真宵で遺伝子ネタ投下します。オリキャラが山と出てくる+エロっていうよりホラー

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部屋にあるもの。畳。敷き詰められた畳が、ざっと二十枚。襖。今は片付けられて、
部屋の隅に重ねてある。布団。大きめの絹織り、色は艶めかしい紅染め。汗を吸いじとり
とひしゃぐ様は、なめくじに似た生き物のよう。明かり。部屋の四隅で揺らぐ蝋燭、それ
が全て。
部屋にあるもの。
熱。不快に淀む熱。もつれ絡み合い温度と湿度を増してゆく、複数の熱がある。
におい。体臭がある。汗が臭う。脂じみた皮膚が臭う。体外に吐き出された精液と膣液
と、興奮しきった男と女のにおいがある。
音。ぱんぱん、と、肉で肉を打つ音がある。ぐじゅり、と、体液を溢れさせる場所を
ひらく音がある。くちゃくちゃ、と、肉を粘膜へ擦りつけ狭い洞を掻き回す音がある。
荒い息遣いが。囁き交わす男の声が。ひきつったような笑声が。──それらに隠れるよう
に、微かな、嗚咽に似た喘ぎがある。
そこに“在る”のは男と女。
訂正。
男“たち”と、女とも呼べない少女が一人。薄暗がりに蠢くのは、黒い髪の小柄な少女
によってたかって群がり貪る、年齢も体格も様々の男たちと。布団の上四肢をぐたりと
投げ出し抵抗の気配も見せない少女がひとり。
男たちが何人いるのか。今、仰向けの自分の脚を持ち上げひらかせ、我が物ならぬ体液
を垂れ流す秘所に性器を突き入れたのがどの男だったのか。これで“今日は”何回目の
挿入になるのか。少女には、もう分からない。分かろうとする気力もない。
部屋は暗い。男の顔は見えない。男からも少女の顔は見えない。ただ輪郭がある。熱が
ある。ねとりと淀む息遣いがある。肉が肉をこそげ落とす度に生まれる、鈍い悦楽だけが
ある。
少女は誰の目にも止まらぬまま涙を零し。肺を引き絞るように、喘いだ。
挿入する男が動きを止める。
いえもとさま、と、声を掛ける。
家元様、ここが、いいんですか。言葉と共に脚を揺すられ腰も揺れて、男を収める狭い
洞も上下に揺れて。
「ふっ──?! っく、んう──っ!」
腹の裏側をずりずりと擦られて、少女の脚が痙攣する。ぎゅっと狭まる洞に男は興奮の
度合いを増し、割り裂く勢いで奥へと腰を進める。ごつん、と奥に当てると襞がぐいぐい
絡んでくる。引きずり出し、またぶつける。激しい動きに結合部から体液が散り、布団に
落ちた。紅い絹が臓物めいてぬらりと光る。
「い、た、」
少女が苦痛に顔を歪める。奥で悦楽を感じるまでには、少女の身体は慣らされてはいな
かった。その表情は見えない。その声は届かない。苦痛によじれる柔襞は、男を勘違い
させ自分勝手な律動を続けさせることにしかならない。
送り込まれる苦痛と。僅かに残った悦楽と。痛みから逃げようと、僅かばかりの悦楽に
しがみつこうと自らずり上がる身体と。
その全てに嫌悪と絶望を感じながら。少女は、野太い男の声と、自分のナカでびくつく
男根と、注がれる体液の感触に。無言のまま泣いた。
男が離れる。膣口からどろりと精液と膣液が溢れる。混じるのは血だろうか? けれど
暗闇と紅い布団が全てを隠してしまう。

男が布団から降りる。けれどそれは休息を意味しない。ここに存在する“男”は、一人
ではないのだから。
無理に引き起こされ、力の入らない身体で四つん這いの姿勢を強要される。「も、無理
……だよ……」懇願は無視される。今度、少女が相手にしなくてはならないのは二人。
眼前の男は少女の髪を掴み、かつては天真爛漫な笑顔を浮かべていたその顔を、自らの
勃起した性器へと近づける。小柄な少女では、床に手をつけては男までは届かない。必然
男の貧相な腰にすがりつく格好となる。
少女の相手は、今度は二人。
口淫を強要する男と、少女の身体を挟んで反対側。背後から華奢な腰を抱える男。引か
れたことで少女が体勢を崩しかけるが、後ろの男は頓着せず。「――ッ!」宣告も前戯も
なしに別の男の精液で汚れた孔へと己れを突き立てる。少女は抵抗できない。口いっぱい
に含んだ男根へ歯を立てないようにするので精一杯で、ましてや舌での奉仕なぞ望める
はずもない。
舌打ち。低い罵声。亀頭で上顎を突くことしか出来ない男が、たっぷりぬめる場所を、
先の挿入と吐精が絶頂に少し足りなかったせいで熱が燻り、再度の擦過で急速に高まって
ゆくナカを楽しむ男へ、邪魔をするなと文句を言う。答えはこう。
クチを選んだのはお前の勝手。御愁傷様。
馬鹿にされた男は苛立ちをぶつけるように少女の頭を掴み手荒く揺らす。少女が苦しげ
にえづくが、男は一層興奮し男根をねじ込む。
後ろの男が何事か言いかけるが、苦痛と窒息の恐怖でぎゅうぎゅうに絡みつく襞の圧迫
にそれどころではなくなる。鼻息荒く少女の尻を掴み、引き寄せ、ナカを行き来する。
後ろの男が吐精するのと、少女が絶頂を迎えるのと。「う──え、げえッ!」耐え切れ
なくなった少女が前方の男を突き飛ばしえづくのとは、ほぼ同時だった。
緋布団の上で、小柄な少女が黒髪を乱し、かさつく朱い唇から唾液と胃液と先走りを
流し咳込んでいる。例え脚の間から凌辱の痕跡が伝い落ちていずとも、充分哀れを誘う
光景であった。
見えていれば。
突き飛ばされた男は、半端な興奮と怒りとに天を向いた怒張をぶらさげ、薄暗がりの中
少女の腕を掴み上半身を起こさせる。口淫の続きを命じるが、少女の口から洩れたのは涙
混じりの哀願だった。
「……もう、ダメ」
後ろの男は満足させたのに、貴 方 は 駄 目 。
興奮に目をくらませた男は、少女の言葉をそう取った。
男は喚く。お前、そんなことを言える立場だと思っているのか。
場が凍る。
誰かが制止しようとする。――間に合わなかった。

ぱあん。
乾いた音。
涙に濡れた頬を、男の手が、打った音。

――明かりが灯る。

薄闇に隠されていたものが電灯の下全て晒される。複数人の複数の体液を染み込ませ
異臭を放つ紅い布団。横たわる少女。その少女をよってたかって好き勝手扱った、明かり
の下でうろたえ怯え前を手で隠そうとするみじめな男たち。
重い軋み。外から鍵の掛けられた、重い扉の開く音。
少女はかたく目を閉じている。身体を丸め、両の手で耳を塞ぐ。ごうごうという音に
混じり声。声。釈明。謝罪。哀願。──沈黙。沈黙。
悲鳴。

少女は必死で目を閉じる。恐かった。自分を犯す男たちが恐かった。男たちの恐れる
モノが恐かった。自分を“傷つけた”男がどうなるのかが、恐かった。
知っているから恐かった。
自分を犯した男──ああ、誰だっただろう。雑貨店の、よくアイスをおまけしてくれた
おじさん? 二軒先に、奥さんと息子さんと住んでいる、お兄さん? 小学校中学校と
ずっと同じクラスだった──目をつぶる。眼球なぞ潰れてしまえと瞼で塞ぐ。“綾里”の
姓を持つ凌辱者たちから、目を逸らす。
触れる手。女の手。びくんと強張る身を無造作に滑ってゆく、女の手。
それが太腿を割り浅い絶頂にひくつく場所へカタいモノを滑り込ませてきて──少女は
安堵する。かちりとスイッチが入り、胎の内でバイブが蠕動する。襞と空洞と精液とを
掻き回すぐちゃぐちゃという音と腹を奥底まで震わせる刺激に、熱い吐息が洩れる。
血と熱と思い出とを伴う肉より、温度のない玩具の方が。少女には優しい。
声。耳を塞ぐ手を、そっとどけられる。抵抗はしない。心地好くて、抵抗できない。
まよいさま、と。
女は、少女を、呼び。
「おつとめの最中に、失礼致しました。あとのことは任せて、おつとめをお続けください
──」
少女はぼんやり頷いた。
気持ち好いのに涙が流れるのが、不思議だった。


男というのは、ほんとうに度し難い。
綾里の姓持つ女は憤慨を込めて呟く。“家元様”に無礼を働いた男を“始末”し、残る
連中に規則の再確認を施し終えて、女は溜息をついた。
「“綾里”の姓を持つだけで他に能のない“当て馬”風情が、真宵様にあんな無礼を」
許し難い。
全く以って、許せるものではない。
だから。適当な、処分を下した。これでこの問題は片付いた。あとは“当て馬”の補充
を行うかそれともこのままの数でいくかだが──思考は、声掛けに中断される。
「例の。男性の資料が届きました」
「ありがとう。見せて頂戴」
興信所からの分厚いファイルをめくる。ほっと安堵の息を吐く。悪くない。真宵とは
少々歳が離れているが、子を作るのに遅いということはない。
「それで、この方が真宵様と親しくされているのは間違いないのね?」
「はい。報告でもそうですし、春美さまにもそれとなく確認を」
「そう、春美さんが言うのなら間違いはないわね」
女は慈愛の笑みを浮かべる。「どうせなら、真宵様には愛する殿方とのお子を為して
欲しいものね」それがおんなの幸せというものだ──言葉に、報告を持ってきた女は
居心地悪げに息を吐く。
「あの」
「何かしら」
「……では、何故、真宵さまにあのような……い、いえ! わたくし如きが口を挟むもの
ではないと知っていますが、ただ、その、疑問に、」
おろおろする彼女に、優しく答える。「真宵様のためですよ」
「受精の瞬間、女性が“感じて”いると女児を孕みやすくなる──というのを聞いたこと
はあるかしら?」
「え、あ、は、はい」
「真宵様には女の御子を産んでいただかなければなりません。そのためには、真宵様は
オンナの悦びを知る必要があります」
だから“綾里”の男連中を用い、真宵に性の快楽を教え込んでいるのだ。

真宵が、どのオトコを相手にしても“感じる”ことが可能になるまでこの“おつとめ”
は続く。
「そのために用意した“当て馬”──悦びを教えるためだから、尻も口も好きにさせて
やっているのに──それを、全く、身の程知らずが!」
怒りの言葉に、慎重な相槌が返る。
「大体、真宵様に“綾里”の男をあてがおうというのが間違いなのよ! “血”さえあれ
ばいいなんて、古臭いったらありゃしない! とりあえず“おつとめ”に使うからって
妥協したけれど、ホントはパイプカットくらいしてやりたいわよ!」
ヒートアップする言葉に、宥めるような、呆れたような相槌が返り、
「しかし家元の伴侶に、全く霊力がないというのも問題では」
他の人間の心配ももっともだと言い添えられる。
返答は、冷笑。
「“外”の血は必要です。それに。よき胎と、よき種で、必ずよき子が成せると言うの
なら、どうしてキミ子と舞子様のようなことが起こるのかしら?」
今度は、相槌は返らなかった。控える彼女は、沈黙が下手な言葉よりも役に立つことを
知っていた。
女は気に留めず、新しい指示を出す。
「“おつとめ”の終わりの刻限です。真宵様を湯浴みにお連れして」
「はい」
「くれぐれも、粗相のないように」
「はい」
供子様。綾里の女は囁く。「真宵様に、私たちの新しい家元に、よき女の御子をお授け
ください」
貴女の御血を継ぐ子をお授け下さい。
願う女の目には、一片の曇りもなかった。


倉院の里、と呼ばれる場所がある。里には偉大な神子の血を継ぐ霊媒師の一門がある。
里には。崇められ、傅かれる、ひとりの少女がいる。
遠くない明日に“倉院流家元”という名の道具と成り果てる、ひとりの少女が、いる。

最終更新:2010年08月06日 21:23