• 生理ネタ




「おはよ…なるほどくん…」
「ああ…おはよう…?」

どうしたんだろう…?今日の真宵ちゃんは少し…というかものすごく元気が無いような。
毎朝真宵ちゃんのハツラツとした挨拶で元気付けられるぼくとしては、少し残念な気分になった。
それと同時に、真宵ちゃんの明らかな体調不良も心配になった。

ぼくは、しゅんとうなだれてソファーに座る真宵ちゃんに近づいて、そっと屈んで真宵ちゃんの顔を覗き込んだ。
いつもの桃色の頬っぺたが青白くて…なんだか顔色が悪い。

「…真宵ちゃん…?どうしたの?具合悪いの?」
「…ううん…そんな事ないよ?」

そういって顔を上げる真宵ちゃん。
無理に作ろうとした笑顔が引きつっている。

「ウソ付けよ…顔色悪いぞ…?」
「………」
「熱でもある?」

真宵ちゃんはゆっくりと首を横に振った。
けど見るからに具合が悪いので、ぼくは真宵ちゃんの額に手を当てた…。
少し熱いような気もするが…確かに顔色程の深刻さは無い。
熱は無いようだが、真宵ちゃんの具合が悪いのは目に見えていて…どうしたものかと思案していると、真宵ちゃんが小さい声でぼくに声をかけた。

「…なるほどくん…じゃあ…少しだけ横になるね…」
「え…ああ…じゃあ毛布持ってくるよ…!」

ぼくは慌てて、真宵ちゃんが愛用しているトノサマンの毛布を引っ張り出して、ソファに横になる真宵ちゃんにかけてやった。
真宵ちゃんはもぞもぞと動きながら、一瞬視線をこっちに向けて微笑んだ。ありがとうと言った様だ。

「真宵ちゃん…本当に大丈夫?」
「…うん…眠ったらたぶん治る…」

そう言った真宵ちゃんは一瞬眉をひそめた。

「ひょっとして何処か痛いの…?」
「………」

真宵ちゃんは少し間をおくけど、ぼくが答えを聞かないと動かないと気が付いたようで、ゆっくりと口を開けた。
声はさっきよりも小さい。

「…おなか…」
「おなか…?」
「うん…おなか…いたい…」

そりゃあ毎日毎日あんだけ食べれば、その内胃が悲鳴を上げるだろうとは思っていたが…。
けど今の真宵ちゃんには冗談は通じなさそうなので…ぼくは声には出さなかった。
此処でいつもなら、ぼくの心の声を勝手に感じ取り、さっとツッコミを入れてくれるのだが、今日の真宵

ちゃんはそれすら出来ず…毛布に丸まっている。
その姿は本当に辛そうで…真宵ちゃんの横になる姿を見て居ると、居た堪れない気分になって来た…。

こういう時はぼくがしっかりと介抱してやらないと!

「ま…真宵ちゃん…!?……あの…胃薬買って来ようか…?」
「………」
「ああ…けどその前に体温計か…?」
「………」
「おなか痛いなら…トイレ行ったら治るかも…!……あ…まだ今日トイレ掃除してなかった…て今はそんな事をしている時じゃないな…!」
「…な…」
「とりあえず…ぼくは胃薬買って来るよ…それでも治らなかったら病院に…」
「…なるほどくん…」
「な…なんだい?…トイレかい!?」

ソファーの前で右往左往していたぼくに気が付いた真宵ちゃんは、よろよろと起き上がった。
ぼくはその場に跪き真宵ちゃんを支えて見上げる。やっぱり顔色が優れない…。
声もいつもの明るさはなくて…とっても弱弱しい。

「なるほどくん…あのね?…痛いのはおなかなんだけど…違うの…」
「何が…?」
「あのね…その…えっと…」
「…?」

真宵ちゃんは少し俯いて視線を横へ動かす。
恥らうような表情をすると、そっとぼくの耳に小さい…本当に小さい声で話しかけた。

…………

真宵ちゃんが言った、腹痛の原因…それは男のぼくには思いもよらないもので…。
言い終わった真宵ちゃんも…さっきの顔色がウソのように顔を赤くしていて…たぶん今のぼくも真宵ちゃんに負けず劣らずなんだろうなあ…。

「あ…その…だから…胃薬ではないんだよ…」
「……あ…ああ…この場合は…その…痛み止め…でいいのかな?」
「…うん……けど…眠ったら治ると思うんだ…だからお仕事してて…」
「………」

参った…。
よく考えたらぼくは一人っ子で…過去に付き合いのあった女性とも…そこまで深くそういった話題をする事も無く…真宵ちゃんにどう接すればいいのか正直分らなかった。
機嫌が悪くなって、イライラする…とかいう噂も聞いた事もあるが…今の真宵ちゃんはいつも以上に大人しい…。

そういえば真宵ちゃんとは1年近く一緒に居るが…こんなに苦しそうな姿を見たの初めてだ。
ぼくだってそれがおよそ1ヶ月に1度来る事は知って居るが…ということは真宵ちゃんは今ままでもこんな苦しみをぼくに内緒で明るく接してくれていたのだろうか…。
初めて出会った頃、ぼくの様子を伺いながら無理に笑顔を作っていた真宵ちゃんを思い出し、その頃よりぼくは彼女にとって安心できる存在なのかと思うと、ぼくは少し嬉しくなった。

そういえば…真宵ちゃんはもうすぐ二十歳になるんだよな…。
見た目と言動でごまかされてるけど…そういった事はちゃんとしてて…という事はもう真宵ちゃんの身体は立派な大人の女性に成長してて…アソコから流れる赤い血は…て真宵ちゃんが苦しんでいるのにぼくは何1人で盛り上がって居るんだ…。
ああ。これだから男という生き物は…。

せめてこの事務所に女の人が居れば…。
そうだ春美ちゃんに…て流石に9歳じゃあまだ分らないよな…千尋さんに霊媒してもらうか…。
けど…なんて言えばいいんだろう…ぼくに何か出来る事ってあるのだろうか…。


その後、電話の向こうに居る春美ちゃんに千尋さんを霊媒してもらった。
「法廷でのふてぶてしさも…真宵が絡むと形無しね…」と呆れ気味に捨て台詞を吐かれ、彼女の言う事を聞いて真宵ちゃんの苦しむ顔が和らいでぐっすり眠りについた事を確認すると…ぼくはやっと安心して仕事に取り掛かるのだった。

真宵ちゃんの生理の周期…把握しておいた方がいいかな…。
…などと心の片隅で悪魔が囁いたのは此処だけの秘密だ。
最終更新:2010年03月26日 23:40