうに瞬きをして、はあっと息を吐く。 「ハーマン、血が…」 ハーマンの頬には赤茶色の飛沫がついていた。乾いているものの、かなりの量だ。 ハーマンがケンカをして帰ってくるのは珍しくない。でもこんな血だらけになるなんて今までなかった。 頭痛や吐き気は一気に吹き飛び、何とかしなきゃと考える。まずは傷を見つけないと。俺はさっきまで 自分の頭に乗っていたタオルを持ってくると傷に触らないよう気を付けながら拭く。ところが不思議なことに、 ハーマンはどこにも怪我をしていないようだった。洗面所に行って汚れたタオルを洗い、またハーマンの元へ戻る。 ああ、その前に薬箱を持っていかないと。踵を返したその時だった。 「ロイド。」 ハーマンの呼び掛けに答えて振り返る。 「土産だ。」 そう投げ渡されたのは一週間前マーがハーマンに渡したピーナッツバターサンドの紙袋だった。ぐしゃぐしゃになっていて、所々 変な染みがある。鼻をつくような臭いも少しした。混乱しながらその乱暴に閉じられた口を開ける。 「―――!!!」 「コナー・フィッツサイモンズ……ユルギス・アウグスト・マジュリス……二人は見つけた。ただ、アレックス……… “アレクサンダー・ストーン”だけが見つからない……」 ハーマンはぶつぶつ呟きながら額に手をあてた。 261 :/12:2009/03/13(金) 23:25:34 ID:+zMMaYdE 紙袋の底には、二本の指が入っていた。 一つは既に色が変わりかけていたけれど、もう一つはまだ“新鮮”そうだ。どちらも傷口はぐちゃぐちゃで、“普通に切り取られた” ものじゃないと分かる。それらは黒く変色した血と、プディングというか何というか、妙なもの――そう、“ディップ”がたっぷり こびりついていた。声も出ずその場に立ち尽くす。 コナー。 ユルギス。 ハーマンがあの二人に会った?じゃあこの“ディップ”がついた指はやっぱり? 「ロイド、来い。」 ハーマンが項垂れたまま言う。俺は混乱していた物の、言われるがままそちらへと歩いて行き、ハーマンの目の前に立つ。 「おいで。」 手を広げ、促すハーマンに逆らうことなくその腕の中に身体を置く。そうすればハーマンは温かい手で俺を包んでくれた。 少しだけ錆と生々しい嫌な臭いがする。 「ロイド。お前、アイツラからアーサーを守ってやったんだな。」 思わぬ言葉に目を見開いた。やっぱりもうハーマンは知ってるんだ。俺が、アーサーがあそこでどんな目にあったか。アーサーから 聞いたのか、それとも他の誰かからかは分からない。 ただ、ハーマンが知ってることだけは確かだ。 ハーマンは俺を断罪するんだろうか。 役立たずだ、“アレ”そっくりだと俺を罵って、家族じゃないと最後通告するんだろうか。 もうここにはいられないのか。 怯えながら続く言葉を待つ。 「―――ありがとう。ロイド。」 それは予想外の言葉だった。 ありがとう? ハーマンはそう言った? 「お前がいたから、アーサーは無事だった。お前のお陰だ。ありがとう。」 熱い、熱いものが胸の奥から込み上げる。それは身体中に広がって、皮膚の表面を沸騰させる。次から次に溢れ出てくるそれは 遂には身体から零れていった。 目が、熱い。 262 :3/12:2009/03/13(金) 23:27:41 ID:+zMMaYdE で…でも…俺っ、全然役になんか…立ってない……だって…だって俺…アイツラにっ…散々……」 「ああ、知ってる。」 「そ…それに…俺っ…お、お、俺…アーサーっ……アーサーを……アーサーに、酷、い、ことっ……!」 「知ってる。」 ハーマンは静かに俺の“告白”を聞いてくれた。 問い詰めることもなく、責めることもなく、ずっと話を聞いてくれた。 俺は今まで胸につかえてたものを全部吐き出した。 アイツラにレイプされたこと。 身体がおかしくなってしまったこと。 アーサーを犯して、傷つけてしまったこと。 そして、アーサーを好きになってしまったこと。 全部、全部吐き出した。 「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。許して貰えないのわかってるんだ。…でも、でも、俺どうして いいか…本当にごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…」 「許されない?何でそう思う?」 「だって、だって、俺は“アレ”と一緒だからっ…アーサー、アーサーは嫌がるって、わかって…でも、俺、 アーサーに酷いこと…アーサー傷つけてっ……俺は“アレ”と一緒だっ……」 「アーサーがそう言ったのか?」 俺は首を横に振る。鼻水を啜りながら一生懸命話をする。 「だってハーマンもわかるだろ……?今の俺、“アレ”そっくりで…誰も“アレ”と同じ俺を許してなんか くれない……ハーマンだってそう思って……」 「それは違う。」 ハーマンは俺の頬に手を添え顔を上げさせた。ハーマンの、その真っ直ぐで強い目が俺を見ている。 「お前は“アレ”なんかじゃない。お前と“アレ”には致命的に違う所がある。わかるか?」 俺はまた首を横に振る。 違うところなんてあるわけないんだから。 それなのにハーマンは確信に満ちていて、俺の心を絡めとる。 「俺達はお前を愛してるってことだ。」 263 :4/12:2009/03/13(金) 23:29:38 ID:+zMMaYdE 不思議なことが起きた。 嵐がおさまった。 俺をめちゃくちゃにしていた嵐が。 心を揺らした風も、目から溢れる雨もピタリとやんで、一瞬で全てが晴れ上がる。そしてそこにはハーマンがいた。 「アーサーと話せ。一人でそう決めつけないで、その口で聞け。その耳で、目で確かめろ。アーサーがどう 思ってるか、ちゃんと話せ。それでアーサーがそう言ったならまた俺のところに来ればいい。」 ハーマンの言葉が静かになった心に染み渡る。 兄ちゃんの言うことは絶対だ。兄ちゃんの言うことには逆らえない。兄ちゃんの言うことに間違いなんてない。 それが俺達兄弟の約束だ。俺に、選択肢なんてない。 それでもやっぱりアーサーと話すことはとても怖い。 また曇りだした表情から俺の不安を読んだのか、ハーマンはまた力強く言った。 「大丈夫だ。お前は俺の弟なんだから。絶対お前を見棄てたりなんかしない。 ずっと一緒にいてやる。だから怖がるな。」 畜生、また涙が出てきた。あのブタ箱に入って以来、俺は多分それまで流してきた涙を合わせてもまだ 足りないくらい泣いてきた。 どれも情けなかったり、悔しかったり、悲しかったり、辛かったりで録な涙じゃなかった。 でも、今俺の頬を濡らしてるものは違う。 すっごくすっごくあったかくて、すっごくすっごくやさしいものだ。 ハーマンは俺を許してくれた。 ハーマンは俺を受け入れてくれた。 ああ、なんて俺は幸いなんだろう。 「クソ、眠くなってきた……」 ぐらりとハーマンの身体がソファーへと仰向けに倒れ込んだ。抱き抱えられたままの俺も一緒に倒れる。 ハーマンの胸からとく、とく、と心地いい音が聞こえる。 「このまま寝る。」 「……うん。」 一分と経たないうちに寝息が聞こえてきた。規則正しく上下する胸は、ボートを揺らす波のようだ。その揺れは 俺の張りつめたものを全て拐い、眠りの海に連れ去った。 264 :5/12:2009/03/13(金) 23:32:12 ID:+zMMaYdE コンコンとドアがノックされる。ドアを開ければそこには枕を抱えたフレッドがいた。 「どうした?」 フレッドは眉間に皺を寄せてぷぅっと頬をふくらませてる。正直とても不細工だ。 「今日僕ハーマンと寝る。」 そう言ってフレッドはハーマンが寝転ぶベッドにジャンプした。ハーマンは寝惚けたまま寝返りを打つと、 突然の来客の頭をぽふぽふと叩く。 「急にどうしたんだよ。」 フレッドはぷりぷりと怒りながら俺を睨む。 「だってだってズルいもん!今日ロイド、ハーマンとお昼寝してたもん。僕もハーマンと一緒に寝たい!」 マー達が夕方に帰って来るまで俺とハーマンはソファーで眠りこけていた。結局フレッドの フライング・ボディ.プレスで起きる羽目になったけど、三日ぶりの眠りは頭をはっきりさせてくれた。 そして同時に心をすっきりさせてくれた。 ちゃんとアーサーと話そう。 そう決めた。 マー達にバレないよう、紙袋を隠すと久しぶりにマトモに夕飯を食べ、タイミングを待った。 そこに突然ヘソを曲げたフレッドが来たんだ。少し調子が狂う。 「いいよね?ハーマン。一緒に寝よーよ。ね~え~。」 駄々をこねるフレッド。ハーマンはフレッドに甘いからっていつもこうだ。 「んー…そうだな…じゃあロイド、お前フレッドの部屋で寝てこい…」 「え…」 ハーマンはちらりとこっちを見た。フレッドはハーマンと同じベッドで寝るわけだから、別のベッドで 寝る俺が部屋を出ていく必要なんてないはずだ。それでも俺にそう言う理由。 つまり、もう行けということだ。 行って、アーサーと話せと。 遂にアーサーと向き合う時がきた。俺は黙って頷いて、部屋を出た。 265 :6/12:2009/03/13(金) 23:34:33 ID:+zMMaYdE 「ねえねえハーマン。」 「ん…?」 「大丈夫だよね?ロイドとアーサーまたいっぱい笑ってくれるよね?」 「……お前、知ってたのか。」 「僕ね、僕ね、みんなみんな大好きだよ。だからね、泣いてるロイドとアーサー嫌。にこにこ スマイルマークがいいもん。」 「そうだな、フレッド。」 「………でもね、でもね、一回壊れちゃったら壊れちゃった物は直んないんだって。ロンドン橋が言ってた。」 「ロンドン橋?…ああ、あの歌か。だったら大丈夫さ。“丈夫な石”があれば“もう大丈夫”だから。」 「うきゅ?何それ何それ。僕しらない!」 「またそのうち教えてやるさ。それにあいつらは俺の弟だからな。心配なんかしなくていい。……お前も いい子だから、ゆっくり眠れ。ほら。ダストマンが来たぞ。ダストマンが来たら、ガキは寝るもんだ……」 266 :7/12:2009/03/13(金) 23:37:23 ID:+zMMaYdE コンコン。木の音が響く。ワンテンポ遅れて扉の向こうから足音が聞こえた。 「フレッド!夜更かしすんなって言ったろ」 勢い良くドアが開いた。それは予想通りアーサーだった。俺を見た途端、一瞬にしてアーサーの顔が青ざめた。 そして沈黙の中、俺達は見つめあう。 「…………中、入っていいか?」 それを先に破ったのは俺だ。アーサーは黙って身体を横にずらして、中への道を開いてくれる。そのまま横を すり抜けて部屋へと入った。とりあえずフレッドのベッドに腰掛けて、様子を伺う。アーサーはドアの方を 向きながら黙ったままだ。 さすがに空気が重い。重圧に押し潰されそうになる。 それでも俺は話さなければならない。 アーサーと話そうと決めたからだ。 俺は意を決して沈黙を破った。 「……この前のこと謝りに来た。」 その一言で背中を向けていてもあからさまに判る程アーサーは動揺した。小刻みに震えだし、息も荒くなる。 今、小さなアーサーの中をどんな嵐が荒れ狂っているのかわからない。今アーサーの頭には何が浮かんで いるんだろう。 身体に無理矢理ペニスを押し込まれた痛みか。 女の様に男に辱しめられた屈辱か。 それとも自分に歪んだ欲望を向ける兄貴の顔か。 アーサーは身体をドアに凭れ掛からせながらズルズルと崩れ落ちていく。それから小さく嗚咽を漏らし出した。 「アーサー……」 拒まれるかも知れない。 そうしたら俺はきっと辛くて悲しくて死にたくなるだろう。 その時こそ、本当にカロンに有り金全部叩いてステュクスを渡る気になると確信が持てる。 『絶対お前を見棄てたりなんかしない。ずっと一緒にいてやる。だから怖がるな。』 今はその言葉だけが俺の心の支えだった。覚悟を決めて立ち上がり、アーサーのところまで歩いていく。 そして、思いきってアーサーを後ろから抱き締めた。 267 :8/12:2009/03/13(金) 23:41:00 ID:+zMMaYdE 「……ごめん。アーサー…」 「…あ…ああぁ…あ、ロイ…ロイドっ…違う、違うんだ……ロイド……」 腕の中でアーサーがこっちに向き直り、俺にしがみつく。そしてぼろぼろと大粒の涙を流して泣いた。 アーサーは吸い込まれてしまいそうな青い目で俺を見た。その目からは次から次に綺麗な雫が零れ落ち、頬を伝う。 あの時以来初めて見るその涙を俺は拭ってやりながら、俺は告解をした。 「…アーサー、ずっと傷つけてきてごめんな。お前に怖い思いさせた。」 アーサーは俺の胸に置いた手をぎゅうっと握りしめた。俺を押し退けようとしているのかもしれない。だけど俺は 本当にはっきりと拒絶されるまではと、アーサーを抱き締めるのをやめない。嗚咽とも囁きともとれない妙な音を 喉から発しながら、俺を見上げている。 「俺全然弱くて、役に立たなくて、アーサーに辛い思いさせた。それに………無理矢理、お前のこと犯して…」 言葉に詰まりそうになる。だけどきっと一度でも黙り込んでしまえば二度と話せなくなるかも知れない。息を 振り絞って一気に話す。 「それに…それにな……俺………あの時お前を欲しいって思ったんだよ。お前を好きだって…」 遂に。遂に言った。言ってしまった。 最大の禁忌。 最悪の罪。 もう逃げられない。 「………本当にごめん。」 最後の審判を待つ。審判者であるアーサーを俺は見た。閉じることを忘れたように、その純粋で無垢な瞳は ひたすら俺を見詰めていた。信じられないと言うように、何かを訴えようとするように僅かに唇を開いている。 俺はただ待った。アーサーが俺を断ずるのを。また沈黙が部屋を支配した。 「……………………お、れ…」 続く言葉を待つ。眼を閉じて、深呼吸した。 「ロイド……………」 天を仰ぐ。恐怖や後悔の涙が零れないように。 「………す、き……」 「え……?」 268 :9/12:2009/03/13(金) 23:43:09 ID:+zMMaYdE 「お、俺……あの時…凄く嬉しくて、幸せでっ…だ、だってロイド、俺のこと、愛してるって……」 アーサーの口から出た言葉はあまりに意外で、にわかには信じられなかった。 「…嬉しくて…涙…出て…俺も…ロイド、好きだから………で、でも…だって、ロイドっ……ずっと口聞いて くれなくてっ…俺っ…俺は…ロイドに嫌われたって…思って……ロイドのこと…好き、なのにっ…!」 アーサーは言った。 俺を好きだと。 そう、確かに言った。 あんなに傷つけたのに。あんなに酷いことをしたのに。こんなに醜い想いを押し付けているのに。 そんな、そんなことって。 「で、でも俺っ…お前をレイプしたんだぞ?酷いことしてっ…お前をファックしたいって思ったんだぞ?お前の 兄ちゃんなのに、お前のことそんな風に…!お前おかしいと思わないのか?俺を憎くないのか?嫌いだ、 気持ち悪いって……!」 俺の問いかけにアーサーはブンブンと首を横に振り思い切り否定した。 「っ…ロイドは……ずっと、ずっと守ってくれて…ずっとずっと、俺の側にいてくれて……役立たずで、卑怯な 俺を………許してくれてた………」 途切れ途切れの呼吸の中、アーサーはあの医務室のベッドでの時のように俺に語りつづける。俺が考えも しなかったアーサー自身の想いを必死に伝えようとしてくれていた。 「だけど、あれ以来っ…ロイドは俺を、嫌いになったんだって…思ったら………お願い……ロイド、嫌いに ならないで……嫌わないで……」 「そ……そんなこと…あるわけないっ…アーサー、アーサーっ…!」 俺はアーサーの頬を両手で挟んだ。そして真っ直ぐアーサーを見つめた。 込み上げる想いを押さえきれない。 「アーサー…俺…!」 「ロ…イ…ド……」 269 :10/12:2009/03/13(金) 23:46:16 ID:+zMMaYdE 生地の薄いカーテンからは月明かりが漏れていた。その光の中に、アーサーの白い身体が浮かび上がっている。 パジャマも下着も全部剥ぎ取られ、生まれたままの姿はとても綺麗だ。 「………本当にいいか?」 「ん……大丈夫。」 「本当に?後悔しないか?」 アーサーはくしゃりと笑った。 「大丈夫だよ。もー…心配しすぎだってば。」 馬鹿にしたような言い方に少しムッとする。 「さっきまでビービー泣いてたくせに。生意気だぞ。」 「そんなのロイドだって一緒じゃねーか。本当チキンだよな。下らないことで悩んでずーっと死にかけの病人 みたいだったクセに。」 「あーもーうるせえっ!」 アーサーの首筋に軽く噛みつく。アーサーは鼻にかかったような声をあげて抗議にもならない文句を言った。 暫くそうやって裸のままじゃれあう。アーサーと最後に触れ合ってから半月も経っていないのに、今の俺には アーサーの温もりは何十年ぶりのものに感じた。 アーサーを求めてキスをした。身体中キスをしてないところが無くなる位キスをした。始めはくすぐったそうに 笑っていた声が段々艶やかになる。少しすると腹の辺りに熱く堅いものがあたりだした。 「はぁっ…はぁあっ……ロイド…ロイドっ…!」 アーサーが俺を呼ぶ。それに応えてアーサーの口元に耳を寄せる。 「ロイドっ、俺もしたい…ロイドのこと、気持ちよくしたいっ…!」 俺の耳にキスをしながらアーサーは訴える。健気な哀願する姿が酷く卑猥に見えた。 「ん…じゃ、こうしよ…」 俺はアーサーの顔を跨ぐとシックスナインの形をとる。そしてアーサーのペニスをくわえ、唾液で濡らした 指先でアナルを優しく揉んでやる。 「ああぁぁっ!ロ、ロイドっ!」 「馬鹿、マー達にバレるだろ。声出すな。」 厳しめに言ってやると、アーサーは声を誤魔化すように俺のペニスにむしゃぶりついた。メチャクチャに吸い 上げて、舌を動かすだけの拙いフェラ。一生懸命口を動かしてるものの上手く自分をコントロールできないのか、 涎や俺のカウパーで口元はもうべちゃべちゃになっている。テクニックはまるでないけれど、俺にとっては 最高の快感を引き出してくれるフェラチオだった。 俺もお礼するように出来るだけアーサーが気持ち良くなれるよう、裏筋や袋を舐めていってやる。 「んんンっ…ぢゅぽっ、ぢゅぽっ、ぢゅぽっ…ピチャッ…はぁんっ!ロ、ロイ…やめ!…何かっ…何か来ちゃうっ……!!」 突然アーサーがペニスを離し、切羽詰まった声をあげる。 「静かにしろって!本当にマー達に聞こえるっ…!」 「で、でも、本当に何か変っ…!やだっ、こんなの知らなっ…!んぶっ!くちゅっ、ぐぽっ、くちゅぅ! もごっ、ちゅるっ、んんん――――!」 アーサーの口を塞ぐように、ペニスを無理にしゃぶらせる。 アーサーはでたらめに口を蠢かせて、くぐもった声で叫んだ。アーサーを追い込むように、思い切りペニスを吸い上げてやる。 その瞬間アーサーが仰け反り、一際高い声をあげた。口に熱いものが放たれ、それに合わせて俺もアーサーの口に射精する。 270 :11/12:2009/03/13(金) 23:49:36 ID:+zMMaYdE 「………?」 違和感を覚えて、口のものを掌に出す。するとそこには白く濁った液体がとろりと滴った。それは紛れもなく精液だった。 初めてのときはまだ射精なんてできない身体だったのに。アーサーの方に向き直ると、アーサーは初めて味わう射精の快感の せいで完全に蕩けきっていた。口からは白い糸が一筋顎にかけて垂れていて、いやらしいその姿が俺の中の意地の悪い 部分をくすぐる。 「アーサー、やっとお前もイケるようになったぞ。ほら、お前の精子、凄くおいしい。」 手に出したものをもう一度口に含むと、そのままアーサーに口移しした。口の中でお互いの唾液や精液を混ぜて、じっくりと味わう。 「やぁ…っ…ちゅ…くちゅ……ダメだっ…んくっ……」 アーサーは身を捩って逃げようとしたものの、それも束の間。すぐに舌を絡めて唇を貪ってきた。息が出来なくなる程長く、激しい キスをする。同時にアーサーのアナルもかき混ぜる。 部屋にぐちゃぐちゃという水音と、微かな声が響く。それが俺を更に興奮させた。アーサーはもう訳が分からなくなっているようで とにかく俺にしがみついて腰をくねらせ、キスを求めてくる。 本当にアーサーはかわいい。 アーサーが俺を許してくれて本当に良かった。 アーサーが俺を選んでくれて本当に良かった。 胸がどんどん熱くなる。唇を離し、アーサーに囁く。 「アーサー…もう挿れたい……」 アーサーの股に、また硬く反り返ったモノをグリグリと押しつけた。それを敏感に感じ取ったアーサーは潤んだ瞳を俺に向ける。 アーサーは僅かに躊躇うように眉を歪めたけれど、俺は瞼にキスをしてその緊張を解した。元々アーサーの身体は発情しきっていて、 それ以上我慢できなかったこともあり、アーサーは促されるままおずおずと脚を開いた。 「力抜け。最初はゆっくりするから、慣れたら気持ちよくなれる。」 「う、ん…」 耳まで真っ赤にして、きゅっと眼を瞑るアーサー。恥ずかしいんだろうか。脚が少し内股気味になって、その奥にある小さな孔も ぴくぴくしている。仰向けになっているアーサーに覆い被さり、俺は窄まりに勃起したペニスを宛がう。そして少しずつ奥へと 進んで行った。 「あぐっ!!んうぅぅっ……!!」 唇を噛み、アーサーが唸った。また切れてしまうと可哀想だと思い、キスをして口を塞ぎ、歯列を割って舌を絡める。柔らかい 口内を蹂躙して、甘い悲鳴を味わう。こりこりとした前立腺をペニスで押し潰し、時々アーサー自身にも触れてやりながら快感を 高めてやる。アーサーのソコはキスをする度、愛撫する度きゅうきゅうと俺を締め付ける。奥に勃起を突き立てる時は欲しがる ように強引に俺の性器をくわえこみ、逆に引きずり出す時は離すまいと噛みつくように締め上げた。最後には自分からも腰を振り 出して、俺のペニスは爆発寸前までおいやるまでになった。 「アーサっ…出すっ……!」 「だ、出してっ…!俺ん中っ…ロイドのでいっぱいにして、いっぱい気持ちよくしてっっ…!好き、好き、好きっ…!」 アーサーが一番感じる場所を壊れるくらい強く抉り、自分のペニスを根本まで捩じ込んだ。 その瞬間、アーサーの孔はひきつりながら俺を締め上げた。 「あ、あ、いっ…アーサーっ!気持ちいっ…!」 「ロイドっ…ロイドっ…!すご…!イっちゃう、イっちゃ…!俺っ、ロイドっ,一緒にっ…!!」 精液をアーサーの腹に注ぎ込む。お互いをこれ以上ないくらい抱き締め、上り詰めた。痙攣が止まらない。 絶頂がずうっと続いて、頭がおかしくなると思ったくらいだ。 「ロイド…大好き…愛してる……」 快感だけじゃなく、幸福感で身体が満たされていく。この前とは桁違いのユーフォリア。 いや、根拠ならある。 アーサーが俺を許してくれている。 アーサーが俺を受け入れてくれている。 そして、アーサーは俺を愛してくれている。 こんなに嬉しいことはない。 「俺も愛してるよ…アーサー……」 俺達はまた、キスをした。 271 :12/12:2009/03/13(金) 23:50:10 ID:+zMMaYdE 「…歩けるか?」 「うん。へーき。」 少しよろけながらアーサーは言った。二人とももうパジャマは着ているけれど、僅かに覗く、うっすらと染まった肌はまだ さっきまでの名残を留めている。 俺達は手を繋いで歩いていた。空いた手にはあの紙袋を持って。 トイレの前に来ると、アーサーが扉を開ける。そのまま中に進んで、俺は紙袋を目の前に持ち上げた。それを合図とばかりに アーサーは手をほどき、代わりに俺のパジャマの裾を握る。 「……これでいいのか?ロイド。」 「犬にでも喰わせるか?それじゃあ犬が可哀想すぎる。これが一番いいんだよ。」 ガサガサと袋を開けるとそのままひっくり返して、“中身”を全部便器へと放り込む。ボチャンという、間抜けな音を立てて それは落ちた。便器を覗けばゆらゆら揺れる水の底に、二本の指があった。どちらも薄汚れていて気持ち悪かった。 紙袋を丸めて床に投げる。それからまたアーサーは俺の手を握ってくれた。 「……大丈夫だよ。アーサー。」 「うん…」 フラッシュバルブに手をかける。その時、ふとあることに気付いた。少し考えてから、ポケットの中身を全部掴んだ。 アーサーは不思議そうにその動作を見ていた。中身を握った拳を前に出して、そっと開く。 カラカラという陶器を叩く音と、ちゃぽちゃぽという水の音がした。 二本の指の回りにいくつもタブレットが積もっていく。 「ロイド、それ……」 アーサーの顔から血の気が引いたのが分かる。俺は笑いかけた。少しでもアーサーの気持ちを落ち着かせるために。 「大丈夫。もうこんなの必要ないから。もっと強くなって、お前のこと守ってやるから。」 それに答えるようにアーサーは俺の手を握る手にぎゅうっと力を込めた。 「俺…俺も…ロイドのこと守れるように…強くなるから……」 「…ああ。だからこれで、全部“さよなら”だ。情けない泣き虫にも、“クローゼットの中の役立たず”にも。」 フラッシュバルブを捻る。 耳障りな轟音とともに、全部消えていく。 汚ならしい指も。 情けない程小さな薬も。 全部全部消えていく。 外から鳥の声がする。もう夜が明けたんだとわかった。そろそろマー達が起きてくる。 「アーサー、行こう。」 「うん。」 俺達はもう一度手を繋ぎ直して、部屋に戻った。   &bold(){THE END...}

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