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「Wake Up . The ヒーロー その3」(2009/01/13 (火) 05:08:48) の最新版変更点
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**Wake Up . The ヒーロー その3 ◆hqLsjDR84w
ちょうど、超電子人間となったストロンガーとナタクが激突した頃。
支給品のバイクでもって、エリアD-3からC-3へと入った参加者がいた。
雪原をバイクで疾走するなど、どう考えても危険極まりない行為だが、スピードを落とすことなく平然とやってのけている。
その参加者の名は、神敬介。またの名を五人目の仮面ライダー、仮面ライダーX。通称、Xライダー。
強大な悪に屈することなく、人類の自由と平和の為に戦う十人の改造人間たち。
彼らを総称して、仮面ライダーと呼ぶ。
――しかし今の敬介は、もはや仮面ライダーではない。
新たに現れた悪の組織、BADANの大幹部であるガモン大佐=暗闇大使の一部からなる暗闇の種子。
それを胸部装甲の奥深くに埋め込まれ、ただ目の前の存在を破壊するべく動く存在、いわば狂戦士となっている。
五人目の仮面ライダーとしての心は胸の奥に存在するものの、暗闇の種子の支配力には抗えない。
結果、神敬介は正義を持ったままの状態で、己の凶行をただ見つめることしか出来なかった。
思考する能力も残っているが、それも他の存在を排除するためだけに行使される。
常人ならば狂ってしまいそうな状況でも、敬介の心は折れていない。
かつては悪に対抗するために鍛えられた、強靭な精神の所為で。
敬介は気が触れてしまうことなく、心の中で叫び続けていた。
これ以上悪行を繰り返す前に、自分を殺してくれ――と。
敬介がC-3エリアに侵入してから暫くした頃、エリアを揺るが轟いた。
人が集まるだろうと推測できる左下コロニーへと移動し、そこで破壊すべき参加者を探そうとしていた敬介が止まる。
敬介には、先ほどの轟音に聞き覚えがあった。
このバトルロワイアルに参加させられているであろう敬介の後輩、城茂=仮面ライダーストロンガー。
彼が超電子の力を解放して戦った時、あのような耳をつんざく巨大な音が響き渡る。
もしやさっきの音は、ストロンガーによるものであろうか。
そんな考えが敬介の脳内に浮かんだと同時に、敬介の身体は動いていた。
南下するという予定を変更して、西へとハンドルを捻る。
(優先すべき破壊対象は、仮面ライダーというワケか……)
妙に冷静に、自分の行動から暗闇の種子の優先する事態を分析する敬介。
Xライダーの姿をとっているワケではないが、もはやどちらの瞳からも涙は流れていない。
すっかり枯れ切ってしまったのであろうか。
仲間であるストロンガーを破壊するべく、アクセルを捻る己の身体に敬介は絶望――していなかった。
(いいさ……むしろ好都合だ。
アイツが仮面ライダーである以上、悪である俺が適う道理はない……
やっと……やっと俺は、死ぬことが出来る…………)
戦友への信頼から、敬介は一切の抵抗なくバイクを駆動させた。
もっとも抵抗といっても、今の敬介には右手の力をほんの少し緩めるくらいしか出来ないのだが。
◇ ◇ ◇
音のした方へと辿り着いた敬介の瞳が映したのは、仰向けに倒れこむ城茂の姿であった。
五十メートルほど茂から離れた場所にHARLEY-DAVIDSON:FAT BOYを停車させ、忍び足で茂のもとまで移動する敬介。
バイクのまま接近した結果、エンジン音によって茂が目覚めてしまうのを警戒しての行動だ。
ナタクとの戦闘で超電子ダイナモを発動させたため、疲弊しきって身体を休める茂は、敬介があと数歩の位置まで接近しても、目覚める素振りすら見せない。
敬介がPDAを操作して、戻しておいた長ドスを再転送する。
出現した長ドスを逆手で構え、茂の首へと近づけていく敬介。
刀身と茂の首との距離、あと一センチ。
そこで、敬介の動きが止まった。
反発する力に逆らうかのようにゆっくりと、敬介が長ドスを引き戻していく。
そのまま秒にも満たない期間、敬介の身体が静止。微動だにしなくなった。
――しかしそこまでが敬介に出来る限界、暗闇の種子への精一杯の抵抗であった。
これまでの硬直が虚構であるかのように、敬介が動いた。
疾風の速さで以って、逆手に構えた長ドスを左から右へと一閃。
白い雪が、真紅に染め上げられる。塗料の名は、血液。
宙を舞った茂の生首が、鍛えられた体躯とは離れた場所に落ちる。
剥き出しであった茂のコイルアームは、先ほどまで帯電していたようだが、数秒して電気エネルギーが消滅。
「う……うオオォォォおぉおおォォオおオアアアァアァぁアぁあぁアァァアああああっ!!」
敬介が絶叫する。
服が、凶器が、髪が、肌が、後輩の返り血で塗れた状態で。
枯渇したと思われていた涙が、敬介の二つの瞳から溢れ出す。
両の頬を伝う涙は、溶解させていく。
凝固していた、これまで敬介が手にかけた者達の血液、およびオイルを。
――――もしかしたら、茂が意識を落としていたのは、幸運であったのかもしれない。
信頼していた先輩の変わり果てた姿を見ることなく、逝けたのだから。
◇ ◇ ◇
城茂を殺害した敬介の行動は、迅速であった。
咆哮の後、茂のPDAを確認。
『テントロー』の文字を発見すると、すぐに転送を開始。
それまで乗っていたHARLEY-DAVIDSON:FAT BOYは、バイクは二つも必要ないとばかりに、PDAに戻すこともなく放置。
必要だとはいえ、運転の邪魔となる長ドスは、再びPDAに戻す。
そこまで終えると、早々に殺害現場を後にしようと、敬介はPDAをポケットに押し込む。
そして、出現したテントローに飛び乗ると同時に、敬介は一気にアクセルを捻った。
全身を殺害した相手の血液とオイルで照らしながら、無表情でテントローを走らせる敬介。
かつて性格の良さを如実に表していた好青年風の容姿も、今となってはどう見ても怪人のソレとなっていた。
それでも、敬介の心は砕けない。
己の精神の強さゆえ、敬介は苦しみ続ける。
第五のヒーローは目覚めていながらにして、心の中で果てしない暗闇と戦い続ける。
現在の戦況――――明らかに、暗闇優勢。
【A-3 雪原/一日目 午前】
【神敬介@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:胸部に埋め込まれた暗闇大使の種子による洗脳状態、
胸部破損、疲労(大)、全身にダメージ(中)、生命の水の影響(極小)
[装備]:テントロー@仮面ライダーSPIRITS
[道具]:マグネット×2、支給品一式およびPDA×6(アルレッキーノ、神 敬介、ロボ、アラレ、シュトロハイム、城茂)
スモールライト@ドラえもん(残り四回)、阿紫花の長ドス@からくりサーカス:アルレッキーノのPDA
ぎんのいし@クロノトリガー、液体窒素入りのタンクローリー@ターミネーター2 (D-3基地に放置)
タイムストッパー@ロックマン2(メカ沢の胴体部):ロボのPDA
はちゅねミクのネギ@VOCALOID2(E-3道路に放置)メッセージ大砲@ドラえもん(E-3道路に放置)
アタッチメント@仮面ライダーSPIRITS(シュトロハイムの右腕)
拡声器@現実(E-3道路に放置):アラレ、及びシュトロハイムのPDA。転送可能
HARLEY-DAVIDSON:FAT BOY@ターミネーター2(城茂の死体付近)、:城茂のPDA
[思考・状況]
基本:他の存在を排除する。
0:殺してくれ。
1:A-4の連絡通路を通り、左下コロニーへ移動。参加者を探し出し、排除。
2:エックス……
[備考]
※阿紫花の血により回復速度が促進され、胸の出血が止まりました。他に全く影響が無いのかは、次の書き手様にお任せします。
※第一放送の内容を知りません。
■
敬介が既に立ち去り、城茂の亡骸だけが残された町。
そこの一画に、異変が起こる。
少しずつだが、地面が浮き上がっていき――ついに、一つの穴が空いた。
誰もいないはずの場所で勝手に穴が出来たのか? いいや、違う。
確かに地面の中には誰もいなかったが、地面の下には一体の参加者がいたのだ。
穴から両手が出現し、地面を鷲掴み。
そのまま力を込めて、黒いボディスーツに身を包んだ巨漢が穴より姿を表す。
一見するとただの西洋人だが、全身に刻まれた裂傷のうちの深い痕より存在をアピールする金属骨格が、彼が人外であることを主張する。
何故、瓦礫に埋もれていたT-800が、地中より出現したのか。
説明するには、暫し時を遡る必要がある。
◇ ◇ ◇
ゆっくりとだが、確実に背に圧し掛かった瓦礫から脱出していたT-800。
やっとのことで脱出したときには、既にナタクと城茂の戦闘は終わっていた。
T-800は、そのことに気付かなかった。
T-800を囲う瓦礫の山の所為で、外を見ることは不可能で、音で状況を確認することも出来なかったのだ。
早急に茂の援軍に向かおうと、T-800は茂がやったように壁をよじ登ろうとした。
だが、T-800は瓦礫を掴んだと同時に、よじ登っての脱出を不可能と判断する。
理由は、二つ。
一つは、T-800の重量では瓦礫が崩れてしまうと推測できたこと。
もう一つは、茂が抜け出した隙間に、T-800が通れないということ。
これは茂が小柄というワケではない。むしろ茂はガタイがいい方である。
ただ、T-800の肉体が、茂よりもさらにガッシリしているだけだ。
よじ登るのが不可能だと判断したT-800は、思考する。
何としても、茂の脱出に向かわねばならない。
しかし、無理によじ登ろうとしては、瓦礫がさらに崩れるのは明白。
そうなってしまえば、さらに瓦礫の山から抜け出すのが遅くなるだろう。
数秒の思考の後、T-800はしゃがみこんで、地面に拳を叩きつけ始めた。
地面に穴を掘って、そこを通ることで瓦礫の山から脱出しようと考えたのだ。
常識的に考えれば、あまりにもマヌケな考え。
しかし、である。
ドガッ、ガツン、ドガッ、ザバッ、ガツン、ガツン……――――
T-800の両手は、見る見る土を掻き分けていく。
そうなのだ。
乗用車を軽々と破壊できるT-800のパワーならば、土を掘って脱出経路を製作するのは、不可能な話ではないのである。
ある程度掘ったところで硬い地層に衝突したのか、進行速度が多少遅くなったが、T-800は両手で土を掻き出し続ける。
結果、時間はかかったが、T-800は瓦礫の山の外に脱出することに成功した。
ここで、時は戻る。
◇ ◇ ◇
T-800は、まず周囲があまりに静かなことを疑問に思う。
理由は、T-800の情報処理能力でも推測不可能。
ただ、ナタクとストロンガーの戦闘が終わったということだけが、T-800には分かった。
それにしても、あまりに静かすぎる。
疑問に思うものの、とりあえず辺りを徘徊して、情報を得るのを優先するT-800。
歩みを進めながら、コルトS.A.Aに弾をリロードするのも忘れない。
五度ほど足を動かしたときであろうか、T-800の義眼の奥に埋め込まれた、超小型レンズ付き高感度ビデオセンサーが何かを捉える。
それは――
「茂……」
地に伏せた城茂の姿であった。
茂の全身に刻み付けられた傷は、T-800が最後に見たときから殆ど増えていない。
未だ体温も抜けきっておらず、T-800のメモリー内の城茂と眼前の城茂の違いは一点であった。
首と首から下が離れてしまっているという――ただ、一点だけであった。
【B-3 町/一日目 午前】
【T-800@ターミネーター2】
[状態]:全身に損傷(特に背部)、所々の深い傷からは金属骨格が露出
[装備]:滝和也のライダースーツ@仮面ライダーSPIRITS、コルトS.A.A(6/6)
[道具]:支給品一式、コルトS.A.Aの弾丸(25/30発)
[思考・状況]
基本思考:シグマを打ち倒して殺し合いを破壊し、本来の任務に戻る。
その為に仲間を集める、殺し合いに乗る者には容赦しない。
1:状況の把握。
2:南下するか、修理工場を目指して東に向かう。
3:スバルと合流する。
4:スバルの仲間(ギンガ、チンク、ノーヴェ)を見つけ、合流する
5:T-1000の破壊
[備考]
※本編開始直後からの参加です。
※スバルに、ボブと呼ばれています。
※ライダースーツのナックルとその弾丸は、スバルに手渡されました。
※スバルの住む世界、魔法、ギンガ、チンク、ノーヴェに関する情報を得ました。
※シグマの背後にはスカイネットがいて、スカイネットの妨害行為によって、自分はこの場に連れてこられたのではと考えられています。
※仮面ライダー(本郷、風見、敬介)についての情報を得ました。
※瓦礫の山の中にいた為、ナタクとストロンガーの戦闘音が聞こえませんでした。
※地中にいた為、神敬介の接近や行動に気付きませんでした。
■
ここは、いったいどこだってんだ。
四方が乳白色で、果てしなく空間が続いている感覚。
唐突に、どこに連れてかれたんだ。
まさか新たに出現した悪の組織の仕業か?
だとしたら、初っ端から仮面ライダーを巻き込むとは、よっぽどの自信家軍団だな。
いいぜ、どんな悪だろうとブッ壊し……ん?
新たに出現した悪。
急に、どこだか分からねぇ場所に連れてかれる。
どこかで体験……ああ、そうだ。
俺を含めた四人の仮面ライダーを巻き込んで、殺し合いを強要したヤツがいたな。シグマだったか。
その殺し合いの途中で、いきなり今度はこんな所に……
思い出せ、ここに来る前に何があったかを。
――――そうだ。
俺は、力を使いきって寝ちまったんだ。
と、なるとだ。
これは――夢、か?
はッ、悪を叩き潰す途中で倒れて、挙句の果てに夢とは。
まったく情けねえな。
――ん? いま懐かしい匂いがしたような……
振り向いてみれば、そこにはアイツがいた。
戦士ではない、一人の女が。
二つコーヒーカップを持って、俺の方へと寄ってくる。
だが、受けれない。
仲間が、T-800が待っている。すぐに行かなくてはならない。
そう告げると、アイツは悲しげに口を開いた。
―― 茂……もう行かなくていいのよ ――
何、言ってやがるんだ?
夢ってのは、人の深層心理だかが表れるらしいが……
おいおい、俺はいつおかしくなっちまったんだ?
困惑する俺を見ながらも、アイツは言葉を続ける。
―― あなたは、もう十分すぎるほど闘ったわ。もう……あなたはただの………… ――
ああ、なるほど。
――――――そういうことかい。
&color(red){【城茂@仮面ライダーSPIRITS:死亡確認】}
&color(red){【残り 32人】}
※HARLEY-DAVIDSON:FAT BOY@ターミネーター2が、死体から五十メートルほどの地点に放置されています。
*時系列順で読む
Back:[[Wake Up . The ヒーロー その2]] Next:[[聞こえた]]
*投下順で読む
Back:[[Wake Up . The ヒーロー その2]] Next:[[聞こえた]]
|094:[[Wake Up . The ヒーロー その2]]|城茂|&color(red){GAME OVER}|
|094:[[Wake Up . The ヒーロー その2]]|T-800|[[]]|
|89:[[兄弟/姉弟/家族(後編)]]|神敬介|[[]]|
**Wake Up . The ヒーロー その3 ◆hqLsjDR84w
ちょうど、超電子人間となったストロンガーとナタクが激突した頃。
支給品のバイクでもって、エリアD-3からC-3へと入った参加者がいた。
雪原をバイクで疾走するなど、どう考えても危険極まりない行為だが、スピードを落とすことなく平然とやってのけている。
その参加者の名は、神敬介。またの名を五人目の仮面ライダー、仮面ライダーX。通称、Xライダー。
強大な悪に屈することなく、人類の自由と平和の為に戦う十人の改造人間たち。
彼らを総称して、仮面ライダーと呼ぶ。
――しかし今の敬介は、もはや仮面ライダーではない。
新たに現れた悪の組織、BADANの大幹部であるガモン大佐=暗闇大使の一部からなる暗闇の種子。
それを胸部装甲の奥深くに埋め込まれ、ただ目の前の存在を破壊するべく動く存在、いわば狂戦士となっている。
五人目の仮面ライダーとしての心は胸の奥に存在するものの、暗闇の種子の支配力には抗えない。
結果、神敬介は正義を持ったままの状態で、己の凶行をただ見つめることしか出来なかった。
思考する能力も残っているが、それも他の存在を排除するためだけに行使される。
常人ならば狂ってしまいそうな状況でも、敬介の心は折れていない。
かつては悪に対抗するために鍛えられた、強靭な精神の所為で。
敬介は気が触れてしまうことなく、心の中で叫び続けていた。
これ以上悪行を繰り返す前に、自分を殺してくれ――と。
敬介がC-3エリアに侵入してから暫くした頃、エリアを揺るが轟いた。
人が集まるだろうと推測できる左下コロニーへと移動し、そこで破壊すべき参加者を探そうとしていた敬介が止まる。
敬介には、先ほどの轟音に聞き覚えがあった。
このバトルロワイアルに参加させられているであろう敬介の後輩、城茂=仮面ライダーストロンガー。
彼が超電子の力を解放して戦った時、あのような耳をつんざく巨大な音が響き渡る。
もしやさっきの音は、ストロンガーによるものであろうか。
そんな考えが敬介の脳内に浮かんだと同時に、敬介の身体は動いていた。
南下するという予定を変更して、西へとハンドルを捻る。
(優先すべき破壊対象は、仮面ライダーというワケか……)
妙に冷静に、自分の行動から暗闇の種子の優先する事態を分析する敬介。
Xライダーの姿をとっているワケではないが、もはやどちらの瞳からも涙は流れていない。
すっかり枯れ切ってしまったのであろうか。
仲間であるストロンガーを破壊するべく、アクセルを捻る己の身体に敬介は絶望――していなかった。
(いいさ……むしろ好都合だ。
アイツが仮面ライダーである以上、悪である俺が適う道理はない……
やっと……やっと俺は、死ぬことが出来る…………)
戦友への信頼から、敬介は一切の抵抗なくバイクを駆動させた。
もっとも抵抗といっても、今の敬介には右手の力をほんの少し緩めるくらいしか出来ないのだが。
◇ ◇ ◇
音のした方へと辿り着いた敬介の瞳が映したのは、仰向けに倒れこむ城茂の姿であった。
五十メートルほど茂から離れた場所にHARLEY-DAVIDSON:FAT BOYを停車させ、忍び足で茂のもとまで移動する敬介。
バイクのまま接近した結果、エンジン音によって茂が目覚めてしまうのを警戒しての行動だ。
ナタクとの戦闘で超電子ダイナモを発動させたため、疲弊しきって身体を休める茂は、敬介があと数歩の位置まで接近しても、目覚める素振りすら見せない。
敬介がPDAを操作して、戻しておいた長ドスを再転送する。
出現した長ドスを逆手で構え、茂の首へと近づけていく敬介。
刀身と茂の首との距離、あと一センチ。
そこで、敬介の動きが止まった。
反発する力に逆らうかのようにゆっくりと、敬介が長ドスを引き戻していく。
そのまま秒にも満たない期間、敬介の身体が静止。微動だにしなくなった。
――しかしそこまでが敬介に出来る限界、暗闇の種子への精一杯の抵抗であった。
これまでの硬直が虚構であるかのように、敬介が動いた。
疾風の速さで以って、逆手に構えた長ドスを左から右へと一閃。
白い雪が、真紅に染め上げられる。塗料の名は、血液。
宙を舞った茂の生首が、鍛えられた体躯とは離れた場所に落ちる。
剥き出しであった茂のコイルアームは、先ほどまで帯電していたようだが、数秒して電気エネルギーが消滅。
「う……うオオォォォおぉおおォォオおオアアアァアァぁアぁあぁアァァアああああっ!!」
敬介が絶叫する。
服が、凶器が、髪が、肌が、後輩の返り血で塗れた状態で。
枯渇したと思われていた涙が、敬介の二つの瞳から溢れ出す。
両の頬を伝う涙は、溶解させていく。
凝固していた、これまで敬介が手にかけた者達の血液、およびオイルを。
――――もしかしたら、茂が意識を落としていたのは、幸運であったのかもしれない。
信頼していた先輩の変わり果てた姿を見ることなく、逝けたのだから。
◇ ◇ ◇
城茂を殺害した敬介の行動は、迅速であった。
咆哮の後、茂のPDAを確認。
『テントロー』の文字を発見すると、すぐに転送を開始。
それまで乗っていたHARLEY-DAVIDSON:FAT BOYは、バイクは二つも必要ないとばかりに、PDAに戻すこともなく放置。
必要だとはいえ、運転の邪魔となる長ドスは、再びPDAに戻す。
そこまで終えると、早々に殺害現場を後にしようと、敬介はPDAをポケットに押し込む。
そして、出現したテントローに飛び乗ると同時に、敬介は一気にアクセルを捻った。
全身を殺害した相手の血液とオイルで照らしながら、無表情でテントローを走らせる敬介。
かつて性格の良さを如実に表していた好青年風の容姿も、今となってはどう見ても怪人のソレとなっていた。
それでも、敬介の心は砕けない。
己の精神の強さゆえ、敬介は苦しみ続ける。
第五のヒーローは目覚めていながらにして、心の中で果てしない暗闇と戦い続ける。
現在の戦況――――明らかに、暗闇優勢。
【A-3 雪原/一日目 午前】
【神敬介@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:胸部に埋め込まれた暗闇大使の種子による洗脳状態、
胸部破損、疲労(大)、全身にダメージ(中)、生命の水の影響(極小)
[装備]:テントロー@仮面ライダーSPIRITS
[道具]:マグネット×2、支給品一式およびPDA×6(アルレッキーノ、神 敬介、ロボ、アラレ、シュトロハイム、城茂)
スモールライト@ドラえもん(残り四回)、阿紫花の長ドス@からくりサーカス:アルレッキーノのPDA
ぎんのいし@クロノトリガー、液体窒素入りのタンクローリー@ターミネーター2 (D-3基地に放置)
タイムストッパー@ロックマン2(メカ沢の胴体部):ロボのPDA
はちゅねミクのネギ@VOCALOID2(E-3道路に放置)メッセージ大砲@ドラえもん(E-3道路に放置)
アタッチメント@仮面ライダーSPIRITS(シュトロハイムの右腕)
拡声器@現実(E-3道路に放置):アラレ、及びシュトロハイムのPDA。転送可能
HARLEY-DAVIDSON:FAT BOY@ターミネーター2(城茂の死体付近)、:城茂のPDA
[思考・状況]
基本:他の存在を排除する。
0:殺してくれ。
1:A-4の連絡通路を通り、左下コロニーへ移動。参加者を探し出し、排除。
2:エックス……
[備考]
※阿紫花の血により回復速度が促進され、胸の出血が止まりました。他に全く影響が無いのかは、次の書き手様にお任せします。
※第一放送の内容を知りません。
■
敬介が既に立ち去り、城茂の亡骸だけが残された町。
そこの一画に、異変が起こる。
少しずつだが、地面が浮き上がっていき――ついに、一つの穴が空いた。
誰もいないはずの場所で勝手に穴が出来たのか? いいや、違う。
確かに地面の中には誰もいなかったが、地面の下には一体の参加者がいたのだ。
穴から両手が出現し、地面を鷲掴み。
そのまま力を込めて、黒いボディスーツに身を包んだ巨漢が穴より姿を表す。
一見するとただの西洋人だが、全身に刻まれた裂傷のうちの深い痕より存在をアピールする金属骨格が、彼が人外であることを主張する。
何故、瓦礫に埋もれていたT-800が、地中より出現したのか。
説明するには、暫し時を遡る必要がある。
◇ ◇ ◇
ゆっくりとだが、確実に背に圧し掛かった瓦礫から脱出していたT-800。
やっとのことで脱出したときには、既にナタクと城茂の戦闘は終わっていた。
T-800は、そのことに気付かなかった。
T-800を囲う瓦礫の山の所為で、外を見ることは不可能で、音で状況を確認することも出来なかったのだ。
早急に茂の援軍に向かおうと、T-800は茂がやったように壁をよじ登ろうとした。
だが、T-800は瓦礫を掴んだと同時に、よじ登っての脱出を不可能と判断する。
理由は、二つ。
一つは、T-800の重量では瓦礫が崩れてしまうと推測できたこと。
もう一つは、茂が抜け出した隙間に、T-800が通れないということ。
これは茂が小柄というワケではない。むしろ茂はガタイがいい方である。
ただ、T-800の肉体が、茂よりもさらにガッシリしているだけだ。
よじ登るのが不可能だと判断したT-800は、思考する。
何としても、茂の脱出に向かわねばならない。
しかし、無理によじ登ろうとしては、瓦礫がさらに崩れるのは明白。
そうなってしまえば、さらに瓦礫の山から抜け出すのが遅くなるだろう。
数秒の思考の後、T-800はしゃがみこんで、地面に拳を叩きつけ始めた。
地面に穴を掘って、そこを通ることで瓦礫の山から脱出しようと考えたのだ。
常識的に考えれば、あまりにもマヌケな考え。
しかし、である。
ドガッ、ガツン、ドガッ、ザバッ、ガツン、ガツン……――――
T-800の両手は、見る見る土を掻き分けていく。
そうなのだ。
乗用車を軽々と破壊できるT-800のパワーならば、土を掘って脱出経路を製作するのは、不可能な話ではないのである。
ある程度掘ったところで硬い地層に衝突したのか、進行速度が多少遅くなったが、T-800は両手で土を掻き出し続ける。
結果、時間はかかったが、T-800は瓦礫の山の外に脱出することに成功した。
ここで、時は戻る。
◇ ◇ ◇
T-800は、まず周囲があまりに静かなことを疑問に思う。
理由は、T-800の情報処理能力でも推測不可能。
ただ、ナタクとストロンガーの戦闘が終わったということだけが、T-800には分かった。
それにしても、あまりに静かすぎる。
疑問に思うものの、とりあえず辺りを徘徊して、情報を得るのを優先するT-800。
歩みを進めながら、コルトS.A.Aに弾をリロードするのも忘れない。
五度ほど足を動かしたときであろうか、T-800の義眼の奥に埋め込まれた、超小型レンズ付き高感度ビデオセンサーが何かを捉える。
それは――
「茂……」
地に伏せた城茂の姿であった。
茂の全身に刻み付けられた傷は、T-800が最後に見たときから殆ど増えていない。
未だ体温も抜けきっておらず、T-800のメモリー内の城茂と眼前の城茂の違いは一点であった。
首と首から下が離れてしまっているという――ただ、一点だけであった。
【B-3 町/一日目 午前】
【T-800@ターミネーター2】
[状態]:全身に損傷(特に背部)、所々の深い傷からは金属骨格が露出
[装備]:滝和也のライダースーツ@仮面ライダーSPIRITS、コルトS.A.A(6/6)
[道具]:支給品一式、コルトS.A.Aの弾丸(25/30発)
[思考・状況]
基本思考:シグマを打ち倒して殺し合いを破壊し、本来の任務に戻る。
その為に仲間を集める、殺し合いに乗る者には容赦しない。
1:状況の把握。
2:南下するか、修理工場を目指して東に向かう。
3:スバルと合流する。
4:スバルの仲間(ギンガ、チンク、ノーヴェ)を見つけ、合流する
5:T-1000の破壊
[備考]
※本編開始直後からの参加です。
※スバルに、ボブと呼ばれています。
※ライダースーツのナックルとその弾丸は、スバルに手渡されました。
※スバルの住む世界、魔法、ギンガ、チンク、ノーヴェに関する情報を得ました。
※シグマの背後にはスカイネットがいて、スカイネットの妨害行為によって、自分はこの場に連れてこられたのではと考えられています。
※仮面ライダー(本郷、風見、敬介)についての情報を得ました。
※瓦礫の山の中にいた為、ナタクとストロンガーの戦闘音が聞こえませんでした。
※地中にいた為、神敬介の接近や行動に気付きませんでした。
■
ここは、いったいどこだってんだ。
四方が乳白色で、果てしなく空間が続いている感覚。
唐突に、どこに連れてかれたんだ。
まさか新たに出現した悪の組織の仕業か?
だとしたら、初っ端から仮面ライダーを巻き込むとは、よっぽどの自信家軍団だな。
いいぜ、どんな悪だろうとブッ壊し……ん?
新たに出現した悪。
急に、どこだか分からねぇ場所に連れてかれる。
どこかで体験……ああ、そうだ。
俺を含めた四人の仮面ライダーを巻き込んで、殺し合いを強要したヤツがいたな。シグマだったか。
その殺し合いの途中で、いきなり今度はこんな所に……
思い出せ、ここに来る前に何があったかを。
――――そうだ。
俺は、力を使いきって寝ちまったんだ。
と、なるとだ。
これは――夢、か?
はッ、悪を叩き潰す途中で倒れて、挙句の果てに夢とは。
まったく情けねえな。
――ん? いま懐かしい匂いがしたような……
振り向いてみれば、そこにはアイツがいた。
戦士ではない、一人の女が。
二つコーヒーカップを持って、俺の方へと寄ってくる。
だが、受けれない。
仲間が、T-800が待っている。すぐに行かなくてはならない。
そう告げると、アイツは悲しげに口を開いた。
―― 茂……もう行かなくていいのよ ――
何、言ってやがるんだ?
夢ってのは、人の深層心理だかが表れるらしいが……
おいおい、俺はいつおかしくなっちまったんだ?
困惑する俺を見ながらも、アイツは言葉を続ける。
―― あなたは、もう十分すぎるほど闘ったわ。もう……あなたはただの………… ――
ああ、なるほど。
――――――そういうことかい。
&color(red){【城茂@仮面ライダーSPIRITS:死亡確認】}
&color(red){【残り 32人】}
※HARLEY-DAVIDSON:FAT BOY@ターミネーター2が、死体から五十メートルほどの地点に放置されています。
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