ショタとお兄さんでエロパロ 保管庫@ ウィキ

:紅くも屋の奥で 中編


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335 名無しさん@ピンキー sage 2009/09/19(土) 16:08:53 ID:7y47StE8
 三次は、下がらず、奥へ引っ込んで控えたようだった。
 この竹内という人物は、中坪に対しても紅くも屋のやくざ共に対しても、かなりの力を持っ
ているように見える。時には、中坪に対する以上にやくざ共はこの竹内という老人を敬う態度
を示しているようだった。「貸し元」と呼ばれることが多いが、時々「ご隠居」というような呼び
方もされていた。

「浪殿、座敷に入ったきり突っ立ってどうしたい。」
「あ、あの、か、貸し元、わたくし身体がまだ汚れております、できれば…」
 何故こんなにやくざ程度の者に、卑屈にでるのか、葛藤を感じながらも浪乃進の口からは、
そんなせりふが出てくる。
「それでいいさ。上を脱いで、襦袢になりな」
上に来た綾織りのお召しを落とし、白い絹の襦袢姿になった。そして、初めて気づいた。
 先ほどの尿の染みが、白い襦袢にできていて、乾き始めたためにそれが黄色い大模様となって
襦袢の前から裾にかけてを彩っていたのだった。
「こ、これはっ」
 浪乃進は狼狽した。
 竹内は、
 「先頃、峠で乱闘になったときは、浪乃進殿の袴から、羽織まで血しぶきだらけだっそうでは
ないか。ぱっくり斬りおろした重四郎の手下の脳みそだって飛び散っていたんじぇねえかい。た
かが、自分の尿染みでそうあわてるような浪殿とは思えんがね」
 竹内のいうことは道理だったが、なにかがもう全然浪乃進の中で崩れて、違う感情と羞恥に
囚われるようになっていた。峠を上ってきた浪乃進は、恐れることがない若者だった、命のやり
取りにも眉一つ動かさなかった。ところが、峠のこちらに居る浪乃進は、怖れという感情に支配
されている。
 そして、その怖れに従属して、弱弱しく生きることに、一種の甘美さが伴うことに、浪乃進は
もう気づいていた。



336 名無しさん@ピンキー sage 2009/09/19(土) 16:10:47 ID:7y47StE8
 浪乃進は、竹内の傍らに膝をがくりとついた。
 そういうと、竹内は浪乃進の袖をとってぐいとひきつけた。浪乃進はもろい朽木のように竹内
のあぐらをかいた膝の中に倒れた。そのとき、裾が割れてしまうのを避けようと腿をそろえた
ために、浪乃進はすっぽりと老人の膝の上にお誂え向きに横抱きにされる形になってしまった。
「こう、近々と首から頬から、鼻とみると、つくづく美しい形をしているじゃねえか。浪殿。お前
さん、お侍の家に生まれて、おとこは無骨がよいなんて吹き込まれて生きてきたんじゃねえか。
美しいが損だなんてつまらねえ、と思わんか」
 老人のひび割れたような唇が浪乃進の頬に押し当てられた。そして、食いしばろうとする浪
乃進の唇の端を、ざらざらした舌がこじ開け、ナメクジのようにやわらかな口の中に進入して
きた。
 膝の上で上半身をねじって逃れようとするが、老人の舌はもう浪乃進自身の逃げ惑う舌を
捕らえてしまっていた。舌がねじれあう。浪乃進の口腔内は、みずみずしい桃の果肉のようで
あったが、ぱさぱさと乾いているかのような老人の口や舌はうろこをもった蛇のようだった。浪
乃進は顔を仰向け、口をその蛇に食い荒らすに任せた。口の端からは、たらたらと唾が流れ出
ていく。
 竹内はその唾も逃さず、啜り込んで、
「おう、甘い汁が出てきおったな。ああ、うまい。いい匂いのつばきだのう」
「あぅ、おぁ、おぁゆるしを…」
 浪乃進は、不明瞭な発音であえいだ。じい~んとした痺れが腰から下へと走っていて、いまや、
その身体は老人のあぐらをかいた膝の中にすっかり憩ってゆれていた。
 老人が腰を抱いてくる腕に応じて、浪乃進は無意識にわが身をいっそう押し付けていたりし
た。



337 名無しさん@ピンキー sage 2009/09/19(土) 16:12:08 ID:7y47StE8

 竹内は、ようやっと浪乃進の唇から離れると、今度は顔を浪乃進の襦袢の腰の辺りに近づけ、
深々と息を吸い込んだ。
「うん、やっぱり、かすかに匂うな、」
「うむ。浪殿、お前さんの尿は乾くとまた特によい香りをもつじゃねえか」
 そう言って、老人は、浪乃進の腰下の襦袢を染めた黄色い染みに深々と鼻を埋めていった。大
きく吸う気配、そして、深い湿った吐息が今度は薄い襦袢を通して浪乃進の腿から股間へと吐
き出された。
 先ほどからの浪乃進の身体の痺れは、収まるどころかじいんじいんと腰を中心にしっかりとし
た周期をもって伝播されている。、
 腿に老人の吐息を受けた時、浪乃進の薄い襦袢の内側の腿には慄えが起こった。
「そのような匂いまで、お嗅ぎになるなど…」
「そうさ、どうしようもねえ外道さ俺は、だが俺は中坪じゃねえ。手順を踏んでいく人間でな
あ。中坪の奴、いきなり熊造をお前にけしかけたそうじゃねえか」
 浪乃進は、言葉もなく頷いた。
「お前さんみてえに綺麗でも、女じゃあねえんだ。男を受け入れる道具を持って生まれたわけ
じゃねえ。それなりの準備というものがある。身体にも、心にもな。手間はかかるが、夜は長い
さ」

 竹内は浪乃進を膝から降ろすと、奥へ声をかけた。
「おい、三次。」
「へいっ」
「浪殿にな、『下し』かけて『滑り』を入れる準備をしてくれ。それと、酒を少し。例の物も出し
ておきな」
「かしこまりやした」

 一方、浪乃進は、老人の膝の上で起きてしまったからだの痺れが、畳の上に座り込んでも収
まらず膝をそろえたものの、前かがみで手をついているような妙な格好で火照った顔を俯けて
いた。だから、彼には竹内の謎のような言葉が自分に何を意味するのか落ち着いて考えてみる
こともできなかった。



338 名無しさん@ピンキー sage 2009/09/19(土) 16:13:32 ID:7y47StE8
 三次が、塗りの盆の上に、薬包らしきものと、小さな栓のついた瓶を載せて持ってきた。
 薬包を広げると、黒い丸薬を取り出し、
「浪殿、この丸薬を3粒をまずとって、口に含んでくんなせえ…、そう、少しばかり苦いでしょう
がまだ呑みこまないでください。そのまま口をあけて、はい、この油を垂らしますから、動かな
いで」
 口を開けて、舌の上で苦味をにじませる丸薬にぬらりとした油が垂らされ、その丸薬にから
まった。
「ようございます。そのまま呑みこんで」
 薬と油が浪乃進の喉を通っていった。苦味はともかく、油は非常に不快な粘度をもっており、
なかなか素直に喉を降りずにゆるゆるとまとわりつくような感触が口には残った。

 顔をしかめている浪乃進に、竹内が、杯を与え、
「さあ、これで少しさっぱりしな」

 竹内は、三次をそばに座らせたまま、すこし改まって言い出した。
「浪殿、今夜は俺と三次で、お前さんの菊の花道をよ、具合良く広げて味をみようと思ってる
んだ」
 もってまわった言い方だったが、浪乃進にもその意味が分かった。やっぱりそういうことなのか
と、目の前が暗くなる思いと、自分に何の咎めがあると思いつつも、そういう行為の相手になる
恥ずかしさ、くやしさで歯を食いしばった。
「そのためにはな、まずお前さんの腹の中の物はな、出してしまわねえとな。わかるな。ただ出
すんじゃねえ、出すだけならもっと強い薬もあるんだが、それで大事なお道具の中を荒らしち
まったんじゃ元も子もねえのよ。
 いま呑ましたのは、ゆっくり効いてくる。潮が満ちるようにひたひたと来るんだ。お前さんも
こいつの効き目には気に入ると思うぜ、味は最悪だがな。ところで、通じがあったのはいつだい
浪殿」
 たじろぎつつも浪乃進は目を伏せたまま、答える。
「昨日、今日とございませぬ。おとといは、あったような…」
「ほう、いけねえな。まあ、ここへきてがんじがらめの縄目から解かれたとたん、座敷に入れら
れて、肌を磨けの、化粧をしろのと、厠に行くどころじゃあなかったかも知れんな。三次結構硬
いかも知れんぞ、あの量で十分かい」
「ご隠居、溜まっている場合に聞き始めがちっと遅いでしょうが、いったん薬と油が回ってくれば、
利きはでかいことになりますんで。
 ちっとさじ加減を間違えると腹下しになってしまいやす。あっしもこっちに出ている姐さんの
便秘を治してやるつもりで、三日ぐれえ厠にでずっぱりにしちまったことがあって。定量より増
やす手はねえなって一つ利口になったところで、」
「ふん、おめえの医術の進歩も平坦じゃねえってわけだ。田舎芸者でも医術の進歩のために尻
を捧げたんだと思えば、立派なものさ。」
 厠に泊り込んだ芸者の話で、竹内と三次はひとしきり笑った。



339 名無しさん@ピンキー sage 2009/09/19(土) 16:14:24 ID:7y47StE8
「三次、浪殿に絵を見といてもらおうぜ、出してくれ」
 竹内は、もう一度煙管を持ちだしながら、そう言った。
 三次が細長い箱を持ってくる。
「浪殿、そんな下ばかり向いてねえで、綺麗な顔をあげな。さあ、お前さんにもちょいとばかり
俺の、趣味って奴を見せようと思ってな。そんな、目をするなよ。どうせ外道は外道だが、こん
な外道の世界でも、中坪みてえな下郎には見えねえ世界もあるんだぜ。この絵はな、どこから
出たんだかはわからねえがかなり古いもんだ。古い絵巻の一場面を掛け軸に仕立てたらしいん
だが、元禄よりこっちじゃあねえと見える」
 三次が一本の掛け軸を畳にするするとのばしていった。

 画面の下のほうは穏やかな様子だ。どこか大きな寺院の庫裏の一室に狩衣姿の少年が眠って
いる。ふっくらした頬、ちんまりとした赤い唇。菊之助によく似ている。静かな薄緑色の光に満
たされた、不思議な世界だ。
 床の間には掛け軸がかっている。絵の中に絵があるわけだ。絵は赤鬼の絵で、岩屋の中に手足
を組んで座っている。
 ところが、少年の頭の辺りから雲が湧き上がっている。湧き上がった雲の中に、もう一つ同じ
座敷があり、同じ少年が立っている。身体は向こうを向いて立ち、奇妙なことに自分で裾を捲っ
て、白桃のような尻を出している。そして、肩越しに掛け軸を振り返っている。掛け軸の中から
赤鬼が手を伸ばして、少年の尻を掴もうとしている。この雲の内側は不安な薄い朱の光に満ち
ている。

 浪乃進は、この雲の中は、少年の夢の内容を表しているらしい、と考えながら
引き込まれるように見入った。

 鬼の腕には荒い毛が渦巻いている。まだ掛け軸の中にある鬼の股座はふんどしが締められて
いるがその脇から黒々とした男根が飛び出している。夢の中の少年は、目を見開き、眉を嫌悪
に寄せて、鬼を見つめている。ひたいの片側には強い朱が立って強い恐怖を表している。
 そうした夢を見ているらしい、絵の下方の現実の少年の寝顔はしかし、目元にうっすらと紅
がかかっているだけで苦痛がなく、口元は今にも歌いだしそうに唇が半開きになっている。



340 名無しさん@ピンキー sage 2009/09/19(土) 16:15:21 ID:7y47StE8
「私に絵のよい悪いはわかりませぬ。不思議な絵でございますね。穏やかに眠るこの子は菊之助
かと思うほど似ております。こうして眠っている可愛らしさ、懐かしくて心が痛む。でも、恐ろ
しいものが眠りの中に待っているのですね…」
「そう、そう見えるか。
 この絵に最初に取り付かれたのはこの俺だが、三次を引っぱり込んじまった。
 三次は、当時歌川一門の絵描きでな、相当描ける方の男だったが…、俺のところに遊びに来
たこいつにこの掛け軸を見せた。それが運の尽きさ。
 三次は、この絵の失われた続きが描きたくて、およそ外道なものばかり描くようになってな。
若衆が盗賊だの、唐人にいたぶられるような下品な枕絵にまで手を染めてな、歌川の親爺、か
んかんになって、破門さ。そのあと、食い詰めて俺のところに転がり込んだ。」
「俺は実は、こいつが来てその気になった。三次の腕を見込んで『絵巻のあったかもしれない続
き』が、見れるような気がして。
 いわずと知れた陰間茶屋にもはまったし。上方の、その手の悪所にも、三次をつれていったな。
  京のさる大寺では、奥まったところでとっておきの稚児を裸に剥いての遊びをやっておった。
随分金は要ったが、そういうところへも潜り込んだ。(注1)もちろん、こいつも一緒だったさ。
 所司代の豊前守様や、僧正様、とんでもねえ御歴々のご老人たちのお忍びの遊び場でな。ま
ったくのうぶな少年で随分育ちのよさそうなのが、どういう理由なのか連れてこられておった
な。振袖なんか着せられてよ、
 『お寺は好かぬ、帰してくれろ、母上のところに返してくれろ』とあどけなく言うんだが、帰し
てくれるはずもねえ。意味がわかってねえから、年寄りに抱き寄せられても膝の上でぽかんと
している。しわの寄った手で、身体を撫で回されて初めて気味悪がって泣き出すが、そんな涙
さえ外道の老人に舐め吸われて、嫌だ嫌だと顔をふりながら素裸に剥かれていくのさ。僧正
様ときては、股間の大根みてえなものを構えて、初物のまだ固そうな尻を割りにかかるのさ。
 俺にあてがわれたのは多少もののわかってきた稚児で、酒をついだり、俺の股の道具を上手
に口で吸ってもくれる。俺は胡坐かいて、稚児にちんちん吸わせながら、お歴々のお楽しみ、つ
まり初物の稚児の阿鼻叫喚を見物してたな。
 放蕩を尽くしたといえば尽くした。いや地獄めぐりかな。西洋には団帝という立派な人が生
きたまま「あの世」を廻ったという話があるそうだが、とんだ団帝さ。(注2)

 俺には、何かが満足できなかった。お遊びよりむしろ、三次がそのとき画帳に描いた絵が楽し
みだった。中でも良さそうなのを、描きなおさせたりと、どうにもひねた性分らしいが、俺の
夢はぐるっと一巡りして、また絵巻に戻っちまうのさ。
 ただ、いつからだったか、三次も俺も、どうにもいい夢が見れなくなった気がする。なあ、」

※注1
 「…総本山…寺のことである」などと書けるわけが無い。

※注2
 むろん、ダンテの地獄編のことである。ペダンティックな老人らしい。



341 名無しさん@ピンキー sage 2009/09/19(土) 16:16:18 ID:7y47StE8

こう水を向けられて、三次は
「とにかくあっしはご隠居の屋敷で食うに困らなくなると、ますます下品で外道なものだけを
描き続けやした。
 商売気はなくなっていたんだが、あっしの元絵を彫らせて刷りにかけた版元もおりやした。
そういうものを捌く裏の筋道があるらしくて結構な儲けは出ていたってこって、黄表紙も黄表
紙、水野様の時代なら手鎖どころじゃ済まねえしろもんだ、あっしら「裏表紙」(注1)なんてふ
ざけた符丁で呼んでやしたな。まだ歌川に居た頃からの腐れ縁で、そういう腐れ縁ほどなかな
か切れねえもんで。
 画帳からこれはというのを選んで大きな絵にしたものもありやす。ご隠居の斡旋で僧正様の
ところに持ち込んで、ご褒美は大枚三百両、えらい景気で。
 とにかくありとあらゆる外道は見物しやしたが、実はだんだん描きたいものがとんと頭の中
にも、現実にも見つからなくなって、自分はあの絵巻の世界から追放されたと思いかけており
やした。
 しかし、ここで、この峠で、菊之助殿と浪乃進殿にお目にかかり、あっしの筆はまた、勢いあま
るほど、押さえがたいほど、走り始めました。
 お二人の苦難を眺めて、何が絵かと、お腹立ちは承知の上、あっしは今描いても描いて足りな
い、狂ったようにと申しますか…
 失礼ながら、菊之助殿、浪乃進殿がそれぞれ相次いで熊造に返り討ちにあった様子も、わな
わなと震える筆を押さえつけながら、走り描いておりやした。

※注1
 ここで三次が言う「裏表紙」はいわゆる黄表紙の体裁でも最悪の淫本で、ごく小数現存してい
る。江戸枕絵系統の蒐集家でもこのディープな分野を目にした人は少ないであろう。
処罰をおそれて版元をごまかしているから、研究の道筋も立ちにくいのである。
 例として、宝暦年間のものとされる「炙稚児白鮎滴蜜」(しらあゆのちごあぶりみつのしたた
り)がある。
 ちなみに「裏本」といわれた昭和期の出版物との名称上の繋がりは定かでない。




342 名無しさん@ピンキー sage 2009/09/19(土) 16:17:30 ID:7y47StE8
「浪殿に見ていただくなら、この二三日の走り描きでも見てもらいやしょう。」
 三次は、画帳をひとくくりぽんとたたみに放り出した。この画帳を見ていく浪乃進の身体は
細かく震えはじめていた。下腹にゆっくりと『下し』の効果が出始めていた。
 画帳のどの項にも、浪乃進がいた。
 括られて、座敷牢に放り込まれた姿。塗りつぶされた墨の闇の中に、浪乃進の足先が白く浮
き出している。これで走り書き程度なのだろうか、この筆使いの鮮やかさは尋常なわざではな
い。
 座敷に移されてぼおっと庭を眺める姿。
 鏡の前に座って、紅をさす姿、横顔がぞっとするほど美しく怖い。この絵の中の浪乃進は鏡の
中にいったい何を見ているのか。
 熊造に返り討ちにあうために、裸に剥かれて廊下を引かれていく姿。その手足に、背中に強い
抵抗があらわれているのが繊細な線で見事に描かれている。
 がっくりと首を前に折って、熊造に辱めを受ける姿。足指を強く折り曲げて苦痛に耐えてい
る。
 震える手で次の項をめくった時、浪乃進は全身が火で焼かれるように思った。脱ぎ捨てられ
た衣類の中に突っ伏して慟哭し、自らの尻を手で押さえている浪乃進。そのしりの間からはぬ
らりと、うなぎがくねるように液があふれ出ている様子が描き込まれている。「あの液には血
が混じっていたはずだ」と浪乃進は思った。墨一色で描かれているのに、尻からの流れに混じる
紅を、そこに見ているような気がする。その回りには中坪や熊造が汚い毛脛を出して立ち、見
下ろしている。下郎共の足元にうずくまり汗と涙に濡れ、憎い敵の雄の汁を尻から流して、浪
乃進は泣いている、痛みと羞恥で自分の尻をかばうように手を置いているしぐさも余計に屈辱
を増していた。
 なんという、惨めな姿かと、そう思って浪乃進は見つめ、見つめ続けて目を逸らすことができ
ない。身体が震える、下腹に苦しい嵐が起こり始めている。もっと、もっと自分は惨めになるの
だろうかここで…、浪乃進はそう思った、そう思って画帳を見続けた。

「そこはとびきりいいだろう。尻を犯されている一つ手前のよりもいい。浪殿ならどっちをとる
かね」
 描かれた本人に向かってこの問いはあまりといえばあまりだった。
「どちらの浪乃進もただただ恥ずかしいばかり、よいも悪いもありませぬっ」
 さすがに気がくじけていた浪乃進も、顔をあげて気色ばって答えた。
 その言葉の調子に、竹内は爆笑して、
「そらあそうか、尻を辱められている時と、そのあとで泣いて這いつくばっている時とどっちの
自分がよいかと聞かれたら困惑じゃな、俺としたことが野暮ないい様だったぜ。いやいや、絵と
しての話さ。このあとのほうの絵を、極彩色の屏風絵に仕立てたら、僧正様どれだけの値をつ
けるか」



343 名無しさん@ピンキー sage 2009/09/19(土) 16:18:23 ID:7y47StE8
 一番最近描かれたらしいのは、浪乃進が湯殿に入ろうとして着物を足元に落とした姿だった。
すらりとした首の線、やや骨ばった肩から脇、浪乃進以外の誰でもない。
たしか、今日の午前に、三次は湯道具を持ってついて来ていた。浪乃進はすぐ湯屋のほうに入っ
てしまったはずだ。あの短い間に見た、浪乃進の姿を、こうも的確に美しく描けるものだろう
か。

 そうしている間にも、浪乃進の下腹の嵐は前兆の段階を過ぎていたし、あわせて尿もまた溜
まってきていた。畳に両手をついて、画帳を見ている姿勢のまま、膝が独りでに動いてしまう。
「あ、あの、お腹が…」
「わかってるさ、浪殿、すぐ出しちゃ意味がねえのさ、いろんな意味でな」
 浪乃進は、その言葉に眉をしかめ、ぐいと顔を持ち上げる。
 と、斜め前に座った三次は、新たな画帳を膝元に置いてもう筆を走らせている。くっと上がっ
た顎、苦しげな首、かすかに寄った眉と、それを写し取る最適な線を三次はさぐっている。
 下腹も急を告げているが、浪乃進の膀胱もまた切迫してきている。
「あ、かしもと、いえ、ご隠居さま。お、お小水もいたしたいのです。浪乃進に、御不浄をお許し
願えませぬか」
 竹内はにやりとした。
「よかろう、ここにギヤマンがある。これへ今度は上手にこぼさねえように出してごらん、いいぜ。
出すときには『お小水を御覧ください』と挨拶するんだ」
 そういって、例のギヤマンの鉢を浪乃進の膝前に押し出してきた。抗っても無駄であることは
分かっていた。浪乃進は深いため息をつき、目じりに潤ってくるものをこらえた。



344 名無しさん@ピンキー sage 2009/09/19(土) 16:19:13 ID:7y47StE8
 そう恥らっている余裕も無い。浪乃進は膝で立って、ギヤマンの鉢を引き寄せた。またかなり
溜まってきているから、無造作に鉢に放尿すれば飛び散ってしまうだろう。そうなると何を言
われるか分からない。
 浪乃進はせわしなく襦袢の裾を捲くって、だらんと下がった男根を晒した。その肉の筒の先
端まで尿が迫っているように、彼は感じていた。ギヤマンの鉢を片手に持ち、もう一方の手を恥
ずかしい肉の筒に副えて、ギヤマンの鉢の内側に誘導する。そして、
「お、おしょうすい、を、御覧ください」
 と、搾り出すように言った。
「あ、そその姿、浪殿、申し訳ありやせん。そのまま、ほんの少しおとどまりを」
急に三次から声がかかった。画帳の新しい項がめくられ、三次は筆を下ろす姿勢になったまま、
じっと浪乃進を見つめた。
 強制されたわけでもないのに、浪乃進は凍りついたように動きを止めた。片手で自分の陰茎
を持ちギヤマンの鉢で尿を受けようとするその破廉恥な姿で。ほどなく、この絵の天才は、流
れるように筆を使い始めた。
「あっ、もう、もう…」
「もういいぜ、浪殿、溜まったもの見せて御覧」
 竹内の声がかかった。
 実際もうこらえてられなかった。しゅうーっと音をたてて、浪乃進の尿はギヤマンの鉢に流し
込まれた。飛び散らないように鉢の内側のカーブに放尿の角度をあわせたので、尿の勢いはか
なり強かったが鉢の中をなめらかに滑って流れる。尿は鉢の中央でくるくるとちいさな渦をつ
くった。

 座敷の宴席での大騒ぎとは違い、流れ出しから奔流となり滴りとなって終わるまで、静寂の
中に浪乃進の水音が響いていた。竹内老人はじっと耳を傾け、三次は食い入るように見つめてい
た。



345 名無しさん@ピンキー sage 2009/09/19(土) 16:20:04 ID:7y47StE8
 一息つくまもなく我慢に我慢を重ねた腹の中の塊が動き出していた。地中の竜が首をもた
げ、ぐるんぐるんと寝返りを打つかのように浪乃進の腸が目覚めた。ぐぅぐぅぐーっと低い篭
もった響きが浪乃進の下腹から起こる。この静寂な離れ座敷では、その生理的な音も確実に老
人の耳にも、三次の耳にも届いていた。
 竹内は、大杯を手に、浪乃進の腹音に目を細めた。
「こうして、美しいお人の宝が腹に実ったしるしの音を聴いて、美しい人の身体から滴った酒を
味わうのは至福と言うものだな」
 大杯には、麦から作る強い焼酎を注ぎここに例のギヤマンの鉢から浪乃進のうすいろの尿を
注いで割ってある。三次が先ほど女中が持ってきた櫃を持ち出し中の氷の塊を、砕いた。これ
を杯の液体の中に転がす。この季節に氷とは江戸でも稀な贅沢振りだった。 
「三次も一杯どうだ。あほの中坪親分の宴席じゃあ落ち着いて味わうどころじゃねえわな」
「へい、いただきやす」
 この二人に躊躇などあるわけがない。竹内も三次も、ぐっと香り立つ液体を一気に飲み干し
た。その目は今までになく、静かだが妖しい情熱を込めて輝いていた。
 他人の尿をかけられる、ましてや飲むという行為はそういう行為をした人間がおとしめられ
る事だと、浪乃進の常識は語っていた。しかし、どうだろう、ここで尿を満足げに飲むのを見せ
つけられて、おとしめられ、赤面しているのはこの自分なのだ。
 支配と隷属は二重三重に裏返り、汚辱や羞恥もまた反転して陶酔に接近し、苦痛はあたか
も快楽になる。あらゆる感覚を、巧みに鏡の魔術のように裏返して楽しんでみせるこの老人は
一体…。吐き気を催すような汚らしい光景をゆうゆうと観覧し、実行し、その遠い向こうに
「美のようなもの」さえ、この老人は見ようとしているのか?
 下腹の苦痛の中で、浪乃進は、この老人に深い怖れを抱き始めていた。



346 名無しさん@ピンキー sage 2009/09/19(土) 16:20:55 ID:7y47StE8
 ごぉぉっ、ごぉぉぉ、と浪乃進の下腹がひっきりなしに鳴り始めた。そのたびに背筋から、寒気
のようなものが浪乃進の全身に走る。そのあと、きりきりと揉み込むような痛みがわき腹か
ら差し込んでくる。
 まともに畳に座っていられない苦痛だが、顔を上げれば、二人の男が自分の尿で割った酒を
注ぎあって尿酒談義をしている。どこかの寺の稚児の小水酒より、香りに腰があるとか、臭み
が強いのはやや年齢が上のせいか、いやこの臭みが浪殿の尿の風味というものだ、とか聞くに堪
えない、汚ならしい会話が続いていた。
 無理にも顔を俯けて畳の目を見続けるしかなかった。堪えながら震えで尻が畳から浮き、膝
だけで体重を支えているような姿勢になってしまう。
「ああ、ご隠居さま。浪乃進をご不浄にいかせてくださりませ。い、今にも粗相をして、くっ、よ、
汚してしまいますっ。」
「小便は、素直にここで流して見せてくれたじゃねえか。小便と、今堪えているのはそんなに違
うものかい、ええ?、どう違うのか教えてくれろ」
 竹内はたくみに、浪乃進に恥ずかしいことを口にさせようとする。それが分かっていても浪乃
進には、これを無視する余裕が無い。
「そのようなご無体な。放尿とて、つらい思いをして…、でも、そればかりは、ああくっ、だ、脱
糞は、脱糞は、ちがいますっ、人に見せるような、見せるようなものではござりませぬっ」
 言ってしまった。そのうえ引きつったような雌猫のような声を張り上げて言ってしまった。そ
の恥ずかしさに顔面は火のようになった。
「ほおぉ、放尿は見せるが、脱糞は見せられぬと、道理があるのかないのか酔って来た俺の頭で
はよく分からんな。」



347 名無しさん@ピンキー sage 2009/09/19(土) 16:21:39 ID:7y47StE8
 浪乃進の懇願をはぐらかしたまま、竹内は、
「三次、浪殿の腹の具合はどう見る。下しは効いてるようだな。下しと一緒に『膨らし』の薬を
調合するようなことを言っておったが、そっちはどんな具合だ」
「下しは十分でやしょう。今晩は『下し』の油と『膨らし』の薬も一度に入っておりやす。
 下りながら、気を発しまして、腹の中をいっぱいに膨らませる薬効がありやす。そちらも、も
う効いてよい時間ですが、ちと伺えやせん。浪殿のお姿の綺麗さで、見過ごしていましたが、よ
く鍛えたお体で腹の筋の強さで押さえきっているようにもみえやすが。」
「いかにもな、つくづくと美しい肌だが、筋は強えからだつきだ。そうだ、そうだ、浪殿、立ち上
がって、ひとさし舞いを頼むぜ。家中じゃあ評判だったそうじゃねえか。さあさあ、そんなに這
いつくばっておらんで、たのむぜ」
 ご不浄にいかせてくれという懇願は、受け流された上、今度は立って舞えと言う。恥ずかしい
始末になる怖れに慄きながら、浪乃進はようやっと膝から半身を起こした。
 わなわなと震えかかる口元を無理無理に引き結んで、眉を寄せたまま浪乃介は顔をあげて
立った。その姿の尋常でない気品に押されて三次は自分が這い蹲いそうになった。
 しかし、老人は喜色満面だった。
 舞をうながすように、ゆるゆると、深い声で謡いだす。
「花をも憂しと、捨つる身のぉ
 …
花をも憂しと、捨つる身のぉぉ 」(注1)

 浪乃進の背筋がみるみるしゃんと伸びた。手がゆっくりと表情を持ってくる。その白い襦袢の
裾前が尿染みで汚れているのが哀れだった。

(注1)謡曲 忠度



348 名無しさん@ピンキー sage 2009/09/19(土) 16:22:36 ID:7y47StE8
「月も宿かる、こやの池、
水底清く、澄みなして…」

 浪乃進の脚に力がこもり、
 大きく強く踏み出す。
 老人の鋭い目配せで、三次がさっと立って歩み寄り、浪乃進の襦袢の腰紐を、すらりと抜いて
しまった。足を踏み出したところで、襦袢はばらりと前をはだける。

「ああっ、これはっ、」
「浪殿、止めてはならぬ、とめてはならぬ、さあ、舞いなされ
芦の葉分けの風の音、…、と、」

 脚を少し開いて踏み出したまま、浪乃進は強烈な発作に襲われた。下腹に溜まりに溜まった
ガスが膨張し、そのすべすべした白い平地をふっくりとした山に押し上げていた。そして、雷の
ような音、差し込んでくる痛み。歯を食いしばって耐える。顕わになった男根までもが、身体の
振動を伝えてゆらゆらとゆれていた。

「捨つる身までも、有馬山、隠れかねたる世の…」

「おお、おお、膨らんできたぜ、ぶっくりとあんなに三次、描きとめるんだぞ、逃すな三次」
 言われるまでもなく、三次の筆は画帳の上に躍動していた。
「おお、あれほど下腹を『膨らし』で歪められても、それでもお美しい」

「そうだ、そうだろう三次、さあ浪殿、ゆっくり脚を左へ開いて、裾を捌いて、上体をゆっくり正
面だ」
 竹内に誘導されるように、浪乃進は所作を続けた。その洗練された舞の姿自体はこれほど汚
辱の中にあろうとも崩れなかった。

「その腹を見せるんだ、糞の溜まった白い腹を見せよ。お前さんの、男のしるしを存分に見せよ、
ようし立派だぞ、立派にぶーらりとゆれてござる、さあ顔をしっかりあげて美しい涙を流して
見せよ」
 何と言う姿だったろう。座敷の中央で左手を伸ばし、腿をゆるく開いて優雅に立つ。だがま
とう衣装は裾前を尿染みが彩った襦袢、それも腰紐が取られ、身体前面を覆うものは無い。引
き締められた白い下腹は『膨らし』の薬効で無残に膨張していた。涙にぬれた顔を伏せること
も許されず、自分を歪んだ嗜好のもてあそびものとする妖しい老人の、鑑賞に晒していた。
 身体の内は、激しい便意を肛門の堰を押さえることで懸命に食い止めようと緊張に満ちてい
る。もれる、もれてしまう、本当の汚辱が噴出してしまう、…腹中の猛威とともに浪乃進の胸
に恐怖と絶望が膨れ上がった。



349 名無しさん@ピンキー sage 2009/09/19(土) 16:23:22 ID:7y47StE8

「憂きに心は徒夢の、覚むる枕に鐘とおき、…」

短い苦しい息から、浪乃進は 
「はうっ、ああああ、もう、もう、もういけませぬっ。ご、ご不浄へ、後生でござりまする。浪乃進
は、舞もしました、ああ、膨れたお腹もお見せしました、ご隠居様に、男のしるしも見ていた
だきました。涙も見ていただきました、後生でござりまする。ご不浄へっ、ああ、後生っ」

「堪能したぜ、浪殿、厠は廊下をめぐって池の向こうだぜ」
 しかし、いかにもそれは遅すぎた。浪乃進は舞の形をとったまま、襦袢の前を大開にして、膨
れ上がった白い腹を抱え懸命に肛門を食い締めながら、もう一歩も動けなかった。

「あ、はっ、」
そのとき、びりっと音がした。浪乃進の腰ががくんとゆれる。何かが突発し、浪乃進の強靭な
自制力がそれを一瞬支えた。ただ、それは一瞬だった。
 浪乃進の腿の内側をつーっと汚液が走り、
「びっ、びっ、びっ、ぶぶっ」
とはっきり、下品な音が下のほうから発生した。
「は、あぁぁ、む、無念、無念でござりまする。そ、そそうを、浪乃進はそそうをしてしまいます
るっ」
 襦袢の内側の布に、さっと黄土色の液が吹き流れた。浪乃進はどうしてよいかわからず、腰が
崩れるように後ろへよろめき中腰のまま、無意識に他人の目から汚物を隠そうとするかのよ
うに、襦袢で尻からの噴出を受けようとしていた。
 そして、本格的な決壊が始まった。



350 名無しさん@ピンキー sage 2009/09/19(土) 16:24:11 ID:7y47StE8
「ぶりぶりぶりっ、ぶぶぶーーーーっ」
 便塊が、どろどろの液と一緒に、土石流のように襦袢に落ちる。中腰のままこれを襦袢の裾
で抱えきろうとするも、便は容赦なく飛び散って前方の畳に、ぼとぼとと落下し始めた。これ
を止めようとするのも浪乃進だが、思いっきりいきんで、恥ずかしいうなり声まで上げて、便
を押し出してしまっているのも同時に浪乃進なのだった。
「ぐっ、うううう、ふぅううううっ、あーーーっ、
 ああっ、ああっ、こんな、ひどい、いやだ、いやででござりまする、ご、ごらんになってはいけま
せぬっ、うああっ」
部屋には、濃い霧が立ち込めるように汚臭が充満していた。

 浪乃進はとうとう膝をがっくりと畳についてそれでも懸命に襦袢の布を尻にあてがってなお
狂ったように押さえの利かぬ軟便を押さえ込もうとしていた。しかし、その布は薄いしゃれた
白い絹であって、とてもおむつの代用になるものではない。布の外側も黄土色に染まり、汚物が
滴って溢れている。

 それを見つめる老人と三次は、しかし、表情も変えず騒ぎもせず、静かに、まだ続いている舞
を見ているかのようにじっと座って見ていた。



351 名無しさん@ピンキー sage 2009/09/19(土) 16:25:01 ID:7y47StE8
 ゆらゆらと、水の底から見ているような情景が浪乃進の目には映っている。涙がこんこんと湧
いて、彼の視界を水の底にしてしまっていた。
 いつの間にか、我知らず浪乃進は細い女のようなすすり泣き声で
「もうしわけございませぬ、ああ、そそうしてしまいました、もらしてしまいました、浪は脱糞
してしまいました、いやいや、いや、くさい、ああ、臭いものを出してしまいました。見ないで嗅
がないで、このまま糞の中で死にとうござりまする、ああ、いやいや…」

 三次の顔が桶と角盥を運んで、近づいてきて、わらった。
「お気をしずめなさって浪殿。大丈夫、女中は呼びません。あっしとご隠居のいたずらが
 過ぎました。あっしがみんな始末をつけますから。はい、綺麗にいたします。臭くなどありや
せん、浪殿のお宝は本当によい匂いで、あっしなど、いつまでも嗅いでいたいくらいでやす」
 しかし、浪乃進の心は幼女のようになってしまい、暴れ、訳も無く三次に抵抗した。
「いや、いや、いやいやぁあ」
「あ、これ、さあ、襦袢ごとぬいで、さあ。憎ければ、お気が済むなら三次をぶってくだされ。よ
うござんす、三次をぶって、気がお済になったら、身体を清めさせておくんなさい」
 浪乃進の襦袢と、申し訳のように絡み付いていた腰巻で、便の塊を包むようにして、桶に移し、
浪乃進は全裸にした。
 三次はそうして、角盥でゆすいだ布で、浪乃進の腿から腹をぬぐい、ゆっくりと清めていった。
 いっとき、彼はその手を止めて振り向き、
「ご隠居、所場を換えましょうや、西奥の離れにいらしておくんなさい。あっしが、始末をつけて、
浪殿を湯屋で綺麗にしてから、お連れして参りやす。」



352 名無しさん@ピンキー sage 2009/09/19(土) 16:25:46 ID:7y47StE8
 深夜の湯屋で、浪乃進は呆然とうずくまり、三次にすべてをゆだねていた。
 思えば、浪乃進の身体はさまざまなものがこびりついていた。宴席での放尿、座敷での放尿、
尻の間から膝の裏、かかとまで流れた液便はしつこくかかとまでこびりついていた。それらすべ
て、何度も何度も湯をかけ流し、涸れるまで泣いた涙も一緒に流れ落とした。

 三次は手ぬぐいと、素手で、浪乃進の身体をすみからすみまで清めた。尻たぶの間、にも指を
入れ、しりの穴のしわにも指を沿わせる。浪乃進は逆らわなかった。
 はっとしたのは、三次が指を、浪乃進の肛門に深く潜らしたときだった。びくんと、からだが
反応した。
「ごめんなさいよ。すべりが効いたようで、ぬるっと軟らかく仕上がっておりやす。これで、浪殿
のからだに傷をつけずにご隠居に可愛がってもらえやしょう。いやいや、何もおっしゃらずに、ま
たまた、泣いちゃいけませんぜ。」

 湯から上がって、新しくすべすべした腰巻を着け軟らかい襦袢を着せられたあと、どうして
も気になっていたのか浪乃進が三次にたずねた。
「あ、あの、襦袢の入った桶はどうしやった」
 三次は一瞬沈黙し、ややばつが悪そうに言った。
「へい、中坪の親分どうも続きの部屋に入って様子を伺っていたらしくて、…」
「な、中坪がっ」
「へい、あっしが浪殿が湯に漬かったところで、一度戻ったところに出てきやして、『俺だってせめ
て浪殿の出したものを見てもいいだろう、香りも嗅ぎてえ』と、桶ごと持っていっちまいまして、
いやはや、あの人も業の深い」
「…、わたしの、わたしが出したあの……を」
 それほどまでに歪んだ人々の、歪んだ欲望というものをまざまざと感じ、浪乃進は、軽蔑よ
りも、深い怖れに足がすくんだ。峠のこちら側のこの世界にとらわれて自分と菊之助はこれか
らまだまだ、どのような辱めにあうのだろうか。