仮面のはがれた殺人機械 ◆2Y1mqYSsQ.


 先ほどまで風が荒れ狂っていた工業地帯のコロニーも、徐々に静寂を取り戻していった。
 風見志郎がもたらした被害は莫大である。風見によってあけられた穴には莫大な熱量がくすぶり続けていた。
 隔壁の内側、真っ赤になっているコロニーの壁は風見の生命の残り火を残し続けている。
 そんな激戦が続けられたコロニーに足を踏み入れるものがいた。
 白い強化アーマーに身を包み、背中から二本のスリットを伸ばした男。
 エックス、未知の可能性の名をもらい受けた彼は修理工場を目指して、工場地帯コロニーへとやって来たのだ。
 激闘の跡が色濃く残る周囲の情景に、ロックマンの埋葬を終えたエックスの瞳は怒りを増幅させていく。
(ここでもイレギュラーどもによる争いがあったんだ……それでロックマンのような犠牲が……ッ!)
 エックスの身体に憎悪の炎が駆け巡り、歯を食いしばった。唇を噛み破り、血(オイル)が流れ落ちる。
 一歩進めると膝が崩れるが、胸にあふれる憎悪と持ち前の根性で持ち直す。
 エックスはただ真っ直ぐ、修理工場へと歩みを進めた。


 T-800はゼロが襲撃しても対応できるよう周囲を警戒していた。
 センサーにノイズが走り、素の状態では得られる情報は少ない。支給品にも衰えたセンサー代わりになりそうな道具はなかった。
 T-800はT-1000の様子を思い出す。PDAを持っている様子はなかった。誰かに奪われたのか。
 だとすれば、シグマとの連絡はどうしていたのだろう。最初に呼び出されたホールではT-1000はシグマに協力を行っていた。
 ならばシグマとスカイネットは協力関係にあるということだ。
 どうにか人間側につけられた服従プログラムの撤去に成功したことを告げ、体内の爆弾を排除せねば。
(だが、連絡手段がない。自力で解除するしかないか)
 スバルより返してもらった『ラブラブビックバンの音楽ファイル』が入ったPDAを手放せない。
 このファイルに隠されたメッセージの解読を進めねば。
 T-800は水が流れる音がする方向へと首を向けた。スバルが落ち着くためにシャワーを浴びているのだ。
 人間の性欲なるものを持たないT-800にはスバルに対して利用する駒以上の感情は、視線に宿っていなかった。
 T-800はもともと人間を掃討する潜入型戦闘機械。感情などあるはずがなかった。


 修理工場内に備え付けられたシャワー室で、スバルは汚れを落としていた。
 ゼロによって足止めのため撃たれた白い粘着物、とりもちもギンガの血もすっかり流れきっている。
 それでも丹念にスバルは身体の汚れを落としていく。泡が立つ垢すりを何度も何度も白い肌に往復させていた。
 ボブが与えた右手は見た目だけなら人間と変わらない。あっさりと装着できたあたり、人工物なのは明らかなのに。
 その作り物の腕で左手を必死に洗う。ギンガの血が取れない錯覚にスバルはとらわれていた。
 水の雫がスバルの頭頂部から顔を経由して、豊かな双丘から腹へとなでる様に落ちていく。
 泡もまた似たような経過をとって落ちていき、汚れはもうない。それでも、スバルの追い詰められた精神は必死にギンガの血を洗い流す。
 姉を殺した。ドラスに騙されたと思い込んでいるとはいえ、スバルの罪悪感まで流せるわけではない。
「うっ……!?」
 こみ上げる吐き気に任せて、スバルは膝を崩す。細くしなやかな足が水を流すタイルに投げ出された。
 スバルは吐き気がするもの、胃液しか出ない。固形物はすでに吐ききった。
 涙がこみ上げ、口にすっぱい味が広がる。
「ギン姉……ギン姉……ッ!!」
 スバルはひたすら姉に謝った。もうすでにこの世にはいない。その苦しみから逃れられず。
 むき出しの白い豊かな胸を反り、声を押し殺してただ涙を流した。


 やっとシャワー室から出るほどに精神が安定したスバルは、脱衣所での代えの服を見つめる。
 この修理工場で見つけた作業服らしい。オレンジ色のつなぎだが、今は何でもよかった。
 後で自分の服を洗濯しておこう、とどこかのんきにスバルは考えた。
 唯一無二の姉を失っても日常的なことを心配できる自分に、スバルは安堵した。
 この作業着もボブが用意したものだ。ここに連れて込まれてからボブには世話になった。
 彼と一緒に元凶のドラスを倒し、シグマを倒して自分も死のう。最後はボブにでも頼もうか。
「スバル。もう終わったか」
「はい。服……ありがとうございます」
 ボブは無言でうなずいた。もともと物静かな人だ。何か考え事があるらしく、手持ちのPDAを操作している。
 スバルとしてはボブの邪魔をせず黙っているしかない。今までスバルはドラスを倒すことしか今まで頭になかったが、ボブは冷静に次を考えている。
 ドラスを倒すことは、自分のような犠牲者を出さないためには必要だが、それで終わりではないのだ。
 シグマ、そしてスカイネットと元凶を倒さねばまた同じ殺し合いを開かれるかもしれない。
 きっとボブはそうさせないために行動をしている。短絡的で視野の狭い自分を反省しながら、スバルは椅子に座った。
 するとボブが立ち上がり、出入り口の方向へ視線を向けている。
 スバルが声をかけようとすると、ボブは人差し指を唇に立てた。
 どうしたのか疑問に思う暇もなく、足音が聞こえてきた。スバルは警戒して、その方向へと意識を注いだ。
「誰か……いるみたいだな」
 地獄のそこから這い登るような低い声に、スバルは背筋をゾッとさせた。


 エックスは誰か中にいることに気づきながらも、突き進んだ。
 戦いを挑むのなら……いや、戦いを起こす気ならイレギュラーとして処分する。
 ロックが死んだ。原因は知らないが、やさしく強い彼がやすやすと敵を近寄らせるはずがない。
 騙すものがいるのは、シグマとの戦いで学習している。もはやエックスは戦う気がないといっても、信用する気はない。
「止まれ」
 男の声が聞こえる。エックスは顔を上げながらも、無言で進んだ。
 銃声が聞こえ、エックスの数メートル手前で弾丸が跳ねる。
「威嚇射撃だ。次は当てる」
「……戦うんだね……君も」
「なに?」
「なら……俺の敵だ!」
 素早く右腕をバスターに変えて、銃声があった方向へ一発放つ。
 隠れていたバリケードが吹き飛び、筋骨隆々の男が視界に入った。エックスは相手をイレギュラーと即決。
 数発撃って、右方向に腕を向けた。そのまま発砲、女性の短い悲鳴があがる。
「バレバレなんだよ」
 エックスは飛び出そうとした女性に向けてバスターのエネルギーをチャージする。
 貫く、その一念をこめている時に男が声をかけてきた。
「待て。交渉をしよう」
 エックスは意外そうに男を見る。男は静かに、PDAと両手を上げて物陰から出てきた。


 T-800はスバルと打ち合わせをして、囮役を買って出た。もっともこれは相手が好戦的に限り、である。
 予想以上に相手は好戦的だったが、顔を確認して不可解になる。
 スバルに支給されたガイアアーマーと同じく強化アーマーを着ているのだが、顔はシグマに対して反抗を示したエックスなる人物であった。
 その彼にしてはあまりにも殺気が強すぎる。まるで茂と自分に襲い掛かったナタクのように。
 実力はゼロと比べても遜色のない強さだ。あのアーマーを充分使いこなしている証拠だろう。
 あの実力なのに、殺し合いに参加したのは残念だ。以前ならそう考える。
 だが、今のT-800は違う。
 飛び出したスバルが撃ち殺されないうちに物陰から出る。
「待て。交渉をしよう」
 エックスが顔をこちらに向けていた。わけは知らないが、エックスは殺し合いに乗ったのだ。
 ならばここは退いてもらい、あのチームと潰しあってもらおう。T-800は殺し合いに乗っていないようにスバルに見せながら、エックスを利用することに決めた。
「交渉だと?」
「こちらに戦う意思はない。君の目的をシグマを倒すことだと推察する。ならこの戦いは無意味だ」
「……シグマを倒す、か」
 エックスが笑っているとも、泣いているとも判別のつかない表情をした。
 理解不能だ。しかし、説き伏せねば戦闘力からT-1000の二の舞になることは必須。
「シグマを倒すために『戦う』というなら……君もイレギュラーだ」
「そん……!」
「スバル、今は喋るな。そうか、イレギュラーが何かは理解できないが、それを潰すのが今の目的か」
 エックスは無言。答える必要などあるのか? と言い出しかねない表情だ。
「ならば、休戦をしないか? 見たところ君は傷だらけだ。次の放送まで休戦をしてくれるというなら、この施設で見つけた回復道具を引き渡そう。
効果はその娘の身体を見れば分かる。つけられた傷は今日つけられたものだが、塞がりつつあるからな」
「ボブさん!」
「スバル、落ち着け。君の状況は人質とそう差はない。スバルの身の安全と、次の放送までの安全を確保してくれるなら……このメカ救急箱を譲ろう。悪くないはずだ」
 エックスの沈黙が修理工場を支配する。時間にして三分。
 早く決断を出してほしい。T-800は静かにエックスの動きを見守った。
 視界の端で、スバルがわずかに動いている。意図を理解したT-800は声を発する。
「スバル、動くな。一瞬で死ぬ。おそらく、そいつはそれができる」
「くぅ……!」
 T-800の静止に、わずかにエックスの眉が動いた。
 ゆっくりと、エックスは顔をT-800に向ける。
「いいだろう。そのメカ救急箱を投げろ。その瞬間この人も解放する。次の放送まで……いや、隠れているなら何もしない。
けど……戦うなら、放送に入る前でも殺す」
「感謝する。合図はそちらで決めろ」
 取り決めは終わった。T-800は次の仕掛けをする準備をする。戦いを避けただけでは、T-800の想定する仕組みは半分程度の進行度だ。
 T-800は冷静にメカ救急箱を渡す体勢をとった。


「ごめんなさい……ボブさん。足を引っ張ってばかりで……」
「気にするな。君に怪我をされても、こちらが不利になるだけだ。メカ救急箱ならこの施設にある。
替えが効くものと、失うわけには行かない君……どちらを優先するかは当然の答えだ」
「ありがとうございます」
 T-800は何度も礼を言うスバルを不思議に思いながらも、エックスが消えた方向に視線を向ける。
 まだ完全にいなくなったとは限らない。落ちたセンサーの性能で捉えられるかは厳しいが、訓練された人間の兵士以上には鋭敏である自分なら効果はあるはずだ。
 警戒を続けるT-800にスバルがおずおずと話しかけてきた。
「あの……なぜああいったんですか?」
 スバルが何をさして言っているのは、察しがついている。T-800は退いていくエックスに、『われわれは戦わないわけにはいかない。シャトル基地にいるだろう、優勝を目指す彼らを倒さねばならないからな』と告げたのである。
 目的は決まっている。あわよくばエックスとぶつけ、二つの勢力を疲弊させるため。
 もっとも、スバルには別の言葉を用意していた。
「ああいえば、いずれ彼とも共闘する日が来るかもしれない。今は錯乱しているが、元はシグマを倒すことを目指した彼だ。我々が救わねばならない」
「そうでしたか……なるほど」
 スバルが納得する姿を確認後、T-800はコルトS.A.Aの分解整備と周辺の警戒を並行しておこなう。
 説明はすべて終わった。そうT-800は思った。
「でも……ドラスを倒すのは私です。ギン姉の仇は……私が討つ!」
 意外なスバルの激しさに、T-800は初めて意識をスバルへと向けた。
 彼女の発破にもなったらしい。意外な効果に、T-800は都合がいいとだけ結論をつけた。
 なぜなら、T-800には『服従プログラム』などくだらない仮面が剥がれた、殺人機械なのだから。


 スバルはボブの役に立てないことを後悔しながら、エックスの向かった方向へと瞳をやった。
 彼はドラスと同じく、この殺し合いに乗ってしまったのだ。
 理由は知らない。知りたくもない。
 放置しておけばギンガやノーヴェのような悲劇が起きる。ドラスを先に討たれるのも認められない。
(認めてたまるもんか! ドラスは私が殺す。あいつなんかに……とられるものか……!)
 スバルは知らない。エックスもまた、スバルのようなすれ違いの末生まれた鬼であることを。
 スバルは知らない。彼女もまた、道化であると。


 エックスはフリームーブを使って、北部の小さな工場へと身を隠した。
 T-800のいったチームを警戒してのことだ。もっとも、エックスは休戦の約束は叶わないと思っている。
 なぜなら、T-800の瞳と振る舞いに心当たりがあったからだ。
(あれは……俺が戦ってきたイレギュラーと同じ存在だ)
 歴戦の戦士の勘と、狂気に満ちた鬼の鋭さでT-800の提案が胡散臭いものと断定した。
 メカ救急箱を渡した理由は明確だ。潰し合わせるため。
 と、すると敵は多いのだろう。ドクターケイトの杖は壊れたらしく、エラーが起きて呼び戻せない。
 毒があるなら使いどころもあったのに、と舌打ちをする。
(いいさ。今はお前の思惑に乗ってやる。イレギュラー……俺はお前も、シャトル基地にいるイレギュラーもすべて潰す。覚悟しろ)
 メカ救急箱の中身を駆使し、修羅の視線は鋭く標的のいる場所へと向けられる。
 エックスは一人。鬼を殺すための鬼。孤独な存在であった。
 親友のゼロと敵対する運命にあるために。


【G-3 修理工場/一日目 午後】

【T-800@ターミネーター2】
[状態]:全身に損傷(特に背部)、所々の深い傷からは金属骨格が露出、シグマウィルス感染
[装備]:滝和也のライダースーツ@仮面ライダーSPIRITS、コルトS.A.A(6/6)
[道具]:HARLEY-DAVIDSON:FAT BOY@ターミネーター2、電磁ナイフ@仮面ライダーSPIRITS、
    PDA(凱、村雨)、打神鞭@封神演義、グランドリオン@クロノトリガー、トリモチ銃@サイボーグクロちゃん
    生活用リゼンブルパーツ(左腕)@SoltyRei、コルトS.A.Aの弾丸(12/30発)、
[思考・状況]
基本思考:スカイネットの使命通り、全ての者を破壊する。
1:スバルを利用して人間及び、人間側のサイボーグとロボットを始末する。
2:ゼロたちのチームの悪評を流す。
3:発見した音楽ファイルに秘められたメッセージを解読。
4:用が済めば、スバルを破壊する(しかし、ノイズが発生。それを心地よく思っている?)。
5:エックスを警戒、しかし利用する。
[備考]
※本編開始直後からの参加です。
※スバルに、ボブと呼ばれています。
※地中にいた為、神敬介の接近や行動に気付きませんでした。


【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:右腕をリゼンブルに換装。罪の意識とそれ以上の決意。メカ救急箱により回復中。二~三時間で傷がふさぎます。
[装備]:滝和也のナックル@仮面ライダーSPIRITS、軍用双眼鏡@現地調達、ガイアアーマー@ロックマンX5
    生活用リゼンブルパーツ(右腕)@SoltyRei(装着済み)、作業服(現地調達)
[道具]:PDA×2(スバル、T-800:ラブラブビッグバンの音楽ファイル入り)サブタンク(満タン)@ロックマンX
    テキオー灯@ザ・ドラえもんズ、ナックルの弾薬(25/30発)@仮面ライダーSPIRITS
    ライディング・ボード@リリカルなのはStrikerS
[思考・状況]
基本思考:他者を破壊しようとした参加者を破壊する。罪は自分だけが背負う。
1:ドラスを許さない。ギンガの仇を討つ。
2:ボブと協力。
3:チンク、メカ沢、ロボ(後ろの二名は名前を知らない)とは、いずれ合流する。
4:エックスも倒す。
[備考]
※本編開終了後からの参加です。
※テキオー灯は、一時間のみ効力持続。
 一度使った者には、24時間経過しなければ使用不可能と制限されています。
※T-800のことを、ボブと呼んでいます。


【F-3 北部廃工場 /一日目・午後】

【エックス@ロックマンXシリーズ】
[状態]:疲労中、全身に中ダメージ、メカ救急箱の処置により回復中。二~三時間で傷は完全にふさぎます。
    深い悲しみ、現実への絶望と失望、鋼の心、爆風により装甲に凹み。
[装備]:ファルコンアーマー@ロックマンX5
[道具]:PDA(エックス、あ~る、バロット)、クロマティ高校の制服@魁!!クロマティ高校  グロスフスMG42(予備弾数20%)
    NIKU・Q・マックス@サイボーグクロちゃん
    メカ救急箱
[思考・状況]
基本思考:戦う者、戦わせる者、戦いを広げる者、戦う意志を持つ者――全てが敵だ
1:T-800の思惑に乗ってイレギュラーどもを潰す。
2:戦っている者を、誰であろうと潰す。
3:戦わない者は基本放置。だが、戦う意志があるのなら潰す。
4:ゼロと合流。ただし、賛同を得られず、戦うことになったら潰す。
5:ロックマンの仇を討ちたい。
6:シグマは潰す。絶対に、確実に潰す。
7:T-800の休戦の提案を本気にしていない。
8:全てが終わった後、自分自身を破壊する。
[備考]
※神敬介の名前を、Xだと思っていましたが、勘違いだったと思っています。
 また、神敬介が死んでしまっていると考えています。
※ライドアーマー“イーグル”@ロックマンX4は破壊されています。
※ファルコンアーマーの制限。
 1.フリームーブの時間は、本来の半分。
 2.フリームーブによる特定のダメージの無効はない(ただし、威力の軽減はある)。
※他にも、ファルコンアーマーの制限はあるかどうか不明。後の書き手さんに任せます。
※ロックマンの“思い出”を知り、ロックマンについて大まかな知識を得ました。




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127:真っ黒焦げの凶暴な卵(1) スバル・ナカジマ 139:嵐の前(前編)
127:真っ黒焦げの凶暴な卵(1) T-800 139:嵐の前(前編)
129:遅過ぎた出逢い エックス 137:泣けない青鬼





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