ショタとお兄さんでエロパロ 保管庫@ ウィキ

:無題 244-254

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だれでも歓迎! 編集
244 :1/9:2009/03/12(木) 19:41:30 ID:m4hYLXsw

俺達が外へ出る日が来た。アイツラがいなくなってから三日後のことだった。 昨日まで俺は医務室にいた。身体中痛くてだるくて、
ずっとベッドに潜り込んでいた。アーサーも一昨日まではいたけれど、医者が先に戻れと指示をしたようだ。身体の方は特に異常が
無かったらしい。“らしい”と言うのは、俺がそれを確めなかったからだ。

――あの日以来、アーサーとは話をしていない。

家に帰る支度をする。といっても少ない服や私物をまとめるだけだ。全部あるか確認してから要らないものは誰かにやるか捨てるかして、
残りをショルダーバッグに適当に詰める。まだ身体がだるい。それを我慢しての作業だった。
「よう、ご苦労さんだったな。ロイド・バーカー。」
軽い声がした。誰だか予想はついたが、悪態をつく気にもならない。視線だけ移動して相手を見据える。
「随分と湿気た顔してるな。まるで」
多分マルコの言う通りなんだろう。あれ以来食欲がない。今朝もオートミールを数口食べただけだ。
「何でここにいるんだよ…」
「今はレクリエーションの時間じゃないか。“友人”の見送り位してもいいだろ?」
白々しい。こういう奴等は何人も見てきたけれど、こいつは浮草みたいに捉え所がない分不気味さが増している。
「怖い顔するなよ。何もしやしない。」
両手を上げておどけてはいるが、多分マルコは今も何か別のことを考えている。そう。俺の考えが及ばないような何かを考えているはずだ。
とても気を許す気にはならない。
「用が無いなら帰れよワンカー。俺は忙しい。」
ベッドに広げられた洋服を適当に詰め込みながら言った。だけどやっぱりマルコはそんなこと位じゃ堪えず、こっちを見ている。
「用ならあるさ。お前に聞きたいことがある。」
コツ、コツという音が聞こえる。音と音の間隔は長かったけれど、それは確実にこっちへと近づいてきていた。荷物をまとめる手は止め
ないものの、俺は神経を張り詰めて身構える。マルコもアレックス達と同じくらいのガタイの良さだ。何かされたらひとたまりもない。
「ロイド。」
低い、落ち着いた声が響いた。
「“サンドロは約束を破ったか”?」
その瞬間時間が凍りついた。空気も、身体を流れる血も全て凍った。ただ、不思議なことに頭だけは嫌にはっきりと動いていた。
“約束”。
アーサーを傷つけない。
それが約束だった。
それが誓いだった。
でも、それは破られた。
守られなかった。

    じゃあ、一体誰が?

わかってる。わかりきってる。アーサーを傷つけた。それは――
「ロイド。」
ビクリと身体が跳ねる。我に返るといつの間にかマルコは俺の顔を覗き込んでいた。驚いて壁の方へと後退る。マルコはにんまりと不気味に
笑う。
「雄弁は銀、沈黙は金とはよく言ったもんだな。“よーくわかったよ”。」
みるみる内にマルコの笑顔が冷たくなっていく。俺はぞっとした。今まで見たことのない程澄んだ、氷のような瞳。それは明らかにまともな
人間のモノじゃなかった。


245 :2/9:2009/03/12(木) 19:44:34 ID:m4hYLXsw
「くくくっ……お前、もう少しポーカーフェイスを覚えろよ。考えてることが丸分かりだ。」
そう言うとマルコは口に手を当ててほくそ笑んだ。その時俺は初めてその指の間に小さな紙切れが挟まれているのに気付いた。
「…その…紙切れは……?」
自分でもアホらしいくらい間抜けな声だった。細くて頼りない、蚊の鳴くような声だ。マルコはその声にまた笑う。
「いいものだよ。ことによってはただの紙切れにも、レディ・ゴダイヴァの行進にもなる。面白いギャンブルの種さ。」
マルコの手の中でひらひらと揺れる、小さなメモのようなもの。四つ折りにされた、何の変哲もない紙切れが酷く鮮明に目へと焼き付けられる。
レディ・ゴダイヴァ。
この前覗いたアレックスとマルコの密会に関係あるのか。それとも単なる言葉遊びか。最後の最後のまで、こいつの頭の中は見えない。
「…さて。そろそろ行くかな。俺も暇じゃないんでね。じゃあな。元気でやれよ。」
マルコは踵を返した。やっとこの緊張感から解放される。そう安心した次の瞬間だった。
「ああ、“家族にもよろしくな”。」
その言葉がザクリと心臓を突いた。
“出口”に着くと、そこにはもうアーサーがいた。アーサーは酷く思い詰めた顔をしている。どうしたのかと聞きたかった。
だけど、出来なかった。
もしアーサーの口から俺を拒絶する言葉が出てきたら。そう考えただけで死にたくなるほどの恐怖にかられた。
「ロイド・バーカー。アーサー・バーカー。出ろ。」
職員が指示を出す。口もきかず、気まずい空気のまま、俺達はこの忌まわしい場所と自由な世界を繋ぐその扉にを潜ろうとする。
ピュウッという音がした。音の方を見ると、そこには何故かマルコがいた。壁にもたれ掛かって、こちらに投げキッスをしてきた。
その姿は昔見世物小屋で見たクラウンそのものだと、その時気付いた。マルコを見たアーサーは動揺したように走り出す。その後ろ姿が
目に入る。
一瞬、アーサーが何か白いものをくしゃり、とポケットに突っ込んだように見えた。


「ロイドっ!アーサーっ!!」
底抜けに明るい、甲高い声が響く。
「フレッド…マー…ハーマン…」
門の外には皆がいた。俺達を迎えに来てくれたんだろうか。フレッドがきゃあきゃあと言いながらこっちに突進してきた。
「ロイド!アーサー!おかえりなさいっ!」
フレッドはタックルするように俺達に飛び付いて、大喜びしていた。フレッド前に見たときと随分変わっている。背も髪も伸びて、
しゃべり方も少しまともになっていた。フレッドに続いてマーが走ってきてくれた。俺達を二人まとめて抱き締めて、会いたかった、
愛してるとキスをしてくれる。俺達もマーの背中に手を回し、ハグをした。久しぶりのマーの温もり。それが嬉しくて涙が出そうになった。
「ロイド。アーサー。元気だったか。」
優しくて静かな声。小さな頃から俺を呼んでいてくれた声。その主が、マーの肩越しにこっちを見ていた。
「ハー…マン…」
短く適当に切られた髪。俺達兄弟四人に共通の金の髪と青い目が日差しにきらきら照らされていた。特にハーマンの目は温かい光を帯び
ながら俺達を見つめている。
「お前ら少し見ない内に大きくなったな。」
マーもハーマンに同調して、もっとハンサムになったと頭を撫でてくれる。帰ってこれたんだ。そう安堵した。家族の元に帰ってこれたと。
同時に恐怖した。皆が俺のしたことを知ったら、果たしてこのまま俺の側にいてくれるんだろうか。

多分、答えはノーだ。


246 :3/9:2009/03/12(木) 19:46:27 ID:m4hYLXsw
「ロイド、どうした?」
ハーマンが俺を呼ぶ。それからこっちにスッと手を伸ばしてきた。
「髪伸びたな。」
そう言うとハーマンは首筋の辺りに触れながら、俺の髪をすいた。だけど無意識に俺の身体はその手から逃れようとしてた。後ろめたさや、
アイツラにファックされたことを思い出したからだと思う。
「……?」
ハーマンは怪訝そうな目をしていた。眉をしかめ、目を細めている。
「ロイド髪長い。女の子みたい。いっつも僕のこと女の子みたいだっていじめてたのに~。」
いきなりフレッドがぴょこんと俺の前に飛び出してくる。それから両手で自分の髪をツインテールのようにまとめ、“女の子”の物真似をし、
べーっと舌を出した。そういえば髪はいつの間にか肩にかかるくらいになっている。時間の流れを感じた。マーはフレッドを怒ったけど、
その言葉はフレッドを本気で叱るつもりじゃなく、からかうような言い方だった。
「アーサー、ロイドっ。ブランコしながら帰ろ!」
フレッドのいう“ブランコ”は、二人でフレッドの左右の手を繋いで、真ん中のフレッドをブランコみたく持ち上げる遊びだ。フレッドは
強引に俺とアーサーを引っ付かんで準備万端と言わんばかりだった。どうしようか悩んだものの、無理に引き剥がすのも可哀想だったから
仕方なくブランコしながら駅までの道を歩く。
「♪ロンドン橋落ちた 落ちた 落ちた 落ちた♪」
歌を歌いながら足をぶらぶらさせて、フレッドはいたく上機嫌だ。久しぶりに俺達に会えたのが嬉しいんだろう。いつになく歌声も大きい。
そんなフレッドを見て、俺もつい口許が綻ぶ。何気無く視線を上げると、思いがけずアーサーと目があった。アーサーは俺を見てたんだ。
慌てアーサーは俺から目を逸らせたけれど、その目はとても悲しそうで、追い詰められたような目だった。
そんな目で俺を見るなんて。
俺はどれだけアーサーを傷つけたんだろう。
緩んだ口許が一気にひきつった。俺は視線を足元に戻した。俺とフレッド、アーサーの三つの影と、その後ろから伸びるマーとハーマンの
影が見えた。
「♪ロンドン橋落ちた マイフェアレディ♪」
その時俺は気付かなかった。ハーマンも俺を見ていることに。


家に帰るとマーが腕を振るったご馳走が待っていた。マカロニ・アンド・チーズにミートローフ、チキンのシチュー、パスティ、フレンチフライ、
スチームドサラダ。デザートはナッツとベリー、アイシングたっぷりのマフィン。その上には砂糖漬けのチェリーまで乗っていた。
マーは特別よといたずらっぽく笑った。マーの料理は本当に温かくて美味しくて、本当に幸せだった。ハーマンもフレッドもアーサーもマーも
皆笑っている。ハーマンはスコッチの入ったショットグラスを煽りながら。マーはパスティを開きながら。フレッドは歌ったり、料理を手当たり
次第こねくりまわしたり、マーに口を拭かれたりで色々忙しそうに。久々の五人の夕飯は賑やかに進んだ。俺もアーサーも皆に色んなことを話した。
ブタ箱の中であったことをたくさんした。
ただし、アイツラのこと以外だけど。
それに、俺とアーサーはやっぱり口を聞かなかった。
そこだけが不自然だったけど、フレッドがはしゃいでいたのもあってマーもハーマンも気付いていなかったと思う。
……多分。
「マー、こいつら風呂に入れるよ。せっかくブタ箱から出てきたんだ。さっぱりさせてやる。」
ハーマンはフレッドを膝の上であやしながら言った。マーはハーマンに賛成して、外に置いてあるバスタブを暖炉の側に持ってくるよう言う。
運ぶのはもちろん俺とハーマンだ。マーは鍋やケトル、タライまで総動員してコンロや暖炉でお湯を沸かし始めた。俺とハーマンは廊下に置いて
あるバスタブを家まで持っていく。
「随分力ついたじゃねえか。」
ハーマンは笑って言った。ただ、その顔は微かに曇っていた。小一時間かけてバスタブに湯を張ると、マーは裁縫道具一式を持って隣の部屋に
行く。それから俺達は風呂に入るため服を脱いだ。
「わー、ロイドどうしたの?怪我だらけだ。」
俺ははっとした。しまった。いつもと違って家じゃ“この身体”はあんまりにも不自然だ。どうしよう。傷の中には歯形に見えるものもある。
それに胸や尻――アソコなんかにはおかしな傷もある。もしそれがバレたら、きっと――
「あ…ハ、ハーマンっ…フレッドっ…」
先に声をあげたのはアーサーだった。アーサーは何を言うつもりなんだろう。気が気じゃなかった。アーサーは言葉に詰まって何かモゴモゴ
いっている。びくびくしながら、脱ぎかけのシャツを握り締めた。


247 :4/9:2009/03/12(木) 19:52:01 ID:0Ofcm4Rn
「ケンカ、だろ?」
俺は思わずハーマンを見た。ハーマンは目こそ鋭く見えたものの、にやりと笑ってこっちを見ていた。
「よくあるんだよ。塀の向こうじゃ。誰が飯を盗った、誰が生意気だって因縁を付けちゃ殴る蹴るの乱闘になる。生傷なんて絶えない。
だろ?ロイド。アーサー。」
「う~?そうなの?」
無邪気な顔でフレッドは聞いてきた。思いもよらない助け船に、俺は咄嗟に首を縦に振った。アーサーは驚きつつもそれに同調したみたいだ。
「お前も気を付けろ、フレッド。殴り合いにはコツがいる。また教えてやるから、ちゃんと覚えろ。」
フレッドはくりくりした目をきらきらさせてシャドウボクシングをした。将来はベビー級の世界王者になると息巻いている。相変わらず
フレッドは単純だと思う。でも、それが救いだった。それにアーサーもあれ以上は話をしなかった。走り回るフレッドを追いかけて捕まえたり、
服を脱がしたりしている内にうやむやになったんだ。
でも良かった。
上手く誤魔化せた。
これで少しだけ、俺は“生き延びた”んだ。


俺達は四人揃ってバスタブにぎゅうぎゅう詰めになりながら入った。まだ体が小さいからできる荒業だ。ハーマン、俺、アーサー、フレッドの
順で一列に並んでバスタブに入る。それから皆頭に石鹸を擦り付けて洗っていく。ハーマンは俺の、俺はアーサーの、アーサーはフレッドの
髪をそれぞれ洗う。フレッドは何故かお気に入りのラグビーボールに石鹸を付けてごしごし洗っていた。
「♪木と泥で作れ 作れ 作れ 木と泥で作れ マイフェアレディ♪」
「フレッド、目と口閉じろ。」
「♪木と泥じゃ流される マイフェア……えぅっ!アーサーやだあ~!石鹸目に入ったぁ~!」
アーサーは兄貴風を吹かせてフレッドの世話をこまめに焼いている。だから俺の方なんて見ない。俺から見えるのはアーサーの後ろ姿だけだ。
きれいな金の髪を泡で包んでやる。三日前の夜もそうした。死んだように眠るアーサーを抱いて、石鹸とスポンジで俺が汚したものを全部
洗い流した。そうすればもしかしたら、俺がしでかしたことが全部チャラになると思った瞬間もあった。勿論そんなことあるわけない。俺が
つけたキスマークや、無理矢理押さえつけた時に出来た引っ掻き傷は消えなかった。そしてなにより、アーサーの心の傷はきっと一生消えないだろう。
強姦して、挙げ句の果てアーサーに欲情した俺をアーサーが許してくれる筈がない。アーサーを、家族を傷付けた最低最悪でおぞましい、救いようの
ない人間。そう、これじゃあまるで、まるで。クソッ、あんなに嫌っていたのに。畜生っ、これじゃあ俺はそれ以下じゃないか。
畜生畜生畜生畜生っ!
「おい、ロイド。ぼーっとするな。」
声と同時に俺は現実に引き戻される。ハーマンが俺を呼んだと気付いた。
「考えごと多くなったな。らしくないぞ。何かあったか?」
ハーマンは俺の髪を後ろでまとめ、持ち上げながら言った。ハーマンの手がうなじを触る。ぞくりと電気が背筋を走る。始め、それは単に身体を
洗っていてくれているんだと思った。
丁寧に、丁寧に、身体の隅々まで洗ってくれているんだと。
でも段々それは違うんじゃないかと感じ始めた。首筋、肩、腕、胸、腰、脚――それから、性器。ハーマンの手はゆっくりゆっくり、何かを
確かめるように俺の肌の上を滑っては止まり、滑っては止まりを繰り返す。

右の首筋。そこはアレックスが特に好んで噛みついてきた場所だ。
肩。ユルギスはそこを掴んで挿入するときに暴れる俺を押さえ付けた。
胸。散々弄られ、酷く敏感になった乳首はコナーの馬鹿みたいに舐めるだけの行為にすら勃起するようになってしまった。
そして、ペニス。そう。俺はこの小さな肉の塊で、アーサーの未熟な搾まりを抉じ開けて、なぶって、身勝手な欲望を撒き散らした。

それぞれの場所にハーマンが触れる度、俺はハーマンに懺悔を迫られているように感じた。実際、喉まで“告白”は出かかっていたんだ。
けど、それを吐き出す勇気なんてなかった。出来るわけない。そんなこと知られた、俺はきっと居場所を無くしてしまう。
怖い。怖い。怖い。
そんなの嫌だ。嫌だ。俺は目を瞑り、ただひたすら時間が過ぎるのを待った。


248 :5/9:2009/03/12(木) 19:53:06 ID:0Ofcm4Rn
♪煉瓦とモルタルじゃ崩れる 崩れる 崩れる 煉瓦とモルタルじゃ崩れる マイフェアレディ♪」
「よし、出るぞ。ガキども。」
「え~?もう~?ちぇ~。」
ハーマンの号令とともに皆お湯に潜り泡を落とす。ハーマンが立ち上がるとアーサーとフレッドもそれに倣った。その時アーサーはまだ立ち
上がれない俺に気付いて、こっちへ身体を屈めてきた。そして恐る恐るこちらに手を伸ばしてくる。
「アーサー。お前はフレッドの面倒見ろ。あっちの部屋にタオルとパジャマがあるから。風邪引く前に早く行け。」
アーサーはハーマンの声にビクッと震え、伸ばしかけた手を引っ込めた。
「で、でもロイドが……」
「いいから行け。ほら、もうフレッド向こう行ってるぞ。」
そこまで言われるとアーサーもハーマンに逆らうことができず、てくてくとフレッドの後を追いかけていく。途中、何度もちらちらと
こちらを見ながら部屋を出ていった。そして部屋には俺とハーマンの二人きりになった。
「立て。ロイド。」
ハーマンは兄ちゃんだ。兄ちゃんには、逆らえない。俺は黙って立ち上がる。ポタポタと雫が髪や傷だらけの身体からから落ちて、濁った
バスタブの湯に落ちていく。バスタブから出れば雫は床にいくつもの水溜まりを作った。ふわりと温かいものが身体をくるむ。
背中からハーマンがバスタオルをかけてくれたんだ。それからハーマンは優しく濡れた身体を拭いてくれた。それはさっきと違って俺の傷に
障らないよう、そっと身体を撫でていくようだった。
それでも俺の身体と神経は昂ったままだ。俺がアーサーを傷つけたことがバレてしまわないか、気付かれやしないか。もし勘づかれたらどう
切り抜けようか、どう誤魔化そうか。そんなことばかり考えていた。あまりの不安に叫びそうになる。口を震わせながら開き、小さく息をした。
ふと、喉の辺りに何かが当てられた。ハーマンの手だ。
「ここは痛むか?」
くっ、指に力を込められた。軽く気管が圧迫される。ほんの少しだけど、息が苦しい。次の瞬間フラッシュバックが起こった。

『おぉっ、この口マンコすげぇ。喉がよく締まるぜ。』
『げぼっ!んふっ…ちゅぶっ…くぽっ、くぽっ、くぽっ…!はあぁっ…クソッ…んぐぅっ!むちゅっ、むちゅっ、ちゅうっ…!』
髪を掴まれ、頭ごと揺さぶられる。小さい口じゃペニスを突っ込まれればまともに息なんかできない。なんとか鼻で息をしても濃くて生臭い
精液の臭いでディップになった脳ミソが更に腐っていく。
苦しい。苦しい。苦しい。
『嬉しいだろ?臭くてエロい精子たっぷり飲めてよぉ。お前みたいなど淫乱は汚ねえザーメン、ビュクビュク出されんの大好きだもんなあ。』
『チンポうまいって顔してるぜ。ロイド。ほら、少しシコっただけでお前の包茎チンポもビンビンになりやがった。イラマチオで勃起する
ような変態マゾガキはしっかり躾てやらねえとな。』
勝手なことを言いやがって。こんなの全然嬉しくない。精液なんて大っ嫌いだし、俺はマゾでも変態でもない。身体が反応しちまうのは
仕方ないんだ。喉を思いきり突かれる。顎も、喉も死ぬほど痛い。今にも突き破られそだ。自然に涙か流れる。その内ドピュッ、ドピュッと
口の中に射精される。ねばねばした物が口に放たれる。まずい。吐き出したい。畜生。死んじまえ。ペド野郎が。

「……こっちは痛いか?」
今度は腹を軽く押された。また頭にあの時の光景が、音が、感覚が甦る。
『ひぐうっ!かはっ…!そんなっ…奥っ、挿れるなっ…ひぃっ…くふっ!痛っ…!』
グチャッ、グチャッという音がする。アナルが擦り切れてしまいそうな程乱暴にピストンされる。内臓の奥深くまで何度も突かれた。一番
敏感な場所も何度も擦りあげられ、痛みと快感がぐちゃぐちゃにミックスされる。
『もっとケツ締めろ!淫売!ザーメン欲しいんだろ?あぁ?!ケツ振って種付けしてくださいって媚びてみろよ!ケツ穴にチンポくわえて
雌犬みたくアヘアへ喚けよ!!』
口までペニスを詰めこまれたみたいに苦しい。真っ赤に焼けた火掻き棒が内臓をミンチにするように引っ掻き回す。嫌だ。こんなこと嫌だ。
『がぁっ…く…ぅうっ…ひんっ!違うっ…俺っ…雌、犬っ…じゃあ…あぁっ…痛ぁっ…きひっ!ぅあんっ!
…あ、あひっ…あ、あ…あっ…!』
『雌犬じゃなけりゃビッチだ。ケツマンコ野郎が。ほら、濃い精液注ぎ込んで孕ませてやるよっ!アナルで全部受け止めやがれ!!』
ヘドロがミンチになった内臓に叩き付けられる。同時に俺もイカされた。中に出された精液の量があんまりにも多くて、腹が破裂しそう
だった。激痛と、耐えられないほどの快感。狂うには十分過ぎるほどの衝撃だった。


249 :6/9:2009/03/12(木) 19:58:36 ID:0Ofcm4Rn
「あ…う…あぁっ……あ………」
脚から力が抜けて、その場にへたり込んだ。ガクガク身体が震え、涙が後から後から零れてきた。こんなじゃダメだ、早く取り繕わないと。
そういくら自分に命令しても身体は言うことを聞かない。
「ち、違う…俺……ハーマンっ…ごめっ…」
アイツラにされていたことは予想以上に俺を蝕んでいた。身体も心も全部俺の手に負えないところまでいってる。アーサーに酷いことした
くせに、こんな無様なことになるなんて。本当に俺はダメになってしまった。
「……悪かったな。もう寝よう。」
泣き続ける俺をハーマンはバスタオルで包んで、そのまま部屋まで運んでくれた。それからパジャマも着せてくれて、ベッドに寝かせても
くれた。俺はこんなことしてもらえる資格なんて無いのに。シーツを握りしめて俺は自分を責め続けた。


さわさわと風が吹いている。草が気持ち良さそうにそよいでいた。ここはどこだろう。辺りを見回してみる。雨の匂いのする原っぱ。そうだ。
ここはフープスネークの草原だ。それじゃあ皆はどこだろう。目を細めて、遠くを見る。すると向こうに三人の人影が見えた。泥だらけの
フレッド。それを眺めるハーマンとアーサー。俺だけがそこにいない。あっちにいきたい。皆といたい。
けどそれはダメだ。 皆はそれを許してくれないだろう。
俺はしゃがみこんで草の中にかくれた。足元にはフープスネークがいた。見たことなんか無いけど、これは確かにフープスネークだ。
フープスネークは一生懸命自分のしっぽにかじりついてる。
その内フープスネークはしっぽを食べ始める。
がじがじ。
がじがじ。
がじがじ。
がじがじ。
がじがじ。
がじがじ。
最後にはフープスネークは頭だけになって死んでしまった。
自分で自分を食べるなんて。
自分で自分を食べても痛いし死んじゃうし良いこと無いのに。
そんなこともわからないんだろうか。
なんて間抜けなフープスネークだ。


何か音がした。俺は目を開ける。窓の外を見ると、まだ夜は明けていないみたいだ。
それなのに少し開いたドアからは光が漏れてる。
そっと床に降りるとその隙間から向こう側、つまりキッチンの方を覗いた。ぐすん、ぐすんと鼻を啜る音がする。
人影は二つ。一つは
椅子に座ったハーマン。もう一つはアーサーだった。
アーサーは顔を手で覆いながら泣いていた。それを慰めるようにハーマンはアーサーの背中を抱き、頭を撫でて
いる。どうしたんだろう。アーサーが泣いてる。怖い夢でも見たんだろうか。可哀想に。
蝋燭の灯りの中、二人は何かを話している。耳をすましてみるものの、上手く聞き取れない。かなりの時間、二人はそうしていた。
時折ぼそぼそと話ながら抱き合っていた。小一時間も経った頃、顔を隠していた手を動かす。
その手はゆっくりと下に下りていき、ズボンのポケットに辿り着く。
そして中から、白い紙くずを取り出した。そして、ハーマンはそれを受け取るとアーサーの額にキスをした。
「アーサー、いい子だ。」
「……ごめんなさい。」
それ以上は見ていられなかった。あれは、あの紙くずはマルコのそれとそっくりだった。
ぐしゃぐしゃになってたけど、間違いない。どうしてそれをアーサーが持ってる?何でハーマンがそれを?出てくる答えはどれも
最悪のシナリオばかりだ。
俺は罪を犯した。
だから、罰を受けなきゃならない。
そんなのわかってる。わかってるけど。

俺は、それが怖い。



250 :7/9:2009/03/12(木) 20:03:41 ID:0Ofcm4Rn
こつこつと頭を叩かれる。
「ロイド~ロイド~起きて~ご飯だよ~。」
犯人はフレッドだった。キッチンからはいい匂いが漂ってくる。身体を起こす。頭がぼーっとしていて動くのが億劫だ。眠れなかったせいかもしれない。
「早くしないと冷めちゃうよ~早く~。」
フレッドに急かされて、顔も洗わないままキッチンに向かう。そこに着くと調度マーがエッグ・ベネディクトを乗せた皿を運んでいる
ところだった。席につくと手が伸びてきて目の前の皿にそれがぼとりと置かれる。手の延びた方を見るとハーマンが自分用の
エッグ・ベネディクトを摘まんでいるところだった。マーは俺が起きてくるのが遅かったことが心配らしく、色々と聞いてくる。俺が
言い淀んでいると、代わりにハーマンが答えた。
「マー、ロイドは風邪らしいよ。暫くは家で寝てた方がいい。」
何故ハーマンはそんな嘘を言うんだろう。昨日のことが何か関係あるのか。戸惑いながらも俺はハーマンの嘘に乗る。マーはおでこと
おでこをくっつけて熱を測ってくれた。それからアーサーにいくらか小銭を渡して、コークを買ってくるよう言いつける。アーサーは
いぶかしげに俺を見た後、外へと飛び出して行った。
「ああ、マー。そうだ。俺今日出掛けるんだ。ピーナッツバターサンド作ってよ。」
ミルクを飲みながらハーマンは言った。ハーマンの一言一言にドキドキする。
昨日、アーサーはハーマンに何かを言った。それが酷く気になる。首にナイフを当てられてる感じ。いつ地獄のどん底に突き落とされる
のかわからない。マーが手際よくピーナッツサンドを作って、
紙袋にそれを入れる。ハーマンはそれを受け取るとコートを羽織って玄関に歩いて行った。
「帰るの遅くなるから。チビども、マー手伝えよ。」
ハーマンが部屋を出るとき、調度アーサーが帰ってきた。二人がすれ違う時ハーマンはアーサーの頭をポンと叩き、アーサーはハーマン
から目を逸らす。その光景はとても不自然に思えた。
「ねえねえ、ロイド。あのね、あのね、マーの特製コーク出来たら良いもの見せてあげるよっ!この前ねっ、駅の待合室から盗って
きたんだよっ!テルモスって言ってね、いつまでもコーヒーとかあったかいんだ!」
フレッドはきらきらした目で俺の前に乗り出してきた。俺は曖昧に返事をしながら、ぎこちない二人を見ていた。

それからハーマンは一週間、家に戻らなかった。

キッチンにあるサイドボードの引き出し。その一番上を開ける。
そこにはいくつもの薬が入っている。マーが昔飲んでいた薬だ。その中から大きめのピルケースを手に取る。ラベルにはバミタールと
大きく書いてあった。蓋を開け、中から一錠取り出す。それを放り込んでテルモスの中の特製コークで流し込む。
ハーマンが出ていってから三日が経つ。ハーマンが出ていった日から俺は眠れなかった。
眠い。なのに眠れない。頭が痛い。
だからとにかく寝るためにマーの薬を内緒で飲むようになった。
薬を飲めば死んだように眠れた。真っ黒な泥の中に沈んだみたいに夢も何も見ず、何も聞かず、何も考えずにいられる。アーサーは俺を
どう思っているか。ハーマンとアーサーは何を話したのか。ハーマンはどうして帰ってこないのか。考えれば考えるほど辛い現実に押し
潰されそうになる。
逃げたい。逃げ出して楽になりたい。
気付けば食事の時以外はずっと眠るようにしていた。そして今日も俺はまた眠りの沼へと身を投げる。


251 :7.5/9:2009/03/12(木) 20:04:34 ID:0Ofcm4Rn
「♪銀と金で作ろう 作ろう 作ろう 銀と金で作ろう マイフェアレディ♪」
フレッドの歌が聞こえる。キッチンの方からだ。目が段々覚めてくる。頭が痛い。喉の乾きもあってそっちに顔を出す。フレッドは一人で
積み木遊びをしていた。
「♪銀と金じゃ盗まれる 盗まれる 盗まれる♪」
「フレッド……マーとアーサーは?」
「あっ!ロイドおはよ~。んとね、マーはお仕事でね、アーサーはお出掛けだよ。」
フレッドはブンブンと細長い積み木を振り回しながら答える。その拍子にガシャンと目の前の積み木が崩れた。
「あう~!壊れちゃったあぁ~!」
フレッドは泣き出した。俺は急いで側によると、よしよしと頭を撫でてやる。
「泣くな、フレッド。何作ってたんだよ?」
散らばった積み木を集めてやる。頭が痛い。寝起きのせいで少し手元がおぼつかない。それを見てフレッドはぐずぐずしながら答え始めた。
「あのね、あのね、ロンドン橋作ったの。でもね、ダメなんだ。積み木じゃダメなんだ。煉瓦でも、銀と金でもダメなんだよ。一回壊れると
もうダメだ。壊れたらもう直んないんだ。」
フレッドの顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃだ。俺はフラフラしながらハンカチを取ってきて、それを全部拭いてやった。こんなこと位で泣く
なんて、フレッドはまだまだガキだ。そんな風に思う。涙の勢いが弱くなった辺りで鼻をかませてやる。
「ほら…今度はさ、ブルックリン橋にしろよ。あれはロンドン橋より新しいし、長いし、格好いいだろ。それに自由の女神が
寝ずの番をしてる。絶対落ちないよ。」
少しの間フレッドはぽかんとしていたものの、一つ積み木を渡してやると笑顔になってまた橋を作りはじめた。
「ロイドっ!ロイドっ!橋が出来たら一番最初にロイドに見せてあげるね!」
俺はにこっと笑うとまたサイドボードの方へ行く。
引き出しを開けていつものようにバミタールを一粒。
それから頭痛を抑えるためにアスピリンを一粒。
それぞれ口に入れて、水で流し込んだ。そしてまた一人きりの部屋に戻り、ベッドに横たわる。

『一回壊れるともうダメだ。壊れたらもう直んないんだ。』

フレッドの声が聞こえた気がした。



252 :8/9:2009/03/12(木) 20:14:06 ID:0Ofcm4Rn
気が付くと俺はクローゼットの中にいた。外からは嫌なものが聞こえてくる。耳を塞いでそれを聞かないようにした。
それなのに音は手をすり抜ける。耳が潰れるくらい力を込めてても変わらない。
その内その音が聞き覚えのあるものだと気付く。微かに微かに開いた隙間から、クローゼットの向こうを見る。
目に飛び込んできたのは誰かが犬みたいに四つん這いにされ、レイプされている光景だった。ファックされている方の股間には小さなモノが
ついている。体つきから言っても恐らくは少年だ。随分長い間犯されているのか、うっすらとピンクに染まった体のあちこちには白い粘液が
まとわりつき白い、太股には白と赤の筋が何本も伝っていた。ペニスで突かれる度、少年は痛々しい声をあげる。それでもレイプをしている
奴は容赦なく腰を振り続ける。その光景に言葉を失っていると、ふと嫌な予感がした。
そういえばアーサーがいない。
いつもクローゼットに一緒に隠れていたアーサーは?
アーサーはどこにいる?
慌てもう一度耳を済ませ、クローゼットの外を凝視する。
「あんっ…はっ、あっ、あうぅ…痛いっ、痛いよぉ…」
くちゃくちゃと湿った音をたてながら肛門を犯され、か弱い悲鳴をあげている少年の声と顔。それはアーサーのものだった。
「アーサー!!!」
俺は喉が許す限りの声を張り上げ、クローゼットの戸を開ける。アーサーを傷つけるやつは許さない。一体誰がこんな残酷なことを――
「きゃふっ…ぅうっ…くぅ…お願、い…やめてぇ…」
アーサーにのし掛かり、何度も腰を打ち付ける男。いや、少年。

彼が、ゆっくりこちらを向いた。
「え………」

「ロイドぉ…ぉねがい…ひゃんっ…も…やめて……」

そいつは、俺だった。



253 :8.5/9:2009/03/12(木) 20:16:28 ID:0Ofcm4Rn


次の瞬間、俺は痺れるような甘い感覚に襲われる。思わず目を瞑って声を漏らし、身体を痙攣させた。
「あぁっ……」
同時に絶望したような声が下から聞こえた。目を開けるとそこにはアーサーがいた。
「お願いだから…ロイド…もう、中に出さないで…お腹、苦し……」
置かれている状況に愕然とする。あろうことか俺はアーサーを押し倒し、陵辱していた。繋がった部分は真っ赤に腫れ上がり、痛々しく
ひくついている。
「ロイド…何でこんなことするんだ…?俺達、兄弟…なのに…酷いよ……」
慌ててアーサーからペニスを引き抜く。それは血と精液にまみれてヌラヌラと光っていた。
「なあ…?俺、死ぬほど…嫌だったのに…なんで…?凄く、痛いのに…」
「ご、ごめ、アーサーっ…」
「無理矢理、身体…舐められ、て…ひぐっ…フェラ、されて…こ、こんな…お尻に挿れられて…たくさん……中に出されてっ…」
虚ろな目からぽろぽろ流しながらアーサーは呟く。俺は後退り、ガクガクと震えることしかできない。
「本当に最低だな。お前は。」
いつの間にかハーマンがいる。ハーマンは恐ろしいほど冷たい瞳で俺を真っ直ぐ見据えていた。
「アーサー嫌がってたろ?それなのに何でレイプなんてした?」
何の抑揚もない声に俺は恐怖を覚える。
「そ…それは…ア、アレックスがっ…」
「違うだろ。お前思っただろう。“アーサーを自分のものにしたい”って。アーサーをファックしたいって思っただろうが。」
どうしてハーマンがそれを知ってるんだ!
何でハーマンは俺がアーサーを欲しいと思ったことを何で知ってるんだ!ああ、どうしよう。
どうしよう。アーサーが泣いてる。ハーマンが怒ってる。
ハーマンが言った通りだ。
俺はアーサーに欲情した。
アーサーを愛してる。
絶対絶対絶対許されないのに。
あの時はっきりアーサーが欲しいって思った。そしてアーサーを傷つけてしまった今でも、その感情はマグマみたいに心の奥底に
燻り続けている。一方的で、身勝手で、歪みきった俺をアーサーがどう思ってるかなんてわかりきってる。なんて堕ちれぶれた存在
なんだろう。これじゃあ、これじゃあ本当に

「“アレ”にそっくりだ。」

「ああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」

「家族を傷つける、傲慢で、自分勝手で、人としての価値なんて欠片もない。お前は“アレ”と同類だ。」
「違う違う違う違う違う!!!俺は“アレ”なんかじゃないっ!!!!」
「違わないさ。“アレ”さ俺やマーを殴った。お前はアーサーを犯した。どっちも家族を傷つける屑野郎だ。」
ハーマンが俺を責める。“アレ”を見る目で俺を射抜きながら俺を追い詰める。
「違う!!俺は“アレ”とは違うっ…!だって…だってっ…!!」
「そうだよハーマン。だってロイドはアーサーとえっちしたいんでしょ?それってただ殴るよりず~っと最悪の変態さんだよ~。」
「そうだな。コイツは“アレ”以下の蛆野郎だ。とっととくたばればいい。」
「そん…な…ハーマン…フレッド……ゆ、許し…違う……俺は…」
フレッドがケタケタ笑う。耳にこびりついて離れない。ハーマンも笑ってる。鋸で全身の肉を削がれる。どんなに叫んでも謝っても
やめてくれない。
逃げたい。
でも逃げられない。
俺には家族から離れるなんてできない。だって俺は皆が好きで、だから嫌われたりなんかしたら、俺は――
「ロイド。」
アーサーが呟いた。透明で、無機質な空気の波が鼓膜に届く。


「大嫌いだよ。」



254 :9/9:2009/03/12(木) 20:16:59 ID:0Ofcm4Rn
甘く煮たオートミールが湯気をたてている。マーはそれをスプーンで掬って口まで運んでくれる。俺はそれを少しだけ食べて、
首を振った。マーはとても心配してくれた。最近眠れているかとか、何か欲しいものはあるかとか、色々聞いてくる。俺は
大丈夫とだけ言ってまた横になった。そうは言っても寝る訳じゃない。とにかく横になるだけだ。
マーは悲しそうな顔をしてキスをする。今日は用事で隣町にいかなきゃならないらしい。アーサーとフレッドも一緒に行くん
だそうだ。マーはなるべく早く帰ると言って部屋を後にした。 ハーマンがいなくなってから今日で八日目。一週間まるまる
ハーマンは帰ってこない。そして俺はあの夢以来眠らなくなった。もう夢さえ逃げ場になってくれない。
頭が痛い。吐き気がする。視界もはっきりしない。音も妙に大きく聞こえる。
辛い。
苦しい。
気持ち悪い。
自業自得なのに、酷く悲しかった。ぽろりと、涙が出てきた。

太陽が高くなった頃、俺は耐えきれずまたサイドボードに向かう。
こんなに自分の罪深さを分かっていると言うのに、自分が嫌いなのに、それでもまだ俺は木のコートを着る気にはなれない。
…臆病者の自分を呪う。
とりあえず眠らないといけない。
それから、割れそうな頭も何とかしないと。
口から内臓が出そうな吐き気もどうにかしなきゃならない。

引き出しの中の薬を片っ端から手にとる。それから何錠かチョイスして手に盛れば小さな山になった。これを飲めば大丈夫だ。
この感覚から抜け出せる。きっとなんとかなる。薬を握り締め、水をコップに注ぐ。
早く楽になりたい。
早く、早く、早く。

俺は震える手を必死に持ち上げ、タブレットの山を口に運んだ。

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